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『スター・ウォーズ:ビジョンズ』『The Ninth Jedi: Child of Hope』塩谷直義監督インタビュー

神山健治監督から物語を受け継ぎ、主人公カーラの「成長」を描く――『スター・ウォーズ:ビジョンズ』Volume3『The Ninth Jedi: Child of Hope』塩谷直義監督インタビュー

 

Production I.Gが描く「スター・ウォーズ」の世界観

──冒頭に登場するカーラたちの宇宙船は、非常に独創的なデザインでした。

塩谷:あれは、一番の基礎としては、やはりミレニアム・ファルコンを意識しています。その上で、デザイナー品川さんと色々話す中で、神山監督が作られた「和」のテイストをどう加えるか考えました。たくさんのアイデアの中から最終的に採用したのが、「前方後円墳」をモチーフに加えて、あの独特の形になりました。

ジェダイハンター船も同じくデザインするにあたって、まずは改めて「スター・ウォーズ」の百科事典を買ってきて、徹底的に調べ直したんです。膨大な資料の中から、辺境惑星の輸送船団の一つの船をモチーフにしました。元々「スター・ウォーズ」の世界に存在する3つか4つのパーツを組み合わせて製作した形です。

──船といえば、カーラが乗り込むことになる漂流船の内部も印象的でした。

塩谷:船の内部は、船の持ち主であるマスターが生まれた星を想像して制作しています。エリアごとに船の持ち主であるテトのマスターが“思い出深い場所”を想定したデザインを分けているんです。カーラがこれまで生きてきた中で遭遇したことのない文化圏なので、彼女にとっては少し「怖い」と感じるような、意図的に異質な空間として設計しました。

 

 

──今作を制作するうえで、最も「産みの苦しみ」を感じられたのは、どのような部分でしたか?

塩谷:それで言うと、一番初めが肝でしたね。特に「宇宙をどういう風に表現するか」というライン引きに、すごく悩みました。自分の肌感覚として、今までリアルを意識して作る作品を多く作ってきたので、その感覚で宇宙を捉えていたんです。

──当初はリアルな宇宙表現を目指されていた。

塩谷:そうですね。でも、ルーカスフィルム側と密にお話していく中で、「これはスペースファンタジーなんだ」と言われたんです。続けて、冗談の例え話として「宇宙に飛び出したとしても、5分ぐらいは大丈夫な感覚で持っててほしい」と(笑)。

その言葉で全てが腑に落ちました。リアルな方向にシフトしていくことが、「スター・ウォーズ」の魅力を表現することとは限らないと改めて気がつきました。

──「スター・ウォーズ」の華であるライトセーバーのアクションについてはいかがですか?

塩谷:今回のアクションで一番意識したのは、「負ける」ということです。これからの長いシリーズを考えた時、主人公が最初から強すぎると、物語の天井が見えてしまう。だから、今作ではまだ勝てない状況をちゃんと作ってあげないといけない。必死に頑張るんだけど、最終的には負けてしまう。その中で何を得るのか、という点を大事にしました。

──音楽も、「スター・ウォーズ」らしさ全開で素晴らしかったです。『PSYCHO-PASS』でもタッグを組まれた菅野祐悟さんが担当されていますね。

塩谷:音響チームも音楽も、『PSYCHO-PASS』と同じチームでお願いしました。最初の打ち合わせの時に、菅野さんから「塩谷さんの『スター・ウォーズ』らしい音楽を一度見てみたい。それを自分なりに解釈して作りたい」という提案があったんです。そこで僕がやったのは、一度、「スター・ウォーズ」の実際のサウンドトラックを映像に当てはめて、仮の音楽を入れた編集版を作ることでした。

例えば、アクションシーンではダース・ベイダーのテーマ(「The Imperial March」)を流したりして、「こういう雰囲気の曲が欲しいんです」というイメージを菅野さんに伝えました。効果音についても、どうすればこの世界観に溶け込めるかをすごく意識して作っています。

 

未来へ繋ぐ「希望の子」

──今作は、今後予定されているオリジナルシリーズへと続いていきます。今回の短編は、どのような役割を担うエピソードになるのでしょうか?

塩谷:まさに、シリーズに「繋ぐ」ための物語です。

前作で旅に出たカーラが、今作での経験を経て、自らの意志で未来を切り拓いていく為の“覚悟”を決める物語。彼女の変化・成長を描くことが、この短編に与えられた最大の役割だと考えています。このエピソードを通して、観客の皆さんにはカーラという人物がどういう女の子なのか、彼女がこれから何を目指し何を成そうとしていくのか、その一端を感じて、今後の配信されるシリーズをより楽しみに待っていていただけたら嬉しいです。

──最後に、今作で描かれたカーラの成長、そしてこれから始まる壮大なシリーズを楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。

塩谷:前作から始まり、今作があり、そして今後のシリーズへと、カーラの物語は続いていきます。「九人目のジェダイ」という、「スター・ウォーズ」の中の一つの作品が、これからどうなっていくのか。カーラという主人公が頑張っていく姿を、ぜひ楽しんでいただけたらと思います。

 
[インタビュー/失野]

 

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』Volume3

ディズニープラスにて独占配信中

 

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』はアニメーション業界を牽引し、世界的評価を得るアニメーションスタジオがクリエイター独自の視点と発想で新たな「スター・ウォーズ」を描く、ルーカスフィルム熱望の一大プロジェクト。ジョージ・ルーカスが生んだ「スター・ウォーズ」は、黒澤明作品や、日本神話・文化などから多くのインスピレーションを受けており、現在まで続くすべての作品へと及ぶ。
日本はその“創造のルーツ”とも言われ、”フォース“の考え方に影響を与えた禅仏教の概念や、ジェダイのインスパイアの源の一つである侍たちは、壮大な宿命や、善と悪を巡る物語などスター・ウォーズのすべてに脈々と受け継がれている。Volume1 では、そんな“聖地”である日本の7つのアニメスタジオより、世界をリードするトップアニメクリエーターが独自の“ビジョン”で「スター・ウォーズ」を描き出し、「『スター・ウォーズ』とアニメーションの完璧な融合作品」「『スター・ウォーズ』への深い愛情を感じ、新たな魅力を生み出している」と絶賛され世界中のSW ファン、そしてアニメファンから人気を博した。そんな「ビジョンズ」が Volume3 で“聖地”日本に帰還!ヒット作を生み出し続ける9つのアニメスタジオが参加している。

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