
実写映画『WIND BREAKER』桜遥役・水上恒司さん×梅宮一役・上杉柊平さんインタビュー|桜の中で変わっていく心情——拳を振る理由を大事に演じました
水上君とはお互いの意思を組み取れる。撮影前にこの作品をどう作っていくかっていうのを二人で話せたのはありがたかった。
──劇中で防風鈴の掟が大事な要素として出てきますが、お二人が自分に課しているルールはありますか?
水上:「誠実に、実直に向き合うこと」ですかね。仕事に対しても何に対しても嘘をつかない。
上杉:大事だね。僕も、「母親が悲しむことはしない」かな。だから水上君と近いかも。
水上:ママ、好きなんですね。
上杉:仲良いね。父親は、自分も男だからわかるんだけど元気でいてれくれるだけで嬉しいんだと思う。でも母親ってそうでもない。色々気にするよね。
水上:母って偉大ですよね。
上杉:だから母親が嫌だなと思うことはしたくない。
水上:自分が嫌なことは人にもしないですよね。
上杉:本当にそう!
──『八犬伝』でも共演されているお二人ですが、第一印象とその後のイメージをお聞かせください。
上杉:水上君は本当にストイックで頭がいい。役の向き合い方とか、この役ってこうだよねっていうのを言葉にするのが上手。僕は微妙な心情みたいなものを言葉にするのが苦手。でも自分が理解する上でも、周りに伝える上でも、考えていることを言語化できるって大事だと思っている。水上君はそれがすごい得意なんだろうなって感じていました。
『八犬伝』は陽気な方や遊び心のある人たちが多く、その中に僕らも入ってわちゃわちゃしていて。作品もファンタジーだったので、現場もなんでもありみたいな空気感でした。今回は桜という役もあって、水上君は自分の時間を作ったり自分の空気を大事にしていたと思う。僕も僕で、みんなよりも上の学年の役でしたし毎回現場にいるわけでもないので、少し距離を取っていましたが、それでも水上君にはなるべく話しかけるようにしていましたね。僕にとってあまり印象は変わらず、馬鹿を装っている頭のいい野球部っていう印象です(笑)。
水上:その通りって感じです(笑)。
僕の上杉柊平というイメージは、作品でご一緒した時のイメージでしかないんですけど、上杉さんをいじる人ってあまりいないなと感じていて。
上杉:確かにあまりいじられないかも。
水上:僕は、人はいじられなくなったら終わりだと思っている。僕もいじられるようになっていかないといけないですし、ある種の隙も見せていかないといけない。でも締める所は締めるっていうのは、上の立場の人間がやらないといけないと思うんです。僕は上杉さんのことをいじれるからこそ、上杉さんはその両方の要素をしっかり持っている方だなと思いました。誰しもが上杉柊平をいじろうとはしない。でもその空気を感じたからこそ、僕は上杉さんにとって生意気な後輩みたいな感じでいたいなと。
『八犬伝』が初めての共演でしたが、その舞台挨拶で上杉さんにお会いした時、この作品も「頼むぞ」って言ってもらって。気が引き締まりました。
上杉:そうだったね。
水上:僕は役者ってこうあるべきというのが自分の中にある。それが正解だとは思いませんが、上杉さんとは僕の思っているモノを共有できる人だと思っています。現場で役者同士の言語って違ったりするので、同じ言語を持つ人を1人でも見つけることができるのは救いになる。上杉さんがいる現場は純粋に楽しいですね。だから上杉さんがどんな梅宮を作るんだろうって楽しみでした。桜として全てをぶつける役だったので、役の関係性と同じように本気でぶつかることができるお兄さんというイメージです。
上杉:撮影が始まる前に、声を聞きたいというのもあり、僕と水上君と橘ことは役の八木莉可子さんだけで一度本読みをさせてもらったんです。それで監督の意見も聞いた上でこの作品をどう作っていくかっていうのを、水上君と二人で話しました。桜役で主演を務める水上君と最年長で梅宮を演じる僕の、振る舞い方や現場の空気をどう作っていこうかという話を撮影前にできたのは大きかった。それは『八犬伝』で共演していたから話せたことでもあるし、さっき水上君が言ったようにお互いの意思を組み取れる相手だったというのが僕にとってもありがたかったです。
──ルックの作り込みはどうされたのでしょうか。衣装や美術セットも含めて、気づかれた点を教えてください。
水上:桜は特徴的なヘアなので、撮影期間は帽子を被らないと移動できなかったり、1週間に1回ブリーチをしていたので髪もパサパサだったりと大変ではありました。でもそれは役者として当たり前だと思っています。それよりも、ヘアメイクや衣装、そして美術の方々によって作品が成り立っているということを伝えていきたい。一例挙げると、風鈴高校の制服の素材って綿で皺になりやすい。衣装部にとって皺って嫌なんです。だからといって化学繊維にしてしまうとコスプレっぽくなってしまうので、綿の方が良いんじゃないかと僕からも提案させていただきました。でも撮影はつながりが重要。さっきまでここに皺はなかったのになんであるんだろうって思われてしまうので、衣装の部数や番手を増やしたり衣装部の方々の苦労がたくさんあったと思います。観る方には、そういった裏の部分にも思いを巡らせてもらえたら嬉しいです。
上杉:美術も照明もすごかったので、そういうところも見どころです。役者として、その空間にいたから作り込める気持ちというのもあるので。いろんな方のおかげで作品を作り上げることができたと思います。
──最後に、風鈴高校の制服を着用された感想をお聞かせください。
水上:緑!って思いました。自分的には、もう学生役は厳しいのかなって思ったりもします。すみません、33歳の上杉さんを前にして言うのもなんですけど……(笑)。
上杉:またか、またか! でも朝現場に行くと、自分の椅子の前にだけ電気バリブラシが置いてあった(笑)。僕は、みんなが信じて自分に声をかけてくださっているので、その気持ちを信じて向き合いました。「大丈夫です、任せてください」っていう感じ(笑)。
水上:長ラン、格好良かったです!
上杉:アクション用に動きやすくしてくださっていたのも良かったです。みんなが制服を着て集まっているところを見ると、気持ちもぐっと上がりました。休憩のとき、みんな暑いから上着を脱いでインナーで過ごしているんですけど、撮影が始まるとなると一斉に上着を着だす。その瞬間が最高に格好良かったですね。
[取材・文/万木サエ 撮影/佐藤ポン]
作品情報
あらすじ
人も、街も、想いも、全てを守り抜く。
ケンカだけが取り柄の孤独な高校生・桜遥は、不良の巣窟と恐れられる風鈴高校のてっぺんをとるため、街の外からやってきた。そこで桜は、風鈴高校の生徒たちが<防風鈴=ウィンドブレイカー>と呼ばれ、街を守る存在へと変貌を遂げていたことを知る。桜は戸惑いながらも防風鈴のメンバーとして、楡井秋彦、蘇枋隼飛、杉下京太郎ら仲間と共に街を守るための闘いに身を投じていく。
そんな中、越えてはいけない一線を越えたことをきっかけに、力の絶対信仰を掲げ、最凶集団が、防風鈴を新たな標的として動き出していた…!「俺はひとりでてっぺんをとる」と言い放ち、周囲と衝突してばかりの桜だったが、ある時街に乗り込んできた獅子頭連に楡井を傷つけられてしまい…
キャスト
(C)にいさとる/講談社 (C)2025「WIND BREAKER」製作委員会


































