
劇中で描かれた姿を最大限追求。関節のない龍王丸にいかにして関節を入れていくか――「METAL ROBOT魂<SIDE MASHIN> 龍王丸」×「『魔神英雄伝ワタル』『魔神英雄伝ワタル2』コンプリート・サウンドトラック」コラボレーション対談【前編】
関節のない龍王丸にいかにして関節を入れていくか
ーー生地さんが挙げられた鳳龍剣のエフェクトパーツも映像をご覧になって「これだ!」といった発想に至ったのでしょうか?
加納:先ほどお話したように、これまでになかった要素の中から見つけたひとつですね。ただ、龍王丸の胸部はフォルムチックで太いから、そのままだと両手で剣を握ることができないんです。
ーー今回はそれが再現できると。
加納:攻めるならそういうところだなって。それで大きいエフェクトになるんですけど、新規に作ることにしました。
生地:これは間違いなく必要でしょう!
加納:そういうところも1話ずつ観返しつつ、様々なオモチャを手に取り、何があったら自分は嬉しいんだろう?と考えた上で付けさせていただきました。
ーー今、話題に出た「両手で剣を握る」など、劇中ポーズの再現には関節可動が不可欠ですが、どういった苦労がありましたか?
加納:設計チームは、これまでにも散々龍王丸に取り組んで来ていたので、最初に「このデフォルメチックなデザインに関節を入れるのは難しい」と、お話をいただいていたのですが、本当に何回も何回も細かい打ち合わせを重ねて擦り合わせていきました。単純に肩の引き出し式関節で解決するケースは割とあると思うんですけど、肩で数ミリ、腕で数ミリ、手首で数ミリと、これらを合わせた10数ミリでようやく腕を胸の前にまで持って行くことができました。
生地:すごーい!そうやって少しずつ可動域を稼いだわけですね。
加納:ええ。それこそコンマレベルで、少しずつご相談させていただき、最終的に「できる」となって試作品を見せてもらった際には僕自身も「うおっ、カッこいい!!」と思わず声をあげてしまいました(笑)。その過程が一番大変でもあったし、楽しかったところでもありますね。
ーーそこは8頭身のロボではない、デフォルメキャラの魔神ならではのご苦労があるわけですね。
生地:アニメ会社の人間が言うのもなんですけど、 普通はこの頭身で動くわけがないです(笑)。
加納:そもそもデザイン自体に関節がないんですよ。
生地:そうですよね。逆にそれがアニメの画力(えぢから)の面白さに繋がるわけです。
加納:デザイン画やアニメで描かれている体型が魅力なので、可動の都合で隙間が生じるのも避けたいと思いました。そういう意味でも数ミリ単位での調整が必要でした。
ーー確かに関節が露出して全体のバランスが悪くなるケースもありますよね。
加納:そうなんです。やっぱり関節がない龍王丸が素敵だと思っていて。関節を引き出し式にして可動範囲を確保したわけですが、逆にその過程で奥に入れ込んで関節が見えないようにしたのも拘った部分です。
生地:パッケージ側面の立ちポーズの写真も、同じポーズがアニメの作中にあるんですよ。本当に忠実に再現されていることが分かります。僕らがアニメを作る時も同じですけど、作る前から画(え)が頭に浮かんでいるのは強いですよ。
加納:ひとつのコンセプトとして、そこを目指して行けばズレることがない、とうことですね。機能はもちろんですけど、ビジュアルが立体物で再現されているのは何よりの強味です。
龍王丸ならではのダイキャストパーツの使い方
ーーブランドが「METAL ROBOT魂」なので、ダイキャストパーツをどこに使うかといった部分も検討されたかと思いますが、その辺りはいかがでしょうか?
加納:これが今、お話していた関節にも紐付くことで、上腕と肘を繋ぐための関節や肩の関節を引き出す際に、ABSと言われるプラスチック系の樹脂で数ミリの細かいパーツで機構を付けるとしたら、どうしても破損とか負荷がかかる懸念があります。ところがダイキャストだと剛性が出るので、そういった機構を入れるのに好都合なんです。もちろん、手に持った際のズッシリとしたお宝感も醍醐味としてはありますが、関節の機構を入れるために、ダイキャストパーツを各部分に散りばめたという部分もありました。
ーー単に重量感だけでなく、そういったメリットがあるわけですか。
生地:これによって遊んでいて、ボキッといきそうな心配がないわけですね。
加納:ダイキャストなら余程無理な力を入れなければ折れたりはしないので、カッコいい姿と関節の保持を両立して遊んでいただくことができます。
生地:しかも普通に考えたら爪や剣を合金にしそうじゃないですか。
加納:そうかもしれないですね。
生地:僕みたいな玩具の素人なら、つい金属を表に見せたくなるところを、実はけっこう目立たないところで使っている。しかも“ワタル”の難しいところはプラクションから来ているので、ユーザーはプラスチックの質感をイメージしている部分もあると思うので、必ずしも表に出す必要もないと思うんですよね。だけど、重量感は欲しい。いや、すごく考えて作られていますね。
加納:他にも接地面を安定させるために足先に使っていて、これもダイキャストならではの強みを生かした箇所になります。但し、今回のコンセプトは劇中の龍王丸に寄せることなので、塗装をしていて、ダイキャストそのものの質感は反映されていません。
生地:数ある商品の中でも、ここまで拘っているものはないんじゃないかな。しかも塗装しているから分からないけど、ダイキャストパーツを使っているのは足先のほうで、踵はプラなんですよね。
加納:これは比重の問題がありまして、足は変形させた際に翼にある部分で、カカトまでダイキャストにすると重量で垂れ下がる懸念もあるので、ユーザーが触って嬉しい質感と遊んでいる際の保持力を考慮しました。
ーー塗装の話も出ましたが、全体の塗装についてはいかがですか?
加納:他の魔神は創界山の工房で作られている設定ですが、龍王丸は粘土から作られた龍神丸の姿形が変わった設定なんですよね。
生地:メカなのかオカルトなのか(笑)。
加納:たとえば、胸部の側面に勾玉の意匠がありますが、そこは陶器のような表現が相応しいと思うのでグロス、頭部は変身する際のキラキラした反射が印象的なので、それをイメージしてトップはクリアを吹いたり、その部位ごとに分解して方法論を探していきました。シンプルに「立体物はメッキにしてキラキラさせたら映えるよね」みたいな考え方もあるんですけど、そうではなく、「ワタルの世界に存在する龍王丸はこういったものだったんじゃないか?」と。
生地:考古学の世界ですね(笑)。
加納:アニメに寄せるためにも、設定から逆算して塗装方法を決めるのが大事だと思っています。
ーーどういう塗装をしたら目指すイメージに近付けられるか、という苦労もあったのではないでしょうか?
加納:擬音を交えてお話させていただきますが、拘ったところとしては頭部や肩の爪のテリッとしているところでしょうか。とにかく“テリテリ”させたかった(笑)。それもクリアの薄い膜でテリッとさせるのと、そもそものテリッとした質感は違うと思っていて、今回は他の製品ではあまりやらない手法を使ってみました。要はレジン塗装みたいなことで、表面に専用塗料を塗って専用の機材で紫外線を照射することで短時間で塗膜を硬化させる方法を用いております。キズや汚れが付き難く、環境面でも利点があり、ちょっと厚めのクリアの膜ができるんです。コスト度外視ではあったのですが、やった甲斐があってクリア塗装とはまた違った質感になりました。
生地:そこは社内的にもけっこう大変なところではないですか?
加納:「これをする必要はあるの?」とは言われましたが(笑)、メッキとは違う輝きを感じてもらえると思います。
生地:変形して、鳳凰形態の首まで動くんですよ!これも驚きですね。
加納:やっぱりあのバンクシーン(アニメ本編で繰り返し使われるシーン。搭乗、必殺技など)が素敵で、是非再現できるようにしたかったんです。
生地:印象に残るポーズは全部できるということですね。
加納:難易度の高いポーズもありますが、逆にそれをやるのも楽しいところだと思います。














































