
文庫部門6位は『よう実』、『青ブタ』と同じ! 新作文庫部門第3位このライトノベルがすごい!2026受賞作『よって、初恋は証明された。-デルタとガンマの理学部ノート-』の魅力についてじっくり紹介します
『よって、初恋は証明された。-デルタとガンマの理学部ノート-』の作品の魅力
理系用語を使ったやりとりが面白い!
『よって、初恋は証明された。-デルタとガンマの理学部ノート-』の舞台が理系に力を入れている高校で、科学が好きな高校生たちの話でもあるので、理系用語がたくさん登場。これらの理系用語によって、「理系!」という空気感が作品全体に強く漂っています。
また、理系用語が大げさな表現に思えたり、厨二病っぽい語感に思えたり。「それどんな意味だよ!」とついつい心の中でツッコミをいれながら、どんな意味かググってしまう……かといって、ちょっと頭が良くなったようでなってない瞬間でもあるという。理系用語が醸し出す独特の雰囲気が、登場人物たちのやりとりを豊かにする要素にもなっています。
例えば、岩間が出田の弁当箱に入っているミニトマトをみて、「すごい!最密充填構造だ!」とつぶやくシーン。
読んでいる側は、「最密充填構造ってなんだよ! どんな構造やねん! ロボットアニメに出てきそうな構造だな! ググってみたら、まあ、なるほど……ミニトマトが隙間なくぎっしり並んでいるってことね。どんな例えやねん! 大げさすぎるやろ!(笑)」と楽しみながら読み進んでいけます。
他には、こんなシーンも。
出田たちは化学部の部活見学中。水崎が本郷先輩(女性・化学部員)に対して、「へー先輩、彼氏いるんですか?」と質問。それに対して本郷先輩が「超イケメンでめちゃラブなの! 彼氏大好きだから。もうクロスカップリングしまくりで」といい、水崎が「結合するんですか!?」というと、本郷先輩が「二重結合しちゃったりしてね」と返答。それに対して水崎が「π(パイ)結合まで!?」と化学用語を使いながら、テンポの良い掛け合い。
「どんだけ結合するんだよ! めちゃラブカップルとか、リア充爆発しろよ! ラブラブカップルの例えに、化学用語使うとかおもろい!」と、読み手は思うでしょう。
水崎と本郷先輩のあんぽんたんなやりとりを楽しんでもらう手段に、理系用語が用いられているのも巧みな表現です。
まるで数学の証明問題を解いているかのような伏線回収
『よって、初恋は証明された。-デルタとガンマの理学部ノート-』の作中には、ストーリーの大きな核心へとつながるいくつもの「小さな伏線」が張り巡らされています。
実は、冒頭のストーリー紹介で触れていた“出田がなぜか気づく「疑問」や「違和感」の謎”を解くことで、ストーリーの核心へとつながる小さな伏線を知ることができます。
まるで、小さな事実や根拠を積み重ね、大きな事実を導き出す数学の証明問題を解いているかのような爽快感ある謎解き。
この点が、「青春ミステリー小説」として高く評価され、「このライトノベルがすごい!2026」で、新作文庫部門3位、文庫部門6位の受賞へとつながったのだと思えてなりません。
とても秀逸なミステリーの謎解きです。
ここからは、作中の多くの小さな伏線の中から、1つピックアップしてご紹介していきましょう。
【小さな伏線】
「学校の裏山の夫婦桜2本が桜の花をつける時、ハートマークを作る。それを見た男女は必ず結ばれる」
この話を信頼できる先輩から聞いた水崎。さらに、「今年はハートマークを見た人が誰もいない」ということも出田に話します。話を聞いた出田は疑問に思い、水崎と一緒に桜の木のハートマークを確かめにいくことに。
その後、水崎の策略(?)で、水崎とではなく、出田は岩間と2人でその桜を見に行くことになってしまいます。桜の木までの道中、すれ違った上級生と思われるカップルから、「マジ期待はずれ」「この冬は風が強かったからな」と、暗にハートマークが見られないかのようなことを聞かされる2人。しかも、水崎曰く、「超人気スポット」のはずなのに、このカップル以外、誰ともすれ違わないことに、出田は気付きます。
桜が見られる場所に到着した2人。この場所は、桜だけでなく、あたり一面、カタクリの花も咲いています。ハートマークが見られる場所の目印となっている台の上に出田たちが立っても、ハートマークは見られません。
なぜ、今年はハートマークが見られないのか。出田が科学の知識を駆使して、推理していきます。
「カタクリの花は、約8年間、春先にだけ光合成をして養分を蓄える必要がある。去年まではハートマークが見られたわけだし、ハートマークが見られた場所には、毎年目印の台が置いてあったはず。もしも台がカタクリの上にあったのなら、台があった場所では今年もカタクリの花が咲かないのでは。カタクリが一面咲いているところで、1箇所カタクリが咲いていない場所。そこがハートマークが見られる本当の場所だ」と。
周りを見渡すと、1箇所だけ、カタクリの花が咲いていない場所がありました。出田たちがそこから桜の木を見ると、ハートマークが今年も見られたのでした。
ここまでの展開で、本作の核心へと迫る伏線がありましたが、気づかれた方はいますでしょうか。
まずは、水崎にハートマークの桜の話を教えた信頼できる先輩は誰なのかという点です。
実はこの信頼できる先輩は、生徒会副会長である本郷先輩だったのです。
ではなぜ、この話を本郷先輩は水崎に話したのか。
それは、出田と岩間を仲良くさせることが目的だったとのこと。さらに、桜の木を見にいく途中で連れ違った上級生と思われるカップルは、本郷先輩と彼氏の御影先輩だったのです。
誰ともすれ違わないと、出田と岩間が途中で引き返してしまうのではと危惧して、裏工作していたということがのちに語られていきます。
ではなぜ、本郷先輩は出田と岩間を仲良くさせたかったのか。
出田たちが気づいてしまった【小さな真実】の正体。
それは、「理系教育に評判がある綱長井高校の伝統や理系の部活を守るために、人気がなくなってしまった生物部に、優秀な新入生を入部させて理系の部活のパワーバランスを整え、盛り返していこう」という学校の生徒会による裏工作だったのです。
高校生活の当たり前の出来事が、「自分ではない他人によって操作されていたら」と考えたことがある人はあまりいないでしょう。きっと、「そんなのは嫌だ! 高校生活くらい、自分で好きに過ごさせてくれ!」と思うかたが多いのではないでしょうか。
ですが、出田たちの高校生活は、「他人によって操作された高校生活」として始まっていくのです。
生徒会の策略や思惑に対して、出田たちはどのように対峙していくのか。
ここから先の物語は、終盤の山場になっているので、ここでは語りません。
是非、『よって、初恋は証明された。-デルタとガンマの理学部ノート-』をお手に取って、あなたの目で出田たちの決断を確認してみてください。
【まとめ】理系が舞台の青春ミステリーを濃厚に味わえる『よって、初恋は証明された。-デルタとガンマの理学部ノート-』
高校生活というありふれた日常の中に多くの「疑問」や「違和感」を見つけ出し、その正体を理系の知識を駆使しながら謎解きをしていく『よって、初恋は証明された。-デルタとガンマの理学部ノート-』。
きっと、本作を読みながら、登場人物たちの理系用語盛りだくさんのテンポ良いやりとりを楽しみつつ、出田たちと一緒になって、高校生活の中のちょっとした「疑問」や「違和感」の謎を解こうとしてしまうこと間違いなしです。
タイトルの『よって、初恋は証明された』という言葉の意味も、本作を最初から最後まで読んでいくと、あ、そういうこと?と謎解きできるはず。
出田たちの高校生活の行方や初恋はどのように証明されていくのか。
読まれたかたは、出田たちの青春の行方が気になって、2巻もすぐに買いに行ってしまうと思います!
逆井卓馬先生、遠坂あさぎ先生、入賞おめでとうございます。
[文/田島 悠]













































