
神のようでいて、神でない。世界を俯瞰する“天元”という存在――TVアニメ『呪術廻戦』第3期「死滅回游 前編」連載インタビュー第5回:天元役・榊󠄀原良子さん
学びながら演じる
ーー演じるにあたって事前に準備されたことや、現場でのスタッフからのディレクションで印象に残っていることがあれば教えてください。
榊󠄀原:オーディションに受かった際、「最初はナレーションです」と言われたんですけど、それでも「これは私の語りではなく、天元の語りでなければいけない」と思っていました。
ーーなるほど。
榊󠄀原:だから、まず天元の人格を作らなきゃいけないなと。ナレーションをしている間も、ずっとそれを考えていました。特に「最初の一言をどう出すか」というのは、2年くらい考えていましたね。
そんな中で、ふと思い出したことがあります。2002年か2003年頃、母が癌を患ったことがあって、その時にいろいろ勉強してみたんですよ。免疫グロブリン、マクロファージ、好中球とか。
ーー人間の免疫機能ですね。
榊󠄀原:そうです。それが「どこから出てくるか」は分かっているけれど、「どうやって出てくるか」は当時よく分かっていなかった。
でも、その様子を映像で見たことがあるんですよ。普通は、じくじく出てくるように想像するじゃないですか。ところが、その映像では、一瞬で「ぽっ」と出てきたんです。瞬きをしたら見逃すくらいの一瞬で。それを思い出して、「あ、この出方だな」って。
ーーそれが天元様の初登場シーンに繋がるわけですね。
榊󠄀原:真っ白なところから、突然ぽっと現れる。「この出方で行こう」と思ったんです。自然の中で起きていることを、どこかで覚えておくと、思いがけないところで役に立つんですよね。
ーー演技とはあまり関係が無さそうに思える瞬間です。
榊󠄀原:例えば、野菜炒めを作ったあと、鍋を洗ってそのままにしておくと錆びたりするから水を切るじゃないですか。最後の水滴が蒸発する、その瞬間の感じから声をイメージする、みたいなこともあります。
感覚的なものって、説明するのは難しいですよね。論理的には作れないからこそ、そういう感覚を蓄積しておいて、声の演技の時に何となく「あ、これだ」「あれだ」って思い出す。それが、自分の中で定着していくんだと思います。
ーー続いてナレーションの部分についてお伺いできればと思います。
榊󠄀原:とにかく「天元の語りである」という部分ですね。物理的なこと、科学的なことなど、難しい説明をしているので、自分の中にひとつのイメージができていないと、逆に伝わらないんです。
なので、物理学や宇宙論を少し勉強しました。たまたま科学雑誌を定期購読していたので、それを読み漁るような感じで。それに、科学雑誌って綺麗な写真がたくさん載っているじゃないですか。あれがまた刺激になるので、そこからイメージを膨らませていました。
ーー他作品やキャラクターではなく、別の領域からイメージを持ってくるのですね。
榊󠄀原:文字だけが頭に浮かぶ状態だと、自分の中で感覚的に理解できていないので、すっと通り過ぎてしまう感じになってしまうんです。雑誌などから学んだことを現実に置き換えてみて、「ああ、こういう現象なんだな」と考えながらやっていました。
芥見下々先生の作品って、先生ご本人がすごく緻密というか、調べていらっしゃるじゃないですか。だから、言葉だけで理解するのは、逆に失礼だと思ったんです。
例えば量子論なんて「どうしてそんなことが分かるの?」って思いますよね。でも、映像やビジュアルで見せられると、言葉だけよりもイメージは掴める。だから、そういうものに頼る部分はありました。












































