
全25曲で描く、第1章から第3章までの物語。声優・秋奈を迎えた新曲「Not Enough」とともに紡がれる、今夜、あの街からの集大成1st ALBUM『NOT ENOUGH』インタビュー
物語を音楽で紡ぐ“今夜、あの街から”が、初のフルアルバム『NOT ENOUGH』を完成させた。
“今夜、あの街から”、通称・ヨルマチは、ボカロPのNora(ノラ)を中心に結成されたネット発の音楽ユニット。作品ごとにテーマに合った女性ボーカルを招いて、ノラとレイラとして、デュエット形式で歌唱するのが特徴となっている。
2021年のユニット立ち上がりから現在に至るまでの楽曲群を収録した本作には、TVアニメ『名探偵コナン』エンディングテーマ「クウフク(starring VALSHE)」をはじめ、アニメ、ドラマ、バラエティ番組など幅広いフィールドで発表してきた楽曲、声優・秋奈さんを迎えたアルバムと同名の新曲、Nora名義のソロ作品を含む全25曲を収録。さらに初回盤には、「クウフク」の未発表別バージョンや、橋爪駿輝氏による書き下ろし短編小説「この街からはじめる」などの特典も付属と、これだけの“フルコース”を揃えながらも、タイトルは『NOT ENOUGH』──まだ足りない。その矛盾にも感じる言葉に、この物語、いわば、“今夜、あの街から”の核が潜んでいる。超ロングインタビューにて、『NOT ENOUGH』を紐解いていく。
4年間を綴った“1冊の本”としてのアルバム
──改めてこのアルバムに向かうまでの期間を振り返ってみていかがですか。
Noraさん(以下、Nora):アルバムを作る、という意識で動き出してからだと、半年から1年くらいだったと思います。ただ、今回のアルバムって、いわゆる“普通のアルバム”といいつつも、その実、ベストアルバムに近いんですよね。というのも、2021年から今までの約4年間に作ってきた楽曲がすべて詰まっているので、実質的な制作期間は4年だったのかなと思っています。かなり長い時間をかけて作らせてもらいました。
──もしかしたら、Noraさんの生きてきた26年分とも言えるかもしれないですね。
Nora:あ、確かに。そう考えるとそうですね。僕自身の26年間で培ってきた価値観とか、感じてきたこと、作りたかったものが、1枚にぎゅっと圧縮されたアルバムになっていると思います。
もともと、アーティスト活動を始めたときから「アルバムはいつか必ず出すもの」だと思っていて。いざアルバムを作るとなったときに、絶対にやりたいと決めていたことがひとつありました。今夜、あの街からというユニットは、“音楽で物語を進めていく”“小説を進めていく”というコンセプトで活動していて、1曲1曲にもストーリーがあるし、曲を重ねていくこと自体にも物語があるんです。だからアルバムを出すなら、それが“1冊の本”になるようなものにしたい、というのはずっと考えていました。アルバムタイトルが、そのまま小説のタイトルになるようなイメージですね。CDなんだけど、手に取った感覚はまるで本、という作品にしたいという思いは、活動を始めた頃から考えていたことでした。
──だからこそ、分厚くしたかった?
Nora:自分がずっと待ちわびていた作家さんの新作小説が出たとして、それがすごく薄かったら、ちょっとショックじゃないですか(笑)。それと同じで、小説として出すからには、しっかりしたボリュームを持たせたかったところもあって。4年間も活動しているので、正直アルバムを出そうと思えば、これまでにもタイミングはあったのですが……でも、CDの収録時間って上限に限りなく近いボリュームができたときに出したい、という気持ちがずっとありました。だから、このタイミングになりました。
──たくさんの短編が収録された短編集でもあり、同時に長編小説でもあるような。その充実作のタイトルが『NOT ENOUGH(まだ足りない)』というのも面白いですね。
Nora:「NOT ENOUGH」は、「クウフク」 (starring VALSHE)というテーマの延長線上にある言葉でもあって。満たされているのに、足りない。むしろ、満たされているからこそ、まだ足りないと感じてしまう……その感覚が、ずっと根底にあるんですよね。アルバム自体もボリュームもあるし、参加してくれているアーティストも含めて、すごく豪華な内容になっています。でも、それを全部聴き終わったあとに、「それでもまだ足りないな」って思ってもらえたらいいなと思って、このタイトルをつけました。
──作品世界にとどまらず、Noraさん自身の価値観や生き方にも深くつながっているんですね。
Nora:そうですね。物理的に何かが足りないわけじゃないんですよね。たぶん、僕たちって本当は幸せなはずなんです。生きていく中で恵まれている部分も多いし、僕自身もたくさんの愛をもらって育ってきましたし、不自由なく生きてきたので、幸せなはずなんですが……それでも、どこか満たされない、足りないと感じてしまう。その感覚自体が、人間らしさなのかもしれないなと思っています。きっとこれは、誰にとっても共通する感覚なんじゃないかなと。今夜、あの街からの世界観をひとつにまとめた“本”としてふさわしいタイトルとして、総括というほど大げさではないですが、この名前をつけました。
──作っても作ってもどこか満たされない、というアーティストとしての感覚とも重なりそうですが、そこはどうですか。
Nora:そうですね。1曲作り上げた瞬間は、もちろん達成感がありますし、「これは名作できたな」って毎回思うんです(笑)。イントロを聴いて「これは勝ったな」って。でも、1ヶ月もすると、「もっとできたよな」「まだ足んねぇな」って思ってしまうので……その感覚は、僕自身が音楽活動や制作をする中でずっと抱いてきたものでもあって。だからこのアルバムタイトルは、自分の音楽人生そのものともリンクしている気がします。
ただ、実は僕、曲作りってすごく苦しいタイプなんです。もともと僕は歌手になりたくて、そのために「曲を作らなきゃいけない」というところから始まった活動なんですよね。だから完成した瞬間は、達成感もあるし、「作ってよかったな」って毎回思うんですけど、その瞬間に、作っている最中の苦しさは全部忘れちゃうんですけど、そこに至るまでが本当に苦しい。結構ひいひい言いながら作っているので、よくこれを25回も乗り越えたなと、今はちょっと自分を褒めてあげたい気分です。
──毎回、生みの苦しみがあるんですね。
Nora:そうですね。すんなり曲が作れた試しは、正直一度もないです。自分をさらけ出すのが苦手な人間なんですよ。歌詞にするってことは、心の中をそのまま見せることになるじゃないですか。もう、心臓をむき出しにする感覚というか。それに対する抵抗が、ずっとあるんだと思います。まあ、だから、ちょっとひねくれた書き方をしたり、遠回しな表現になったりもするんですけども(苦笑)。それでも少しずつ、自分なりに向き合ってきた4年間だったのかなと思います。
──以前お話を伺ったとき、大学時代がちょうどコロナ禍だったとおっしゃっていましたが、そういった背景とも関係しているのでしょうか。
Nora:めちゃくちゃ関係しています。僕の音楽活動において、コロナ禍って本当に大きな存在で。良くも悪くも、すごく影響の大きい出来事でした。そもそも“今夜、あの街から”というユニット自体が、世界がコロナ禍に入って、外出が制限されて、どこか閉塞感を感じる中で生まれたものなんです。
僕自身もともと引きこもり気質なので、「外出禁止でも平気かな」と思っていたんですけど、それでもやっぱり、どこか息苦しさがあって。ふらっと抜け出したい、逃げ出したい、別の街に行きたい……そんな気持ちがあって、その閉塞感をどうにかしたいと思って始めたのが、このユニットだったので、影響は本当に大きいですね。コロナ禍の前後で自分の作る曲の雰囲気も、感覚も、結構変わったと思います。
──本作の曲を聴いていても感じていたのですが、最近の曲になるにつれてライブ感が増しているように感じました。
Nora:確かに、ライブで楽しい曲、というのは意識するようになりましたね。それと昔に比べて、心が少し開放的になった気がします。最初の頃は、とにかく苦しいとか、逃げたいとか、そういう感情をそのまま歌っていたんですけど、最近は、その先にあるものが、なんとなく見えてきた感じがしています。
レイラがレイラである理由
──物語の中のノラと実際のNoraさんご自身は、やはりリンクしている部分があるのでしょうか。
Nora:めちゃくちゃリンクしていると思います。物語の中のノラと一緒に、僕自身も成長してきた感覚があって。それがコロナ禍明けによるものなのか、単純に年齢を重ねたことによるものなのかは分からないですけど、少なくともこの4年間で、考え方が変わったり、いろいろなことに気づいたりはしました。
──その中で、特に「ここは成長したな」「変わったな」と感じる部分はありますか。
Nora:なんだろう、うーん……でも、より客観的に自分を見られるようになった、というのはあるかもしれないです。昔の歌詞は、ただ嘆いているだけだったものが多かったと思うんですけど、最近はそこに、自分なりの答えを足せるようになった気がしています。当時は、「なんとなく苦しい」「なんとなく嫌だ」という感覚がすごく多くて。でも、その感覚って、同じ世代の人たちもみんな持っていたと思うんですよね。だからこそ共感してもらえた部分もあったと思うんですけど、最近は、そこから一歩踏み込んで、自分なりの答えを書けるようになってきた気がします。
──コロナ禍という時間そのものは、すごく大きな出来事だったなと感じます。本当に厳しい現実があった時期でした。その一方、自粛期間については日常が断ち切られたせいか、振り返ると記憶の中で現実感が薄れているように感じる瞬間もあるんですよね……。
Nora:分かります。今こうして乗り越えてみると、なおさら不思議な時間だったなと感じます。それこそ、僕が『名探偵コナン』のエンディングテーマとして書かせていただいた「クウフク」は、僕自身がコロナを患わなかったら、できなかった曲なんです。
──そうだったんですか。初めて伺ったかもしれません。
Nora:当時は言って良いのかわからない時期だったんですよね。「クウフク」〈フルコースだって味がしないようで〉という歌詞があるんですけど、あれは、実際に僕がコロナにかかって、何を食べても本当に味がしなかった体験が元になっています。喉も痛いから、食べられるものを食べるんですけど、大好きなプリンですら味がしない。お腹はいっぱいになるのに、心が全然満たされない。その感覚が、「満たされているのに満たされない」という感覚とすごく似ているなと思ったんです。
それを「I’m hungry=空腹」に重ねて書いたのが、「クウフク」でした。そう考えると、今夜、あの街からにとっても、コロナ禍はなくてはならない時間だったのかもしれないなと、後から思うこともあります。
──この話を聞いたうえで、改めて曲を聴くと、また違った感情になりそうです。
Nora:歌詞もあわせて見てもらえると、また違うイメージが広がるんじゃないかなと思います。
──「クウフク」は、Noraさんの活動の中でも一つの転機になった楽曲だと思います。あらためてご自身にとってどんな存在でしょうか。
Nora:自分の中では、やはり一番の代表曲だと思っています。とにかく『名探偵コナン』には感謝しかないですね。その機会がなければ生まれなかった曲なので。少し話がずれるかもしれないんですけど、僕自身、「クリエイターが作る音楽って、それ単体では無価値なんじゃないか」って思っているところがあって。
つまり、僕らが作り出す音楽自体は、ただの“音”で。だけど、そこに、歌う人の人生が乗っかって、さらに聴く人が「好き」「嫌い」と感じる価値観が乗っかる。そこに加えて、『コナン』みたいな作品の文脈が重なって、いろいろな価値が積み重なった結果として、音楽になるんじゃないかなって。ある意味、ブランドもそうだと思うんですよ。服だって、それを好きだと思う人がいなければ、ただの布ですから。
そういう意味では、「クウフク」は、僕の音楽に“価値をつけてくれた”曲なんですよね。だからこそ、コナンにも、そこから知ってくれたリスナーの方たちにも、本当に感謝しています。僕にとって、とてもありがたい1曲です。
──その価値を作る要素として、やはりレイラたちの存在も大きいですか?
Nora:間違いないですね。歌う人の人生って、本当に大きな要素だと思います。
──「クウフク」ではVALSHEさんがレイラを務めましたが、改めて、VALSHEさんはNoraさんの中でどんな存在なのでしょうか。
Nora:もともとずっと憧れていたアーティストさんですし、それは今も変わらないですね。僕自身、本当に大好きで、ずっと聴いてきた方なので、そこは揺るぎないです。今でも、正直ずっと雲の上の存在ではあるんですけど……でも、本当に感謝しています。デビューしたてで、右も左も分からない自分に、「クウフク」のとき、すごく力を貸してくださった方なので。勝手な言い方ですけど、「姉さん」みたいな存在だなと思っています。
本日まで #名探偵コナン ED「クウフク(starring VALSHE)」を楽しんで下さった皆様、ありがとうございました!
— VALSHE (@valshe9) June 17, 2023
ノラ君との制作から歌唱までご一緒する事が出来たこと、再び名探偵コナン楽曲を担当する事が出来たこととても嬉しかったです。
EDが終わっても変わらずベル推しで生きていきます、感謝🤝 https://t.co/kN9veG3qP1
──性格的にも、すごく頼もしい方ですものね。アルバム全体を見ると、いろいろな“レイラ”が登場しますよね。一貫性はありつつも、表情はさまざまで。キャスティングの際に意識していることはありますか。
Nora:基本的には、もう直感ですね。僕の好みというか……。レイラというキャラクター像として芯の強い女性」というのは大きなテーマとして持っているんですけど、それにさえ沿っていれば、どんなレイラがいてもいいと思っています。そこから先は、純粋に「魅力的だな」と思う方に声をかけている感じですね。
最近気づいたんですけど、声は可愛らしかったり、無邪気な印象があったりするのに、歌い回しがすごくかっこいいとか、内側に芯の強さを持っている人に、自分は惹かれているんだなって。
──どうしてなんでしょうね……?
Nora:どうなんでしょうね。レイラ像にマッチするのが、結果的にそういう人たちなんだと思います。たぶん僕自身が、「ノラくんを支えてくれる人であってほしい」と無意識に思い描いている像が、そういうタイプなのかな、と感じたりします。シンプルに言うと、「好きな声」なんですよね。包み隠さずに言えば、もうただのファンです。
──そういう意味では、今回の新曲「Not Enough (starring 秋奈)」は秋奈さんが本当にぴったりだなと。可愛くて、可憐で、芯があって。
Nora:秋奈さんも、シンプルにファンなんです。このユニットを始めたときに、「毎回違う人とゲストで組んでいく」というコンセプトを決めたんですけど、そのときスタッフさんと「最初に誰と組みたいか」という話をしていて。そのときに名前を挙げていた方のひとりが、秋奈さんでした。だから、ユニットを始めた当初から、「いつか秋奈さんには声をかけたい」とずっと思っていました。
──念願かなってだったんですね。
Nora:はい。
このアルバムのタイミングは、自分にとっても一番大事な節目だと思っていて。だからこそ、今夜、あの街からの大きなテーマソングくらいのつもりで新曲を作って、「ここぞ」というタイミングで、秋奈さんにお声がけしました。
















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