音楽
今夜、あの街から 1st ALBUM『NOT ENOUGH』インタビュー

全25曲で描く、第1章から第3章までの物語。声優・秋奈を迎えた新曲「Not Enough」とともに紡がれる、今夜、あの街からの集大成1st ALBUM『NOT ENOUGH』インタビュー

 

新曲「Not Enough (starring 秋奈)」は攻めたラブソング

──新曲「Not Enough (starring 秋奈)」の制作について聞かせてください。

Nora:アレンジも含めて、かなりこだわりましたね。今回の「Not Enough」は、「クウフク」をかなり意識して書いています。「クウフク」は、食べても足りない、満たされているのに満たされない、その感覚自体が苦しい、という曲でした。ただ、その時点では、その気持ちの正体が自分でもよく分かっていなかった。解像度も高くなかったんです。それでも、その苦しさを抱えながら、「じゃあ、その正体を探すために生きていこう」というのが「クウフク」でした。そこからもう一歩踏み込んで、「じゃあ、そのクウフクの原因は何なんだ?」と考えたときに出てきたのが、「あなたがいない」「〈ただ、君が欲しいだけ〉」という答えだったんですよね。そこに一歩踏み込んだ、少し大人になった先の視点が、「Not Enough」なのかなと今は思っています。だから意外とラブソングなんです。

 

 

──これまでとは、明らかに違いますよね。

Nora:そうですね。自分なりに、かなり攻めたラブソングで。制作しているときは、「プロポーズ」ってタイトルをつけてもいいかも、と思ったくらいでした。僕なりの恋愛観というか、告白の曲だと思っています。

──秋奈さんには、「こういうふうに歌ってほしい」というイメージはお伝えしたんですか。

Nora:レコーディングには立ち会わせていただいて、僕自身でディレクションもさせてもらいました。「こういう方向で行きたい」という大枠は共有しましたけど、ガチガチに固めることはしなかったですね。現場では方向性だけ共有して、あとはお任せする形でした。

そもそも、僕が秋奈さんを知ったきっかけが『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』だったんです。たくさんキャラクターがいる中で、一番好きだったのが小豆沢 こはねちゃんで。初期の★4が出るまで、かなりつぎ込んだくらい好きでした(笑)。そこで、秋奈さんの「可愛らしい声の中に芯がある」「意思の強さを感じる」部分にすごく惹かれていたんです。秋奈さんの声って不思議なんですよね。しっかり大人びているのに、どこか少女みたいな無邪気さもある。その両面を持っているところが、本当に魅力的だと思っています。おこがましいですけど、その魅力をどう引き出せるか、ということはすごく考えながら、僕なりにディレクションさせていただきました。

──プロデューサーとしての側面も、かなり出ていますよね。

Nora:今夜、あの街からは、プロデューサー的な役割も含めて、全部自分でやるユニットなので。そこは自分のこだわりと言っていいのかな、と思っています。

──初回限定生産盤には「Not Enough」のあとに、ボーナストラックとして「クウフク-another version “Second Bite”-」が収録されています。少しジャジーで大人っぽいアレンジがすごく似合っているなと感じました。

Nora:ありがとうございます。自分なりに“大人っぽい”をしっかり出したくて、あえてキーを下げたり、テンポを落としたり、ジャジーなアレンジにしているので。
そこはぜひ、ギャップを感じてほしいところですね。

 

曲を追うごとに大人になっていく

──SEからデビュー曲の「ショウニントウソウ(starring Enel;)」ではじまり、新曲「Not Enough」で締めくくられる、時系列順の曲構成になっていますが、曲順はどのように決めていったのでしょうか。

Nora:“あえてアルバム用に曲順を組み直すことはせず、基本的にはリリース順に並べています。2021年の始まりから、現在に至るまでを、ほぼ時系列で追える構成ですね。物語としては、第一章・第二章・第三章、そしてボーナストラック、という章立てにしています。SEが入っているところで章が切り替わる、と覚えてもらえると分かりやすいと思います。このSEは、すべてライブ用に作ったものが元になっているので、ファンの方は「ライブ会場で聴いたことがある曲だ」と感じてもらえると思います。

 

 

──それぞれの章をNoraさんご自身はどんな物語だと感じていますか。

Nora:第一章は、「何かわからないけど、何かを成したい」「理由ははっきりしないけど苦しい」「変えたい」という感情を探している段階だと思っています。自分が住んでいる街に対して、「これってどうなんだろう」と疑問や不満を持ち始めて、その気持ちを持ったまま、外の世界に旅に出るのが第二章。今までいた街以外の世界を知っていくフェーズです。そして第三章は、その経験を持って、もう一度その街に戻ってくる。聴いていくにつれて、だんだん“大人になっていく”感覚があると思います。

──TVアニメ『レベル1だけどユニークスキルで最強です』オープニングテーマを飾った「Chase Me」をはじめ、さまざまなタイアップ曲も含まれているにも関わらず、時系列で並べるとちゃんと物語として成立しているのがすごいですよね。

 



 
Nora:タイアップをいただいた以上、その作品にとって一番いい結果をもたらす曲を書くというのは、僕ら作曲家の使命と言いますか、役割だと思っています。その上で、自分たちの物語としてもちゃんと前に進めるように曲を作る。そこは毎回、かなり工夫しています。インタビューでは「専門技術です」みたいに言うこともありますけど(笑)。でも実のところ、まず自分の物語と、タイアップ作品の世界観との“共通点”を探すところから始めているんです。だから、特別なことをしているわけではないですけど、自分たちの物語と、タイアップ先の物語、そのどちらにも齟齬がなく、どちらにとってもいい結果になるように、そこはすごく気を使っています。

──それにしてもタイアップ先もまた幅広いですよね。『名探偵コナン』から『あざとくて何が悪いの?』、さらには『秋山ロケの地図』、ドラマ『オトナの授業』『きみの継ぐ香りは』、『musicるTV』……。

Nora:本当にありがたいことです。基本的な作り方はずっと同じです。アニメなのか、ドラマなのか、番組なのか、その違いはありますけど、「その作品にとって何が一番大事か」と、「自分の物語の中で大事にしているもの」は何かを考えて、そこから共通点を探して落とし込んでいく、という作業をしているだけなので、特別にやり方を変えている感覚はないですね。

 

情熱はそのままに、音楽を“更新”する

──今回のアルバムの中で挑戦した曲というと?

Nora:全体的な話にはなるんですけど、今回のアルバムは4年間の作品がすべて入っているので、21歳、学生時代の僕が作った曲と、26歳の今の僕が作った曲が、同じディスクの中に共存しているんですよね。当然、技術も違うし、4年もあれば考え方や哲学的な部分も変わっていくので……その状態で、1枚のアルバムとして音作りや思想の整合性を取る、というのが、すごく難しかったなと思っています。

それこそ、最初の頃の曲って、正直サウンドがチープなんです。ギターも打ち込みのままで、演奏者さんに弾き直してもらっていない。DTMで打ち込んだ音源を、そのまま使って出していたりするので。でも当時は、YOASOBIさんの台頭や、ボカロに注目が集まっていた時期でもあって、いわゆる商業的な音とは違う表現が、自然と受け取られやすい空気があったと思っていて。僕自身も、「お金のためにやるJ-POPなんてクソだ」みたいな、今思えばかなり青い考え方をしていました(笑)。

 

 

──でも、その初心はすごく大事な部分ですよね。

Nora:そうなんですよね。本当に「好き」だけで作っていて、背伸びしない等身大の音を出す、ということに、当時なりの哲学があったと思っています。チープなサウンドだからこそ、情熱が乗る、という考え方も、今でも間違いじゃないと思っています。ただ、今はしっかり演奏したり、より芸術作品として音楽を突き詰めるようになっているので、サウンドだけで聴き比べると、どうしても差が出てしまう。アルバムとして一気に聴いたときに、耳障りが良くないなと感じてしまう部分も、正直ありました。

実際、アルバムを作るにあたって、事務所のスタッフさんから「クオリティが低いから、最初の曲は入れないほうがいいんじゃないか」と言われたくらいで(笑)。
それほど、聴き比べたときの整合性が取れていないのも事実だったんですよね。

だから今回、いちばん注力したのは、その4年分のギャップや哲学の違いを、どうやって1枚のアルバムとしてきれいにまとめるか、という部分でした。それで具体的には、「-reconnect-」が付いている楽曲はアレンジをし直していますし、初期の楽曲は、ほとんどすべてミックスをやり直しています。初期の頃の熱量や哲学はそのままに、その熱をちゃんと感じられる状態で、今のサウンドにブラッシュアップする。そこには、すごくこだわりました。

たとえば「-reconnect-」は、譜面は変えていないし、歌も歌い直していない。でも、音を変えたり、楽器の配置を変えたりすることで、曲の印象を新しく生まれ変わらせる。そういうところは、かなり気を使いながら作っていて、個人的にも、ぜひ聴いてほしいポイントですね。

──今お話に出ていた「自分なりの哲学」は、今はどのような形になっているのでしょうか。

Nora:今でもやっぱり、「情熱」みたいなものですかね。自分が思っていること、伝えたいことを、メッセージとして届けるというのは、曲を作る人にとって一番大事な部分だと思っています。ただ、最近は特に、サウンド面への意識がすごく強くなりました。

以前は「伝えたいことは歌詞に載せる」という感覚が強かったんですけど、今は「音楽語を操る」ということを、より意識できるようになってきた気がしています。音楽って、すごく立体的なんですよね。

同じ歌詞でも、演奏が変われば印象はまったく違うし、同じ演奏でも、楽器がどこに配置されているかで、受け取るイメージは変わる。ちょっとマニアックな話なんですけど、「キカセテクレ」なんかは、当時のバージョンだと、キックやドラムなど、低域の楽器で前に進んでいく作りになっているんです。

「キカセテクレ」は、レジスタンスたちが自由を求めて街を駆け抜けていく、みたいなイメージだったんですが、当時は足だけ、“下半身だけ”で進んでいるような音作りになっていた。

 



 
でも今は、上半身も自由に使えるようになった感覚があって。今回の「キカセテクレ-reconnect- (starring Enel;)では、下半身だけで進むんじゃなくて、体全体を使って、少し優雅に前に進んでいくようなイメージになった気がしています。だから、サウンド面では……「クオリティを上げた」と言うと少し安直なんですけど。

──より芸術的な。

Nora:そうですね。音楽語をより自在に使いながら、作品として、芸術として「いいもの」を作りたい、という意識は、かなり強くなりました。当時は、「自分の思いが伝わること」「熱意が届くこと」が正義だったと思うんですけど、今は、音楽そのものを楽しむようになったのかなって。

──Noraさんのなかで、今のヨルマチのサウンドを言葉にすると、どんなものだと思いますか?

Nora:うーん……ポップ、かもしれないです。「軽い」というよりは、「軽やか」。それと、少し強くなった気もします。歌詞も含めて。引っ張る力が増えたというか。

──作曲家であり、プロデューサーであり、歌い手でもあるからこそ、曲に対する語り方がすごく俯瞰的ですよね。

Nora:自分では、かなり俯瞰していると思います。逆に、主観で語ろうとすると、分からなくなってしまうというか。

 

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