
『クスノキの番人』直井玲斗役・高橋文哉さんインタビュー|この先の自分が見返して何を思うのか楽しみと思える作品になった
特に気持ちが乗ったのは宮世琉弥さん演じる大場壮貴との掛け合い
ーー高橋さんの中で印象に残っているシーンを教えてください。
高橋:最初の、トイレ掃除で顔にカマドウマが飛んでくるシーンです。あれはすごく大変で、お芝居をどういうふうにやったらいいのか分からなくて。
それこそ、最初に警察に見つかったシーンなど、慌てふためくときは声のトーンのキーを高めにしよう、という話を監督としていました。なので、(トイレ掃除のシーンで)そのまま階段を転げ落ちていく流れも含めて、「情けなさを見せられるのは、ここしかない」と思っていました。
あとは、コノハズクとのシーンも、最初は見つめて首を振るだけだったのですが、僕が独り言みたいに「ダメダメ」と呟いたら、「それ、活かしましょう」と言ってくださったんです。
僕は声優さんのようにノウハウがあるわけではないので、常に「これを実写でやったらどうなるか」を考えるしかなくて。階段から転げ落ちるワンシーンは本当に大変だったなという印象があります。何回も録りました。
ーー普段のお芝居と比べて、イメージを膨らませる時間も多かったのかなと。
高橋:そうですね。普段のお芝居だと身体が反射的に動くところを、感覚的にやっていくという意味で、すごくテクニカルな仕事だと思いました。
ーーそれこそ台詞の秒数が決まっているというのも、実写との違いですよね。
高橋:最初は難しさも感じましたが、中盤になると「どうやってそこにはめるか」という感覚になってきました。普段は自分の感情に合わせて動きを変えるのですが、今回は動きに対して感情を変えるという真逆の作業だったので、決まっている動きに対して自分の感情をはめていく作業がすごく楽しかったです。
ーーほかキャスト陣との掛け合いでより気持ちが乗ったと感じたシーンも教えてください。
高橋:壮貴と話すシーンがあるのですが、あのシーンは全体を通してすごく気持ちが乗りました。声を荒げるシーンで、同世代で自分よりも圧倒的に立場が上の壮貴に対して、小さいながらも噛みつこうとする玲斗の弱さみたいなものが出ていると思います。劇中のセリフにもありますが「地位があって、金があって、親がいて、まだ足りないんですか⁉」と言いたくなるような、自分にはないものを全部持っている人なので。一方の壮貴は壮貴で、自分にないものを持っているのが玲斗なんです。
そういうお互いのズレていたピースが、最後にパチッとはまってお互いを信頼して話せる関係になっていく。そこに至るまでの凸凹感というか交わらなさというのは、玲斗としては悔しくもありました。
ーー千舟役の天海祐希さんをはじめとするキャストの皆さんともアフレコはご一緒だったのでしょうか?
高橋:基本的には一緒でした。最初に僕だけが全部一通りアフレコして、そのあとそれぞれの方ともう一度同じシーンを録りました。
最初のアフレコの際にディレクションを受けて、「ここはもう少しこうしよう」という確認をして、2回目で皆さんと合わせるという流れで、千舟さんの日、優美の日、壮貴の日、といった感じで。
やっぱり初めて天海さんの千舟の声を聴いたときに、背筋が伸びました。それは高橋文哉として天海祐希さんを見ているのもあるだろうし、玲斗として千舟に初めて会えた瞬間だったというのもあると思います。
そこから、だんだん重ねていくうちに、天海さんもすごく優しくて気さくな方なので、「大変?」みたいな会話をしながら、いろいろ話しかけてくださって。
ーー普段は映像作品で俳優としてお芝居をされていますが、アニメーションの声優の表現方法を経験して、表現の違いをどう感じられましたか?
高橋:それこそ天海さんが「普段持っている武器を、すべて削ぎ落とされて、声だけになる」とおっしゃっていて、すごく腑に落ちました。
手があって、足があって、表情があって、身振り手振りがあって、それを全部取り除かれる。いつもだったら感情を伝える手段として表情や身振り手振りの後にくる最後の手段の声が一番前にくるというのが大きく違いました。普段と同じ向き合い方だと、感情量として足りないんです。
それを声で表現するという部分に難しさも感じましたが、今まで一番後ろにあった声でこんなにも感情が伝えられるんだと思うと、順位が詰まってきた感覚があります。まずは表情、気持ち、身振り手振り、最後に声という距離感がぎゅっと詰まった感じです。
ーー最後に、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
高橋:長編アニメーションの初主演を務めさせていただくということで、いろんなプレッシャーや不安を抱えながら臨みましたが、天海さんをはじめキャストの皆さん、そして伊藤監督に本当にたくさん助けていただきました。
その瞬間に出せるものは、全てこの映画に出し切ったつもりです。この先の自分が観て何を思うのか楽しみだなと思える作品になったので、皆さんにもぜひ楽しんでいただけたらと思います。
[取材・文/笹本千尋 写真/小川いなり]
『クスノキの番人』作品情報
1月30日(金)全国公開
CAST
高橋文哉/天海祐希
齋藤飛鳥 宮世琉弥/大沢たかお
STAFF
原作:東野圭吾「クスノキの番人」(実業之日本社文庫刊)
監督:伊藤智彦
脚本:岸本卓
キャラクターデザイン:山口つばさ 板垣彰子
音楽:菅野祐悟
美術監督:滝口比呂志
美術設定:末武康光
色彩設計:橋本 賢
衣装デザイン:高橋 毅
CGディレクター:塚本倫基
撮影監督:佐藤哲平
編集:西山 茂
スーパーヴァイジングサウンドエディター:勝俣まさとし
リレコーディングミキサー:藤島敬弘
制作:A-1 Pictures / Psyde Kick Studio
配給:アニプレックス
主題歌
Uru「傍らに月夜」
作詞・作曲:清水依与吏
編曲:back number

































