
『悪ノ娘』『悪ノ召使』を徹底解説! 『白ノ娘』との関連は? 時系列と視点別に紐解く“悪ノ世界の真実”【ネタバレ注意】
考察4:本当の悪は誰?
『悪ノ娘』をはじめとする楽曲群をすべて紐解いていくと、様々な人の思いや行動が悲劇のもととなっていたことが分かります。楽曲では「悪ノ娘=リリアンヌ」という印象がありますが、本当の “悪” はどこにあるのでしょうか?
暴政を行なったリリアンヌ?
まずは王女という立場を利用して、気に入らない者を次々に処刑してしまったリリアンヌ。食糧不足で市民が困っていても、手を差し伸べようとはしない暴君ぶりです。その傲慢さが革命の火種となり、自身も命を追われることになります。
しかし、リリアンヌはまだ14歳。小説「悪ノ娘 黄のクロアテュール」では、“優しく、気高かったお母様” のようになりたかったと涙を見せるシーンもあります。困ったときに頼れる両親も、守ってくれる臣下もいない孤独な少女でもあるのです。
王女に加担したアレン?
リリアンヌを支え続け、最後には身代わりになって命まで差し出したアレン。理由もなく本来の身分をはく奪されたにもかかわらず、どこまでも自分を犠牲にしてリリアンヌを守ろうとする姿が健気です。
一方で、市民から見ればアレンも王女の言いなり。むしろ王女の右腕として政敵を手にかけるなど、悪政の片棒を担いでいるといっても過言ではありません。願いを叶えることだけが愛ではないはずですが、その未熟で盲目的な一面が彼を “悪ノ召使” たらしめています。
革命を起こしたジェルメイヌ?
ここで、革命軍として立ち上がった「赤き鎧の女戦士」ジェルメイヌを取り上げましょう。彼女はアレンの義理の姉で、父のレオンハルトは近衛隊長です。しかし、レオンハルトはリリアンヌの命令で暗殺されてしまいました。
革命軍のリーダーとして民を導いたジェルメイヌは、皆のヒーロー。アレンがリリアンヌになり替わっていることにも気づき、彼を逃がそうとする正義感の持ち主です。しかし、アレンはジェルメイヌに対してこう言いました。
(「悪ノ娘 黄のクロアテュール」より引用)
これ以上、ジェルメイヌを巻き込まないようにとアレンが言ったセリフですが、思いのほか核心を突いているのではないでしょうか。父を亡くしたという私怨からはじまって、革命という大きな事件を起こしたジェルメイヌ。
小説では、革命後のルシフェニアをマーロン国のカイルが統治することになったと書かれています。これは実質、国の侵略を許してしまったとも言えるでしょう。カイルが統治したルシフェニアのその後は語られていません。
マーロン国のカイル?
マーロン国のカイルは、リリアンヌの許婚でありながらミカエラに恋をしてしまいました。王族という責任ある立場を投げ捨て、婚約を破棄してミカエラにプロポーズをします。その結果、エルフェゴートとルシフェニアの戦争が起こってしまいました。
カイルの治めるマーロン国には、一切の被害がないのも皮肉なポイント。そのうえカイルは、ミカエラを失った復讐として革命軍に参加し、ルシフェニアを滅ぼしてしまうのです。自分が発端となった戦争を鎮めようともせず、身分を隠して革命軍に加わるのは、王族としてあるまじきことではないでしょうか。
とはいえ、カイルとリリアンヌの婚約は政略結婚。二人の母が決めたもので、本人はリリアンヌに恋愛感情はありませんでした。カイルの母は健在で、マーロン国の皇太后として実権を握っています。彼自身もまた、政治戦略に巻き込まれた被害者なのかもしれません。
【まとめ】不朽の名曲を、別視点からもう一度
『悪ノ娘』と『悪ノ召使』、『白ノ娘』、そして『リグレットメッセージ』を、小説とともに紐解きました。物語の全貌が見えてくると、善悪が揺らぐような感覚があるのではないでしょうか?
この『悪ノ』シリーズは、視点が変わることによって物事の見え方も変わるのが魅力です。長年愛されている楽曲だからこそ、聴いたことがある人も多いはず。そんなおなじみの楽曲を、あえて別の視点から聴いてみてください。
『悪ノ娘』を、カイルの視点で。『悪ノ召使』を、ジェルメイヌの視点で。『白ノ娘』を、ミカエラの視点で——などなど、見方を変えると物語がさらに広がるでしょう。
【文:藤真唯】

































