マンガ・ラノベ
アニメ『ニワトリ・ファイター』鳥類学者・川上和人先生によるニワトリ講座

【ニワカ知識はトサカにくるぜ!】鳥類学者・川上和人先生に聞く! アニメ『ニワトリ・ファイター』を2億倍楽しむためのニワトリ講座

 

どうしてニワトリは飛べない方向に進化したのか?

──ケイジはひたすら歩いて旅をしますが、なぜニワトリは鳥なのに飛べない方向に進化したのでしょうか?

川上:一言で言えば「飛ばない方が人間にとって便利だったから」です。キジの仲間やセキショクヤケイは決して飛べないわけではなく、捕食者に襲われた時などにはバッと飛びあがって何十メートルか逃げたりします。

もともとはニワトリもそうだったんです。ただ、食肉用の品種にしたい場合、一羽から取れる肉の量が多ければ多いほど良いですよね。だから、人間は肉付きが良い個体を選んでいき、それらが交配することで体が重くてどんどん飛びづらい個体が増えていきました。あまり飛ばない性質を持っている個体の方が、人間にとっては逃げられにくくて飼いやすいわけです。

人間が飛ばない個体を選抜していくことで、人為的な進化が起こって飛ばない方向になっています。ただし、完全に飛べないわけではなく、木の上まで飛んでそこをねぐらにするようなニワトリもいますよ。

──人為的な進化・交配で徐々に飛距離が落ちていったんですね。

川上:昔は飛べたという根拠を知りたければ、鳥の胸骨を見てください。一般的な鳥の胸骨の前には「竜骨突起(りゅうこつとっき)」という突起があるんです。英語では「キール」と呼ばれる部位ですが、その突起はダチョウなどの全く空を飛ばない鳥にはありません。

竜骨突起があるおかげで突起の横にたっぷりと筋肉を付けられます。それが「むね肉」と「ささみ」なんですけど、実はむね肉は翼を下ろすための筋肉で、ささみは翼を上げるための筋肉なので、これを繰り返して動かすことで鳥は空を飛べています。だから、竜骨突起があるニワトリは飛ぶタイプだと一目でわかりますし、その竜骨突起のおかげで肉がたっぷりつくので、我々はむね肉をたくさん食べることができるのです。

あと、ささみにはスジが付いていますよね。実はあのスジで翼を動かしているので、スジは肩の後ろを回って翼に繋がっているんです。筋肉が収縮すると、このスジが翼を持ち上げる仕組みになっていて、あのスジがないと空を飛べなくなってしまいます。ささみの調理をする際、スジを取り除く時には「これがあるから鳥は空を飛べるんだ」と思っていただけたら嬉しいです。

──これからはスーパーで鶏肉を見る目が変わりそうです。

川上:ちなみに鶏肉はピンク色をしていますが、多くの鳥の筋肉は赤色です。それはマグロの赤身と同じ理由で、長距離を飛ぶ鳥の筋肉にはヘモグロビンよりも多くの酸素を蓄えられる「ミオグロビン」という色素タンパク質がたっぷり含まれているからです。

ニワトリの場合は長距離飛行をしないし、捕食者から逃げる時も短距離を飛ぶだけなので、そこまで酸素を必要としません。だから赤よりも薄いピンク色のお肉で、味もさっぱりしています。逆に、鴨の肉は赤色が強くて血の味がしますが、カモは長距離移動するために筋肉にミオグロビンが多く含まれているからです。

だから、ニワトリのピンク色のお肉というのは、言ってみれば鳥の中でも異端なんです。

──むね肉やささみの話を伺いましたが、鳥類学者の川上先生から見て、ケイジの肉体の描き方はいかがですか?

川上:筋肉の点でも非常に作画が良いと思います。僕らは鳥の健康状態を見る時に、胸の筋肉の付き具合を見るんです。竜骨突起(キール)の周りにパンパンに筋肉が付いていると、鳥でもマッチョな感じになるので、それを僕たちは「キールスコア」と呼んで5段階で評価したりしています。

──ケイジの胸板はかなり厚いですがキールスコアで言うと?

鳥類学者:間違いなく「キールスコア5」で最高ランクのムキムキ状態ですね(笑)。だから、ケイジが疲れ果てて健康を損なうような描写が出てくることがあれば、キールスコアも下がっていきますし、もし「キールスコア1」になってしまうと竜骨突起が飛び出して見えるほどガリガリなはずです。もしそうなったら、読者の皆さんは「キールスコアが落ちてる!」と全力で応援してあげてください。

アニメ『ニワトリ・ファイター』スタッフ:実はアニメ化に際してケイジのCGモデルを起こす時に、原作の桜谷シュウ先生から肉付きやトサカの形などに細かくチェックが入ったんです。アニメは漫画と違って線を単純化しなければいけないところはありますが、シルエットなどは桜谷先生がご自身で研究したものを反映しています。

川上:それは素晴らしいですね! 漫画の方も僕のような専門家が見ても違和感なのないニワトリが描かれていましたからね。

 

「トサカ」の秘密

──ケイジの決めゼリフが「トサカにくるぜ!」ですが、ニワトリといえばみんながイメージする「トサカ」にはどんな役割があるのでしょうか?

川上:オスとメスで大きさや色が異なる部分がある場合、多くは性的な役割があると言われています。鳥はメスがオスを選ぶ場合が多いので、その時の判断基準が必要になるんです。例えば、トサカが大きくて鮮やかな色をしていたら「体の健康状態が良い」という信号になりますし、逆に元気が無くて寄生虫がたくさんいるような時はトサカの色が悪くなったり、小さくなってしまいます。

実はニワトリにとって、トサカは生きていくために不可欠な器官ではありません。そんな部分にこれだけ体組織を投資できているということは、それだけ体の状態が良いというアピールになるんですね。そういう個体を好むメスがいることでオスの方も進化していく、これを「性淘汰」と言いますが、それが起こった結果だと考えられます。

──そうすると『ニワトリ・ファイター』の劇中でケイジがメスに振られてばかりなのは、ニワトリの生態を考えると正しい描写なんですね。

川上:そうですね。オスがどんなに望んでも、メスの方から選んでもらえなかったら交尾まで至れませんから。

──トサカはニワトリの象徴みたいなイメージでしたが、本当にメスからモテるためだけのものだとは思いませんでした。

川上:でも彼らにとってはすごく重要なものなんです。どんなに元気でたくさん食べ物を採れても、メスにモテなかったら子供を残せませんし、子供を残せなかったらそのDNAは途絶えてしまいます。メスにモテる形質を持っていることで子供をたくさん残せるので、それが選ばれて集団の中に広がっていくのが進化のメカニズムなんです。

──作中ではトサカの形にも色々とありますが、これもメスにモテるための進化の過程ですか?

川上:これはどちらかというと人間の好みだと思います。セキショクヤケイから家禽化していったように、ニワトリの進化には人間による品種改良という側面が加わっています。

人間はニワトリを食用だけでなく愛玩用として飼う方もいるので、特徴的なトサカの形をしている個体を選んで増やしたりもするんです。そういった際は「変わった形のトサカ」「変わった体の色」といった個体が選ばれやすくなります。

──金魚の品種改良みたいですね。

川上:それこそ烏骨鶏なんて頭にいわゆるトサカはなくて、モコモコとしたものが付いていますが、それは人間が選んだ結果です。烏骨鶏って骨や筋膜まで黒いという不思議な特徴を持った鳥で、そういうのも含めて人間が面白いと思って選んできた結果なんです。

 

おすすめタグ
あわせて読みたい

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2026年春アニメ一覧 4月放送開始
2026年冬アニメ一覧 1月放送開始
2026年夏アニメ一覧 7月放送開始
2026年秋アニメ一覧 10月放送開始
2026春アニメ何観る
2026春アニメ最速放送日
2026春アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
放送・放送予定ドラマ作品一覧
平成アニメランキング
目次
目次