
「作画が悪目立ちすると物語から気が逸れてしまう」──アニメ『違国日記』監督・大城美幸さんインタビュー【連載第6回】
クオリティはあるに越したことはないけど、動きすぎているとそっちに目がいっちゃう
──デザインなども含めて、映像の面でこだわった部分・意識されたことを教えてください。
大城:今思えば、邪魔にならない作画を心がけていましたね。作画が悪目立ちすると物語から気が逸れてしまうので、あまり過剰にはしないけれど、丁寧にと心がけていました。派手に動かす作品でもないので。
──いまのお話は、いわゆるクオリティとはまた違った次元のことなのかなと感じました。
大城:もちろんクオリティはあるに越したことはないんですけど、やっぱり動きすぎているとそっちに目がいっちゃうんですよね。役者さんの芝居や音楽にフォーカスしてほしいシーンなのに、絵がやたら動いちゃうとそっちに気がいってしまう。それがいわゆる「すごい作画」と呼ばれるものだったりするのかもしれませんが、伝えたいのはそこじゃないんだよなというときもあって。ここは動かして、動かさないみたいなことは、コンテを書くときからずっと気にしています。
──見せるバランスというか。
大城:そうです、そうです。アニメにも色々な作品があると思いますが、私個人としてはずっと動いているものを見ると、疲れちゃうタイプでして。何事も緩急をつけたいいと思っています。
──貴重なお話ありがとうございます。本作は料理シーンが凝っているとも感じました。
大城:日常芝居の作品なので、料理シーンもある程度のリアリティが必要でした。料理をおいしく見せる時はちゃんとおいしく見える絵にしていただきましたし、逆に例えば第1話のお寿司はおいしくなさそうなのがポイントだったので、色も鮮やかにしないという調整をしました。
──おいしくないように見える演出!
大城:なかなか難しいんですよね、これが。おいしくないように見せるのもまた技術が必要でして。本作でも、「おいしくないように見える料理って、どういうものなんだろう」という話になり、実際にお寿司を買って来て、冷蔵庫に放置したんです。それで、乾いたお寿司のハイライトの入り方などを研究しました。おいしさを損なったお寿司をスタッフで食べたのも、今となってはいい思い出です(笑)。
──分からない時は実際に見て、それを表現するのも大切。
大城:実際に見ないと分からないことって、多いんです。アニメーターだけでなく、みんなで実物を観察することで、そこにリアリティが生まれるんだと私は思っています。音響効果さんも実際に揚げ物などをして音を収録されたそうです。すごいですよね。
「槙生はunderstandではなくて、I seeと言っています」
──本作の音楽を担当されているのは、牛尾憲輔さん。最初にどんなリクエストをされましたか?
大城:ピアノがメインだと嬉しいというお話をしたくらいでした。音楽を作っていただいたのは、第2話までのアフレコが終わったくらいのタイミングだったのですが、牛尾さんから、「現時点の資料や映像を見て何曲かイメージして作ってみます」というご提案があったんです。それで作っていただいた曲がすごくよかったので、方向性はそのままに、あとは日常芝居っぽいシーンでかける曲や、明るい曲・悲しい曲が欲しいと、ふわっとしたリクエストをしてさらに作っていただいたという流れでしたね。
──個人的には、音楽が静か・大人しいシーンが多いというのも印象的でした。
大城:それが恐らく、牛尾さんが作品から感じてくださったことなのかなと。実は牛尾さんとの打ち合わせとは別に、音響監督の大森貴弘さんとあまり細かく音楽をつけるつもりはないという話をしていたんです。大森さんもそういう解釈だったと意見が一致していたのですが、牛尾さんの曲はまさにその意図通りでした。あがってきた曲を聞いていて、とても楽しかったです。
──アフレコやキャスティングについてもお聞かせください。物語の中心となる高代槙生は沢城みゆきさん、田汲 朝は森風子さんが演じていますが、キャスティングの決め手は何でしたか?
大城:ふたりともオーディションで決まったのですが、まず沢城さんは圧倒的に槙生でした。最初からみんな「槙生だ」となって、沢城さんにお願いしたいという話になったんです。森さんの決め手は明るさ、無邪気さでした。声質にポジティブな印象があって、闇を感じないところがすごく朝っぽいなと思って。あとは、フレッシュなところも含めて、彼女が朝に見えたのかもしれません。
──アフレコ中にふたりにリクエストされたことはありますか?
大城:槙生に関しては、最初は感情を出しすぎているところがあると感じました。沢城さんって、愛嬌があって親切で、すごくいい人なんですよ。一方で、槙生はぶっきらぼうで誤解されやすい。恐らく、沢城さんと槙生は異なる部分が結構あって、理解し難い部分も多かったのではないかなと。何度か、感情をもう少し抑えて、でも冷たくないような無機質さが欲しいという、すごく難しいお願いをしました。
──その難しいお願いも、沢城さんならきっとできると思ったがゆえのリクエストというか。
大城:そうですね。思い出深いのが、第1話の砂漠のイメージシーン。「分かるよ、それはきっと孤独だね」というセリフがあるのですが、最初のお芝居だとそこがちょっと朝に寄り過ぎていると感じたんです。あのシーンは、突き放しているわけじゃないけど寄りすぎてもいない、けれどわかるよと共感しているというニュアンスが非常に難しくて。
沢城さんも、どう表現したものかと悩んでいらっしゃったのですが、そのときヤマシタ先生が「槙生はunderstandではなくて、I seeと言っています」と伝えてくださったんです。先生のその言葉を受けた後の沢城さんの芝居は、もう本当に素晴らしくて!
──ディレクションやアドバイスひとつでお芝居が変わる。色々な面でプロの仕事だなと思いました。
大城:そうですね。あのシーンは、ぜひ見返して欲しいです。沢城さんも苦労されたと思いますが、どんどん話数を重ねるごとに槙生らしさが増していって、感動しました。
──朝役の森さんについてはどうでしたか? 何かリクエストされましたか?
大城:森さんは最初からナチュラルに朝を演じられていて、私からリクエストすることはほぼなかったです。原作もしっかり読み込まれていて、でも掛け合いで柔軟に変化させていて。あと、歌がすごくお上手でした。皆さん聞かれたと思いますが。素晴らしかったです。



































