
夢限大みゅーたいぷ 対談インタビュー連載「ゆめみたの WA !」 第2回:藤都子 × 高尾奏音(Ave Mujica)|音楽って楽しいですか?――3歳からの宿命と、16歳の初挑戦。Wキーボーディストによる音楽の向き合い方
“楽しかった”で終われなかった
──藤さんからの質問に「ピアニストとして1人で演奏する時と、バンドのキーボーディストとして演奏する時で意識を変えていることなどはありますか?」というものがありましたがどうでしょうか。
高尾:それぞれやっぱり意識が違っていて、バンドでは他のメンバーがいるから、自分一人じゃないという前提で、役割を意識して演奏しています。この曲だったらリズムを刻む、この曲では自分の音を立たせる、といった具合に曲ごとに立ち位置を考えます。バラードだと、これまでやってきたクラシックの経験が活きるなって感じることもありますし、オルガンやシンセを使う曲では中音域を埋めることに頭が回っていたりもします。パフォーマンスも含めて考えなきゃいけない。
一方で、ソロで演奏する時は、本当に曲だけと向き合う感覚ですね。5th LIVE「Nova Historia」で冒頭に「月光」をフルで弾かせていただいた時は、グランドピアノで、かなりピアニストとして曲と向き合った瞬間でした。作曲家の意図や構成を理解した上で、曲としてどう届けるかを考えていました。
藤:プロだ……。
高尾:いえいえ、でもどっちもやっぱり難しいですし、どちらにも苦戦するところはありますね。
──藤さんからは「声優というお仕事も音を操り表現をするお仕事ですが、ピアノに感情を乗せる演奏というのはどのようにされているのでしょうか?」という質問も。
高尾:すごく感覚的な話になっちゃうんですが、「喋るみたいに弾こう」という意識があります。それが顕著に出るのは、ボーカルとキーボードだけの曲ですね。ボーカルとの会話だと思って弾く感覚です。
藤:すごい……。
──藤さん自身はどうですか?
藤:私はもう、とにかくまず弾けるようになることと、アンサンブルを一番大事にしています。そこにほぼ全振りという感じですね。よく……なんて言うんでしたっけ……あれ……。
高尾:グルーヴ?
藤:そう、グルーヴです!(笑) ありがとうございます! ゆめみたのメンバーで「グルーヴをみんなで作ろう」っていうのは意識していて。譜面をちゃんと弾かなきゃ、間違えないようにしなきゃって思うこともあるんですけど、それよりも、合わせる時はメンバーの背後をガン見しつつ弾いています(笑)。
ボーカルも動きながら歌うタイプで、表情もすごく豊かなので、それを見ながら、自分にはなかった表現をちょっと借りるというか、「今こういう気持ちなんだな」っていうのを受け取って弾いている感じです。
高尾:わかります。ひとりで練習している時と、メンバーと合わせる時って、全然違いますよね。だから私は、家での練習とは違う、バンド練で初めて曲を理解する、みたいな感覚があるかもしれないです。
──高尾さんからの質問に「バンド活動をするにあたって、ご自分の中でのモットーのようなものは何かございますでしょうか」というものがありました。
高尾:これも私が最近気になっていることで、皆さんに聞いているんです。
藤:私が最近よく思っているのが「初心を忘れてはならぬ」で。
高尾:冒頭から刺さる〜(笑)。
藤:活動が3年目に入ってライブの機会も本当に増えて。1st LIVE以降、ほぼ毎月ライブがありますし、今は47都道府県を回っているのでほぼ毎週末ライブで。多いと月に8回くらい人前で演奏することもあります。ただ、回数自体は増えても、見てくださる方の中には初めての方もいて。ライブって本当に生ものだなって毎回思うんです。
同じ曲でも、メンバーのコンディションや自分の状態、お客さんの雰囲気で全然違う。だからこそ、ピアノを始めたての頃の「この音でちゃんと届けたい」という気持ちを忘れずに、慢心しないように、というのは常に意識しています。
高尾:染み渡ります……。
藤:高尾さんに慢心なんていう状態はないじゃないですか! むしろ向上心の塊という印象です。
高尾:逆に私は向上心で自分を縛り付けちゃうことが多くて、常に上を求めなきゃいけないっていう意識が強すぎて、「自分は何をしているんだろう」って分からなくなる瞬間があるんです。
藤:迷子になっちゃうんですね。
高尾:そうなんです。まさに「迷子でも進め!」なんですけども……。
一同:(笑)
高尾:だから自分の中の指針というか……ここを軸にすればブレないぞ、みたいなものをずっと探し求めていて、それでいろいろな人に質問したりしてるんです。
藤:帰ってくるホームみたいな。
高尾:そう。変わり続けていく中で、逆に自分の変化が分からなくなっちゃうから、今のモットーは「自分の中の軸を探す」ことかもしれません。
──高尾さんの中でターニングポイントのようなものはあったのでしょうか。
高尾:これは全然周囲に話していなかったことなんですが、6th LIVEの東京公演まで結構……ずっと壁にぶつかっていて。ライブは楽しいし、音楽も好きだし、メンバーとも本当に楽しく活動させてもらってるんですけど、高尾奏音が音楽と向き合っている瞬間に、楽しみを見出すのが難しくなっていたんです。
──2025年12月14日(日)、東京国際フォーラム ホールA で行われた「Ulterius Procedere」の東京公演ですね。
高尾:6th LIVEで何かが解放された瞬間があって、ライブが始まってから終わるまで、ずっと楽しいって気持ちでいることができました。セットリストが進むにつれて「終わるのが悲しいな」と思えたライブでしたし、ひとつ皮を破ることができた気がしています。
藤:へええ……! すごく責任感が強いんだなと。お仕事にプライドを持ってやってらっしゃるんだなと改めて感じます。
高尾:確かに、自分以外のメンバーにもそれぞれ責任があるって思えたことで、重荷が少し下りたというか、客観的に見られるようになったのが今回のライブだったのかもしれないです。
藤:その話を聞いて思ったんですけど……私もこの話をしたことがなかったのですが、私、正直「ライブ楽しかった!」って終われたことがまだなくて。
高尾:えっそうだったの!?
藤:漫画や絵もそうで、仕事として「求められるもの」になったときに、義務感じゃないですけども……そういったものを背負う感覚が強くなって、純粋に楽しいと思えない時期が長く続いたんです。だからライブでも、「役割を果たせたのか」っていう気持ちが先に立ってしまって、「みんなが楽しそうでよかったな」って思うことのほうが多いですね。
高尾:すごく分かる。自分が楽しめたのかより、「お客さんたちが楽しそうだったから、いいライブだったな」って思うことが多くて。
藤:まさに私もそうで、いつかライブが終わって自分の中で「楽しいライブだったぜ」って思えるようになりたいなって、今のお話を聞いて改めて思いました。 インタビューなどではっきりと明言したことはなかったと思うのですが、1st LIVE(2024年8月24日開催 横浜1000 CLUB「めたもるふぉーぜ」)のあと、結構涙を流していて。そもそもライブがどういうものなのかも分かっていなかったし、理想が高すぎたのかもしれないです。思った通りにできなくて、1か月くらい落ち込んでました。
高尾:気質が似てるのかも……すごく共感できます。私も泣きながら、ラーメンを食べて帰ったことがある(笑)。ライブ後って、ハッピーというより、反省とか悔しさのほうが先に来ることが多いですよね。
藤:一緒で嬉しいです。
──藤さんはその1st LIVEの頃の感覚からは少しずつ変わっては来ているんでしょうか。
藤:そうですね。「楽しい」のハードルを下げたというか……漫画、イラストを続けていくなかで気づいたのですが、私は楽しいを神格化しすぎていたのかもしれないなって。子どもの頃に無邪気に遊んでいたような、キラキラした楽しさがないといけないんじゃないかって気持ちがどこかにあったんですよ。
高尾:わああ、分かる〜!
藤:でもキラキラしていなくても、無邪気に楽しくなくても、続けられているなら、それはきっと自分がやりたいことなんだろうなって。そこからは、「ここちょっと上手くできたかも」みたいな小さな達成を拾い上げていくようになりました。それも大きいのかなって。
もちろん純粋に「すごく楽しかった」って思える瞬間はあるんです。ライブでもそう思える日が来たらいいなって、やっぱり思います。
高尾:なんか……出会えてよかったです。一緒に話してると「わかる」って思えることばかりで、教えてもらってる感じもして。一生喋れるかもしれない(笑)。
──いつかコラボレーションしてほしいです。ちなみに、藤さんがAve Mujicaの曲で「これを弾いてみたい」と思うものはありますか。
藤:難しすぎて(笑)。絶対弾けないとは思うのですが、私は「黒のバースデイ」が好きなんです。バースデイって祝福のキラキラしたイメージがあると思うんですけど、その中にあるAve Mujicaさんらしいダークな世界観がすごく印象的で。ゆめみたはポップな曲が多いので、そういう方向性をやれたら、めちゃくちゃかっこいいだろうなって思います。
高尾:やりましょう、ぜひ(笑)。
藤:ただ……指はめっちゃ動かさなきゃいけないですよね(笑)。もう高尾さんの演奏を見ていると「最早、どうなってるんだ?」って思うことが多くて(笑)。
──高尾さんから藤さんになにかアドバイスをするとしたらどうでしょう?
高尾:アドバイスになるか分からないんですけど……もしピアノの楽しさを忘れそうになったら、一回弾くのをやめてもいいと思います。
藤:なるほど、その時が来たら。
高尾:一回離れて、別の「楽しい」と思えるものを探してみる。私もそういう時期があって、その時は哲学系の本を読んだりしてました。自分が楽しいと思える分野の本を探して読んでみると、直接は関係ないようで、実はピアノに通じることを教えてもらえることが多くて。そこで何かを学んでからまた戻ると、前よりできるようになってたりするんです。
藤:離れているけど、ちゃんと進んでいる感じなんですね。
高尾:そう、それすらも実は成長だったと感じるときがくると思います。こんなこと言える立場じゃないんですけども……。
藤:心に留めておきます。ありがとうございます! ちなみに、私はどちらかというとサイエンスの本を読むことが多くて、時間や時空、人類学や進化の話とかが好きで、そういうものを読んでいると、芸術と通じるところがやっぱりあるなって思うんです。それが絵を描く時に役立つ感覚があったのですが、ピアノではまだそこまで考えたことがなかったので、今日のお話を聞いて、なるほどなって思いました。





























