
「“人たらし”な一面も含めて、ぼたんの魅力だと思います」──TVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』上伊那ぼたん役・鈴代紗弓さんインタビュー【連載第1回】
アフレコでは“喋っている”感覚を大切に
──第1話で印象的だったことはありましたか?
鈴代:第1話は、どちらかというと「この作品はこういう空気感なんだ」と掴む回だった印象ですね。最初にメインキャラのほとんどが登場するので、例えば演出面でここが特別だった、というよりは、まずベースとなるキャラクターの立ち方や作品の温度感を知る回だったのかなと感じています。「こういう演出の面白さがあるんだな」と強く感じたのは、どちらかというと2話以降かなと思います。
──アフレコ全体を振り返ってみるといかがでしょうか。
鈴代:本当にすごく楽しかったです! シリーズを通して、総作画監督を立てておらず、各話ごとに作画監督が立たれているつくりになっていると伺いました。各話の演出担当の方が思い描くぼたん像や、何を見せたいのか話数ごとにそれぞれ色があって、とても印象的でした。
それがバラバラに見えるわけではなくて、あくまでひとつの作品の中で、いろんな表情を見せてくれるんです。服を変えていくような感覚にも少し近いのかなと思いました。
そのため、掛け合いのテンポ感も全話を通して完全に統一されているというよりは「今回は間を大事にしているんだな」「今回はテンポよく進めていく回なんだな」と、それぞれに違いがありました。それが自分の中ではあまり経験のない感覚で面白かったです。
でもよく考えると、日常でも毎日同じテンポで話しているわけではないですし、同じ相手と話していても、その日の気分や天気、コンディションによって全然変わるじゃないですか。そんな実感と結びつけていくと、会話としてすごく自然なんです。映像面でのクリエイターチームの演出と、キャストのお芝居から生まれるライブ感が、うまく噛み合っていったらいいなと思いながら収録していました。演じているというより、“本当に喋っている”感覚に近かったですね。
──実際、女子トークをそのまま覗き見しているような感覚があります。
鈴代:セリフ回しも、何気ない日常のシーンをあえて丁寧に入れている印象があって。当たり前のようでいて、何にも代えがたい大切な時間を丁寧に描いている作品だなと感じています。どこまで自然にお芝居できるかを意識していました。
現場でも「多少ボールド(※)からこぼれてしまってもいいので、そのとき感じたままにやってみてください」といったディレクションをいただくことがあって。すごくありがたい環境でした。
※アフレコ時、発声タイミングを指示するために表示されるマーク
作品を通して、お酒とその文化が“特別なもの”に
──ちなみに、シラフのぼたんとお酒を飲んだときのぼたんでは、演じ分けのスイッチや意識の違いがあったり?
鈴代:ぼたんはやっぱり、お酒を飲むと大胆になる印象があります。普段はどちらかというと「ちゃんとしなきゃ」と思っている子だからこそ、酔ったときに少し崩れる感じが魅力だと思っていたんです。なので、そのふたつにしっかりとした差が出るようには意識していました。
酔っているときは「今は酔っているから、普段なら言わないことも言える」という感覚を大事にしました。テンションが上がって声も少し大きくなったり、距離感もぐっと近くなったり。シラフだったら絶対に言わないようなことを、さらっと言えてしまうんですよね。「してやったり」みたいな感覚というか(笑)、そういう部分はちゃんと活かしていきたいなと思って演じていました。
──どちらのモードのお芝居も楽しそうです。
鈴代:楽しいです! 普段の自分だと、酔ってもいわゆる“決め台詞”みたいなものって、なかなか言わないじゃないですか(笑)。
──そうですね。逆に、酔ってくると「ちゃんとしなきゃ」と思ってしまうところがありませんか。律してしまうというか。
鈴代:私はまさにそういうタイプなんです。でもぼたんは、そういう一歩踏み込んだ言葉を自然に言えるキャラクターなので「ここはぼたんに乗っからせてもらおう」と思って、楽しみながら演じていました。実際にその言葉を受けたときのいぶきの反応も見て「今、ドキッとしてるな」と感じたり。そういう掛け合いも含めて楽しかったです。
──皆さんとの掛け合いの中で、印象に残っていることはありますか?
鈴代:皆さん本当に自然に、すっとマイク前に立っていらっしゃる印象がありました。強いインパクトを受けたというよりは、その場にナチュラルに存在している感じだったんです。なのでこちらも“投げて、受けて”というよりは、ただ会話をしていく感覚に近くて。それぞれのキャストさんの自然な空気を受け止めながら、自分もそのまま返していく、という雰囲気でした。
ただ、それぞれのキャラクターには当然いろんな思惑があります。ぼたんは比較的それが表に出やすい子でもあるので、組み合わせによって空気感がかなり変わるんですよね。そこもすごく面白いところだと思います。
多くのキャラクターが登場するのに、誰がどんな子かわかりやすいというところも魅力的だと思っています。それでいて、いわゆる“アニメっぽさ”に寄りすぎていない。その絶妙さが、この作品の魅力なのかなと思います。
──たしかに、余白がある作品ですよね。いまどきのアニメには珍しいような……。
鈴代:確かに昨今珍しい作品なのかも…!情報量が多すぎないからこそ、受け手が考える余地がある。「今の言葉ってどういう意味だったんだろう」と思う瞬間もありますが、それをあえて説明しない。すべては語らないという余白が、おしゃれさにもつながっていると思います。
──そのなかで、実在する場所やお酒に関して、とても丁寧に汲み取っていて。
鈴代:お酒などの許諾もスタッフさんたちが頑張って取ってくださっていて、実在のものがほぼそのまま活かされているんです。個人的には、IPA(ビールの一種)をまだ飲んだことがなくて気になっています。炭酸がそこまで得意ではないのでビールは少しハードルが高いのですが……(笑)。ほかにも「秩父麦酒」や「六代目百合」も気になっています。「六代目百合」に関しては「そんな名前のお酒があるんだ!」ってついつい調べてしまいました。
いぶきが解説してくれるお酒の話も「そうなんだ……!」と思いながら、ぼたんと同じような感覚で知っていく部分がありました。お酒がたくさん置いてあるお店に行くと、つい作中に出てきたものを探してしまいますね。
あと、読み方が難しいお酒も意外と多くて(笑)。毎回「これはどっちの読みなんだろう」と思いながら確認していました。そんな細かいところも含めて、お酒の世界に触れていくのがすごく楽しかったです。
それと、バーやたばこ、音楽や映画などのカルチャーの描写も出てきたりするのも特徴です。お酒だけにとどまらず、少し大人の世界に踏み込んでいく感じがあるんですよね。この作品を通して、お酒やその周辺の文化が自分の中でより特別なものになった気がします。
──ちなみに、本作に登場する十万石まんじゅうは食べられましたか?
鈴代:はい! キャッチコピーの通り、めちゃくちゃ美味しかったです!
──「うまい、うますぎる」ですね(笑)。これから先、さらにいろいろなアイテムやスポットが登場しそうです。
鈴代:ちなみに、これから出てくるお店のオーナーさんや店員さんを演じるキャストさんもとても豪華なので、合わせて楽しみにしていてください。「そんなバーがあるなら行きたい!」と思うようなキャストの皆さまです!
──ところで、女子寮が舞台という点については、どのように感じましたか?
鈴代:学生のお話でありながら、いわゆる“学校”がメインではなくて“寮”が中心になっているところがすごく特徴的だなと思いました。私服でどこかに出かけたり、夜の街に出るようなシーンも多いので、日常の延長にある物語としての魅力がありますし、寮だからこそすぐに会える距離にいるという近さに、どこかファミリーのような空気感もあって良いなって。「私も入りたいな〜!」って思ってしまいます(笑)。
そこからさらに外に出て、自然の多い場所に行くこともあるので、ロケーションの変化も含めて、映像的にも楽しめる作品になっていると思います。
さらに、寮で暮らすそれぞれのキャラクターがちゃんと“自分の生活”を持っているんですよね。各々の設定がただの背景ではなくて、物語の中に活きてくるところもリアリティがあっていいなと感じています。




































