
歌い手・吉乃さんが武闘派令嬢・ミミと共鳴した“正面突破”の精神──春アニメ『逃がした魚は大きかったが釣りあげた魚が大きすぎた件』ED主題歌「DEAD OR LOVE」のこだわりに迫るインタビュー
「歌うか死ぬか」——“DEAD OR LOVE”に重なる覚悟
──この「DEAD OR LOVE」という言葉を、吉乃さんの活動に重ね合わせるとしたら?
吉乃::やっぱり「歌うか死ぬか」みたいなところはあると思います。この活動をやっていると、ステージ以外の場所で生きている自分が全く想像できないんです。もちろん選ぼうと思えば他の道もありますけど、仮に自分がオフィスで働いている姿を想像したら、その瞬間に世界がグレーになってモノクロ映画みたいになっちゃう。
──歌のない人生は吉乃さんにとって「死」であると。
吉乃::本当にそう思います。私が音楽をやってみようと思った理由は、音楽が生活から切り離せないものだからなんです。テレビでもラジオでも有線でも街頭でも、音楽はどこにでもあるものじゃないですか。
そう思った時に、もし未来の自分が音楽をやっていなかったら、街中で流れる音楽を聴いて「あの時頑張っていたら、ここで流れていたのは自分の曲だったかもしれない」と後悔するのが嫌すぎて始めました。でも始めたら始めたで、有線で自分の曲が流れていなかったら悔しくて。踏み込んだ先には、また別の苦しみがありました(笑)。
──まだ勝ちきれてはいない。
吉乃::エンタメに明確な勝ち負けはないと思いますが、やっぱりたくさんの人に聴いてもらいたいですし、選ばれ続けたいです。例えば、テレビ、フェス、大きなライブ。選ばれるために私は発信し続けているので。
こういう活動をしていると、よく「何のために歌うか」と聞かれますが、私の場合は「お願いですからステージに立たせてください!」という周りへの命乞いなんです(笑)。もっとかっこいいことを言えたらいいなとは思うんですけど、私は音楽を辞めたらグレーの世界に行かなくてはいけないから、別に媚びることはしませんけど「お願いだからステージに立たせてください!幸せにしますから!」という気持ちで歌っています。
──そのかっこつけない泥臭さが吉乃さんの魅力ですね。
吉乃::かっこつけたところでバレるし、私は演じられるタイプではないので。演じる必要が出てきたらその時は考えますけど、今はいいかなと思っています。
──そのように奮闘している吉乃さんを彷彿とさせる曲が「DEAD OR LOVE」だと思います。歌い方も強さがあってハマっていますが、作品がラブコメということもあり、さっきの花占いのように「乙女要素」も入っていますよね。
吉乃::そこが自分でも楽しいところです。音楽やステージを通して初めて自分の乙女的な要素を出せるんですよね。「DEAD OR LOVE」や「なに笑ろとんねん」は、自分の中の少女的な部分を出す機会をくれるので嬉しいです。
──「DEAD OR LOVE」はそのバランスがいいんですよね。
吉乃::甘すぎないですよね。乙女っぽさに破天荒が乗っているのではなくて、破天荒な土台に乙女っぽさが乗っているイメージが、この曲にはあって。2番で“好き……嫌い……”って花占いをした結論が“大勝利!!”ですから(笑)。普通は「あ、好きなんだ」で終わるのに「よっしゃ!勝った!」ってテンション感で。
その後も“トキメキ砲撃”とか出てきて、とにかく規模がデカい(笑)。主人公のミミとも重なるし、私自身とも重なるピッタリな曲です。あと、相手役のレナートがもっとクールかと思ったら意外とデレデレなところも面白くて。ミミも最初は人違いで婚約破棄されて失礼なことを言われたのに「顔いいし、条件いいし」って流されているのが可愛らしいなと思います。
“ちょろさ”も武器に——目指すは音楽での成功
──今後、乙女要素に振り切った曲をやってみたい気持ちはありますか?
吉乃::やってみたくはあります。いきなりすごくかわいい曲を歌うわけではないですけど、音楽を通して初めて自己開示できる部分はあるので、例えば自分で曲調や歌詞を考えて挑戦してみたいです。
──そういえば最近、作曲や作詞の練習をしているとSNSで投稿されていましたが、具体的にどんなことをされているんですか?
吉乃::曲作りに関しては今まで一切やってこなかったので、まずはアンテナを張るところから始めています。曲を作れる人に聞くとみんな「やってみたらできた」って言うんですけど、私はこだわりが強いタイプなので、最初から理想が高すぎるんですよね。でも、やるしかないので、モチベーションが折れないように工夫しています。
──どんな工夫を?
吉乃::1つ目はYouTubeにあるフリートラックに、メロディーと歌詞を自分でつけてワンコーラス作ってみること。「意外とできるな」と思えます。あとは、今まで「いい曲だ」と思って聴いていても「何がいいのか」を分析してこなかったので、自分の「腑に落ちる言葉選び」の輪郭をはっきりさせたくて。
自分が何を良しとして、何にときめくのか。それを集めるために、楽曲だけでなく漫画や誰かの話している動画、日常生活の中でいいと思った言葉や感情をひたすらメモに書き出しています。他にもメロディーが浮かんだらボイスメモに残したり、今は「曲の欠片」をたくさん作っている段階です。
──その中で何か形になったものはありますか?
吉乃::1曲だけ、練習でメロと歌詞を付けたものがあるにはあるんですけど、それはかわいらしいトラックだったので、私っぽくないものになりました。でも、今後はもっと自分のパーソナルな部分に関係する曲を作りたいです!いい言葉を繋いで一つの物語にするのって本当に難しいなと、曲を作る人のすごさを実感しています。
──いま集めている言葉に、何か傾向はありますか?
吉乃::ひねくれていますよ、やっぱり(笑)。どこか斜に構えた歌詞、泥臭い歌詞が多くて。聴く音楽の好みがそのまま出ています。もし私がネアカな性格だったらMrs. GREEN APPLEさんの「青と夏」みたいな曲から言葉を拾うと思うんですけど、私がMrs. GREEN APPLEさんで一番好きな楽曲は『炎炎ノ消防隊』のオープニングテーマだった「インフェルノ」だったりするので、そういう系統の曲が自分には刺さりやすいです。ジャンルは問わず昭和の歌謡曲でも何でも聴くんですけど。
──歌謡曲も聴くんですね。
吉乃::歌謡曲は明るいものが好きで、なんか元気が出るんですよね。「青い珊瑚礁」(松田聖子)や「三百六十五歩のマーチ」(水前寺清子)、「リンゴの唄」(並木路子)とか。歌謡曲以外だと最近は嵐さんの曲をめっちゃ聴いてます。曲が全部いい!私が物心ついた時から活躍されていて、幼い頃から触れていた音楽で今でも歌詞やメロディーを鮮明に覚えているのは嵐さんなんですよね。
今の時代、SNSで30秒のバズからヒット曲が生まれることが多くて、インターネットでの導火線が大切ですけど、私は嵐さんやSMAPさんのように「日本を背負っている」感じに惹かれることが多くて。
なのでもし自分が曲を作るなら、ああいう景気のいい曲を作りたい! 別に世界を変えるとか大それたことじゃなくて、本人がキラキラしていて、それを見ている世間が「この人たちがいると毎日がちょっと明るくなる」と思えるような、そんな存在がひとつの理想としてあります。
──いいですね。先ほど、自分が歌う理由について「ステージに立ち続けるため」とお話していましたが、それとは別に世の中をハッピーにするような曲への興味が芽生えてきたと。
吉乃::そうですね。自分はアイドルではないし、自分のエネルギーが「陽」に働くのかどうかは難しいところですけど。ファンの方からは「(吉乃:は)明るいんだか暗いんだかわからない」ってよく言われるんですよ(笑)。人を楽しませるのは好きだけど、根本は不器用で口下手なので。明るすぎず、ひねくれすぎず。その整合性をどう取るかが今後の課題です。
──そのままの吉乃さんらしさを正面突破で出していけば、きっといい形になるのではないかと思います。最後に、クリエイティブ全般への興味についてもお聞かせください。この間のエイプリルフールに、歌い手を辞めてホストになるという嘘と共に、不破湊さんの「一旦ステイTONIGHT」の歌ってみた動画を発表していましたが、その動画のためにぬいぐるみを自作していました。毎回MVへのこだわりも強いですし、音楽以外の創作にも興味はありますか?
吉乃::はい。やりたいことはたくさんあります。イラストも描けないわけではなくて、「一旦ステイTONIGHT」の動画に出てくる漫画のイラストも自分で描きましたし、それこそファンの方向けのキャンペーンで「待ち受け画像」を当たった人にプレゼントする企画で簡単なものを描いたりしていて。
あとはビーズのアクセサリー作りも好きで、ファンの方に「欲しい」と言ってもらえるので、いつかちゃんとしたものを届けたいたいですし、ダンスももっとちゃんとやってみたいし、曲を聴いた時にアニメーションのイメージが浮かぶので、それを自分で作れたらめっちゃ楽しいだろうなと思ったり……エンタメに関わることは何でも好きなので挑戦してみたいです。
一旦ステイTONIGHT / 吉乃(cover)
— 吉乃 (@yoshino_msc) April 1, 2026
『 今夜は俺と一生一緒に、踊り狂おうぜ…⭐︎』
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──結構いろんなことができるんですね。
吉乃::ただ「器用貧乏」みたいな感じにはなりたくなくて。何でもできることは強みがないことにもなりがちなので、自分の突出した部分をどう出すかは、この7年間ずっと考えています。最近は「これが本当に正しい輝き方なのかな?」と考えることもあって。評価されるために何が最善なのか。もう変なツイートばかりバズるのは嫌なんですよ(笑)。
もちろん知ってもらうきっかけになるので嬉しいんですけど、理想としては「変なツイートばかりしているあの人、実は音楽でも成果を残しているよね」と言われるようになりたい。というか、そうならないと恥ずかしい(笑)。このまま終わるのは嫌すぎます。
──吉乃さんならきっと大丈夫だと思います!
吉乃::友達と一緒に占いに行ったら「赤ちゃんの星」と「芸能人の星」が出ていると言われて。「赤ちゃんの星」は、構ってもらいたいし構わないといじけてしまう星らしいんですけど(笑)、「芸能人の星」は表舞台に出るのに向いている星という話で。別に芸能界に憧れがあったわけでもないので、無縁だと思っていたんですけど、そう言われて「あ、私、芸能人になる気がしてきた」と思って生きています(笑)。
ネット界の有名人ではなく、音楽でもっと有名になりたいです。芸能人になるぞ!(笑)。
[文・北野創]
作品情報
あらすじ
武道の名家であるアンノヴァッツィ公爵家の令嬢マリーア(通称:ミミ)は、末っ子ながらに「武術の才能」を見出され、跡取りとして育てられた。しかし、弟が生まれたことにより急遽その役目を降りることに…。父からなるべく優良物件の婿を探せと命じられたものの、ムーロ王国内の目ぼしい貴族子息たちはすでに予約済み。
そこで遠縁の親戚 アイーダを頼って隣国のルビーニ王国へ留学し婚活に励んでいたところ、王立学園の卒業パーティーの場で初対面の王子レナートから身に覚えのない婚約破棄を宣言されてしまう――!
婚約もしていないのに婚約破棄されたマリーアの婚活の行方とは…!? 武闘派令嬢のドタバタラブコメディ開幕!
キャスト
(C)ももよ万葉・三登いつき・ながと牡蠣/SQUARE ENIX・逃げ釣り製作委員会






























