
「出会ってすぐのキスは僕の好きな百合ではない」ーー『アサルトリリィ』原作者・尾花沢軒栄先生が初期のオープンワールド構想からノインヴェルト戦術の裏側を明かす丨インタビュー【前編】
アクションドールから始まり、小説、舞台、TVアニメ、そしてアプリゲーム『アサルトリリィ Last Bullet(ラスバレ)』と、多岐にわたるメディア展開で熱狂的なファンを生み出し続ける『アサルトリリィ』。
今回、本作の生みの親・尾花沢軒栄先生へのロングインタビューを実施しました。
【前編】では、アマチュア時代の立体物イベントから始まった知られざる誕生秘話をはじめ、オープンワールドゲームをモチーフにしたという壮大な世界観の裏側、そして先生がこだわる「百合」の美学に迫ります。
始まりはアマチュアの立体物イベント
──『アサルトリリィ』はアクションドールからスタートした珍しい成り立ちのコンテンツですが、どのような経緯で生まれたのでしょうか?
尾花沢:アクションドール自体は、僕が前職の「アゾンインターナショナル」に勤めていた際に商品化されたものですが、実はその前にベースとなる作品がありました。それは『私立百合ヶ丘女学院物語』という、僕が学生時代に身内向けに作っていた非公開のファンタジー作品です。
当時「タトコン」という「コミティア」の立体版のようなイベントがありまして、そこに向けて作った作品のキャラクターや設定を『アサルトリリィ』に引き継いでいます。そのため『私立百合ヶ丘女学院物語』が『アサルトリリィ』の原型になりますね。
──そのアマチュア時代の個人的な作品が、どのようにしてアゾンインターナショナルでのアクションドール化へと繋がっていったのでしょうか?
尾花沢:もともとは設定もフィギュアも自分で作ってイベントに出しているだけだったんです。その後、アゾンレーベルショップの店長として働いた時期を経て一度退職したのですが、当時1/12サイズ(約15センチ)のアクションドールの新企画を探していたアゾンから「もう一度戻ってこないか」と声をかけていただいたんです。
その頃、僕は「AK-GARDEN」という小型フィギュア専門イベントを主催していたため、アゾンからはそのサイズの専門家として認知されていたんですね。そこで「何かいい企画はないか」と相談を受け、「原作者として扱ってくれるなら」という条件付きで持ち込んだのが『アサルトリリィ』でした。
──漫画やアニメからではなく、手元に造形物がある状態で世界観を作っていくというのは、創作において特殊ですよね。
尾花沢:コトブキヤさんの『フレームアームズ・ガール』のように立体物ありきの作品もありますが、業界全体で見れば少ないかもしれないですね。
特徴を挙げるとすれば、やはり「アクションフィギュアとして構想している」という点でしょうか。フィギュア業界では「変形する武器」や「動く武器」が好まれるのですが、アニメやゲーム発の作品だと、作画や制作のコストが跳ね上がってしまうため避けられがちなんです。
僕はアマチュアとはいえ原型師の畑にいたので、ガンプラなどを見ながら「こういう武器を作りたいな」と考えて最初から組み立てました。アニメや漫画からスタートしていたら、こういう武器のデザインにはなっていなかったかもしれないですね。そこが他媒体との大きな違いだと思います。
──なるほど。少女たちが扱う兵器「CHARM」のデザイン自体、アクションドール発という出自を強く反映しているんですね。本作の兵器や戦術にはミリタリー要素も感じますが、先生はそういったジャンルはお好きなのでしょうか?
尾花沢:ミリタリーというより歴史が好きなんです。もともと『魔法少女リリカルなのは』に出てくるような変形武器が好きだったこともあって、現実の兵器ではなく、ファンタジー色の強いSF路線に舵を切りました。
──そこからSFに舵を切った結果、あの世界観が生まれたと。滅亡の危機というシビアな世界とファンタジーがマッチしていますが、なぜあのような過酷な設定になったのでしょうか?
尾花沢:当時のアゾンにはバトルものがなかったので、新しい企画はバトルものにしようと思っていました。実はアゾンに持ち込んだ企画は3つあったんですけど、その中の『アサルトリリィ』は「登場人物が多すぎるから採用されないだろう」と思っていた趣味用の企画だったんです。
本命の企画は「隕石が降ってくる世界で、魔法の弾をパス回ししてぶっ潰す」という設定でした。バトルものは危機的状況下が一番面白いと思っているので、滅亡しそうな世界観はそのままに、「パス回し」の要素を『アサルトリリィ』にスライドさせました。それが後の「ノインヴェルト戦術」に繋がっています。
──別の企画からスライドしたものだったとは驚きです。現在では非常に多くのキャラクターやレギオンが登場しますが、この規模感も当初からの構想だったのでしょうか?
尾花沢:そうですね。最初の妄想の段階では『Skyrim(スカイリム)』や『Fallout(フォールアウト)』のように、誰が主役になっても成立する「オープンワールドのゲーム」にしたいと思っていたんです。だからこそ、どんどんキャラが増えていきました。
それに、ノインヴェルト戦術が「パス回し」ということもあって、各レギオンの立ち位置は「欧州サッカー」をモチーフにしているんです。レギオンやキャラに明確な役割を持たせることで、世界観の幅を広げていきました。
──これだけキャラクターが増えると、時系列や設定を整理するのは大変ではないですか?
尾花沢:「あれ、どっちの出来事が前だっけ?」というのはありますね(笑)。でも、どんな出来事も自動的にキャラに積み上がっていくので、「この事件を経験してるんだから、この子は絶対にこんなことは言わないだろう」というのは自然と決まってきます。

































