
「片田舎のおっさん、剣聖になるII」鹿住朗生監督インタビュー|「平田広明さんがベリルというキャラクターに色を付けて、さらに広げてくれた」
平田さんがベリルというキャラクターを広げてくれた
──ありがとうございます。第二期の放送も迫ってきていますが、そちらはどのような軸で制作されているのでしょうか?
鹿住:第一期の終盤で、ベリルとミュイはお互いを受け入れる選択をしました。そこから一歩進もうと考えた時に、やっぱり自分が若い頃に苦手だった相手と同じになっていないかを常に考えるじゃないですか。
10代や20代の頃からすると、今の僕の年齢なんて想像つかないくらい大人な訳で。だけど、実際にその年齢にたどり着いた時に、その当時の自分が考えていた大人の姿になっているだろうかと思うと、そんなことはない。
「じゃあ、親父たちは果たしてどうなのか」というところが、第二期では大きなポイントになっています。そういう通過点は誰しもあるし、いつそこから降りるかもわからない。きっと自ら引退を決断することだってあるはずです。
若い頃はわからなかったけれど、そろそろおっさんと呼ばれる年齢になると、その先のことも何となくでも考えなきゃならない。どうやって人生が終わっていくのかを、漠然とでも考える瞬間があると思うんです。この第二期ではそれを出したいなと思っていました。
きっと共感してもらえる台詞がたくさんあるだろうし、第一期以上に共感できる部分が多いと思います。今言うとネタバレになるので言えないのですが、僕も第二期には凄く好きな台詞がいっぱいあります。ぜひ期待していてください。
──序盤では魔術師学院でのエピソードが描かれるかと思います。その見どころをお願いします。
鹿住:主にフォーカスされるのがフィッセルとミュイで、フィッセルが教える立場、ミュイが教わる立場なのですが、ふたりともめちゃくちゃ不器用なところが共通しています。ミュイに関しては、同年代の仲間とコミュニケーションを取りつつ関係性を深めていくところが見られるんじゃないかなと。
フィッセルについては、人に教えるのが上手いということと、自分が上手いこと、そのちょっとした違いが見どころになると思います。そこに気づいて教え方のコツを学んでいくのですが、このふたりでそういったドラマ的な作り分けをしていました。
僕も一度大学で教えたことがあるのですが、誰かに教えるとなると凄く難しい。逆に自分の方が勉強になるし、しっかり理解していないと教えられません。教えることを専門にやっている方は毎年ループでやっているのでそういう苦労はないそうですが、単発でやっていると厳しい。フィッセルはそういう深く掘り下げられる部分を入れています。
──そして、ベリルが父・モルデアと戦うことも示唆されています。視聴者のみなさんに期待してもらいたいポイントは?
鹿住:ベリルの中にも親に対する勝手なイメージみたいなものがあり、しかもその相手は自分にとって剣の師匠でもある。そこを超えるとはどういうことなのか……という部分に注目してもらえればと。実際に戦って勝つか負けるかしかないのですが、そうやって何かを超えるということについて、共感できるようなシーンになっていると嬉しいなと思っています。
また、剣戟アクションはかなり激しいものになりました。ベリルが首都で特別指南役になってから戦った相手との経験でモルデアにぶつかっていくようなシーンになったのですが、それに対してモルデアがどう対応するかも注目です。あのシーンだけで3~4分はあり、もしかしたら第二期で一番長いアクションシーンかもしれません。
──それはさらに期待が高まりますね。また、アリューシアやスレナなど、他の弟子たちの登場に期待できる部分はありますか?
鹿住:アリューシアとスレナは今回ふたりでお酒を飲むシーンがあるのですが、第一期での掛け合いよりさらに早口になっています。クルニやヘンブリッツの過去もちょくちょく出して少し深堀りしています。
──第一期では、そんな弟子たちと出会った時期によってベリルの描かれ方や年齢感が違っていた部分も印象に残っています。
鹿住:そういう時もベリルの優しさに関しては凄く考えるようにしていました。ベリルは感受性が強くて、人の痛みが理解できるじゃないですか。だからなるべくそこは気を遣うようにしていましたね。
──ベリルの優しさをアニメで描く上で注意していたことはあるのでしょうか?
鹿住:どこにでもいる普通のおっさん感を出そうと思っていました。特に心の中のぼやきに関しては、愚痴にならないぐらいのバランスを大切にしています。岡田さんとも脚本段階からモノローグの温度感についてディスカッションして、言葉遣いはかなり気を付けました。
汚い言葉をあまり発することがなく、どちらかというと自虐的にやるのがおっさんだよねと考えたんです。それが平田さんの飄々としたぼやきと凄くマッチしたので、その計算が上手くはまったイメージがあります。
僕らも脚本段階だと「この台詞は不快に思われないだろうか?」「噓くさくならないだろうか」と心配するのですが、平田さんが言うと成立する。平田さんがベリルというキャラクターに色を付けて、さらに広げてくれたような感覚があります。



























