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- 藤崎萌恵
- 大阪府在住のライター。小説、漫画、アニメ、映画など“好き”を追い続ける。

すう先生の大人気BLコミック『キスは捜査のあとで』が、渡部 秀さん&齋藤璃佑さんW主演で実写ドラマ化。渡部さん演じる天然人たらしのアラフォー人情派刑事・多古井平助と、齋藤さん演じる毒舌エリート後輩・塩野 秀が織りなす、ノンストップ・ラブコメディです。
第2話では、“取調室のキス”をきっかけに、塩野の多古井への猛アプローチが加速。理解が追いつかず慌てふためく多古井に、塩野は「理由なんて一つしかないでしょ。キスするのに」と言い放ち──。
本稿では、ドラマ『キスは捜査のあとで』第2話「キスする理由はひとつ」をレビュー。多古井の中で塩野の存在は膨らみ始め、塩野のドSっぷりに片想いのいじらしさも見えました。
※本稿はドラマ『キスは捜査のあとで』第2話までのネタバレを含みます。
密室の取調室で、塩野は煽るように多古井を見つめた後、突然のキス。慌てふためいて取調室を飛び出し、理解が追いつかない多古井に、「理由なんて一つしかないでしょ。キスするのに」と投げかけます。
やたらと突っかかられて嫌味を浴びせられ、お見合い相手との会話を激しい壁ドンで邪魔されて、「腹を割って話そう」と挑んだらキスされるという予測不能の展開。そんなわけで、多古井は大混乱に陥ってしまったわけです。
第1話に遡りますが、突っかかる塩野に感情を昂らせながら「来い!」「座れ!」と威勢よく言い放っていた多古井。この何も知らない頃の勇ましさがあることで、キス後の戸惑いや激しい動揺、ドキっとしてしまう瞬間との対比をどこまでも味わい尽くすことができます。
第1話でも漫画的表現を自分のものにする渡部さんの演技力に唸りましたが、第2話ではさらに多古井の引き出しの多さに飲み込まれるばかり。原作の多古井の魅力に渡部さんの解釈を練り込むことで、ドラマの多古井は“年下に翻弄されるアラフォー”の愛くるしさの可能性を極限まで高めています。
「虫がいた」とか「母ちゃんに電話しねぇと」とか、激しく動揺したときの言い訳が意味不明すぎてコミカルさも倍増。こんなに可愛い多古井を引き出せるのは塩野だけだし、塩野の冷静さを奪うのは多古井だけなんですよね。
齋藤さんは今回も美しく気品のある佇まいを保ちながら、塩野の強い執着や独占欲を全身から滲ませています。クールな表情に潜む重い愛で多古井を見つめる、“様子のおかしいイケメン”がドラマでも成り立つ奇跡。知れば知るほど様子のおかしさが際立つ塩野ですが、ドラマでもその片鱗を最初から漂わせていました。
その結果、画面の中に映っていないときまで我々視聴者の脳内で存在感を放ち、「今も多古井さんのこと絶対見てるよね」と思わせてくれるのです。画面の奥からじっと見ているカットや、画面の奥から現れて多古井の姿を捉えるカットなど、怖くて笑える描写も交えて塩野らしさを随所で披露。
脚本も演出も愛情をもってキャラクターらしさを追求し、そこに俳優陣の演技力が乗ってキュンも笑いも生まれる、至高のラブコメディに仕上がっているのです。
お見合い相手・ハルカは、多古井が帰って来るのを待ち伏せしていたであろうことも含めて、背筋の凍る怖さがありました。ハルカのヤバさを察知した多古井のもとへ現れた塩野に、救世主のごとく縋りたくなるほどに。
塩野からもハルカからも好意を向けられるなか、ハルカといい雰囲気になり、メロメロになっていた多古井。しかし、それ以上に多古井の頭から離れないのが、塩野とのキスなのです。あからさまな“キスの天ぷら ”にじわじわきてしまいました。
突然キスしてきた塩野には、戸惑いながらも“嫌じゃない”というのが本音。多古井はそんな自分に動揺していますが、彼は分からないなりにも歩み寄ろうとしているんですよね。塩野の存在が確実に多古井の中へと侵食していることも明らかです。
多古井は過去の経験から恋愛を面倒だと感じるようになっていましたが、このままひとりでいるのかという不安も募らせています。タイプの人が好意を寄せてくれるならデレデレするし、恋に臆病なわけではない。
ただ、気掛かりなのは“皆にいい顔をする”と指摘されること。元カノにも言われたことがあり、かなり気にしていたんですね、多古井さん……。
「多古井さんの一番になりたい人からすると、多古井さんの誰にでも優しいところが好きなのに、自分にだけじゃないからそれがムカつく」
“塩野がそう思っている”かのような言い方に揺れ動く多古井の感情を、あえて説明しないという演出。ここは多古井の心を揺さぶっているシーンなので、渡部さんの演技に委ねているところに製作陣の熱意とこだわり、役者への信頼を改めて感じました。多古井の心の中で塩野の言葉を反芻する描写も上手く作用しています。
ハルカのヤバさを察知した多古井が塩野にヘルプを求め、塩野がこれを汲み取って助け舟を出し、多古井が話を合わせるという意思疎通。この多古井と塩野の一連のやり取りも見事でした。
ここからは“きゅん”な台詞と仕草のオンパレードで、塩野のドSっぷりが炸裂するご褒美(?)シーンの連発です。
塩野はハルカに詰め寄って牽制し、多古井をグッと引き寄せて「俺のだから」と宣戦布告。そのまま多古井を自分の部屋に引き入れた後、「二度と顔見せんな 帰れ」と彼女を突き放す様は痺れるほど怖くてかっこいい!
つきまとい行為をするハルカへの毅然とした態度に加えて、すでに彼女の異常性を見抜いてなのか調べていたスマートな仕事ぶり。塩野がなぜここまでするのか、多古井がようやく彼の想いを知ってはぐらかすと、今度はとっておきの足ドンをくらいます。多古井の反応がもう、期待以上にいちいち面白可愛い。
かつて、これだけ自分の気持ちに正直で分かりやすくて、年下に翻弄される愛くるしいアラフォーはいただろうか。
多古井の感情が表に出やすいこともあり、塩野は自分には可能性がないと悟り、どこか“諦め”に似た境地になっていたのでしょう。
ずっと見ていたからこそ望みがないと知ってしまう悲しさ。「いいならいいよなぁ」と言い聞かせるような切なさ。足ドンで感情をぶつけるしかない苦しさ。
だからこそ、多古井が“嫌じゃない”と呟いたときの嬉しさは計り知れない。驚いた塩野の瞳に光が差し、その表情には一縷の希望を宿していました。ようやく言えた「好きです」の言葉。きっと、塩野がずっと言えなかった言葉。
ドSっぷりを披露する塩野ですが、そこには片想いのいじらしさも見えました。原作のクールな塩野に、柔らかさも乗ったドラマ塩野の「好きですよ」はまた格別です。
そして、今回も我々の代弁者・江川の反応が実にリアル。塩野を気にする多古井の様子を全て察してほくそ笑む姿にも、わかるわかると深く頷きました。
多古井が塩野のことで頭がいっぱいになっていく過程を、彼女と一緒に見守りながら、塩野の不器用な恋を応援したいですね。江川をはじめ脇を固める俳優陣の安定感が、ドラマへの没入感を一層高めてくれるのです。
自分は嫌われていると思っていた多古井と、自分は恋愛対象にならないと思っていた塩野。第3話では、2人の距離がさらに縮まりそうな予感⁉ 塩野の気持ちを知った多古井は妙に意識したりモヤモヤしたり、ますます塩野のことが頭から離れないようです。
| 作品名 | キスは捜査のあとで |
|---|---|
| 放送形態 | 実写ドラマ |
| スケジュール | 2026年7月26日(日)~ ABCテレビにて |
| キャスト | 多古井平助:渡部秀 塩野秀:齋藤璃佑 江川まり子:工藤遥 長谷川次郎:金井勇太 八木保:ドロンズ石本 大将:矢柴俊博 松雪みすず:菊川怜 |
| スタッフ | 原作:すう『キスは捜査のあとで』(Jパブリッシング) 脚本:村田こけし 演出:大内隆弘 浅見佳史 プロデューサー:藤田洋平 寺川真未 川西琢(ABCリブラ) 制作協力:ABCリブラ 制作著作:ABC |
| 主題歌 | 「なつめき」OCTPATH |
