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- 藤崎萌恵
- 大阪府在住のライター。小説、漫画、アニメ、映画など“好き”を追い続ける。

すう先生の大人気BLコミック『キスは捜査のあとで』が、渡部 秀さん&齋藤璃佑さんW主演で実写ドラマ化。渡部さん演じる天然人たらしのアラフォー人情派刑事・多古井平助と、齋藤さん演じる毒舌エリート後輩・塩野 秀が織りなす、ノンストップ・ラブコメディです。
第7話では新章がスタートし、多古井と塩野が遠距離恋愛に。想いを通わせた2人は、会えない時間も着実に愛を育んでいきます。
本稿では、ドラマ『キスは捜査のあとで』第7話「恋のライバル?マウント男襲来!」をレビュー。塩野は仕事の合間を縫って、2時間かけて多古井のもとへ。直接会って顔を見て、言葉をひとつひとつ交わす度に2人の想いがまた重なっていくようでした。
※本稿はドラマ『キスは捜査のあとで』第7話までのネタバレを含みます。
「好きなんだ お前が」──多古井がちゃんと言葉にして塩野に伝えたことで、ようやく想いが重なった夜。そして穏やかな朝を迎えた2人のあいだには愛しさが溢れ、これまでにない親密さも漂わせていました。
物語は新章へと突入し、塩野が本部へと異動したことで遠距離恋愛に。とはいえ気持ちを確かめ合った2人の電話でのやりとりには、離れていてもたしかな幸せが。何度も「うれしい」と言わされる多古井と、それを聞いて嬉しさを噛み締める塩野。電話越しにお互いの声を聞きながら、会えない時間も着実に愛を育んでいきます。
引っ越し前、なんと塩野は大切に飼っていた“かめきち”を多古井に託していました。怪しまれずに会うための口実というだけでなく、実のところ多古井を繋ぎ止めたくて必死なのではないでしょうか。
あの時、多古井に“逃げ道”を残していた塩野ですが、覚悟を決めた今の塩野は絶対にもう多古井を逃したくないはずだから。多古井からいかに愛されているのか、塩野にはたっぷり思い知ってほしいものです。
遠距離の寂しさは電話の声で慰められ、デートの約束を心待ちにする日々。多古井のご機嫌度は最高潮で、“いいことありましたよ”と言いたくて仕方がないような浮かれっぷり。同僚の江川(演:工藤 遥さん)と長谷川(演:金井勇太さん)は一目見て、多古井の幸せそうな様子を察知します。
男性同士の恋愛に偏見があったり茶化したりする人たちがいる一方で、多古井と塩野を応援して寄り添う人たちがいるのも事実。前回、ようやく多古井と塩野の関係を知った長谷川ですが、その視線はフラットで温かいものでした。
どこか吹っ切れたような多古井の今の姿は、恋愛にバカになっている自分を受け入れることができたからこそなんですね。あの1話のキスをきっかけに、多古井の変化と成長をじわじわと感じることができます。
そんななか山ノ道署の生活安全課に、塩野の後任として大前田(演:小方蒼介さん)が配属。改めてですが、多古井は初対面であっても人との距離が近くて、無自覚な優しさは相変わらず。多古井の良さではあるものの、遠距離ならなおさら塩野の心配は尽きないだろうと思いを馳せてしまいます。
塩野とのデートを楽しみにしていた多古井ですが、キャンセルの連絡が入って激しく落胆。その夜、大将(演:⽮柴俊博さん)の居酒屋でひとり酒を飲み、会いたいのに会えない遠距離の寂しさを嘆いていると、思いがけず塩野が姿を現します。
片道2時間、往復4時間。明日は休みでもないのに、塩野は仕事の合間を縫って多古井のもとへ駆けつけたのです。
「多古井さんに会えないほうが無理なんで」
2時間かけて自分に会いに来てくれて、“会いたい”気持ちを伝えてくれる塩野に、多古井は嬉しさを隠しきれず。ちなみに多古井の状況は、江川あたりから何かしら塩野へと知らされている気がします。
2人並んで歩く夜道で、「塩野」じゃなくて名前で呼んでほしいとお願いされた多古井は、恥じらいながら初めての「秀(しゅう)」呼び。名前を呼んでもらえた塩野は「いいっすね」と満足そうに笑みを浮かべていました。
塩野が素直な気持ちを伝えてくれるから、思いきって多古井も泊まらないかと素直に誘うことができたのではないでしょうか。「今日は帰ります」と断られて少し残念そうにしていた多古井に、塩野がふいに歩み寄ります。
夜空の下で交わしたキスは、瞬きするのを忘れるほどに美しい。並んだ立ち姿も絵になる多古井と塩野ですが、横顔の造形美も格別。さらにこのドラマは、全編を通して西陽から夜のライトまで、光を操る手腕にも唸らされるばかりです。
「次来る時は泊まるから」と言われた多古井の足取りは弾むように軽やか。家が隣同士だったあの頃よりも、遠距離でも今の方がずっと心はそばにあります。
直接会って顔を見て、言葉をひとつひとつ交わす度に2人の想いがまた重なっていく。この美しい情景に引き込まれて、なぜだか涙がこぼれそうになります。
片想いの切なさや恋が叶う喜びを、軽快なラブコメで時にしっとりと描き出してきた本作。ここへきて漂い始める“甘美”と“色香”に、どうしていいのか分からないほど夢中にさせられてしまいました。
このドラマは結ばれたと同時に完結を迎えるのではなく、付き合ったその後を見せてくれるのもありがたい。渡部さんと齋藤さんの高い演技力とその化学反応で、原作を読んでいても毎話新鮮な感動を覚えているため、多古井と塩野の“蜜月”をどう演じてくれるのか、どうしても知りたくなってしまうのです。
山ノ道署に本部から監察が入り、その中には塩野の姿が。幸せに浸った時間から一転、冷たい表情で素っ気ない態度をとる塩野に、多古井は戸惑いを隠せずにいました。仕事モードに徹してエリート感を纏う塩野は、まさに原作から飛び出してきたかのよう。
監察の指揮を執る伊達ジョージ(演:渋江譲二さん)は、多古井にだけ意味深な様子で煽るような態度も。塩野とは「秀」「ジョージさん」と名前で呼び合い、塩野の肩に馴れ馴れしく手を回すなど、何やら親密な雰囲気を醸し出していました。
そんなわけで、“嫉妬する多古井”が渡部さんの名演で世に放たれたわけです。これまで様々な表情を見せてくれた多古井ですが、まだ引き出しがあったのかと感嘆するばかり。
塩野はというと、大前田のミスに厳しい言葉を突きつけており、その表情と口調には今まで見せたことのない凄みが。続けて伊達にも釘を刺される大前田に多古井は優しく寄り添い、塩野はその様子をじっと見つめていました。
こうして多古井と塩野の前に、それぞれの心をざわつかせる存在が同時に登場。伊達は漫画的なクセの強さも練り込み、大前田は多古井に好意の眼差しを向けながら、どこか腹に抱えていそうな雰囲気も。
監査が終わって多古井に呼び止められた塩野は、やはり冷たい態度をとっていました。だけど、多古井の顔を見ながら徐々に表情の強張りが解けていき、「帰りたくなくなるでしょ」と口にしたその語尾はついに甘さを交えたものに。
「多古井さんが疲れてない日に泊まりに来るんで」と“恋人の顔”で囁く塩野ですが、またすぐに“仕事の顔”に戻して去っていく姿にもグッときてしまいました。齋藤さんの公私の演じ分けがお見事。こんなふうに塩野が自分だけしか知らない顔を見せてくれるのだから、多古井はメロメロでしょう。
と思ったら多古井さん、ターン&ガッツポーズ、おまけに口笛でまたまた超ご機嫌な様子。多古井をよく知る大将でさえ見たことのない顔でデレデレに。
それはそうと、やはり塩野は多古井が疲れているから泊まらなかったようです。彼は多古井が何気なく漏らした一言一句をちゃんと聞いているんですよね。多古井から誘われて泊まりたくないわけがないのに、一瞬引き締めるような表情をしていたので、鋼の精神で断ったのでしょう。
ドラマの塩野は特に理性を保っているように見えますが、理性が崩壊して余裕などひとつもなくなる塩野も見てみたい。塩野は付き合えると思っていなかった多古井と付き合えて、嬉しくて壊したくなくて、今の関係を心から大切にしているんだろうなと思えます。
塩野は多古井への想いを言葉にして伝えていますが、言葉足らずなところがあり自己完結してしまう節も。それゆえに多古井は混乱して振り回されて、塩野の言動に一喜一憂して、結果的にあらゆる感情を見せてくれるわけですが。
今回は監査のため塩野が山ノ道署にいたこともあり、遠距離恋愛とは思えない密度で2人が一緒にいました。このドラマは、どんな状況でもしんみりとなりすぎず、本気の愛と涙と笑いを届けてくれる。“ラブコメ”を極めていく作り手の技量と愛情、そしてユーモアも、本作への愛着が増していく理由のひとつなのかなと思います。
| 作品名 | キスは捜査のあとで |
|---|---|
| 放送形態 | 実写ドラマ |
| スケジュール | 2026年7月26日(日)~ ABCテレビにて |
| キャスト | 多古井平助:渡部秀 塩野秀:齋藤璃佑 江川まり子:工藤遥 長谷川次郎:金井勇太 八木保:ドロンズ石本 大将:矢柴俊博 松雪みすず:菊川怜 |
| スタッフ | 原作:すう『キスは捜査のあとで』(Jパブリッシング) 脚本:村田こけし 演出:大内隆弘 浅見佳史 プロデューサー:藤田洋平 寺川真未 川西琢(ABCリブラ) 制作協力:ABCリブラ 制作著作:ABC |
| 主題歌 | 「なつめき」OCTPATH |
