
『楽園追放 心のレゾナンス』11.13公開前リレーインタビュー第1回:プロデューサー・野口光一【前編】|「CGアニメを普及させたい」――『楽園追放』は、その思いから始まった
水島精二×虚淵玄 再び。『楽園追放 -Expelled From Paradise-』(2014年)のその先の物語を描く続編『楽園追放 心のレゾナンス』が2026年11月13日に公開されます。アニメイトタイムズでは、公開まで、さまざまな主要スタッフへのインタビューを敢行! その成り立ちから制作秘話、物語の魅力に至るまで、多角的に迫っていきます。
連載第1回は、作品のプロデューサーである野口光一さんが登場! インタビューの【前編】は『楽園追放 -Expelled From Paradise-』公開当時の思い出を振り返っていただきました。
CGアニメーションを普及させたい、その思いで作った『楽園追放』
──『楽園追放 -Expelled From Paradise-』(以下、『楽園追放』)は2014年に公開された映画で、脚本を担当する虚淵玄さんは『魔法少女まどか☆マギカ』(2011)や『PSYCHO-PASS サイコパス』 (2012)で、多くのアニメファンに名前が知れ渡ってきた時期でした。ただ、CGアニメーションというと、まだ「違和感がある」と言われていた時期だったとも思うのですが、なぜこの企画を立ち上げようと思ったのですか?
野口:まず最初に「CGでオリジナルアニメーションを作りたい」という思いがありました。なぜCGなのかというと、自分がCG(VFX)出身だからなんですけど、それを作るために、まずはライターを探そうと思ったんです。
CGと言っても特撮系もやっていて、特撮は昔、脚本にSF作家さんを起用していたという歴史もあります。なのでSF作家さんにお願いできないかと思い、『SFマガジン』などを読んで探していたんです。その時に『神林長平トリビュート』の『敵は海賊』という小説に出会い、この方にお願いしたいと思ったのが虚淵さんだったんです。それが2009年くらいなので、『魔法少女まどか☆マギカ』放送の前の時期です。。伝手を辿ってニトロプラスさんに「全編3DCGで、SFのオリジナルアニメを一緒に作りませんか?」とお話をし、プロットを書いていただいたんです。
──そうだったんですね。
野口:最初はそこそこ難しいSFで『堕天使戦線』というタイトルだったんですけど、そこから監督とキャラクターデザイン、そして資金集めをしていく中で、キャラクターデザインの齋藤将嗣さんに声を掛け、プロットの段階でアンジェラ・バルザックを描いてもらいました。
その後、企画を通そうといろいろ考えていたのですが、なかなか監督をアサインすることができず、どうしようかと思っていたときに『まどか☆マギカ』の第3話が放送されたんですね。そこで虚淵さんの名前が爆発的に知れ渡り、会社的にも「企画があるのであればやろう」となり、水島精二さんに監督として声を掛けたんです。水島さんは、もともと虚淵さんと知り合いだったようで、すぐに「やろうよ」という話になり、そこから1年半かけて作ったというのが『楽園追放』になります。
──時代を先取りしていたんですね。
野口:それで言うと『まどか☆マギカ』がすごかったと言えるでしょうね。お金を集めて、これでオリジナルアニメを作るぞ!となったわけですから。
──CGアニメーションについてはいかがですか?
野口:当時はCGアニメーションを普及させたいという思いだけで突っ走っていたんです。若気の至りじゃないですけど、CGでアニメをやりたかった。ただおっしゃる通り、当時は「不気味の谷」という言葉もありましたし、ヌルヌルしているとか、アニメファンから敬遠されていた時代ではあるんです。ただ、それを克服して新しいアニメを作りたいという気持ちが強かった。それこそ海外では『トイ・ストーリー3』(2010)が爆発的にヒットしてたり、モーションキャプチャーを使用したCGアニメが盛り上がっていた時期でしたけど、日本はやはり作画アニメの人気が根強く、CGアニメはあまり浸透しなかったんですよね。
そんな中、自分が考えたのは、当時、『時をかける少女』(2006)のように単館系のアニメ映画がヒットする流れがあったので、そんなにお金をかけずに、ニッチなジャンルのファンに向けてアニメを作るということだったんです。それこそ、当時渋谷のスペイン坂にあったシネマライズで上映するような、コアなアニメファンに刺さる、知る人ぞ知るCGアニメを作ろう!と思っていました。
──90年代後半に、TVアニメでCGが取り入れられるようになりましたが、当時は、お金がかかるとも言われていたような気がします。そのあたりはどうだったのですか?
野口:虚淵さんにオーダーしたときにCGでやるということは伝えているので、基本的にキャラクターは少なくないとダメですし、衣装を変えるのは難しいという話もして、その条件を飲んでいただいていたんです。それでアンジェラとディンゴの2人と、ロボットであるフロンティアセッターの物語になったので、そこはさすがだなと思いました。やはり元々ゲーム出身の方なので、CGについてもいろいろ知っていて、そこも踏まえて考えてくれていたんですよね。とは言え、パーツはいっぱい作れるので、ルックがうまくできれば勝ち目があるのではないかとスタートしました。
──当時、まだキャラクターの動きに違和感があったのですが、『楽園追放』にはそれをあまり感じませんでした。それを克服するための大きな要因はあったのでしょうか?
野口:アニメーション制作はグラフィニカさんにお願いしていたんですけど、当時よく話していたのは「表情にとにかくこだわってほしい」ということでした。特別なツールを作ってもいいから表情を豊かにしたいという要望を出していたら、実際に特殊なツールを作ったり、手作業でパーツを描いたりしていたんです。『楽園追放 心のレゾナンス』(以下、『心のレゾナンス』)では、ソフトも発達して、手描きは前作よりなくなっているんですけどね。あとはモーションキャプチャーを使わないようにしましょうという話もしていました。手付けのCGアニメーターを育てようと思って、そこはグラフィニカさんと組んでやっていました。
──その期待に応えてくれたということですね。
野口:そうですね。あと時代的にちょうど良かったというのもあります。TVアニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』(2013)が放送され、その後『シドニアの騎士』(2014)も始まったんです。少し毛色は違いますけど、『STAND BY ME ドラえもん』(2014)も公開されていたので、「CGアニメを観てもいい」というムードができていたんですよね。そこで時代が切り替わった感じがあったので、良いタイミングでした。そんな時代の転換期の作品のひとつになれたのは、良かったなと思います。
──『STAND BY ME ドラえもん』は、『トイ・ストーリー』の流れという印象がありましたが、『蒼き鋼のアルペジオ』と『シドニアの騎士』は、日本のセルアニメをうまくCGに落とし込んでいる印象がありました。野口さんと同じようなことを考えていた人が多かったということなんですね。
野口:そうだと思います。時代は重なるというか、そうじゃないとムーブメントって起こらないんですよね。それ以降、CGでアニメを作っていいんだという流れに変わっていったと思いますし。
個人的には作画アニメと3DCGアニメーションはジャンルが違うと思っているんです。作画アニメは線でアニメを描くので線のすごさがある。でもCGアニメは立体物を動かすので、モデルを面や立体で捉えることになる。なので、線と面と立体で、アニメーションのジャンルが違うし向かうべきところも違ってくるんです。その意味で新しい表現のアニメというのをCGでやりたいと思っていたし、CGアニメーションの一歩先を行きたいよねというのは、今、チームに言っているところです。
『楽園追放』のときは、モーションアドバイザーとして板野一郎さんに入っていただいていましたが、「板野サーカスをCGでやるとどうなるのか」という部分の見せ場作りもありましたが、今回の『心のレゾナンス』ではそこを超えなければいけないと思って「何かあるでしょ」とアニメーターさんに言っていたら、その一つ回答として変顔を一生懸命作っているんですよ。『心のレゾナンス』もキャラクターの顔にはこだわっているけど、そっちの方向に行くんだ!と思ってしまいました(笑)。
──PVにも変顔はありましたね(笑)。確かにCGもここまで来たのかと感じました。
































