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- おかもとみか
- 2021夏デビューのオトナ女子新人ライター。ミドル層の男性声優さん関連記事を書くことが多いです。

『とらドラ!』は、2006年に敢行された竹宮ゆゆこ先生によるライトノベル作品です。本作はコミカライズを経て、2008年にはアニメ化もされています。原作がこの世に出てから、2026年現在で刊行20周年を迎えましたが、主人公・逢坂大河(あいさか たいが)はいまだに「ツンデレ」「美少女」キャラクターランキング上位に名を連ねているほどで、大河と作品の人気ぶりは目をみはるものがあります。
筆者が『とらドラ!』に出会ったのは、実はアニメ放送が始まった2008年。好きな声優さんがアニメに出演している、という本当にささいな(しかし重要な)きっかけでした。まだ、自身を「ラブコメ大好き人間」だと自覚する前のことです。いや、むしろ「ラブコメ大好き」だとはっきり認識した最初の作品だ、と言い切れるのがこの『とらドラ!』なのです。
そこから十数年、思い返せば定期的に見たくなる作品のひとつで、見るたびに以前とは違った感情や愛する理由が生まれる本作について、本稿では筆者の個人的な『とらドラ!』愛と魅力を語らせていただきます。
🐯とらドラ20周年🐲
— 電撃文庫 (@bunko_dengeki) August 15, 2026
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主人公・逢坂大河。片思いをしている北村祐作へのラブレターを誤って高須竜児のカバンに忍ばせてしまったことから、タイトルどおり「虎(タイガー)と竜(ドラゴン)」として並び立つような関係性に発展していくのがこの『とらドラ!』の始まり。
大河はとにかくかわいい。そして規格外に小柄、華奢。竜児いわく”人形みたい”、という表現がぴったりの美少女です。筆者自身が小学生の頃から日本人女性の平均身長以上という体格だったため、まずこの「華奢で愛らしい」というビジュアルに猛烈に憧れを抱かずにはいられませんでした。
しかし、そんな大河についたあだ名は「手乗りタイガー」。目つきの悪さだけで周囲から「ヤンキー」認定されていた初対面の竜児にすら、大河が殴りかかったほどの”凶暴さ”に由来しています。
とんでもなく小柄でかわいらしいのに、誰からも恐れられるほどの凶暴性を合わせ持つという二面性。そうした大河のギャップがなんともたまらない上に、大好きな北村祐作を前にすると緊張して何も言えなくなってしまう乙女な顔も覗かせていて……! その大きすぎる振り幅が魅力的すぎて……私は「大河」沼にずっぽりとハマっていました。
竜児にも手伝ってもらいながら、不器用に懸命に祐作へアプローチする大河のひたむきさや一途に恋する気持ちはとてもかわいらしくて微笑ましい。そんなところにも、私はただひたすら激しい共感を覚えるばかりなのです。
一方、竜児に対してはわがままを言ったり口が悪かったりと、素の部分をさらけ出している大河。親友だとしてもあれほど本音100%でぶつかり合うことのできない私には、大河の清々しさすらある態度が本当に羨ましい!
自分にないものばかりを持っている大河に憧れの念が尽きません。
結果から見ると、高須竜児は大河、櫛枝実乃梨(以下、みのりん)、川島亜美(以下、あーみん)から好意を寄せられることになるという、いわゆるハーレム状態へと物語が展開していきます。
複数の美形な異性たちになぜかモテまくる、あくまで普通の主人公……性別をどちらに置き換えたとしても、人間の理想を全部乗せしたような作品に夢を抱くのはエンタメの定石であり人間の希望!(笑)
しかしこの『とらドラ!』に限っては、竜児がなんのいわれもなく、ただモテまくるだけの物語ではない、というところも私の心がわしづかみされたポイントでした。高須竜児には何人もの女子たちから「愛される理由」があるから……!
まず、家事ができる。これは大きい!(笑)料理も得意で、母・泰子とペットのインコちゃんの世話をしながら、大河にも食事を作ったりお弁当を持たせたり。
その上、カビ取りなどの掃除も大好き。本作冒頭では、散らかりまくった大河の部屋をわずかな時間で片付け、汚れたキッチンまでピカピカにしてみせる有能さ。
加えて、大河の恋の応援や貧乳を隠すための水着用偽乳パッド制作、カナヅチの大河のために水泳の特訓などなど、かいがいしくお世話をする竜児。最初は大河に脅された(?)からだったかもしれませんが、悩んだり落ち込んだりしている人を見るとつい体が動いてしまう「優しさ」の塊であるところは、竜児の一番の魅力だと思っています。
大河だけではなく、接するすべての人に対してそうした懐の深さを見せる竜児。クラスメイトとして交流を深めていく中で、竜児の優しさに惹かれていくのは当然の流れであり、読者・視聴者もみんな、そんな展開に納得しかない、という要素がてんこ盛りなのです。
夏休みにあーみんの別荘に出かける「海」エピソードや切ない「クリスマス」回など、好きなシーンは多数あれど、これに勝るものはない! と思えるほど筆者が大好きなのは「文化祭」。アニメではなんと第11~13話という、3話数分をかけて丁寧に描かれているのです。
この「文化祭」では、大河の父親が突如現れたことをきっかけに、大河と竜児のそれぞれの家庭環境から来る複雑な心境が絡み合います。竜児の介入もあって、父親を信じてみようとする大河。ところが、文化祭に来るはずだった父親はいつまで経っても現れず……ついには竜児とみのりんとの関係性に亀裂が生じる事態にもなるのです。
そんなゴタゴタがありながら、ミスコンに出場し見事優勝した大河の「天使」のような衣装姿は愛らしく、最高の神回で……!
大河・竜児・みのりんのそれぞれの思いが交錯する中で開催された、生徒会主催の「ミスター★福男」レースでは、賞品となるミスコン優勝者(大河)へのティアラ戴冠等の権利をかけて竜児とみのりんが爆走を見せます。
レース中、竜児とみのりんは力を合わせて競争相手を次々と薙ぎ倒していくことになるのですが、その中でわだかまりが解け、手を取り合って一緒にゴールテープを切ることに……! そんな2人に共通してあるのは「大河の幸せ」を願う気持ちのみ。お互いを思いやる様子は、涙なくしては見られない名シーンでした。
父親がいないがゆえに「父親への幻想」を大河に押しつけてしまった竜児の後悔。親友の自分に大河が父親の話をしなかったことに対するみのりんの憤りや嫉妬心、寂しさ。そして一度の裏切りを乗り越えようとして再度父親に裏切られてしまった大河の壮絶な空虚感。
『とらドラ!』の魅力が20年経過してもなお語り継がれているゆえんは、こうした細やかな心理描写にあると筆者は信じています。
先に書いたとおり、大河推しの筆者。初見時は、大河と竜児を応援するあまり、みのりんやあーみんについてはどちらかというとうっすら苦手意識すら持っていたのかもしれません。ところが、そんな筆者の気持ちが一転し始めるのです……!
『とらドラ!』が好きすぎて、数年おき・定期的にアニメを見返していく中でそれは起こりました。
竜児に対する恋心と大河を大切にしたい気持ちで葛藤するみのりんの苦しさや、広い視野でまわりを見渡し大人な考え方を持つ寂しがり屋のあーみんに対して、私の中でどんどん好意がふくらんで行くのです。
大河、みのりん、あーみん──この3人、全員タイプが違いすぎる。そして3人とも、交流を深めていくうちに竜児の優しさに惹かれていくわけで、3人の内の誰かに思い入れを持ってしまうと、どうしてもほかの2人が「恋敵」のようにも見えてしまうから、なんとも不思議なものです。
でも時間が経過してから改めて見返すと、受ける印象も気持ちも変わってくる。初見時から自分も少し”大人”になっている分、あの頃とはまた違う視点で3人それぞれの新たな面が見えてくるようになっていたのです。
結果、「みんなちがって、みんないい」という金子みすゞ的境地の「箱推し」になってしまったのでした。
みなさんは初めて『とらドラ!』を見た時から、印象や好きなキャラは変わりましたか? 私のように何度も見返していくうちに、もしかしたら違う推しが浮かび上がって見えてくるようになるのかも知れません。
ここまで、筆者が『とらドラ!』を愛する理由をいくつか綴って来ましたが、その最大の理由は、本作が「ただのラブコメにあらず」というところなのかもしれません。
もちろん大河と竜児の掛け合いやドタバタコメディ要素、そこから一転した切なく甘い恋愛模様が大好きなのは否めません。でもそれ以上の魅力が『とらドラ!』には詰まっていると思っています。
まずは大人たち。
1人親で子を育てて行くと決めた竜児の母、再婚した挙句自分の都合のいい時(悪い時)にしか子を顧みない大河の父。本作では、そんなさまざまな事情を抱える大人たちに翻弄される竜児や大河たちの姿を、時にシリアスに描きながらも、子どもたちが自分の意思で「生き方」を選択をしていく様子が表現されています。
本作初見時の筆者は、竜児や大河の「子ども側」の気持ちに立って、大人たちの勝手な(ように見える)行動にやきもきさせられていたものでした。しかし、そこから時が経ち「大人側」に近い、もしくは越えた年齢になってから見る『とらドラ!』は、「そうせざるを得なかった事情」が大人たちにもあったのではないだろうか、という気持ちを持つようになっていて……心境の変化に我ながら驚いたりもしました。
そして、大人とは対極の存在として描かれる高校生たち。恋愛感情や友人関係、進路などに悩み、時にはぶつかり合ってお互いを傷つけることもあれば、励ましあってみたり……と、この多感な時期にしかできない経験や関係性をしっかりと構築していて、とても羨ましい気持ちになってしまいます。
特に2年C組の賑やかさ、結束力はかなり魅力的! 「真面目」が制服を着ているかのようなクラス委員長・北村祐作は、優等生なたたずまいながらなぜかしょっちゅう裸になる性癖(?)を見せていたり。また、「アホ」といじられながらも、クラスの人気者かつムードメーカーの春田浩次がいたり、と楽しいクラスメイトばかりの2年C組。陰キャ(笑)高校生だった筆者も、こんなクラスで高校生活を送りたかった! と思わずにはいられない雰囲気が、もしかしたら私が一番心惹かれていた部分なのかもしれません。
私にとって『とらドラ!』は、憧れの「イマジナリー高校生活」だった……!
今回、原作刊行20周年を記念してサブスク解禁となった『とらドラ!』サウンドトラックを耳にしながら、そんな風に改めて思い返せた機会にもなりました。みなさんにとっての『とらドラ!』は、どんな存在でしたでしょうか。