
どんな一日も、自分の気持ち次第で晴れにも曇りにも、雨にもなるはず|miletが語る、TVアニメ『ふつつかな悪女ではございますが』OPテーマ「Sunny」に込めた思い
TVアニメ『ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~』のオープニングテーマを、miletが担当。ソロでアニメのオープニングテーマを歌うのは今回が初めてとなる。作品の幕開けを飾る「Sunny」は、玲琳と慧月の入れ替わりを軸に、誰かになりたいと願ったことのある人の心に寄り添う一曲だ。
エンディングテーマとは異なるスピード感やダイナミックさを意識しながら、伝統的な建造物や絵画などから作品の世界観を思い描き、野村陽一郎とともにサウンドを構築したmilet。「Sunny」の制作過程、アニメへの思い、そして約3年ぶりのアルバム『Made of Glass』を携えたツアーへの思いについても語ってくれた。
“誰かになりたい”という気持ちから生まれた「Sunny」
──TVアニメ『ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~』のオープニングテーマを担当されることが決まったときのお気持ちを教えてください。
miletさん(以下、milet):これまでアニメのエンディングテーマを担当したり、MAN WITH A MISSIONさんとコラボレーションしてオープニングテーマを歌ったりしたことはありましたが、ソロでオープニングテーマを歌うのは初めてでした。お話をいただいたときは、とても嬉しくて興奮したのを覚えています。
エンディングテーマを作るときは、物語の余韻になるもの、物語が起こした小さな波を歌に落とし込むような意識で制作することが多いんです。一方で、オープニングテーマを担当すると決まったときは、スピード感やダイナミックさ、どれだけ作品の顔になれるかという部分を意識しました。余韻にするのか、作品の顔にするのか。エンディングテーマを作るときとはまったく違う心持ちで挑戦しましたが、とても楽しかったです。制作中も自然と気分が高揚しましたし、ビート感のある曲を作ること自体、アニメの主題歌では初めてだったので、新鮮な経験でした。
──原作やアニメの資料に触れて、玲琳と慧月、それぞれに惹かれたところがあれば教えてください。
milet:玲琳様のポジティブさと、鋼のメンタルに惹かれました。今でもアニメを観ていないときに、心の中の玲琳が叫んでいることがあるんですよ(笑)。「さあ、声を出していきましょう」と、私の中の玲琳が呼びかけてくれる。その声に励まされることもあるくらい、強いパワーを持ったキャラクターだと思います。
一方で、慧月には少し陰湿なところもありますが、彼女の気持ちを理解できる部分もあって、だからこそこの曲を書けたのかなと思っています。入れ替わってしまいたいほどの憎悪がありながら、そこには愛情もあって。愛と憎しみが紙一重のところで絡み合った感情を、慧月はずっと抱えていたのだと思います。二人はまったく異なる方向性の魅力を持っていますが、ビジュアルも含めてどちらも好きです。目つきが鋭い慧月の表情も好きですし、玲琳が乗り移ったあとの慧月の柔らかな表情も印象的でした。そのギャップにも惹かれました。
──「Sunny」を聴いていると、玲琳と慧月の気持ちを代弁しているようでありながら、語り手であるmiletさん自身が二人と入れ替わり、その目を通して世界を見ているようにも感じました。作詞する際には、主人公たちの視点とご自身の感情をどのように行き来していったのでしょうか?
milet:今回のテーマは、やはり二人の「入れ替わり」でした。誰かになってみたい、自分に自信がない、美しい彼女になってみたい、心の強い彼女になってみたい。そう思ってしまう瞬間を、自分の中から引き出していく作業がありました。私は昔から、誰かになりたいと思ってしまうところがあったんです。アニメやドラマ、映画の中にいる彼女になりたいと思うこともありました。もちろん誰かを突き飛ばしてまで、その人になりたいと思ったことはありませんが、根底には「誰かになりたい」という気持ちがあって。
自分に自信がなくて、自分のことが嫌いで、こんな自分で生きていくなら他の人になってしまいたい。そう思ってしまう気持ちには共感できたので、そこを軸に曲を作っていきました。
──「燦々」「爛々」「燦然」、さらに「散々」と、響きの近い言葉が連なっているのが印象的でした。こうした音や字面は、どのような発想から選んでいったのでしょうか?
milet:言葉を重ねていくときは、頭にぱっと浮かぶことが多く、そこから考え込むという工程は全然ありません。私は、母音から歌詞や言葉を考えていくことが多いんです。ラップとは違いますが、日本語の母音と子音をいったん分けて、まず母音だけで言葉を重ねていって、頭の中で連想を広げ、子音をつけていきます。そうすると、「この言葉同士には関連性を持たせられるな」「意味が近いな」「言葉に華があるな」と感じるものが見えてくるので、そこから言葉を書き連ねていきました。
──「燦々」「爛々」「燦然」といった言葉の響きや、「空」「光」といった景色に思いを託す歌詞から、詩歌を読んでいるような感覚も覚えました。作詞にあたって、古典文学からイメージを得たところはありますか?
milet:こう言うのも何ですが、私は古典がとても苦手でした(笑)。古典を読解するための参考書を読んだことはありますが、古典文学そのものを深く読み込んだわけではありません。
──なんだか意外です!
milet:ただ、今回は視覚的な部分からイメージを膨らませていきました。物語の世界観から伝統的な雰囲気を感じていたので、古い建造物や絵画、壺、寺院などの配色を調べながら、自分の頭の中に世界観を構築していったんです。
その世界観に合う曲を作りたいと思って調べていきましたが、アニメを観たときに、決して的外れではなかったのだと感じました。アニメの配色や世界観を見て、「自分が考えていたものと似ている」と思ったんです。そのため、曲もオープニング映像やアニメの世界観としっかり合致したものになったのではないかと思います。
──〈叶えられるでしょうか〉〈私にできるでしょうか〉と、言い切らずに問いかける言葉が繰り返されるところも印象的です。慧月を思わせるような迷いや不安も感じましたが、こうした言葉にはどんな思いを込めたのでしょうか?
milet:まずは慧月の気持ちになって書いたということがあります。そのうえで、“リアルmilet”の不安も重なっているなと思っていて。
この歌の世界に入り込んだ自分だけれど、こんな自分でも大丈夫なのか。前向きになれるのか、この世界でやっていけるのか。私は自分のメンタルが弱かったり、不安定だったりすると思うことが今でもある一方で、強くいたいという気持ちもあります。そうした不安を重ねて書いていきました。ただ、その不安はとてもポジティブなものなんです。「叶えられないよね」という諦めではなく、「きっと叶えられるよね」という期待を込めた疑問です。自信を持ちたいという思いも込めています。
玲琳のパワーを音に。野村陽一郎と作り上げていったサウンド
──作曲は野村陽一郎さんとの共作ですが、「Sunny」のサウンドを作るうえで大切にしたことを教えてください。
milet:アニメのオープニングテーマなので、スピード感やダイナミックさ、印象的なフレーズを最初から打ち出したいと思いました。そこで、「燦々」という、聴いたら頭から離れないような言葉を冒頭に持ってきました。スピード感やテンポも早い段階で決めましたし、ギターのストロークで疾走感を出したいという考えもありました。
また、少し古典的な楽器も使っています。私が思い描いていた伝統的な音のイメージと結びつくように、鼓や琴を連想させる楽器を取り入れました。主に弦の音で構築したいと思っていたので、アコースティックギターやストリングスも前面に出しています。
──これまで作られてきた楽曲とはまた違った明るさがありますよね。
milet:曲の明るさも、これまでエンディングテーマを作ってきたときとは変えたいと思っていました。切なさよりも力強さを前に出し、玲琳のようなパワーを持つ、ポジティブなサウンドづくりを意識しています。
──ところで、情報解禁の際のコメントで、「あなたになってこの世界を見てみたい。そんなことを、私も願ったことがあります」と寄せられていました。誰かに憧れたり、その人になってみたいと願ったりすることで、かえって自分自身のことが見えてくることもあると思います。miletさんにも、そうした経験はありますか?
milet:先ほどの話とも重なりますが、私はむしろ、そういうことをずっと思っていたように感じます。昔からアニメが大好きですし、アニメの主人公って、やっぱりカッコいいじゃないですか。私が好きな『灼眼のシャナ』や『喰霊-零-』、『とある科学の超電磁砲』『魔法少女まどか☆マギカ』などには、女の子が魔法や特殊能力を使って敵を倒していく作品が多くありました。そういうキャラクターに憧れて、「彼女のように何か力が使えたら」と思っていて。本気で魔法少女になりたくて、魔法の使い方を必死に調べていた時期もあります。
とにかく、普通の自分では嫌だ。脆くて弱い自分ではいたくない。誰かになりたい、彼女になりたい。そう思うことは、たくさんありました。自分が嫌いだと思っていたこともありますし、そんな自分を変えたいとも思っていました。
──変化があったのは、いつ頃からだったのでしょうか。
milet:音楽を始めてからだったと思います。音楽なら、自分の弱さや脆さ、傷ついた部分も歌にできた。その歌を通して、たくさんの人に受け入れてもらえたことが、自分を変えてくれました。
傷や弱さといったネガティブな部分も、そのままのmiletでいいのだと受け入れてもらえた。その経験が、今の私が自分自身を抱きしめられている理由の一つなのだと思います。
今も、傷つくことはありますし、弱い部分も残っています。でも、変わらずに存在するその部分も愛していけるようになった。音楽と、聴いてくださる皆さんのおかげで、そう思えるようになりました。





























