
『楽園追放 心のレゾナンス』11.13公開前リレーインタビュー連載 第4回:脚本・虚淵玄【後編】|続編の突破口は「『2』を飛ばして『3』を作る」という発想
完成が近づいてきて芽生えた楽しんでもらえるという自信と安心感
──主なキャラクターたちの、虚淵さんが考える魅力はどんなところですか? もしくは観てほしいところはありますか。
虚淵:キャラクターの表情は観てほしいですね。アンジェラってクールな女だったんだなと思えるくらい、いろんな女の子たちが、いろんな顔をしてくれるので、そういうところは観てほしいし、面白いと思います。結局そういうところなんです、脚本の手が及ばない面白さって。こちらは、何を思って、何を企んで、どういう意図で動いているのかということさえ伝えられたら、あとは演出の方々が、キャラクターの生々しさをいくらでも盛ってくれる。そういうチームワークに最初から気づくべきでした……。
例えばガブリエル・アルマ・ダネル・ラグエルは、ある種、愚連隊なんです。ガブリエル(CV.佐倉綾音)は一番の跳ね返りというか、不良ですよね(笑)。アルマ(CV.早見沙織)は、そういう周りのダメさ加減を完全に無視してマイペースにやっているお嬢様というポジション。ムードメーカーにすらなっていないし、逆に周りを引っ掻き回すくらいのマイペースさなんです。で、ダネル(CV.青山吉能)は腹黒委員長みたいな感じで、汚職上等!みたいなことを言っている子です。権力にすり寄ることに何の躊躇もないけど、本人のモラルというか、職業意識はずいぶんと困ったもので、ズレているんです。で、そんなガタガタのチームで翻弄されるラグエル(天城サリー)という感じですね(笑)。
──ラグエルは受け身なんですね。
虚淵:そうですね。癒しポジションというか。そのかわり、全然役には立たないドジっ子ポジションです(笑)。それが最初の印象、という感じになると思います。
──そこから物語がどう展開されるかですね。
虚淵:アンジェラ バルザックが、すごくエリート然とした仕事ができる女だったんですけど、今回はもう及びもつかない子というか、不良社員の“ショムニ”感があるので(笑)、そういうわちゃわちゃの中で展開していくと思います。
──確かに、アンジェラは出世を考えているエリートエージェントでしたね。
虚淵:今回は、出世競争からドロップアウトしちゃったダメな子たちが揉めながら、いろんな試練に立ち向かっていくので、印象はかなり違うと思います。
──そのわちゃわちゃ感も楽しめそうです。
虚淵:これがまた不思議で、やっていることは全然女の子らしくない、軍隊みたいな殺伐としたことなんですけど、齋藤将嗣さんが描くかわいいキャラクターのお尻が4つ並んでいると、そうも見えないんですよ。ちゃんと女の子たちの華やかな空気になるんです。それをアフレコ段階の映像で見せてもらって、ようやく安心したと言いますか、感動しました。何だちゃんと楽しいじゃないか!という嬉しさがありました。
──アフレコにも立ち会われていたそうですね。
虚淵:この前収録が終わったところなんです。
──アフレコでは、セリフの修正や調整をなさるのですか?
虚淵:いや、ほとんどしないです。水島精二さんと三間雅文さん(音響監督)の現場だと、脚本家は口を出す余地がないんです。解釈に迷ったときにちらっとヒントを出すくらいで。脚本を元にできた演出がすべての手がかりになっているので、その場でセリフを変えたりすることもないし、それは前作からのやり方でもあります。それとCGアニメは、プレスコとアフレコの両方をやるんですよ。
──過去のイベントでも仮アフレコをされていると、皆さんおっしゃってましたね。
虚淵:絵コンテの段階で、プレスコで声優さんに演技の方向性を見せてもらって、それを元にCGのキャラクターのアニメーションを作り、あらためて出来上がった絵から感情を汲み取って声を当ててもらうんです。そうやって何度も段取りを踏んだ上でやっていくので、そういう意味では準備万端というか、土壇場で調整が入ることが少ないんです。
──キャストの方は2回演じていたんですね。
虚淵:声優さんの負担は倍になってしまうんですけど、キャラクターがどういう表情で、どう動いているのかの手がかりにはなるみたいなんですよね。結構このやり方はスタンダードになっているんだなと思いました。前作はアフレコに立ち会わなかったんですけど、前作でも2回録っていたみたいです。声を聞きながら画を作れるというのは、CGの強みなのかもしれないですね。
──言葉と表情が合っていきますからね。
虚淵:キャラクターの感情が、どんどん豊かになっていきますよね。
──今回、声が吹き込まれたキャラクターを観ていかがでしたか?
虚淵:想像以上にキャラクターの生々しさを感じました。人格の膨らませ方、厚みの持たせ方といったところが、三間さんの演出の素敵なところなんですよね。正直、脚本以上に掘り下げていると思います。
結局脚本家というのは、次のセリフで何を言わせるのか、この先の展開でこうなるから、これを言おうって、逆算でセリフを書いちゃっているところがあるんです。でも、そこをちゃんと整理して、こういう感情の流れで言っていると理解した上で、声優さんに演技指導をしているので、その丁寧さには本当に舌を巻きますね。「ごめんなさい、僕、そこまで考えていなかったです」みたいな(笑)。そんな段取りばかり考えている脚本家の隙間を埋めてくださるんです。
──本人よりも読み込んでいるのかもしれない(笑)。
虚淵:そうですね。総じて僕が考えているよりも豊かなキャラクターになっていると思います(笑)。やっぱり僕が書くキャラクターってどこか冷たいんですよ。冷静というか、仕事一辺倒というか……。
自分の“企み事を最優先にしちゃう部分”が出ちゃっているから、かわいい女の子が書けないという自認に繋がっていると思うんですよね。そこで水島さんの演出が入ると、ひとつ丸めてもらえるんです。こうは言っているけど、内心はこうなんですって。その解釈が優しいんですよ。そこにある種の救いが生じているというか。冷淡で理詰め過ぎる物言いみたいなものが、うまいこと人間の発言になっているんですよね。そこはすごくありがたかったです。
なので初稿よりも収録台本のほうが、ちょっとだけ語尾の付け方や言い回しが変わっているんです。僕は小説畑の人間なので言い回しが固くなってしまうんです。しかも『Thunderbolt Fantasy』みたいな時代劇をやっちゃったものだから、ますます固いセリフを書くクセが付いてしまって(笑)。それがキャラのかわいさに繋がらなかったので、そこをうまく調整してくれました。そこをお任せできるというのが本当に嬉しいです。アイドル作品を手掛けてらっしゃるノウハウって、やっぱりあるんですね。言っていることは同じだけど、微妙なアレンジでこんなに印象って変わるんだ!と思いました。
──女子の掛け合いは、一つの見どころになっていそうですね。
虚淵:まさにそれが序盤の見どころだし、そこから関係値が変わっていく流れも楽しんでもらえるのかなと思っています。
──では最後に、ファンへメッセージをお願いします。
虚淵:僕の中では結構難産で、手探りで書いたものではあるんですけど、監督や演出の皆さん、そして音響監督の三間さんのディレクションと声優さんの熱演で、本当に想像していた数倍面白くて見応えのある映画になったと思うので、僕としては感無量です。最初はハラハラしていたんですけど、こうやって完成が見えてくると、これは楽しんでもらえるという自信と安心感みたいなものが芽生えてきました。なのでぜひご期待いただければと思います。僕も完成が楽しみです!
[文・塚越淳一]
作品情報
ムビチケ発売中!
楽園追放 心のレゾナンス
あらすじ
人類が肉体や地球を捨て、電脳世界ディーヴァで暮らすようになった西暦2400年。フロンティアセッターのハッキングを発端に、ディーヴァ捜査官アンジェラ バルザックの叛逆が起こる。事件時彼女にハッキングされ、地上に脱走した大勢の保安局のエージェントは、マテリアルボディと共に、パーソナルデータも収納するハードウェアを強奪。その姿・存在を地上に潜め、ディーヴァへの脅威と化した。
アンジェラにより、もたらされた”彼ら”の名は、
”フォールン”
ディーヴァからの捜索命令を受け、ガブリエル達エージェントは、フォールンの正体を追う。未だ地上に遺るナノハザードの影響を乗り超え、彼女達は、フォールン、そして、その謎に辿り着けるのか。
『楽園追放』の物語が、今、再び動き出す−。
キャスト
(C)東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ2




































