
水樹奈々さんが語る『なのは』シリーズ新作への想い――今までとは違うアプローチで取り組んだTVアニメ『なのはEXGV』アフレコ&楽曲制作秘話!【インタビュー】
「私自身も戦いながら歌いました」水樹奈々が体現した命懸けのバトルソング
──水樹さんは今作で主題歌と劇中歌も担当しています。オープニングテーマ「CRIMSON BULLET」は、水樹さんが作詞。作品のどんな部分を意識して制作を進めたのでしょうか。
水樹:都築さんから歌詞のテーマをいただいた時、ネガティヴな要素が多く、「これまでの『なのは』シリーズの歌詞とは違うアプローチで書いてもらいたい」という明確なリクエストがありました。そこで、さてどうしたものかと(笑)。シナリオを読んで、これまでの『なのは』シリーズにあった無垢な気持ちで大切な場所を守るために進むヒロイン像や煌めいたワードを使用するのは違うなと感じていたので、どう構築していくかとても悩みました。
もっとダークで、歯を食いしばって苦境に立ち向かう泥臭さ。これまでは包容するような優しさ、天使の羽が舞うような白い光のイメージでしたが、今回はそれとは対極の、真っ赤なイメージでした。決して黒ではなくて、闘志の赤であり、血の赤。絶望から這い上がるために、進んだ先に望む未来がなくても、突きつけられた今を生き抜くしかない。地面を這い蹲っているような、パンチのある言葉をチョイスしたいなと。
──なるほど。楽曲タイトルの「CRIMSON BULLET(=緋色の弾丸)」も、赤色や闘志だけでなく、セツナの炎の力を継承して銃を武器に戦うシイナを象徴するワードになっています。
水樹:ただ、これは作品の楽曲であると同時に水樹奈々の楽曲でもあるので、最後に希望が持てる応援ソングでありたい。誰かの背中を押せるような曲を歌いたい、というのが自分の音楽のテーマなので、そのエッセンスをどう共存させるか悩んだ結果、辿り着いたのは『なのは』シリーズ全体を通してのテーマでもあるキーワード「全力全開」でした。今までとはアプローチを変えつつ、このテーマを落とし込もうと。
歴代の『なのは』シリーズは大切な居場所や人を守るために前へ進んでいましたけど、今回はシイナもトワもすでに家族を失っているので、その意味では守るものはもうないんです。だから、これ以上の悲劇を増やさないため、悲しみの連鎖を止めるために戦う。「守る」ためではなく「止める」ための戦いなんですね。
──確かにそうですね。
水樹:「失うものは何もないからこそ、自分の命と引きかえに悲劇を止める」という究極の自己犠牲、今を全力で生きるしか選択肢がない、という極限まで追い詰められた状況でのアプローチになりました。なのはやフェイトも自己犠牲的な精神がある子たちですが、それとはまた違うんですよね。シイナやトワ達はある種の自暴自棄や狂気さえも孕んでいて。
サビの“迫る今を生き抜く”という歌詞はまさにその通りで、明日どうなるかわからない。これはコロナ禍以降の現代社会にも通じるもので、身近な脅威に立ち向かいながら後悔しないように今を全力で生きるという、都築さんが今作に込めたと考えるメッセージも受け取りながら歌詞を書かせていただきました。
──そのテーマ性は、近年の水樹さん自身の活動とも紐づいているように感じます。
水樹:そうですね。コロナ禍で一度活動が止まって、当たり前だった日常、ライブができること、アフレコにみんなで集まれることがどれだけ幸せなことか再確認して。だからこそ今は一日一日を、一つ一つのステージをもっと大切にもっと丁寧にという思いがさらに強くなっていますし、楽曲制作にもその気持ちが自然に乗っているんだと思います。
──作曲・編曲はElements Gardenの藤永龍太郎さんが担当。メタルコア直系のヘビーかつ激しいサウンドで、水樹さんの楽曲史上最もアグレッシブかもしれません。
水樹:そうなんです! これまでも『シンフォギア』シリーズなどでヘビーな曲はありましたが、この曲は本当にすごくて。メロディも上から下まで行ったり来たりするので、レコーディングもひーひー言いながら大変でした(笑)。
先日、テレビの音楽番組『MUSIC FAIR』で初めて歌った時も、副調整室のミキサーさんたちが「この曲やばくないですか?」とざわついたそうです(笑)。いろいろなアーティストさんを見ているプロの方々から「難易度がとんでもないことになっている」と言われて、私自身も大変な曲を作ってしまったなと(笑)。でも、『なのはEXGV』のシナリオがかなりヘビーなので、これくらい攻めないとフィットしないと思ったんです。
──常に挑戦と更新を続ける水樹さんらしい楽曲だと感じました。そして第10話では、フェイトやシイナのバトルシーンに合わせて新曲「Anchor Flame」が挿入歌としてオンエアされて、ファンを驚かせました。
水樹:第10話のあのシーンで挿入歌が流れることは最初から決まっていて、主題歌の「CRIMSON BULLET」と同時期にコンペを行ったんですけど、この曲を聴いた瞬間にそれぞれのキャラクター達の戦う姿が自分の中で作画されるくらいぴったりで、「これしかない!」と思って満場一致で決まりました。
その時点ではコンテはまだ上がっていなかったのですが、シナリオのどの場面で流れるかというのは文字情報でいただいていて。なおかつ都築さんから「最初は緩やかに始まる曲」「Wow wowというコーラスが入ってほしい」といった細かい指定をいただいていたんです。この曲はイントロのストリングスから怪しくじわーっと始まって、そこから“Anchor Flame”というロングトーンと共に盛り上がっていく構成が秀逸で。不敵な笑みを浮かべたような怪しさ、不穏さ。ただ熱いだけではない、マナという不死身とも思える相手との戦いのベースにある空気感が見事に表現されていました。
──作編曲はヘビーメタルバンドのANTHEMのギタリストとしても知られる清水昭男さん。そして作詞は水樹さん作品ではお馴染みのしほりさんです。
水樹:楽曲の構成的に、歌詞はボーカリストの方に書いてもらったほうが、言葉の言い回しやアクセントがより気持ち良い響きでハマると思って、しほりちゃんにお願いしました。「サビのラストの語尾は『ウ』や『オ』で伸ばしたくない、抜けのいい『ア』や『エ』がいいよね」みたいな歌い手ならではの感覚を共有して。しほりちゃんはこれまでも『なのは』曲にたくさん携わってくれているので、安心感もありました。
──楽曲タイトルも歌詞の内容も、作品にぴったり寄り添っていますよね。
水樹:シナリオをしっかりと読み込んで深掘りしてくれて。特にサビ頭に“刹那の炎”や“永遠(とわ)の炎”と、セツナやトワの名前にかけたフレーズを入れてくれたのは、さすがしほりちゃん!と感動しました。「Anchor Flame」というタイトルも、シイナの命を繋ぎとめてくれたセツナの炎の力のことを指していて。同じ赤を象徴した「CRIMSON BULLET」と「Anchor Flame」ですが、それぞれでしっかりと差別化できたと思います。「CRIMSON BULLET」は作品全体のことを歌っていますが、「Anchor Flame」はシイナが自分の思いを爆発させて敵と対峙する最終戦へ向かう直前のシーンで流れるので、シイナにフォーカスして書いてもらっていて。自分が何をすべきなのか明確になったうえで放つ正義の鉄槌と言いますか(笑)、解き放たれたような力強さがある楽曲だと思います。
──こちらも歌いこなすには相当のエネルギーが必要そうですが……。
水樹:まさに! これも歌うのは大変でした。でも、それくらいの熱量がないと、このシーンを表現する楽曲にならなかったんです……ってさっきと同じような話をしていますけど(笑)。特にサビはずっと高いところでフォルテ、フォルテ、フォルテッシモみたいな状態が続くので、喉がどんどん疲弊していく感じで大変なんですけど、その必死さが命懸けの戦いにフィットするなと。余裕で力強く歌うのではなく、ギリギリの状況を表現したかったので、私自身もまさに戦いながら歌いました(笑)。
──アニメのほうも、まだマナとの戦いの決着はついていないわけですが、今後の放送を楽しみにしているファンに向けてメッセージをいただけますでしょうか。
水樹:マナは本当にしぶといんですよ!(笑) ここからも鬼気迫る、息つく間もない展開が最後まで続きます。シイナとトワ、それぞれの未来がどんなものになるのか、ぜひ最終話まで見守っていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします!
──今後も『なのは』シリーズの新しい展開を期待しています。
水樹:私も何かの形で続いていくといいなと思っています。TVアニメはまた10年後になるかもしれませんけど(笑)。また劇場版もあると良いなと思っていますし、今回の作品は『EXCEEDS』の原作コミックとはまた違うストーリーなので、あちらも演じてみたいなあと思っていて……こういうことは口にすることが大事なので言っておきます(笑)。とにかく私はおばあちゃんになるまでフェイトを演じ続けたいと思っているので、喉を磨いておきます!
[文・北野創]
作品情報
あらすじ
人類とその生物「侵略種」は互いに生活圏を争い、
現在はかろうじて人類の安全が確保されているものの、世界はいつ滅びてもおかしくない。
人々は死と滅びを恐れながら、危険や災害から目を逸らすように日常を生きている。
そんな世界の中、国連危険生物調査機関「EXCEEDS」は、侵略種による危機と災害を退けるために活動を開始した。
物語のはじまりは極東の島国「瑞穂」。
離島で暮らす、侵略種駆除ハンターの少女・久瀬シイナ。
たったひとりの家族である妹セツナと静かに暮らすことを望むシイナに訪れる事件とは――?
キャスト
(C)NANOHA EXCEEDS PROJECT


































