
「私は『あとはよろしくお願いします』という気持ちで、清々しくこの作品から卒業したいと思います」──劇場アニメ『最終楽章 響け!ユーフォニアム』後編 黒沢ともよさん・安済知佳さん・戸松遥さんインタビュー
すごくすっきりと終われるラストになっていると思う
──無茶振りな質問になりますが、ネタバレにならない範囲で後編の台本を読んだ時の感想を教えてください。
黒沢:この『最終楽章』は、3年生編(『響け!ユーフォニアム3』)を再構築する劇場版ということで、私たちは1回なぞった世界を再び深めることになりました。3年生編を実際に収録している時「なんでこの選択だったのか」というこぼれ話をスタッフさんから雑談程度に伺うこともあって。
作品は、大勢の人が携わって作るものだから、みんなが一番やりたいと思っていたことが叶っているわけではありません。「こういうセリフが欲しいと思っていたけれど、今回は言わないことになった」「言葉にしないけれど、込めたい思いはある」というお話も聞いていたんです。今回の後編には、それがまるっと入っていて。スタッフの方も、みんなで悔いなく金賞を取って終わるぞと思いながら作った台本なのかなと。温かな気持ちになりました。
安済:本当に悔いがなくて「こんなに気持ちよく終わらせてもらえていいんですか?」と思ったくらい。新規のシーンでは久美子だけじゃなくて、私が演じる麗奈のことも卒業させてもらえたようなシーンもありました。すごく贅沢だなと思ったし、最初に台本だけを読んだ時、込められている愛や歴史を感じで涙しながら読んでいました。いい本でしたし、完成が楽しみです。
戸松:本当に『最終楽章』という言葉がぴったりな終わり方だなと思いました。前編にテレビシリーズの10話分が入っていて、後編は残り3話分しかないので、どうするんだろうと思っていたのですが、本当に“ぎっしり”って感じでしたね。
内容の充実度でいくと、本当に別物といっても過言ではないぐらい、追加シーンもあったりして。誰目線で観ていたかは関係なく『響け!ユーフォニアム』という作品を楽しむための終わり方だと思いますし、とてもすっきりと終われるラストになっていると思います。
──アフレコ現場の雰囲気も「これが最後」という特別な感覚はあったのですか?
安済:今までで一番リラックスしてた気がする。
黒沢:ちかちゃんはね!(笑)
安済:あはは(笑)。実感がなさすぎたのと、みんなとこうしてアフレコをできるのが楽しくて。温かくて楽しいし、合宿のようだったんです。お昼ご飯にカレーが出て、(川島緑輝役の豊田さんに)「ミドリ、カレー大好き」って言ってもらったり(笑)。本当にあっあっという間でした。
黒沢:逆に私はめちゃくちゃ感傷的になっていたので、そのシーンで最後になるというキャストさんたちとお話しをしに行きました。感謝の気持ちを伝えては、自分を「泣いちゃダメ、泣いちゃダメ」と律して(笑)。そんなことをやっていました。
安済:さすが、素晴らしい部長です。
黒沢:だからなんか忙しかったです。
戸松:ともよちゃんは、ほぼずっとスタジオの中にいて待ってる時間もなかったよね?
黒沢:そうですね。真由の一人のシーンがあって、戸松さんがそのシーンを録ってる時はのんびりしていました(笑)。
戸松:そこだけだよね。大変だ。
──戸松さんは、いかがでしたか?
戸松:キャストさんがみんな揃っていたことが本当にすごいなと。劇場版といっても、どうしてもスケジュールの都合で一緒に録れない方がいることもあって。でも本当にいろいろな人たちが、アフレコのあった2日間にいらっしゃって。そうやってみんなが揃って録れることは、演じる側として、本当にありがたいことなんです。きっと制作スタッフさんが、パズルのように皆さんのスケジュールを組み合わせて調整してくださったのだと思いますし、本当にありがたかったです。
あと、後編のアフレコの前には「アフレコで役を演じるのは本当に最後です」と釘を刺すように言われて。私は12年間真由と一緒にいたわけではないですが、自分の役が物語の中心的な存在にもなっていたりもしますので、一つひとつのシーンをより大切に演じていかなきゃという思いもありました。
──監督や音響監督などから「最後」ならではのオーダーはありましたか?
黒沢:鶴岡さんからは「台本を読めばわかると思うけど、俺たちも好きにやらせてもらってる」「最後だから、お前らも一旦、好きにやってみろ」みたいなことは言ってもらいました。
あと、この記事を公開前に読んでくれた人が混乱すると面白いなって思って言うのですが……鶴岡さんは「テーゼとアンチテーゼがアウフヘーベンするんだよな」と言って去った(笑)。
戸松:よく覚えてるね(笑)。
黒沢:これ、みんなたぶんマジで分かってなかったんです。
安済:「テーゼとかアンチテーゼは分かるぞ。もう一個、なんて言った?」みたいな(笑)。
黒沢:でもやっぱり12年やってきてるので、みんな真剣な顔をして。
安済:すごい神妙な顔で「ですよね。任せてください」みたいな雰囲気だしておいて。みんな(鶴岡さんが)去ってから「あれは、どういうこと?」って(笑)。
戸松:あはは(笑)。
黒沢:その説明はここでは言わない方が良いと思うので言わないでおきます(笑)。
戸松:あと、久美子と真由は「合わせ鏡」ということを強く言われました。テレビシリーズの時は「異物」と言われていたので「異物から変わった!」と思って(笑)。
黒沢:たぶん、前編の時に合わせ鏡感が強くて。後編になった時、どっちかが勝つ物語じゃないってところを強く意識して演じろってことなんだろうなと感じました。それは気をつけながら改めて演じています。
──ありがとうございます。最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。
戸松:真由としては後編の方が、スポットが当たることも多いですし、予告の映像でも流れているのですが、幼少期の真由も出てきます。最後に来て、皆さんの知らなかった真由の一面をたくさん知ってもらえるかなと。
作品全体として本当にこれで最後になるので、ずっと観て下さっていた方々はいろいろな思いがあると思いますが、『響け!ユーフォニアム』という作品の最後を一緒に見届けていただけたら嬉しいなと思っています。
安済:私たちと同じく約12年、一緒に久美子たちと歩んで来てくださったファンの方も、途中から応援してくださったファンの方も。イベントなどでお会いする方々の年齢層の幅広さをすごく感じるようになってきました。あとイベントの応募数がすごすぎて、会場のキャパが足りず配信もしようという構想もあって。いまだに応援してくださる方が増え続けていることは、本当にすごいことだと思います。
それは、もちろん作品が魅力的だからではあるのですが、ずっと最初から歩んでくださったファンの皆さんが、作品を広めてくれて一緒に作品を楽しむ人を増やしてくださった結果だと思っています。最後もたくさんの人たちと、劇場版ならではの『響け!ユーフォニアム』を一緒に味わって、映画館で体感してもらえたら嬉しいなと思います。よろしくお願いします。
黒沢:この『最終楽章』で監督をやってくださっている小川(太一)さんが、ずっと「この作品をエバーグリーンの作品にしたい」と仰っていて。この作品のこれからをファンの皆さんに紡いでいって欲しい、未来を広げて育てて欲しい。そう思っていることがひしひしと伝わってきていたので、その思いも込めて大切にアフレコしました。
みんなで作った種のような作品をどう育てるかは皆さんの自由だし、育てたらきっと人生の中で何かの助けになるはず。私は「あとはよろしくお願いします」という気持ちで、清々しくこの作品から卒業したいと思います。今までありがとうございました。
【取材・文:丸本大輔】
『最終楽章 響け!ユーフォニアム』作品情報
あらすじ
この軌跡が、次の曲になる――
吹奏楽にかける高校生の青春を10年にわたり描いてきた『響け!ユーフォニアム』シリーズ。2024年のTV放送にて感動の最終回を迎えた『響け!ユーフォニアム3』が、2026年、ついに完結作となる“最終楽章”として劇場に登場する。
『最終楽章』は、10年間、京都アニメーションの制作チームを率いてきた石原立也が総監督を、そして共にシリーズの要を担ってきた小川太一が監督を務める。
京都アニメーションによる本編カットのブラッシュアップはもちろんのこと、花田十輝がシナリオを新たに執筆し、新作シーンも多数追加。TVシリーズでは描かれなかった演奏シーンも盛り込んだ、『最終楽章』の名に相応しい劇場作品をスタッフ一丸となって届ける。
10年の軌跡――その先へ。
アニメ『響け!ユーフォニアム』集大成となる最後の1年の幕が上がる。
キャスト
(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024
















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