
「“名探偵”よりも“プリキュア”が際立った映画にしたかった」『映画名探偵プリキュア!不思議な庭と2人の秘密』ABCアニメーション・多田香奈子P×東映アニメーション・中川真緒Pが語る、“心の謎”を描く物語に込めた思い【インタビュー】
9月18日(金)に公開され、初日の興行収入が1億円を突破する好スタートを切った『映画名探偵プリキュア!不思議な庭と2人の秘密』。色とりどりの花々が咲く「不思議な庭」を舞台に、「名探偵プリキュア」が“ダメダメ”にまつわる謎を追う本作。映画ならではの大きな事件ではなく、物語の中心に置かれたのは、少女・かりんの身近な悩みと、その心を守ろうとするアランの思いでした。
女の子だって暴れたっていい。黒や白が好きだっていい。みんなと一緒であることがすべてじゃない。プリキュアはこれまで、さまざまな形で一人ひとりが自分で考え、選ぶことを描いてきました。本作では、「自分で見て、感じて、考えて、“本当”の答えを出す」というテーマを通して、そんな“プリキュアらしさ”が随所に息づいています。
公開を目前に控えたタイミングで、ABCアニメーションの多田香奈子プロデューサーと、東映アニメーションの中川真緒プロデューサーに、本作の制作背景と、作品に込めた思いを伺いました。
※本記事には『映画名探偵プリキュア!不思議な庭と2人の秘密』の物語に関するネタバレが含まれます。
「楽しかった」で終わらない映画を目指して
──まずは映画公開を目前に迎えた今のお二人の心境からお聞かせください。(取材は公開前)
中川真緒プロデューサー(以下、中川):やっと完成したなという気持ちです。現場の雰囲気を見ていても、本当にやりきったなと感じますし、いいものができたという実感がすごくあります。
多田香奈子プロデューサー(以下、多田):そうですね。仕上がったものを観たときに大号泣しました(笑)。お話を知っているのに何度見ても泣いてしまいます…。
──私自身も拝見して、本当にしみじみといい作品だなと感じたのですが、今回の映画はどのようなところからスタートしたのでしょうか。
中川:最初は、私一人のところから始まりました。今年のプリキュア映画は、「名探偵」の部分以上に「プリキュア」の部分が大きい、「名探偵プリキュア!」の“プリキュアらしさ”が際立った作品にしたいと思っていて。そこから、上田監督と(脚本の)成田さんにお声がけして、まず仲間になってもらったところから始まりました。
──中川さんがおっしゃる“プリキュアらしさ”とは、どのようなものなのでしょうか。
中川:具体的に「これがプリキュアらしさです」とは、あまり言いたくないんですが、私自身、子どもの頃に「ふたりはプリキュア」を観ていた世代なので、言葉にはできないけれど、自分がプリキュアに感じてきた思いのようなものを映画に込めたいと思っていました。
──それを受けて、多田さんはいかがでしたか?
多田:私も、「名探偵プリキュア!」の“プリキュア”の部分を押し出すという考え方には、とても同意していました。私が最初に考えていたのは、映画館は、約70分という時間を、お子さんはもちろん、お母様やお父様たちも一緒になって集中して観てくださる、非常に貴重な機会だということです。だから、親世代、大人世代にも「楽しかった」と思ってもらいたい。大人の皆さんにも何か心に残るものを持って帰っていただきたい、という思いでシナリオを作っていました。もちろん、子どもたちを置いてきぼりにすることは絶対にしないのですが、実は親世代のことも結構考えていたかもしれません。
──お二人の間では、最初にどのようなことを話し合われたのでしょうか。
中川:基本的には多田さん、上田監督、脚本の成田さん、私の4人で話し合いました。ただ、かりんちゃんの悩みについては、多田さんの熱い思いがあって、そこは二人で話したりということはありましたね。
多田:はい(笑)。やり取りするなかで、「こういうのはどうかな」「このあたりが悩みになるんじゃないか」といった話を、年末年始のお休みの時期にもしていた記憶があります。そこから4人で集まって話し合い、さらに膨らませていきました。
──かりんの悩みは、ものすごく身近な内容ですよね。キャストの皆さんからも、「映画だからもっと派手で大きな事件が描かれると思っていたので、少し驚いた」というお話がありました。
多田:確かに、一般的にイメージする“謎解き”ではないですよね。
中川:そうですね。テレビシリーズでは、何かを盗られて、それを取り戻すという、わかりやすい探偵活動をしっかり描いています。それを映画に持っていくのであれば、「大怪盗が現れて、宝石が盗まれて……」というような物語にしたほうがいいのかな、と4人のなかでも悩んでいた時期がありました。もっとわかりやすく、キャッチーな探偵ものにしたほうがいいんじゃないかと思ったこともあります。ただ、テレビシリーズですでにそうしたものを描いているのであれば、映画ではもう少し“人の心に触れる謎”を描いてもいいんじゃないか、と。不安もありましたが、「もうこれでいこう」と4人で覚悟を決めて進んでいった記憶があります。
それから、やはり映画なので、映画館で感動してほしいという気持ちがありました。ただ「楽しかった」で終わる映画にはしたくなかったんです。子どもたちにとって、「プリキュアの映画を観に行った」という記憶は、きっとずっと残っていくと思います。だから、楽しかったというだけではなく、家に帰ってから、自分が頑張るためのエネルギーになるものにしたいなと。この映画を作ってよかった、誰かのためになったと思えるものにできたらいいなという気持ちがあったので、そちらへ振りたいと思っていました。
「全員が主役だった」上田監督が描いたキャラクターの感情
──上田監督にお声がけした理由を教えてください。
中川:「キミとアイドルプリキュア♪」や「わんだふるぷりきゅあ!」を観ていて、「この話数、いいな」と思った回が、全部上田さんが絵コンテを担当していたんです。多田さんも実は同じように感じていたらしくて。繊細で、少しエモーショナルな画面を作るのがすごく上手な方なので、「映画に向いているだろうな」と以前から思っていました。それで、思い切って参加していただいたという感じです。
──脚本の成田さんは、シリーズで長く作品に携わってこられた方ですが、先ほどのお話にあった“プリキュアらしさ”も、お願いした理由のひとつだったのでしょうか。
中川:そうですね。それと、私にとっても初めてプロデューサーを務める作品で、上田さんにとっても初監督作品でした。だから、「プリキュアとは」ということをよくわかっている方に、少し引っ張っていってほしいという気持ちもあって、成田さんに入っていただきました。
──多田さんは、プリキュアシリーズには長く携わっていらっしゃいますよね。以前、ラジオで宣伝を担当されていたことをご存じの方もいると思います。
多田:そうですね。成田さんほどではないですけど、長いんですよね(笑)。当時ラジオを聴いてくださっていた方には、少し知っていただいているかもしれません。ラジオ出演は私もとても楽しかったので!
──多田さんも中川さんと同じように、上田監督の絵コンテに魅力を感じられていたんですね。
多田:はい。本当に上田監督は、私も以前からコンテを拝見していて、ずっとお会いしたかった方だったので、まずお会いできたことが嬉しかったです。今回の映画では、改めて監督のすごさを思い知りました。当然シナリオ会議でも、「なるほど」と思わされることがたくさんありましたし、コンテを読むのも本当に楽しくて。「めっちゃ楽しい!」と思いながら読んでいたら、気づけば全部読み終わっているくらいでした(笑)。上田監督の初監督作品ということで、映画という70分尺の中でどんな映像になるんだろう?と楽しみにしていたのですが、もう本当にすごくて。私はシナリオの段階からすごく気に入っていたのですが、それが映像になると、さらにグレードアップされていたんです。
音楽の使いどころもそうですし、キャラクターの表情や、「ここでアップにするんだ」「ここに彼にこれだけ尺を使うんだ」というところも含めて。完成した映画を観て、まず大号泣して感動したのですが、その次に感じたのが、「全員が主役だった」ということでした。
──歴代プリキュアも含めて、それぞれに印象に残る場面がありましたよね。
多田:そうなんです。もちろんキュアアンサーは圧倒的主人公として物語の中心にいます。でも、誰一人として埋もれていない。全員がきちんと目立っていたんです。これはプリキュアにとって、めちゃくちゃ大事なんですよ。こうして歴代プリキュアも登場する作品では、すべてのプリキュア、すべてのキャラクターにファンがいますから。今回の映画オリジナルキャラクターも同じくらい存在感がありましたし、途中で登場する歴代プリキュアにも、しっかり見せ場がありました。本当に素晴らしかったです。
中川:上田さん自身がもともとプリキュアが好きということも大きいですよね。さらに「キミとアイドルプリキュア♪」、「わんだふるぷりきゅあ!」にも携わっていて、今回は映画オリジナルキャラクターも自分で作られていて。本当にすべてのキャラクターを同じくらい好きで、大切にしているんです。だからこそ、すごく素敵な作品になったのだと思います。
多田:うんうん。だからこそ、全員が素敵だった! ダメダメすらかわいかった(笑)。
中川:それから今、多田さんも作画について言及してくれていましたが、上田さんが特に気にしていたのが、感情の機微でした。今回は“大きな謎を解く映画”というより、人の心にある謎を扱った繊細なお話になったので、そこは本当に丁寧に描きたいとお話していて。キャラクターの表情の作画にも、すごくこだわっていました。
多田:すごかったですね。もう最初のカットから、ぐっと作品のなかに入り込みました。冒頭の、ちょっと薄暗い中ではじまる、かりんちゃんの髪の毛の線一本だったり、そこに少し光が当たっている感じだったり。そういうところからも、何か感じるものがあるんですよね。それから、やっぱりアランの葛藤はすごかったです。アランを演じる島﨑信長さんのお芝居も素晴らしかったですし、本当に……すごかった。
中川:すごかったですね。
多田:映画オリジナルキャラクターは、その作品にしか登場しないじゃないですか。もちろん印象に残るキャラクターもいますけど、そこで終わってしまう感じがある。でも、アランにはそれを感じなかったというか。ずっと前からいたような感じがして。私たちは思い入れがあるので、なおさらそう感じたのかもしれません。
──すごく馴染んでいるキャラクターですよね。プリキュアって本当に悪者がいないんだなと思いました。みんな、ただ大切な誰かを守りたいという気持ちがあって……。なんだか話しているだけで泣けてきちゃいます(笑)。
多田:分かります。涙活大事なので、ぜひ泣きましょう(笑)。
中川:でも、私も観るたびに違うところで泣くんですよね。私、毎日初号を見ては、何回も泣いていて(笑)。


































