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『クズの本懐』声優陣が考える「クズってなんですか?」

「クズってなんですか?」安済知佳さん、島﨑信長さん、野島健児さん、井澤詩織さんがガチで語る! TVアニメ『クズの本懐』声優インタビュー

 2017年1月よりノイタミナ枠にて放送中のTVアニメ『クズの本懐』。一見、理想的なカップルである安楽岡花火(CV:安済知佳さん)と粟屋麦(CV:島﨑信長さん)の二人は、それぞれ別の人物に想いを寄せながら、互いに本気で好きにならないことを条件に、偽装カップルとして振舞う……といったストーリーと、二人を取り巻く人間ドラマに注目が集まっています。

 「クズ」というセンセーショナルな言葉が使用されているタイトルの通り、様々な見方や意見はあるにしろ、登場人物の多くが「クズ」と評されてもおかしくない行動を取るのは見るものを驚かせます。特にTV放送第4話では、麦の憧れの人でもある皆川茜(CV:豊崎愛生さん)の本性が明らかになったことで、多くの視聴者に衝撃を与えました。

 今回はその作品の要素の一つである「クズ」という題材に焦点を当て、「キャラクターたちは本当にクズなのか?」「そもそも、クズとは何なのか?」という、やや哲学的な(?)問答をテーマとしたインタビューを、安済知佳さん(安楽岡花火役)、島﨑信長さん(粟屋麦役)、野島健児さん(鐘井鳴海役)、井澤詩織さん(鴎端のり子役)ら4人の声優陣に実施しました。

 なお今回のインタビューは、男性・女性陣に分かれての対談形式で行われ、お互いに話していることは分からないようになっています。「クズ」というテーマに対する答えが、男女でどのような考え方の違いが生まれてくるのか……? その一部始終にご注目ください。

正義感が強い安済さんは「クズ」という言葉が嫌い!?
 まずは女性陣からお伺いしていきましょう。なんと井澤さんは、オーディションを受ける前から作品のファンで、それだけにモカ役(鴎端のり子のこと。自らが付けたニックネームで、“最も可愛い”と書いて「最可(モカ)」と呼ぶ)が決まった喜びもひとしおだったのだとか。一方、正義感の強い安済さんにとっては、いろいろな意味でドス黒い本作の内容は衝撃的だった様子で、キャラクターたちに対してもなかなか容赦のないコメントをしてくれています。

──まず、これまで関わってきて、『クズの本懐』という作品への印象を教えて下さい。

<女性サイド>
安済知佳さん(以下、安済):私は元々落ち込みやすい性格なのもあって「クズ」という言葉が好きじゃなくて……。エンターテインメントはハッピーエンドじゃないとイヤなタイプなんです。なので申し訳ないのですが、オーディションの時まで原作も読んだことがなくて……。

実際に読んでみると、やっぱり茜先生(皆川茜、CV:豊﨑愛生さん)はクズだと思いましたね(笑)。花火は純情な思いがねじれた結果、クズになってしまっているだけで、根は悪い子じゃない。それがわかってからは、花火を受け入れられるようになりました。

井澤詩織さん(以下、井澤):私も、いけないタイプの女だなと思ったのは茜先生くらいかな。

安済:茜先生は本当にクズ!(笑) でも、モカはホントに良い子だよね。私はモカだけを心の支えに読んでたから、6巻の某シーンでのあいつ(茜先生)は「クズだな!」って思いましたから!

一同:(爆笑)。

安済:あと、クズというよりは「若いなぁ」と思うようなモノローグも多くて、私の中で「クズ」という言葉の概念が覆された作品でもあります。それでも私がクズな人を好きじゃないのは変わりませんが(笑)。


<男性サイド>
 続いては男性陣。男性陣のお二人に共通しているのは、リアリティがあるからこそ、キャラクター達に共感ができ、衝撃も受けるということ。目を背けたくなるような要素も含めた、ありのままのリアルな高校生の青春が描かれているというのは、本作の大きな魅力の一つとも言えます。

島﨑信長さん(以下、島﨑):リアリティがあるからこそ、共感する部分もあるし、考えさせられるのかなと。現実世界の自分達に近いところがあるから、原作を読んでも、役を演じていても、心を動かされるんだと思います。

僕は漫画を読むとき、物事を整理して、考えながら読むことが多いんですが、『クズの本懐』に関しては、気持ちだけで読まされたという感じでした。キャラクターたちが言ってることや悩んでいることは、誰しも大なり小なり考えたり、体験したりすることでもあると思うんです。だからこそ、それだけみんなの心にも刺さるんだろうなと。

野島健児さん(以下、野島):非常にセンセーショナルとも受け取れる内容で、心がヒリヒリするような作品ではあるのですが、現実に起きていてもおかしくない出来事を描いているなと感じています。その中には思わず目を背けたくなるような要素もあって、役を演じる以上はしっかりと見なければと思っています。しかし、見れば見るほど心がざわついてきますね。自分の中に、どこか共感する部分があるのかもしれません。

──ご自身が演じられているキャラクターの印象についてはいかかでしょうか?

<男性サイド>
島﨑:麦は思春期にいろいろな体験をしたことで、ちょっと偏った考えを持つようになってしまった子です。斜に構えたようなところもあり、何を考えているかが伝わりにくいキャラクターなのではないかと思いますが、おそらく自分自身でも本心が分かってないんじゃないかなと。今後彼がどうなっていくのかというのは楽しみにして欲しいですね。

野島:鳴海先生は花火ちゃんが憧れている、幼馴染のお兄ちゃんです。本人はそんなことは露知らず、花火ちゃん以外に対しては人畜無害な存在なのですが、女性に翻弄されたり、相手の気持ちに気づかないまま、目の前のことに専念している……。僕の中の勝手なイメージでは、いわゆる「草食系」とも呼ばれる「現代の男性像」のような印象を受けましたね。

<女性サイド>
安済:花火は、一見弱そうなんだけど、実は精神的には強い子です。強すぎるあまり、その気持ちがから回ってクズの道に進んでしまっています。あの年代にしてはいい意味でも悪い意味でも自分がもう出来上がっているし、協調性がないので、友達がいないのも頷けるなと思いますね。

実は私、役が決まったときに周りの人から「役にピッタリ!」と言われることが多くて。一心不乱で周りが見えなくなること以外は、あまり似てないと思っていたんですが、実は私が気づいていなかっただけだったみたいで(笑)。

井澤:それはきっと声質とかの話で、中身がそっくりっていう訳じゃないから!(笑)

私が演じているモカは、「お姫様になりたい」という子供の頃の願望を持ったまま育ったような女の子です。他人から理解されにくい面も多いですが、『クズの本懐』の中では一番の良心だと思います。誰かを一途に好きでいられるモカはすごいなと尊敬していますね。

 まずはジャブとばかりに当たり障りのない質問を行いましたが、インタビューのテーマを察してくださったみなさんは、徐々に深い内容を語っていくようになりました。「クズが好きじゃない」と断言するほど正義感の強い安済さんと花火の声のイメージがピッタリと一致するというのは、非常に面白いポイントです。

キャスト陣の間でも、茜先生についての議論は大盛り上がり
 やはり気になるのは、これだけの内容を演じるにあたっての役者としての気持ちです。重い内容の本作に声優陣はどのような気持ちで向き合っているのでしょうか?


──いろいろと腹黒い行動を取ることも多いキャラクター達ですが、演じるときはどういったお気持ちでしたか?

<女性サイド>
安済:気をつけているのは、花火がやっていることはクズだし重いし黒いんだけど、気持ちの面ではそれに引きずられないということです。「結果的にクズに見えればいいな」というつもりで演じています。あざとい腹黒さのようなものは見せずに、無我夢中でぶつかっていければいいなと思っています。

私にとっては学生時代が昔すぎるので、少しでも思い出すために近所の高校生たちの登下校の様子を離れたところからこっそり眺めて、青春の空気を頑張って吸収しようともしていましたね(笑)。大人の方には昔を思い出しながら、同世代の方には共感しながら見てもらえたら嬉しいです。

井澤:今まで、モカみたいなお人形のようにかわいらしい女の子をあまり演じてこなかったので、役が決まったときはめちゃくちゃ嬉しかったですが、それ以上に「私で大丈夫なのか」と不安でした。最初は、できるだけ私の中にある邪魔な成分を隠そうとしたんですけど、初めての収録のときに「(普段より)かわいい声で演じようとしてます?」と指摘されて。後になってから「モカはただかわいい声じゃなく、ギャンギャンした感じがよかった」と言われて、自分の居場所はあったんだなと安心できました。

安済:私もモカの声がすごくピッタリだと思ったから、それには納得した。私の場合、キャスティングの理由が酷いんですよ。「声に一番闇を感じた」からだって(笑)。一応、私の中では、すごくキラキラしたつもりで演じていたにも関わらずですよ!


──逆に、キラキラしすぎて何か裏があるように思えたのかもしれないですね(笑)。

安済:実際、一話の収録では、「ちょっと怖いです」と言われたこともあって(笑)。今はそんなことはないんですが、当時は「クズが嫌い」という気持ちが前面に出すぎてたのかもしれません。

──実際に演じていて、懐かしさを感じることも?

井澤:懐かしいというより、ガヤを録るときとかは悩むよね。今時の学生が何を喋っているのか分からないから。

安済:うんうん。ジェネレーションギャップは絶対にある!

井澤:前にTVで、女子高生の間で流行っている「ちょー沸いた」(テンションが上がった時に使う言葉なのだとか)という言葉が紹介されていて、「何それ知らない!」ってなったもん。

安済:私、「つらたん」(辛い、という意味)とかが出てきたときですらよくわからなかった。やっぱり、そういう若者のノリを出すときというのは緊張しますね。

 女性陣は、リアルな女子高生とのギャップの話で大盛り上がり。作品の完成度を高めるための目まぐるしい努力が見え隠れする一幕ですが、男性陣からの作品の印象として語られていた「リアリティ」が、キャスト全体の作品への共通認識として存在していることも伝わってきます。

<男性サイド>
島﨑:今後のネタバレになってしまうので詳しくは話せないのですが、麦の場合は、ひとつひとつの行動や言葉にどこまで自覚していて、どこからが無自覚なのかという部分に気をつけて演じています。作品をご覧になっているみなさんには、まだ彼の見えていない内面も多いと思いますが、それが一切見えない方がいいのか、ちょっと見えた方がいいのか、作品としてどう見せればいいのか、というのも含めて難しい所を歩いているのもあり、いろいろと考えることは多いです。

野島:鳴海先生の方は、黒いところは全然ないんですよね(笑)。麦や花火たちにしても、黒い黒いと言われますが、僕自身はあまり黒いとは感じていないんです。現実でも男女の恋愛関係となると、いろいろなことを考えるのは当たり前だと思うので。やり方には賛否両論あると思いますが(笑)。

島﨑:意外と、人をおとしいれることを第一目的としている人がいないんですよね。

野島:ちょっと歪んでいると思うのは茜先生かな。

島﨑:「他人(オトコノコ)から向けられる好意ほど気持ちのいいモノなんてないのに」というセリフからも分かるように茜先生はたしかに歪んでいると思うんです。でも、茜先生はあくまでも自分の存在価値を確かめるためにやっているだけなんですよ。基本後ろ向きではあるんだけど、どこか能動的で、ある意味では前向きなんですよね。僕の中では「黒い」って、もっと相手をおとしいれたりすることだと思うんです。

野島:茜先生が後ろめたさを感じて開き直るところは、すごく人間らしいよね。各キャラクターともに、自分の中の寂しさをどうやって埋めていくのか、そしてそこに至るまでの感情の動きが、しっかりと理解できるように描かれていますよね。

島﨑:名誉や立場じゃなくて、男女間の恋愛に焦点を当てているのも大きいんでしょうね。損得ではなくミニマムな感情で動いているので、なんだかんだ「青いなぁ」っていう印象の方が強いです。

 第4話での「他人(オトコノコ)から向けられる好意ほど気持ちのいいモノなんてないのに」という言動で多くの視聴者の度肝を抜いた茜先生の話題は、やはり声優陣でも話題になった様子。茜先生に対して厳しいコメントが多かった女性陣とは対照的に、異性である男性陣がその考えに対しても理解を示しているのは、非常に興味深いポイントです。

「登場人物の全員がクズ」という驚きの解釈も!?
 そして今回のインタビューのテーマである「クズ」について深掘りしていきます。キャスト陣にとってそれぞれの分身であるキャラクターたちは本気で「クズ」に見えているのでしょうか?


──ご自身が演じたキャラクターを「クズだなぁ」と感じた瞬間はありましたか?

<女性サイド>
安済:「(花火は)バカだなぁ」とは思うのですが、「クズだなぁ」はないですね。原作を読んだ後、ここまでやるせなくなったのは初めてでしたが……。本当はいけないことじゃないのに、上手くいかなくてどんどん悪い方向に進んでしまうのが本当につらくて、「あなたには、あなたの魅力があるのに!」と花火に伝えたくなります。

井澤:モカは全然クズじゃないので、むしろ「もっとクズになりなよ!」と思ってばかりです。本当に幸せになって欲しいから、「そんなに麦が好きなら奪いにいっちゃいなよ!」と思います。花火と麦が本当に両思いならともかく、麦のことがずっと好きなのに、恋人ごっこの候補にすら入れないというのは、心が痛くなりましたね。

安済:モカのそんな純粋なところは、良さでもあり弱点でもあるよね。第1話収録のとき、(島﨑)信長さんはモカに気持ちが引っ張られないか心配してたみたいですよ。テスト収録が終わった後「(モカとは生きている世界が違いすぎて)あれなら好きにならないから安心した」って話してたよ(笑)。

井澤:何それ、正解なのかどうか分からないけどひどい!(笑)

安済:いや、逆にモカが麦のクズ女好きレーダーに引っかからなかったというのは素晴らしいと思う(笑)。それくらいモカは良い娘なんです。

 『クズの本懐』の良心とも言えるモカは当然ながら、花火に関しても納得の回答が飛び出します。女性陣からは、麦は言われたい放題でしたが、そんなことになっているとは露知らない島﨑さんはというと……。

<男性サイド>
島﨑:ここまで演じさせてもらった範囲では、麦をクズだと思ったことはないですね。基本的には、どっちもどっちというケースが多いですし、彼なりに何故そういう行動をとったのかという理由は、僕の中で腑に落ちているんです。さっきも言った通り、麦は誰かを意図しておとしめているというわけではないですから。

野島:鳴海先生に限らず、どのキャラクターに対しても言えることですが、どういう風に「クズ」という言葉をもっていくのかにもよるとは思います。例えば鳴海先生は茜先生に恋をしますが、それは自分の理想を一方的に押し付けているだけなんですよ。現実の相手のことを見ようとせず、自分の中にある理想の相手を作り上げ、そこに恋をし突っ走ってしまう。そういった部分では、相手や自分自身のことを含め、人の本質を見ようとしていない。登場キャラクターたちは、全部そんな人ばかりなので、鳴海先生も含めた全員がクズなんじゃないかと思いますね(笑)。

 安済さん、島﨑さん、井澤さんが「自分の演じているキャラクターはクズではない」という結論を出したのに対して、「人の本質を見ようともしないという意味では、鳴海先生も含めた全員がクズ」という鋭い意見が野島さんの口から飛び出すことに。この視点には、それまでの正反対の意見だった島﨑さんも感心しきりでした。人生経験が豊富な野島さんだからこその分析と言えるのではないでしょうか。

 これまでを見ていくと、男性陣は冷静に分析し、女性陣は感情的にキャラクターを見ているように思えます。ご自身が演じているキャラクター以外についても聞いていきました。

──自分自身が演じたキャラクター以外に「クズ」だと思ったキャラクターはいましたか?

<男性サイド>
野島:うーん……やっぱりタクヤ(茜の彼氏と思われる男性)とか?(笑)

島﨑:でも僕はタクヤ嫌いじゃないですよ(笑)。タクヤはただ欲望に素直なだけだし、タクヤも茜先生もお互いそういう人だって分かってて関係を持っているじゃないですか。茜先生も自由を求めていますけど、「遠回りしてるなぁ、若いなぁ」と思ったりもします。まあ二人とも、プライベートでは関わり合いになりたくないですが(笑)。


野島:「欲望に素直に生きている」という観点では、タクヤも、茜先生もクズじゃないのかも知れないね(笑)。

島﨑:「欲望に素直な自分自身」をクズと思っているからこそ、『クズの本懐』というタイトルにもかかってくるのかもしれませんね。

野島:欲望をさらしている者同士だと、そうそう他人のことをクズとは言えないしね。

島﨑:おそらく、作品を見て「みんなクズだ」と感じる方が多いと思いますが、それは舞台の外から見ているからだと思うんです。麦を演じる役者の視点で見ていると、どうしても彼らをクズと断言することができないんですよね。ただ、やっぱり茜先生に対してだけは「ひどいな」「怖いな」ということはよく思っていますが(笑)。

 もしかしたら『クズの本懐』にクズはいないのかもしれない……。そんな思いにさせてくれる男性陣のコメントです。確かにキャラクターたちが多種多様な考えのもと、行動した結果がクズに見えている、というのはあるかもしれません。対する女性陣の回答も気になります。

<女性サイド>
安済:クズは二人しかいないですね。茜先生と麦です!

一同:(笑)。

井澤:茜先生も寂しい人なんだろうと思うけどね。

安済:私の中の持論として、寂しくていろいろな人と付き合うのはいいんだけど、それによって他人に迷惑をかけるというのが本当に許せない! 特に茜先生の場合、「あそこまでの努力ができるなら、本来はまっとうに生きられるはずなのに……」って思っちゃいます。

麦に関しては、まだ若いから許されている面もありますけど、彼も救いようのないクズなんですよ! ちゃんと痛い思いもしていて、その辛さも分かるし、思いやりや自覚もあるんですけど、それができるならまだ間に合うのにしない……。

井澤:私も一緒で、クズなのは茜先生と麦かなぁ。でも茜先生は、どちらかというと擁護したくなるタイプで、他人がいないと自己評価を感じられないじゃないかって思うんです。そういう意味で、茜先生もかわいそうな人だとも思うんです……。麦の方は、イケメンでいかんせんモテただけに……クズですよね。

 なんと、女性陣は男性陣とはまったくの逆意見。あくまでもこれは、4人の意見にすぎませんが、見る者によって抱く感想が違うというところも、『クズの本懐』の魅力なのかもしれません。

「クズとは何か」という質問に、真剣に頭を悩ませるキャスト陣
 では「クズ」とは何なのでしょうか? まるで禅問答のようなこの質問にも、4人はしっかりと回答してくれました。

──これまでに何度も登場した「クズ」という言葉ですが、ずばり「クズ」とはどういうことだと思いますか?

<男性サイド>
野島:すごく人間らしいことではあるなと。『クズの本懐』を読んだとき、心がヒリヒリして後ろめたさを感じるというのは、僕の中でそういう生き方をしたくないという想いがあるからだと思うんです。

島﨑:個人的には、自分に対しても他人に対しても、クズと思った時点でクズになるのかなと。例えばAさんはBさんにとってはクズでも、Cさんにとっては良い人かもしれない。

野島:その人自身の本質とズレているかどうかですかね。自分の中の本質と違う生き方をしているのが、クズということになるんじゃないでしょうか。

<女性サイド>
安済:恋愛が絡む場合なら、私はやっぱり人に迷惑をかけるかどうかという部分になりますね。

井澤:例えば、たまたま好きになった人に彼氏彼女がいた場合だったらどう? 最初から付き合っているのを知っていて奪ったりするケースならクズだと思うけど、好きになってからそのことを知ったけど、この気持ちは止められない! みたいな。

安済:難しいところだけど、例えば真っ向から勝負しにいって、玉砕したら諦めるっていうのなら良いのかなと。裏で工作して、彼女をおとしめて……みたいなことをするのはダメっていうのが私の基準。恋は止められない感情だから仕方ないことだけど、自分しか見えなくなって、他人の足を引っ張り始めてしまったらクズということになるのかな。

井澤:私の場合、犯罪に走ったらアウトっていう基準はあるけど、生物的にはいろいろな人と子孫を残そうとするのが正しいとも思う。例えば一夫多妻制の国だったらこういう作品は成り立たないのかな? とも思った。一夫多妻制で生活している人に読んでもらったとき、どういう反応をするのかというのは気になるよね。なので最終的には立場とか環境、人によって定義がかなり変わってくる言葉だとは思います。

安済:「性格悪いな」と感じることはあっても、クズとまではなかなか思わないですからね。アニメがスタートしてからのみなさんの反応とかで、クズについて改めて考えさせられることもあるのかなと。

井澤:(原作者の横槍メンゴ)先生が、クズたちの思考回路をどうやって引っ張ってきているのかも知りたくなってくるよね。

 通常のインタビューではなかなか聞かれないであろう哲学じみた質問に、かなり頭を悩ませるキャスト陣。最終的にクズかどうかを決める定義は、その人自身によって大きく異なるという結論に落ち着く形となっていました。そんなインタビューも、いよいよ最後の質問へと移ります。


──そんなキャラクター達ですが、最終的に幸せになれると思いますか?

<女性サイド>
井澤:バッドエンドにはならないと信じてます!

安済:なんとなく、誰と誰がくっついたからハッピーエンドっていう単純な話ではないと思うんですよね。これからの未来が明るくなるような終わりが待っているといいなと。特にモカにとって……。

井澤:ありがとう、本当にモカ大好きなんだね(笑)。

安済:そう、本当に好きなの。もっといい王子様が他にいっぱいるからって伝えたい!(笑)

あと花火は、お兄ちゃんへの想いが恋の範疇を超えてしまっているので、その呪縛から開放されて年相応の普通の恋をしてくれたら嬉しいなと思っています。

<男性サイド>
島﨑:実は、最終的にどういう結論になるかということは、僕たちもそれとなくは知らされていまして……。『クズの本懐』という作品は、ただクズな登場人物や衝撃的なシーンを見せているわけではなく、それまでに表現してきたことは、全て最終的な答えに向けられたものとなっています。途中見るのが辛くなってしまうこともあるかもしれませんが、しっかりとした答えも提示されますし、きっとなにか皆さんの心に残るものがあると思いますので、是非最後まで見届けて頂きたいですね。

野島:本作を通して、「“クズ”とはなんぞや?」という本質も見えてくるかもしれませんよ。

 「クズ」という一風変わった題材をテーマに、4人の声優陣の様々な考え方に触れることができた今回のインタビュー。女性陣から手厳しい意見が出たかと思えば、男性陣からは一歩引いた同情的な意見や分析がなされるなど、性別ごとに正反対の回答が飛び出すことも珍しくなく、それぞれの議論もかなり白熱した様子となっていました。

 アニメでも茜先生の本性が判明し、ますます予想不可能な展開と盛り上がりを見せている『クズの本懐』。こうした「クズ」をテーマに、友達と熱い議論を重ねてみるのも、これまで気づけなかった、本作の新たな魅力を知るきっかけを作ってくれるかもしれませんよ。あなたにとって「クズ」とは何ですか?

[インタビュー:石橋悠、米澤崇史]

作品詳細
<概要>
高校二年生の安楽岡花火は、叶わぬ恋に身を焦がしていた。大事な人を傷つけ、傷つきながらも求めてしまう人のぬくもり。これは、あまりにも純粋で歪んだ恋愛ストーリー。
月刊「ビッグガンガン」で、好評連載中の横槍メンゴ原作。「最弱無敗の神装機竜」「がっこうぐらし!」を手掛けた、気鋭のアニメーション監督安藤正臣と、「アルスラーン戦記」「暗殺教室」の脚本家、上江洲 誠が、タッグを組んで送る渾身の一作。

<放送情報>
2017年1月12日よりフジテレビ“ノイタミナ”にて毎週木曜24:55から放送開始。
※初回放送は25:10から放送開始。ほか各 局でも放送開始

Amazonプライム・ビデオにて日本・海外独占配信
第1話:日本では1月11日(水)24時~先行配信
第2話以降:日本では毎話フジテレビ放送直後の木曜27時~配信予定

フジテレビ 1月12日より 毎週木曜 24:55~
秋田テレビ 1月12日より 毎週木曜 25:20~
岩手めんこいテレビ 1月12日より 毎週木曜 24:55~
さくらんぼテレビ 1月12日より 毎週木曜 24:55~
仙台放送 1月12日より 毎週木曜 26:10~
福島テレビ 1月12日より 毎週木曜 25:55~
新潟総合テレビ 1月12日より 毎週木曜 25:45~
テレビ静岡 1月12日より 毎週木曜 25:35~
東海テレビ 1月12日より 毎週木曜 26:15~
関西テレビ 1月12日より 毎週木曜 25:55~
テレビ愛媛 1月12日より 毎週木曜 25:00~
テレビ新広島 1月12日より 毎週木曜 26:00~
テレビ西日本 1月12日より 毎週木曜 25:55~
サガテレビ 1月13日より 毎週金曜 24:55~
テレビ熊本 1月12日より 毎週木曜 25:45~
鹿児島テレビ 1月12日より 毎週木曜 26:05~

<スタッフ>
原作:横槍メンゴ(掲載 月刊「ビッグガンガン」スクウェア・エニックス刊)
監督:安藤正臣
シリーズ構成・脚本:上江洲 誠
キャラクターデザイン・総作画監督:黒澤桂子
キーアニメーター:渡辺真由美
デザインワークス:白石慶子
プロップデザイン:吉田みずき
美術監督:鈴木友成
色彩設計:柳澤久美子
撮影監督:國井智行
編集:及川雪江
音響監督:明田川 仁
音楽:横山 克
アニメーションプロデューサー:比嘉勇二
アニメーション制作:Lerche
制作:「クズの本懐」製作委員会

オープニング・テーマ
「嘘の火花」
作詞・作曲・編曲:谷口尚久 歌:96猫

エンディング・テーマ
「平行線」
作詞・作曲:さユりさユり 編曲:カワイヒデヒロ 歌:さユり

<キャスト>
安楽岡花火:安済知佳
粟屋 麦:島﨑信長
絵鳩早苗:戸松 遥
鴎端のり子(最可):井澤詩織
鐘井鳴海:野島健児
皆川 茜:豊崎愛生

>>TVアニメ公式サイト
>>TVアニメ公式Twitter

(C)横槍メンゴ/SQUARE ENIX・「クズの本懐」製作委員会
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