『コードギアス』誕生秘話を大河内氏が語る……第13回アニメー..

『ヱヴァ』が『電脳コイル』が『コードギアス』が、初音ミクに坂本真綾さんも!今年を彩った話題の作品・パーソンが語った!第13回アニメーション神戸授賞式レポート

 2008年11月2日、神戸国際会議場メインホールで、第13回アニメーション神戸賞授賞式が行われた。神戸市はアニメーションという文化とデジタル技術の融合を通じて、デジタル映像を中心とする情報通信関連産業の振興に力を入れており、国内の商用アニメーションについて、優れた作品やクリエーターを表彰する「アニメーション神戸賞」の授与を毎年行っている。今回は当日行われた「デジタル・クリエーターズ・アワード表彰式」「第13回アニメーション神戸賞授賞式」「青春ラジメニアトークスペシャル」の模様をレポートしよう。


●今年も高レベルの作品が集まった「デジタル・クリエーターズ・アワード」

 「デジタル・クリエーターズ・アワード」は、プロ・アマ問わず公募したアニメーション作品の上映と審査を行い、優秀作品を表彰するイベント。審査委員長は、今年も『おじゃる丸』や『ギャグマンガ日和』の大地丙太郎監督が務めた。

 当初は5作品がノミネート予定だったが、レベルの高さに6作品となり、“日常ポエム大賞”や“シュールギャグ大賞”、“愛ある音楽そして美術大賞”などの各賞が、大地丙太郎監督から受賞者たちに贈られた。授賞式を終えた大地監督は、「本日は審査を終えて非常にうれしいです。回を重ねて地道にやってきて、そのたびに何か足りないんだって言ってたんですが、今回はレベルの高さにびっくりしました。僕もとりあえず第一線でアニメーションを作っている人間なんですが、これはもしかしてあぶない、うかうかしていられないと本気で思いました。自分が考えつかないジャンルをやってくる人というのは脅威で、僕を含めたプロはもっと頑張らないといけないなと。特に作画がよくて、以前指摘した音楽の使い方もよくなっていて。今回6作品を選んだんですが、僅差の作品も11作品ありました。大賞の方もそうですが、もっとたくさん作っていくと、もっともっと洗練されるし、うまくいかなかった部分も補われていくと思うので、たくさん作ってほしいと思います。今回は笑える作品が多くて嬉しかったんですが、人が笑うにはタイミングが必要で、その「間」をどう作るかがギャグの真髄になる。尺の長さも、あきられないようなベストの長さがある。それを外さないことが、面白かったという感想につながります」と語っていた。

 また、大地丙太郎監督は、アニメーション神戸にまつわる活動の一環として、アニメーション神戸ゆかりの新人声優を集めて音声ドラマ『神戸ピックマンショー』を制作しているが、今年も2008年バージョンを制作中。ということで、ステージにはささきのぞみさん、ピッグマンショー名物の巻き舌外国人(?) 中谷カトリーヌさんら、ピッグマンショー参加声優が登場。参加者は全員神谷明さんの声優ワークショップの出身者で、「神戸少女歌(うた)劇団」、「神戸の恋は坂道発進」の2曲を披露した。最新のピッグマンショーは鋭意製作中ということで、近々webで発表されるとのことだ。

●第13回アニメーション神戸授賞式

 アニメーション神戸賞は、国内の商用アニメーションについて、優れた作品やクリエーターを表彰する賞。今年度の個人賞は、『電脳コイル』の磯光雄監督が受賞した。特別賞は、作家で脚本家の辻真先氏が受賞。辻氏はアニメの黎明期から手塚作品など数々のアニメ制作に携わり、アニメ黎明期の作品では関わっていない作品を挙げた方が早いほどの人物だ。受賞者は以下のとおり。それぞれのコメントとあわせて紹介しよう。なお、主題歌賞の坂本真綾さんはビデオメッセージでのコメントだった。

<個人賞> 磯光雄氏(『電脳コイル』監督):(作品は命を削って作るものですが、)削る命にも限界がありますので、ほどほどにやっていきたいと思います。この作品を作るときはあまり賞とかは考えず、あまりにくだらなくて笑ってしまうような作品を作ろうとしていたので、こんな賞をもらえるとは意外でした。こういうところには慣れていなくて、薄暗いところでコツコツ絵を描いている商売なので、今後もアニメを作ることを第一に仕事をしていきたいと思います。

<作品賞・劇場部門> 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(登壇はキングレコード大月俊倫氏):個人的には10年ぶりくらいの神戸なんですが、エヴァの受賞からもう13年たちました。私が関わった曲が今まで(主題歌賞で)受賞したときは遠慮してたんですが、今回はここに立つべき庵野監督が次作の自宅で作業中ですので、代わりに来させて頂きました。こんな栄誉ある賞を頂けてうれしく思います。制作中の次作も面白いものになると思いますので、応援してください。

<作品賞・テレビ部門> 『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』(登壇はシリーズ構成の大河内一楼氏):『コードギアス』脚本家の大河内一楼です。今日はスタッフを代表してきました。『コードギアス』は5年ほど前に、原作もおもちゃも何もないところから始まりました。一期目が売れなければこうして『R2』ということもなかったと思うんですが、スタッフが一人ずつ集まってくれて、時間と知恵を出し合ってくれたおかげで今があります。コードギアスがこんなに大きく育ったのは、応援してくれたファンの皆さんのおかげです。5年前の何もなかった頃を思えば夢のようです。本当にありがとうございました。

<作品賞・ネットワーク部門> 初音ミク(登壇はクリプトン・フューチャー・メディア伊藤博之社長):弊社はアニメとはあまり関係なくて、DTMというコンピュータで音楽を作るソフトウェアを主に開発している会社です。初音ミクは昨年の8月に発売したんですが、パッケージに描いたかわいらしい女の子が歌うという設定のソフトです。タイミングよく動画共有サイトが流行っていたという幸運がありまして、多くの楽曲やイラスト、動画モデルなどがネットに広がっていきました。それが我々も面白くて、非商用ならどんどんやってほしいというガイドラインを引きまして、ユーザーが共用できる楽しめる場も提供する方針を採ってきました。そういう意味で我々だけではなく、音楽を作る方、絵を描く方などユーザーの方々の力で受賞できたと思います。今日はユーザーの代表として受賞しにきました。本当にありがとうございました。

<特別賞> 辻真先氏(作家・脚本家):今ここで上映されましたのが『ジャングル大帝』です。今のシーンは『メトロポリス』などを作ったりんたろう監督の演出です。アニメーションはそうやって大勢の人が関わって作るので、僕一人が賞をもらうのはこそばゆいです。昔の経験からこういう高いところに立つと怒られるような気がするんですが、ほめられるのは珍しいです。今はアニメーションを書いてはいませんが、見る方は最近の作品も見てまして、『コードギアス』もこの前全部見ました。好きなんですよ。『電脳コイル』なども今度書く本にいろいろ書きたいと思いますのでよろしくお願いします。神戸はあまり来たことないのに、なんだか懐かしい。山があって海があっても真ん中にアニメがある。いいところです。これからもちょくちょく呼んでください……というほど長生きできないかもしれませんが、いい思い出ができました。皆さんどうもありがとうございました。

<主題歌賞> 「トライアングラー」(歌:坂本真綾さん):みなさんこんにちは、坂本真綾です。この度は私が歌った『トライアングラー』という曲が、主題歌賞を頂きまして本当に嬉しいです、ありがとうございます。そちらの会場に伺うことができず、大変申し訳ありませんでした。『トライアングラー』という楽曲が皆さんの印象に残って、本当に光栄に思っています。私はデビューして12年になるんですが、今まで歌ってきたどの曲とも似ていない、すごくオリジナリティのある個性的な楽曲で、きっとこれからもずっと、私にとって特別な一曲になっていくだろうなって思います。この先も皆さんに聞いていただいて、思い出に残っていくような歌を歌い続けていければと思っておりますので、よろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました。

●青春ラジメニアトークスペシャル

 第13回アニメーション神戸の一部として行われたのが、「青春ラジメニアトークスペシャル」。青春ラジメニアはラジオ関西で放送されている関西アニラジの草分け的存在。1989年4月1日に放送開始し、前番組の「アニメ玉手箱」と合わせれば20年を越える超長寿番組で、関西のアニメファンはラジメニアを聞いて育ったと言っても過言ではないほどの番組だ。今回のトークスペシャルには、パーソナリティの岩崎和夫さんと南かおりさん、特別賞を受賞した辻真先さん、JVCエンタテインメントで坂本真綾さんを担当する伊藤将生さん、アニメーション神戸実行委員長の神谷明さんが参加した。

 まずゲストとして登場したのは、JVCエンタテインメント、flying DOG制作部の伊藤将生さん。「トライアングラー」が主題歌賞を受賞した『マクロスF』に関しては、「楽曲がストーリーを導くという内容なので音楽の重さが通常と違い、普通は音楽を作って、中身を作るのはアニメ会社という感じなんですが、今回は河森総監督らと一緒に作品を作っていったという感じでした。基本、河森総監督からアイディアがあって、それに対して(作曲家である)菅野よう子さんがぶつけるじゃんけんを繰り返すんですが、そのたびに現場は苦しくなるんです。音楽に合わせて作品の一部が作りかえられたり、普通はないライブ感がある作品でした」と語っていた。菅野さんについては「ディレクターが倒れても本人は倒れない、心身ともに強い人ですね。マグロとかみたいにバリエーションを変えながら常に動いてないといられない、天才鬼才の類だと思います。僕ももちろん尊敬しています。『マクロスF』の楽曲は、前倒しでどんどん作っていくので、スケジュール的に困ることはありませんでした。とにかく次々と様々な曲調の曲が落ちてくるんです」。坂本さんと『マクロスF』については、「坂本さんがアニメの歌を歌うきっかけになったのが河森総監督が以前に手がけた『天空のエスカフローネ』という作品で、坂本さんがアニメでデビューする頃から河森さん、菅野さん、坂本さんのトライアングラーはあったんです。その後こうしてつながったのは、ある意味必然だったのかなと思います」と語っていた。坂本さんに関しては、「トライアングラー」収録を終えた坂本さんが「スポーツみたいだった」と語ったことや、今回授賞式に参加する伊藤さんに「明石焼きを買ってきて」と頼んだなどのエピソードも紹介されたが、中でも会場をどよめかせたのが、レコーディング時のエピソード。2008年の年頭頃、レコーディングのオケ録りがあった際、菅野さんが坂本さんに「ちょっと仮歌歌ってくれる?」と頼んで収録したのが、後にMay'nさんと中島愛さんが歌った「ライオン」だったとのこと! あまりに豪華な仮歌に、パーソナリティの2人からも「その曲はどこで聴けるんですか!」と思わずツッコミが入ったほどだった。

 続いてのゲストは、特別賞を受賞した辻真先さん。辻さんが脚本を担当した『勇者ライディーン』や『バビル二世』で主演したアニメーション神戸実行委員長・神谷明さんも一緒に登場した。辻さんは、アニメ黎明期を知るまさに歴史の生き証人。『ジャングル大帝』の時代は白黒テレビが主流だったため、白黒テレビで見ても鮮やかに見えるカラーの色使いに苦労した話や、『サザエさん』のスポンサーが東芝だったために、決して磯野家の蛍光灯(東芝製)の電気は切れない、電気を切るためにはトラックを電柱にぶつけなきゃいけないという話や、当時は海外での放送時、順番を入れ替えたり途中がカットされたりが当たり前だったため、途中が途切れても話がわかる一話完結型を強いられた……といったエピソードが次から次に登場。中でも強烈だったのが当時の制作環境で、「制作費と予算からすれば当然赤字なんですが、ファンから届く山のようなファンレターがうれしくて、ただでもいいなんて言いながらやっていました。ただ、眠かった。寝る暇と食う暇とどちらを削るかということで、なるべく食わずに寝る時間を作って描いてました。NHKの頃でもそうだったんですが、(手塚治虫氏の)虫プロはもっとひどかった。地獄の下にまだ底があった。スタジオの扉を急に開けちゃいけないんです。誰かがもたれかかって寝てるから。今のアニメーターの人も大変だと思いますが、あの頃はもっとすごかった。もっとも、あまり注目されていなかったからこそ、冒険が好きなようにできたということもあるかもしれません」と語っていた。一方、手塚治虫氏に関しては、「新人に対しても丁寧な言葉使いで、決して言葉を荒げず、やって見せる人だった。アイデアマンで次から次に出るアイデアの10本のうち、7本はくだらないもの。2本は流石というもので、最後の1本は本物の天才だと思えるものだった。どんなアイデアでも大事に、恥ずかしがらずに提示する人だった」と深い尊敬をにじませていた。

 こうしたアニメ界の歴史そのものとも言えるエピソードが語られる一方、今でもアニメが大好きでよく見るという辻さん。「アニメが週50本もあって全部は見られないんで、脚本のお弟子さんの姉妹にオススメの作品を聞いて見るんですが、イケメンの出てくる作品ばっかりで萌えキャラがいないじゃないかと。最近綾辻行人さんやミステリー作家、評論家などに聞くとみんな『コードギアス』を見てると言います。最近は男の子が弱くて女の子が制服で日本刀もって戦いに行く、そういう作品の二匹目、三匹目のどじょうどころじゃないのが多い。最近だと貨幣経済やらを持ち込んだ『狼と香辛料』がいいですね」など、放送中のアニメについても様々な話があった。最近『コードギアス』を全話見た話に拍手が起こると、「だって好きなんだもの別に」と一言。本当にアニメが好きなのが伝わってくるトークだった。

●神谷委員長による総評

 イベントの締めくくりとして、アニメーション神戸実行委員長・神谷明さんの挨拶が行われたので、最後に紹介しよう。

アニメーション神戸実行委員長・神谷明さん:本日は長い時間に渡っておつきあいいただき、本当にありがとうございます。私も実行委員長を仰せつかってから、3年目を迎えました。そして今年の授賞式に参加して思ったのは、まだまだ素晴らしいパワーが日本のアニメにはあるということです。今、辻先生とお話して、りんたろうさん、長浜さんなど懐かしい名前が出てきましたが、どの方も当時は新進気鋭の監督でした。今回の会場で、それと同じようなパワーを感じました、これからも皆さんと一緒になってこのパワーを盛り上げ、さらにさらに素晴らしいアニメのために貢献していきたい、そう思いました。最終的にはこの神戸から、その素晴らしいアニメを1本、まずは送り出したいと思います。どうぞ今後ともご支援のほどよろしくお願いします。簡単ではございますが、ご挨拶に代えさせて頂きます。ありがとうございました!」

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