妖艶で幻想的な和の世界を表現！『ALI PROJECT TOUR 2010 汎新日本主義』レポート

　『ALI PROJECT TOUR 2010 汎新日本主義』。そのツアー・ファイナルが11月3日の国際フォーラム・ホールAにて行われた。常に前衛的な姿勢で社会に切り込むALI PROJECTの音楽。またしても波紋を呼ぶであろうライブの模様を皆さまにもお伝えしよう。

　9月29日にリリースされたニュー・アルバム『汎新日本主義』を主軸に据えて開催された今回のライブ・ツアー。そのツアー・ファイナルは、業界でタブーとされる「君が代」のインストから幕を開けた。

　和をモチーフとしたステージには国旗が飾られ、ボーカルの宝野アリカさんは花魁姿で怪しげに登場。オーディエンスの視線を釘付けにすると、刀を振りかざしながら「刀と鞘」を披露した。以前より、「大和魂」にこだわりを持つ傾向にあったアリカさん。本領発揮と言わんばかりに、妖艶で幻想的な和の世界を表現していった。
　しかし、演奏（ヴァイオリン・キーボード）はもとより、コードチェンジの多い曲調やアリカさんの持つ独特の高音には洋風の香りが多分に残っている。そんな和洋折衷の雰囲気の中、戦争に対する想いや日本ならではの物語を描いた“大和ソング”が続く。
　途中にはインストナンバー『この國よ静かに目覚めたまえ』の演奏もあり、絶対的な歌唱を支える絶対的な演奏の力を見せつける。その『君が代』を織り交ぜた優美で哀愁漂うフレーズに、誰もが息を飲み、一心にステージを見つめていた。そして、本編中盤には「愛と誠」を国旗を振りながら披露。“戦争”という世間のタブーを自分達の色に変えつつ、皮肉交じりのMCを展開した。さすが、怖いものなしのALI PROJECT。その後も、「帝都乙女決死隊」や「神風」といった日本の戦時中をイメージさせるような楽曲を高らかに歌い上げていった。

　だが、ただコンセプトに沿ってきっちりと世界観だけを伝えるのがALI PROJECTではない。着席型のライブゆえ、ステージと客席の距離を感じさせながらも、「亡國覚醒カタルシス」の振付コーナーもあり、会場には笑い声が溢れていた。
　アンコールでは、煌びやかなドレスを身に纏い再登場。しかし、歌謡ショーの歌手のようなアリカさんの姿にも関わらず、周りを取り囲むドラァグクイーンのみなさんは、それを越える超ド級の派手さ！ミラーボールに照らされながら、手拍子に乗せて「鹿鳴館ブギウギ」「東方憧憬未見聞録」「暗黒サイケデリック」を立て続けに演奏。まさしくショータイムと呼べる夢のようなライブを繰り広げ、『ALI PROJECT TOUR 2010 汎新日本主義』は終幕を迎えた。

　この模様はDVD化する予定とのこと。ALI PROJECTの掲げる“汎新日本主義”の世界観を是非その目で確認していただきたい。

＜TEXT：斉藤　碧＞

『ALI PROJECT TOUR 2010　汎新日本主義』
＜SET LIST＞
1．刀と鞘
2．亂世エロイカ
3．四神獣飼い殺し
MC
4．雪華懺悔心中
5．六道輪廻サバイバル
MC
6．阿修羅姫
7．SENGOKU GIRL
8．この國よ静かに目覚めたまえ
9．平成日本残酷物語
10．腕～kaina
MC
11．愛と誠
MC
12．帝都乙女決死隊
13．神風
MC
14．亡國覚醒カタルシス
15．絶國TEMPEST
16．髑髏ヶ城の巫女達は永遠に現世の夢を見る
MC
17．巴里と画家と女
MC
18．戦争と平和
19．平和の因子＋君が代
ENCORE
EN-1 鹿鳴館ブギウギ
EN-2 東方憧憬未見聞録
EN-3 暗黒サイケデリック

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