超満員のオーディエンスと一体に!今井麻美1stライブ『COLOR SANCTUARY』レポート
芯のあるハイトーンが突き抜ける。どこまでも上昇していくようにたたみ込む。
クリスマスに行われた今井麻美の1stライブは、この日の為に用意された「きよしこの夜」に続き、1stアルバムのタイトル曲「COLOR SANCTUARY」で幕を開けた。“地球”という壮大なテーマが秘められたこの曲を、右手を揺らしながら歌う彼女からは、精霊を思わすほどのオーラが放たれる。
CDデビューから1年半。元より歌唱力には定評あったが、この間に音楽に関する意識の目まぐるしい変化が、折々の発言からうかがえた。楽しく歌うところから、クリエイティブな自己発信へ。ステージでの緊張感との折り合いから、自然に沸き上がる楽しさの発見。1stライブが決定したときも不安を口にしていたが、この夜の渋谷WWWには、持ち前の高音を存分に響かせ、堂々と自分の世界を繰り広げるシンガー今井麻美がいた。
幻想的な世界へ誘う「蒼穹ノ月」、可愛らしくポップな「Strawberry」と1曲ごとに表情を付け、デビュー曲の“大人っぽいヴァージョン”という「Day by Day~Bossa Nova~」は、両手の人差し指をクルクル回しながらさわやかに。客席に「行くよ!」とマイクを向けて、「forever!」と会場中が声を合わせると、満面の笑みが浮かんだ。
途中MCで、超満員となった客席を見渡しながら「今日は忙しい……フリをする日かもしれないけど(笑)、お越しいただきまして」との発言もあり、「COLOR SANCTUARY」のPV上映を挟み、赤いサンタクロースの衣裳で登場。小さな袋に入ったクリスマスプレゼントを、場内に投げ込んだ。中身は「スーパーで買ってきた飴ちゃん」。前夜にテレビで全日本フィギュアスケート選手権を観ながら、袋詰めしていたとか。
そのままクリスマスソングのスタンダードナンバーを6曲続けて披露。ロックアレンジの「もろびとこぞりて」、洒落たジャズテイストの「サンタが町にやってくる」……。客席では色とりどりのサイリウムが振られて華やいだ。
再び衣裳替えして、後半は自ら作詞したバラード「満天星」でスタート。ゆったり広げた手を胸に当てたり、片手をスポットライトにかざしながら、朗々と歌い上げる。星たちの間を漂うように。
「今ここに自分がいるのが不思議。一つ一つの出会いを大切にしながら、いろんなものが数珠つなぎになりました」とのMCに続いて歌ったのは「風のささやき」。彼女が声優として初めてオーディションに受かったゲーム『センチメンタル・プレリュード』で、ユニットとして歌ったレア曲だ。このゲームの音楽担当だったのが現プロデューサーの濱田智之氏で、特別にギターで参加した。
恋の始まりを歌う初々しい曲だが、ここでも高波が押し寄せるようなハイトーン・ヴォイスが胸に刺さる。そして、圧巻だったのが「一生歌い続けると思う、自分の大事な代表曲」と紹介された「シャングリラ」。
膝立ちの構えから、パイプオルガンの音色とクワイアの荘厳なイントロにギターが交錯すると、立ち上がって静かに歌い出す。一気に盛り上がるサビでは、骨太な歌声で情念のこもった熱唱。グンと迫る音圧。手を顔にかざしながら回る舞踏のような振りも相まって、息を呑むほどの迫力だ。歌い終わると、拍手と共に「すごかった!」との声援も飛んだ。
「正直、ここで歌えるのか分かりませんでした。ここ1ヵ月あまり歌ってなくて、毎日怖くて。“25日が来なければいいのに”と思ってました。でも、2日前に最終リハをしたら、急に自分の中で忘れていたものが駆け抜けて行ったんです。みんなの前で歌いたい! って」
笑顔を浮かべつつシリアスなことを語り、ラストナンバー「The Azure」へ。力のある歌声は最後まで、微塵も衰えずスパーク。鳴り響くアンコールは途中からミンゴスコールに変わり、今井麻美が再び、着くずしたTシャツに短パン、ポニーテールで姿を現した。
声援に応え、「すごーく、すごーく、すごーく幸せな気持ちをお裾分けしようかな」と歌った「ほんの少しの幸せ」。笑顔で軽やかに、愛おしさを込めて。左右に振る手に合わせて、客席のサイリウムも一体となって振られる。
いよいよ大ラス。「何にするか、すごく悩んだ」末に、再び「シャングリラ」をオーディエンスと共に歌うための“クリスマス・ヴァージョン”で。ヴォーカルが際立つアレンジに、ステージを左右へ動きながら、サビは“シャングリラの空へ~”と客席と大合唱。間奏では後ろ向きになり、体を揺らしてジャンプ、またジャンプ! 最後もジャンプでキメると、左手を高々と突き上げた。「ミンゴス、疲れた~!」と叫びながら、その顔は満足感でいっぱいだった。(敬称略)
<TEXT:斉藤貴志>
>>今井麻美 オフィシャルWeb