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『IS<インフィニット・ストラトス>』志茂文彦氏インタビュー

「スタッフや声優さんが、それぞれ自分の持ち味を出せる脚本を」―『IS<インフィニット・ストラトス>』シリーズ構成・志茂文彦氏にインタビュー!

 主人公を取り巻く魅力的な美少女たちと、彼女たちが駆る超兵器“IS”によるバトルが魅力のTVアニメ『IS<インフィニット・ストラトス>』(以下『IS』)が、2011年1月より放送中だ。主人公・一夏とヒロインたちの物語は、新たな転校生たちが加わってより盛り上がりを見せている。

 アニメイトtvでは前回、菊地康仁監督に絵作りの面から『IS』の魅力を伺ったが、今回はシリーズ構成・脚本の志茂文彦さんにインタビューを行なった。

 志茂文彦さんは『CLANNAD』や『Kanon』のシリーズ構成・全話脚本を担当したことで知られており、ライトノベル原作では『フルメタル・パニック!』シリーズ構成なども手がけている。シリーズ構成という仕事の内容を含め、『IS』の魅力を伺ってきたの紹介しよう。

──シリーズ構成という仕事がわからない読者もいると思うので、『IS』を例に簡単に説明して頂けるでしょうか。

志茂文彦氏(以下志茂):脚本・シナリオの総責任者、わかりやすい言葉で言えば“脚本監督”でしょうか。絵に作画監督、背景に美術監督、撮影に撮影監督、音声に音響監督がいるように、シナリオの流れを統括しています。ある程度経験のあるシナリオライターが受け持つことが多いですが、監督が兼ねることもありますね。
 原作がある作品を手がける時は、まず監督や原作者と相談しながら、アニメのシリーズ全体の、ストーリーの方向性を決めます。この原作の魅力は何か、アニメでそれを描くにはどうするか。作品の雰囲気とか、テーマとか、自分たちがこの番組でやってみたいこととか、考えることはたくさんあります。
 作品によっては原作のストーリーを大きく変えることもありますし、ほとんど原作を変えない場合もあるし、千差万別です。「最初の1話はオリジナルでいこう」とか、「ラストは原作と違う展開にしよう」とか、「ストーリーの大筋は変わらないけれど、原作には出てこないキャラを登場させて、違う雰囲気も出してみよう」とか、いろいろですね。
 こういうふうに、シリーズのストーリーの流れを決めていくのが「シリーズ構成」と呼ばれる作業で、それを担当する人のことも“シリーズ構成”と呼ぶわけです。同じ原作をもとにしても、シリーズ構成をどうするかによって、まったく違う作品ができあがります。
 それに、監督やスタッフも、繊細な人物芝居が得意だったり、豪快なメカアクションが得意だったり、コミカルなシーンが得意だったりと、個性が違いますしね。原作を読んで触発されるイメージも人によってさまざまですから、ほんとにスタッフによって、作品はまるで別なものになります。シナリオライターも、仕事のやり方は人それぞれなので、この説明はあくまで僕の場合というふうに受け取っていただく方がいいかもしれないですね。
 この『IS』に関しては、原作の小説が三巻まで出ていたので、それをもとにシリーズ全話の構成を立てました。原作のどの部分を1話にして、どこまでを2話に、3話にするのか、監督と相談しながら、最終回まで決めていくわけです。これがシリーズ構成という仕事のかなめの部分と言っていいと思います。キャラクターの出番がかたよらないようバランスをとったり、シリーズ全体のテンポや緩急などにも気をつけます。
 原作がないオリジナル作品の場合は、そもそもの世界観や、キャラクターの人物造型、全体のストーリー、なども考えます。もちろん監督と相談しながらですが。


──その他、シリーズ構成の仕事にはどのようなものがあるんでしょう。

志茂:シリーズ全体の流れが決まったら、第1話のシナリオ作業に入ります。この場合、シリーズ構成を担当するライターが1話を書くことが多いです。その後も中盤のクライマックスとか最終回など、鍵になる話数を書く場合が多いですね。
 他のライターさんに参加してもらう場合には、発注の時に、その話数の内容を説明したり、出来てきたシナリオを監督と一緒に読んで、前後の話と内容のくいちがいや重複がないか確認したりもします。それから、声優さんのキャスティングやロケ地について意見を求められることもありますね。監督やプロデューサーと一緒にオーディションのデモを聞いたり、モデルになりそうな場所のイメージを聞かれたり、現地取材に同行することもあります。
 シリーズ構成は、アニメ制作のかなり早い段階から始まる仕事ですし、後々の作業に大きな影響を及ぼすから責任重大なんです。もちろんその分、やり甲斐があって楽しい仕事なんですが。


──最初に原作をご覧になっての印象は?

志茂:キャラクターが元気で明るいなという印象です。主人公の一夏も前向きで、あまり“鬱展開”にはならなそうな感じだなと。女の子たちもみんなかわいくて、けっこう全体のツンデレ濃度が高めですよね(笑)。あとは、ライトノベルでメカ物というのはあまりないので、その意味でも新鮮で魅力的な作品だと思いました。


──そんな原作を脚本にする際に大事にしている点を教えてください。

志茂:キャラクターや世界の雰囲気・印象を大事にすることですね。やはり原作ファンはそれを大切にしているので。ただ、やっていくうちに自然とアニメならではの作品世界が立ちあがってくることも多いです。単純に原作をコピーすればおもしろくなるというものでもないですから。


──作品作りで工夫した点、こだわった点を教えてください。

志茂:「IS」の場合は、なるべく原作との齟齬が出ないようにしてほしいということだったので、特に最初の3~4話ぐらいまでは、お話の展開やセリフの流れなどはほとんど原作通りです。3話ぐらいから少しずつアレンジが入ってくる感じですね。
 まだ明かされていない設定なども多いので、のちのち小説の方で伏線になりそうな箇所などは拾って、謎の部分は謎のままにしてあります。原作を読まなくても、アニメだけでも楽しめるように気をつけてはいますが。
 また、完全に原作通りにしてしまうと、1話ではISの出番がなくなってしまうので、冒頭にメインキャラ全員が活躍する戦闘シーンを追加しました。このシーンが何かということは、シリーズの先のほうでわかっていただけるはずです。
 それから、小説だとシャルルとラウラは同時に転校してくるんですが、アニメでその通りにしてしまうと、第5話の中で同時に新キャラ二人を紹介しなければならなくなる。なので、あえて別々に登場させて、キャラの紹介がこみいらないようにしました。同じクラスに転校生が次々に入ってくるというのは、普通ありえないシチュエーションですよね。だから、一夏のクラスが、一夏がいるという、まさにそのことによって、ちょっと特殊な位置づけになっているらしい、ということも示せるんじゃないかという期待もあります。
 他にアレンジした点は、そうですね。小説では屋内のシーンが描かれることが多いので、アニメでは屋上とか、学校と寮の間の通学路のシーンを入れたりと、スキあらばキャラクターを戸外にひっぱり出して、場面に変化をつけようとしてました(笑)。


──12話の限られた話数の中で、5人のキャラクターとの恋愛模様とバトルを描いていくのは大変そうです。

志茂:話数に余裕があればいろいろできそうなんですけどね。みんな同じ寮で暮らしているわけですから、共同生活の楽しさを描いてみたり、箒や千冬やヒロインたちの心情ももっと描写したり。
 実は1話で全ヒロインを一旦登場させて顔見せをさせようかとか、いろいろ考えていたんですが、今回はちょっと難しかったですね。内容が濃い原作を圧縮したりふくらませたりしてシリーズを組み立てるのは、この作品に限らず大変です。


──『IS』は伝えないといけない設定もたくさんありますよね。

志茂:そうですね。説明シーンの入れ方には気を使いました。メカなどの説明は、授業の時間やアリーナのピットなど、モニタースクリーンやディスプレイがある場所で行うようにしています。スクリーンに“IS”の絵や図表を表示することで、説明がわかりやすくなりますから。それに、画面に動きをつけられれば、多少の長台詞も退屈せず聞いてもらえるのではないかと。
 あとは、せっかくクラスに大勢女の子たちがいるので、彼女たちに説明ゼリフを担当してもらったり、主人公のモノローグで説明が続く場合には回想シーンを入れたり、臨機応変にいろいろやっています。


──ヒロイン以外のクラスメートのキャラクターも非常に多彩ですね。

志茂:実はクラスメート全員に名前があって描き分けしているんですよ。脚本の段階では「生徒A」とか「B」としか名前がついていなかったので、そのあたりはスタッフさんにお任せしています。シナリオでは「生徒A」だったキャラクターに名前や表情がついているのを見るのは楽しいですね。


織斑一夏(CV:内山昂輝)

織斑一夏(CV:内山昂輝)

篠ノ之箒(CV:日笠陽子)

篠ノ之箒(CV:日笠陽子)

セシリア・オルコット(CV:ゆかな)

セシリア・オルコット(CV:ゆかな)

凰鈴音(CV:下田麻美)

凰鈴音(CV:下田麻美)

──各メインキャラクターの魅力と見せ方を伺えますか?

志茂:箒は素直になれないところがあって、久しぶりにあったのにツンケンしていて、一夏が戸惑う感じです。同部屋になってのドタバタがあったりして楽しいんですけどね。何を考えているかわからないキャラにならないように、箒のモノローグで心情を語らせたり、一夏を好きな気持ちが伝わるように気をつけています。
 セシリアはイギリスの貴族出身で、非常にプライドが高い。最初は一夏に対して挑戦的ですが、戦いで一夏の強さを感じて好きになったあとのかわいさを見てほしいですね。
 鳳鈴音は明るくて元気なキャラで、登場すると場面が活性化するので、芝居が作りやすくなるんですよ。ちっちゃくてかわいいし、個人的には非常に好きなキャラクターです。


──“ツンデレ”や“幼なじみ”など、キャラ立てに使う要素が共通するキャラが多いですが、どのあたりで差別化していますか?

志茂:セシリアがお嬢様代表とすれば、鈴は庶民的なところが魅力です。幼なじみの2人に関しては、箒とは6年ぶりの再会、鈴とは1年ぶりの再会になります。箒のことももちろん大切ですが、親しさの距離としては鈴の方が近いと思います。そうした原作で工夫している部分を活かすようにしています。


──なるほど。では引き続きシャルルとラウラについて聞かせてください。

志茂:一夏からすれば世界中で“IS”が動かせる男は自分だけ、学園でも1人ということで、疎外感のようなものはあったと思うんです。だから一夏はシャルルに対しては自分からどんどん仲良くなろうとする。他のキャラクターと違い、戦いを経ずに最初から仲良くなる独特の立ち位置です。まだちょっと明かせないですが、シャルルには「秘密」があるので、その秘密がわかったあとに、登場したあたりの話を見直してもらうと、またおもしろいと思いますよ。
 ラウラは非常に一夏を敵視していて、他のキャラクターに対しても攻撃的で、一見したところ悪役に見えそうですね。ただ、一夏との戦いを経てこのキャラクターも大きくガラっと変わりますので、楽しみにしてください。


──そんなヒロインにモテモテの主人公・一夏についてお願いします。

志茂:自分がモテていることに気づいていないというか、「男が1人だから珍獣扱いされているんだろうな」、ぐらいに思っているところがあります。明るくて前向きでいいキャラですよね。一夏は男性の視聴者からも人気がでるかもしれないですね。


──恋愛と並ぶ柱のバトルですが、『IS』のスピーディな戦闘は脚本ではどのように扱うんですか?

志茂:30分アニメの脚本は、200字詰めの原稿用紙で70枚前後、多くて76枚ぐらいなんです。場合によっては80枚ぐらいになることもありますが。でも、今回『IS』は65枚ぐらいをを基本にして、バトルで遊びの余地を作るようにしています。せっかくメカアクションが得意なスタッフがそろっているので、バトルシーンの自由度を増したいなと。
 だからシナリオでは、戦いの段取りや必殺技、設定など、ここは見せないとというポイントは押さえて、そこから先のふくらませかたは、作画スタッフにある程度お任せしています。秒数は用意したので、あとは実力を存分に発揮してください、ということですね。スタッフや声優さんたちが、自分の持ち味や得意技を思いきり出せる脚本を作るのも、シナリオライターの大事な役割の一つですから。
 それに、長さに余裕があれば、演出さんそれぞれの判断で、人物芝居に間を作ったり、IS学園の各所の様子をアイキャッチ的に入れたり、ある程度まで好きにできますよね。だから放送が楽しみなんですよ。個人的には、ヒロインたちのシャワーシーンとか着替えシーンとかをたっぷり見たい気もしますが、まあ、それはあくまでも個人的かつ、よこしまな願望ということで(笑)。


──今後の見所を聞かせてください。

志茂:今後キャラクターが出揃ってお話が動き出しますし、一夏もどんどん強くなるので楽しみにしてください。このあと水着回があるんですが、そこでは“IS”がほとんど登場せず、水着や着替えなんかのキャラクター描写が中心になります。実はこれはバトルの作画チームに少し余裕を持たせる意味もあるんです。「ここは人物芝居を中心にした回にしておきますから、その分、クライマックスに力を溜めておいてください」と。そういうふうに、監督やプロデューサーと相談して、全体の作業量の配分に気を配るのもシリーズ構成という仕事の一部です。
 アニメ制作という集団作業の中で、シリーズ構成というのはその設計図、工程表みたいな意味合いもあるんです。だから、作品がおもしろくなるよう考えつつ、監督や自分が実現したいことも見すえつつ、同時に全体の仕事の流れやスケジュールも頭に入れておくようにしています。とまあ、口で言うのは簡単ですけど、実際にはやっぱり大変です(笑)。


──最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

志茂:菊地監督はやはり、メカアクションに関しては現在のアニメ界で第一人者だと思うんです。なので、この番組を見れば今の時代の最先端のメカ描写を目撃できるんじゃないでしょうか。実は昨日も監督との打ち合わせのためにスタジオに行ったんですが、机の上に突っ伏して寝ているスタッフがいたりして、かなり現場はハードそうでした。みんな一生懸命に作っていますので、ぜひ期待してください。

(取材・文:中里キリ)

『IS<インフィニット・ストラトス>Blu-ray&DVD 第1巻』
3月23日発売予定
価格:Blu-ray7,665円(税込)、DVD6,615円(税込)
発売・販売元:メディアファクトリー

【初回生産特典】※BD&DVD共通
(1)弓弦イズル氏書き下ろし小説
(2)「IS」機密設定資料集 Vol.1(50p予定)
(3)独占封入!キャラクターソングCD《箒》
(4)<購入者限定>スペシャルイベント応募券
※初回生産分は数量に限りがございます。お早めのご予約をお勧めいたします。

【毎回特典】※BD&DVD共通
(1)キャラクターデザイン倉嶋丈康氏描き下ろしジャケット
(2)撮り下ろし動画ラジオ「RADIO IS」出張版(パーソナリティ:日笠陽子&下田麻美)
(3)デジパック&クリアスリーブジャケット仕様
(4)ノンクレジットOP
(5)ノンクレジットED Ver.1
(6)CM&PV集
(7)スーパーピクチャーレーベル

※商品の仕様、及びジャケットの絵柄等は変更になる可能性がございます。予めご了承下さい。

>>TBSアニメーション『IS<インフィニット・ストラトス>』公式ホームページ

シャルル・デュノア(CV:花澤香菜)

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ラウラ・ボーデヴィッヒ(CV:井上麻里奈)

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織斑千冬(CV:豊口めぐみ)

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山田真耶(CV:下屋則子)

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(C)2011 Izuru Yumizuru, MEDIA FACTORY/Project IS
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