月刊コミック　アース・スター連載の戦国バトルアクション『アタラクシア～戦国転生記～』の岩田やすてる先生にインタビュー　――　「1話を書いたあと、すごく不安になりました」

　『月刊コミック　アース・スター』で連載され、怒涛の展開と壮絶なバトルで多くのファンを魅了した『アタラクシア～戦国転生記～』。戦国時代を舞台に、とある理由で異形の腕と能力を得てしまった主人公・孫一に降りかかる数奇な運命を描いた、戦国バトルアクションだ。去る11月12日、待望のコミックス第一巻も発売された。

　今回アニメイトTVでは、『アタラクシア～戦国転生記～』作者の岩田やすてる先生にインタビューを実施。本作が生まれることになった経緯やインスピレーションを受けた作品など、じっくりと語っていただいた。

著者近影

――『アタラクシア～戦国転生記～』はどのようにして生まれたのでしょうか？

岩田やすてる先生（以下岩田）：ゲームをよくやるんですが、あるウイルスに感染した主人公の片手が変形してしまって、それを武器に戦う、というゲームがあって。進めていくうちに「そういえば、手が変形して敵と戦う、っていうジャンルってあるんじゃないかな？」と思ったんです。例えば『コブラ』とか『どろろ』、『地獄先生ぬ～べ～』なんかも同様のテーマを扱っていますよね。それで、その能力を生かした漫画を描いたら面白いんじゃないかな？と。そこから編集の方と内容を詰めていって、時代設定や背景を決めていった感じです。


――過去を舞台にしたのはなぜでしょうか？

岩田：現代よりも戦国時代のほうが、主人公である孫一の能力をフルに生かせると思ったからです。


――タイトルの『アタラクシア』にはどういった意味が込められているのでしょうか。

岩田：これ、ギリシャ語なんですけど、たまたまラジオか何かで聞いて、「良い語呂だな」と思ってメモっておいたものなんです。その時に意味（心の平静・不動の状態）も調べて、「ああ、なるほどな」と思っていただけなんですけど、漫画が出来た後にこの言葉を思い出して、このタイトルにしました。


――主人公・孫一というキャラクターはスムーズに出来上がったのでしょうか？

岩田：いえ、最初はもっとダークな主人公を書いたりして、何度かやりなおしてやっと出来上がった感じですね。編集の方ともかなりやりとりしながら進めていきました。


――そのやり取りの内容はどのような？

岩田：一番最初にネームで描いたのは、友情をメインにしたわりと爽やかな物語だったんです。それをテーマも含め細かく突き詰めて行ったら、たくさん血が流れてしまいました（笑）。それと僕の中で"異形の腕"がついた時に、それをカッコイイ武器としては扱いたくない、という思いもあったんです。あの手になってしまった主人公が、「どうしよう、こんなのついちゃった……」みたいな意識でいる感覚というか。


――それはなぜなんでしょうか？

岩田：ちょうどこの漫画を描く頃に、『第9地区』っていう映画を観たんですが、その内容が自分のやりたいことにとても近くて。本当にビックリしたんですよね。そこから影響を受けた部分が大きいです。

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――制作されるにあたって苦労した部分などありましたか？

岩田：1話目です。読者の方に"サプライズ"を与えるような展開にはなっているんですけど、同時にその反応がものすごく怖かったです。この後きちんと読者の人がついてきてくれるかな、みたいな不安が常にあって。でも3話目あたりからやっとスムーズに進んでいくようになりました。あとは1話目以降も随所にサプライズ的な要素が含まれているので、それを盛り込んでいくことも難しかったです。


――特に気に入っているキャラクターなどいますか？

岩田：主人公の孫一です。真面目なキャラクターなんですけど、その真面目さがイヤミになっていない部分が好きですね。それと特に気に入っているという理由ではないんですけど、俺の漫画のわりにはかなり女性キャラクター（咲や葵）が前に出てきていると思います。敵キャラクターに関しては、メタルバンドのジャケ写とかを参考にして描いたんですよね。


――この作品を描くに当たっての面白味はどんなところでしょうか。

岩田：俺の中では孫一と清助、それに同じ村出身のイモ均とか、仲間同士のやり取りのシーンが一番楽しいですね。あとはやっぱり、バトルです！


――バトルシーンはどういったものからインスピレーションを受けるのでしょうか？

岩田：映画ですね。『マトリックス』や『ターミネーター』、『少林サッカー』とか。いわゆる"映像革命"って言われた作品って、独特の顔の揺らし方とか空気の流れ方とかするじゃないですか？そういうのを観ると、「漫画でやったらどうなるのかな」って思うんです。


――先生はこれまでスポーツからマネーまで、様々タイプの作品を描かれていますよね。

岩田：そうですね。でもやっぱり、"戦い"が根本にあります。嫌な奴が出てきて、そいつを倒すために主人公が工夫する、っていうのを軸にしていきたいんですよ。でも戦いっていうのは必ずしも"バトル"である必要はなくて、対"人"だったり対"社会"だったり、いろいろあると思うんですけど。


――ではこれが最後の質問になります。先生が今後、描いていきたいものなどがもしあればお教えください。

岩田：もっとケンカ要素が強い感じの。あとは、下町の町医者みたいなお話を描けたら面白いと思います。


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