再生数1700万回を誇るバンド・流田Projectの素顔に接近!
動画系サイトでの累計再生数が1700万回を誇る謎の覆面アニソンカヴァーバンド・流田Project。2012年6月にリリースした彩音とのコラボレーションシングル『cry out』も好調のなか、8月8日(水)に3rdアルバム『流田PPP』をリリースする。
今作では『涼宮ハルヒの憂鬱』『らき☆すた』『Fate/Zero』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』など、人気アニメの名曲をロックにカヴァー。オリジナル・ナンバー1曲含む、全12曲がパッケージされた充実作となっている。
アニメイトTVでは初の対面取材ということで、結成から新作までの道のりをじっくりたどった。待望のメンバー全員、ロング・インタビューだ。
●「4人でバンドをやりだしたのは(大学を)卒業してから」
──アニメイトTVでは初めての取材になるので、今日は結成の経緯から最新アルバムの話までガッツリと聞いていきたいと思っています。もともと4人は大学で同じサークルの仲間だったとか。
流田 豊さん(Vo.&Gt./以下、流田):ハイ。4人ともフォークソング部に入ってたんです。フォークソング部といってもやってることは軽音と一緒でどちらかというとバンドサークルといった感じだったんですけど……。
──フォークソングはやってなかったんですか?
流田:たまにやったりするんですけど、主にハードロック、メタルが中心のクラブで(笑)。
栗川 雅裕さん(Dr.&Cho./以下、栗川):ガンズ・アンド・ローゼスやモトリー・クルーとか、主にLAメタルをやってました(笑)。
──メタルクラブじゃないですか(笑)。部員数は多かったんですか?
流田:部員は50人くらいいたんですよ。僕、部長だったんです。でもドラムがそのうち3人くらいしかいなくて……。
栗川:で、ボーカルは20人くらいいるっていう(笑)。ドラムは掛け持ちして。だから学園祭では最高13バンドを掛けもちしてましたよ(笑)。超売れっ子でした。
──(笑)。そんななか、この4人でバンドを組んだ理由は?
流田:この4人で本格的にバンドをやりだしたのは卒業してからなんですよ。サークル時代の友達とはずっと連絡取ってたんですけど、この4人は上京して音楽をやっていて。僕だけソロだったんですけど、3人は3ピースバンドをやってて……穴澤くんがギター・ボーカルだったんですよ。
──どんなバンドだったんですか?
流田:僕は完全なソロだったので、弾き語りもやったし、バック・バンドをつけてライヴもやったりしてて。で、そのバック・バンドをこの3人がやってたっていう……。結局、「この4人でやってたんじゃん!」っていうね(一同笑)。
──結局、当時からこの4人で一緒にやってたと(笑)。
流田:そうですね。ストリートライヴも合同でやってたりして、結局一緒にやってたんです。
──そうだったんですね(笑)。
穴澤 淳さん(Gt.&Cho./以下、穴澤):そうなんですよ。合同でライヴもやったりしてたんで……。
流田:それ今さっき言ったじゃん(笑)! 穴澤くんはいつもボケてるんです。左右違う靴を履いてきたり、ATMで下ろしたお金を取らずに帰ったり、今日も(今日の取材で着る予定だった)衣装を洗濯しちゃったり。そういうキャラなので気にしないでください(笑)。
栗川:穴澤くんが何かモノをいじったら90パーセントくらいの確立で壊れたりね(笑)。
穴澤:そうなんです(笑)。自分でも困ってます。
──そんなお茶目なキャラなんですね(笑)。じゃあ桃山さんはどんなキャラなんですか?
桃山 竜二さん(Bs. &Cho./以下桃山):えっ! ……う~ん……僕はメガネキャラです。
流田:メガネキャラって(笑)。(桃山くんは)メンバーのなかで一番冷静というイメージ。モノを客観視してて、さすがベースというか。
桃山:でも特にキャラ作りとか設定とかはないんですけどね(笑)。
穴澤:僕も特にキャラ作りはしてないんですけどね(笑)。そのまんまなんです。
流田:うん。これが普通なんです(笑)。バカなんです。
一同: (笑)。
栗川:俺らいつもこんな感じだよな(笑)。
──それぞれ濃いですねぇ(笑)。でもそんなに仲良しで一緒にイベントもやっていたのに、逆になんでバラバラで活動してたんですか(笑)。
流田:僕のほうが上京したのが早かったんですよ。で、ひとりでずっとやってたので……っていうくらいでしたね(笑)。なんでだったんだろう……自分でも不思議なくらいなんです(笑)。
●「"(再生数が)すごいコトになってる!"って。それがどれくらいすごいのか当時僕らは分からなかった」
──そんななか、転機が訪れたきっかけはなんだったんでしょう。
流田:僕の兄貴がアニソン好きで「動画サイトに一発録りのアニソンの演奏動画をアップしてみたら面白いと思うんだけど……」って言い出して。で、当時はそれがどういうことかよく分かってなくて、とりあえず「面白そうだから4人で一回やってみようか」って軽いノリで演奏してみたんです。そしたら再生数がすごい勢いで伸びていって。
──お兄さん、すごいじゃないですか!
流田:そうですね。産みの親っていうか、ある意味プロデューサーっていうか(笑)。最初動画をアップしたときに兄貴から「(再生数が)すごいコトになってる!」って電話が掛かってきて。でも、それがどれくらいすごいのかが当時の僕らは全然分からなかったんですよ。でも兄貴がとにかく興奮してるのが伝わってくるんですよ(笑)。「すごいすごい!」って。
──そこは実感がなかったんですね。
栗川:ハイ(笑)。でも秒単位で100、200……と数字が増えていくんですよ。で「どんだけ見られてるの!?」って。
──ユーザーの注目を集めた要因はなんだったと思いますか?
流田:う~ん……。当時の僕たちはそんなつもりはなかったんですけど、今思えば斬新なことをやったのかなと。1個の定点カメラで1発録りのアニソンのカヴァーを垂れ流しにしてるバンドってなかなかいないじゃないですか。あと男性ボーカルで歌えるキーに下げてたのも大きかったのかなと。今までは歌いたくても歌えなかったのに、流田バージョンなら歌えるっていう。……あとは……仮面じゃないですか?(笑)
栗川:見た目がおかしいっていう(笑)。
──(笑)。仮面はどういうアイディアだったんですか?
流田:なんとなく始めたことなんですよ。動画にアップしている人たちが一部顔を隠してるから、どうせならA4の用紙にそれぞれ顔を書いてハサミで切ってガムテープで貼り付けてやってみようって。で、1曲やったら汗でベロベロになるっていう(笑)。そんな感じでした。
──変な話ですが、いくらどっちも好きとは言え、ロックやメタルに傾倒していたアーティストがアニソンにシフトするって勇気がいることだと思うんです。そのあたりに抵抗みたいなモノはなかったんですか?
桃山:いや、全然なかったです。実は大学時代も(アニソンのカヴァーを)やってたんですよ(笑)。
流田:そうなんです。だから自分たちのジャンルの一環という意識だったというか、なにも抵抗はなくて。アニソン大好きだからやっててすごく楽しいし。……で、そんな感じで動画をアップして今に至るっていう感じなんですよ。
──すごい勢いで省略しましたね(笑)。
流田:アハハハ(笑)。いや、でもそれくらいあっという間だったんですよ! 最初の動画アップしてから初ライヴまで1年近くあったんですけど、そこから一気にって感じがあって。そのライヴも「お試しでライヴをやってみよう」っていう感じで、お昼に1時間だけやったんですけど……そしたらチケットが即完して、もう衝撃的で。
チケットを1枚売るかがいかに大変か、目の前のお客さんにどれだけ見てもらえるかっていうところで勝負してきたので、初ライヴがワンマンでそれがソールドアウトして……これはすごいコトやってるんだと自覚して。
──例えばそのときに「せっかく人がたくさん集まったんだから、オリジナルの曲もやってみよう」みたいなことは思わなかったんですか?
流田:まったく思わなかったですね。逆に当時はオリジナルはやっちゃあかんと思ってて。アニメソングを聴きたくてみんな遊びにきてくれてるんだから、望んでることをやらなきゃって。「アニソンが大好き!」ってひとがくると思ってたし。
でも蓋を開けたらお客さんのなかにはバンドマンや流田の演奏を参考にしてくれるひと、「アニソンやってみたいけど、カヴァーの仕方が分からない」ってコがたくさんいて……本当にいろいろな人がライヴに来てくれててビックリしました。
──流田を見てバンドをやりたくなった、歌ってみたくなったって人は多いと思います。それって意図的なモノなんでしょうか。
流田:いや、全然。最初は本当に遊び感覚だったんで、そこまで考えは及ばなかったです。でも、本当にそうみたいで。最近では僕たちと同じ仮面を作って、僕たちのアレンジで動画をアップしてくれるバンドもいたりするんですよ。地方のライヴハウスで「偽者の流田プロジェクトを見た」って話を聞いたりとか(笑)。
すごくありがたいことだし、僕らも見たいです。で、そういうこともあって、今回のアルバムには手書きのバンドスコアをつけることにしたんです(封入特典:メンバー手書きバンドスコア「oath sign」)。これで流田のマネするひとが増えたら嬉しいなって。
──なるほど(手書きバンドスコアを見せてもらう)。これっていつも耳コピして譜面に起こしていくんですか?
流田:そうですね。でももともとギターのない曲もあったりするので、それをいかにこの4人の音に変換するかっていうことにこだわっていて。
栗川:で、アレンジしたものを採譜してるっていう。
──では、ある意味そこはオリジナルというか(笑)。
流田:そうですね。流田オリジナルカヴァーバージョンっていうか……ややこしいな(笑)。とにかく孫カヴァーがこれで増えればなと。
●「4人でいちばん大事にしているのは"歌"」
──そして今回3枚目となるアルバム『流田PPP』がリリースされます。これが本当に素晴らしいアルバムで。でも3枚目ということでオリジナル・アルバムになったりするのかな、と一瞬思ったりしたんですが……。
流田:いやいや、まだまだカヴァーしきれてないんですよ。今持ち曲(カヴァー)だけで5、60曲あるんです。
栗川:しかも新しい曲をどんどんカヴァーするので、どんどん増えていくんです(笑)。
──(笑)。では今回はどういう基準でセレクトしたんですか?
流田:好きな曲っていう一言に尽きますね(笑)。あと、曲も、曲順もそうなんですけど、いかにライヴで盛り上がるか、一体感が出るかってことを意識して。
栗川:あと曲のバランスも多少とりつつ。今回は特にバラエティに富んだアルバムになったと思います。メタリックな曲からファンキーなアレンジまであるし。
──特に4曲目『もってけ!セーラーふく』(テレビアニメ『らき☆すた』オープニングテーマ)はファンキーな曲で、すっごく攻めてますよね。
流田:ハイ(笑)。これはボーカルをたくさん重ねたので、特に攻めてます。にぎやかな曲なんで、残念なコトにはしたくなかったんですよ。
──今回唯一のオリジナル曲『departure』(8曲目)は、エモーショナルなメロディと「会いたくて/ただ会いたくて」というストレートな歌詞が印象的です。この曲はどういう思いを込めて作った曲なんですか?
流田:ライヴで(オーディエンスの)「流田のオリジナル曲を聴きたい」って気持ちを肌で感じたのでオリジナルを入れてみようって思って、前回から入れてるんですけど……。4人でいちばん大事にしているのは「歌」なので、歌が印象に残るような曲にしました。歌詞に関しては、このバンドだからこそ得る楽しみや悲しみを表現した感じです。
──悲しみ、ですか?
流田:ハイ。ま、基本は人一倍楽しいんですけど、悲しい部分もあるんですよ。仮面をかぶってるから見た目の偏見もあるし……もっと音で判断して欲しいなっていうか。じゃあ、この見た目をやめろよって話なんですけど(苦笑)。そういう部分を含めた、このバンドの情熱を歌にしてみようって作った曲です。
──続く『ハレ晴レユカイ』(テレビアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』エンディングテーマ)は思いっきり明るい曲で(笑)。
流田:そうなんですよね(笑)。この曲に限らずなんですけど、さっきも話した通り、ああいう曲をいかにギターサウンドにするかっていうところがポイントで。ギターバンドとしていかにロックに演奏するかっていうのは常に考えてます。……そのあたりは穴澤くんの腕に掛かってきますね。
穴澤:その変換作業が難しいときもあるんですけど、それが楽しいっていうか。出来上がったときの嬉しさがすごく大きいんです。
──うんうん。また、ラスト『secret base ~君がくれたもの~』(テレビアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』エンディングテーマ)も染みますよね。切なさと希望が入り混じった曲で、アニメの映像が思い浮かびます。
流田:疾走感のある曲が続くので、ラストは落ち着いて。実はジャケットは(アニメの舞台の)秩父で撮影したんです。秩父のライヴハウスや、秩父橋でも撮影していたりしてます。そこもぜひ楽しんで欲しいですね。
──ジャケットのみならず、ミュージック・ビデオもこだわったそうですね。
流田:はい。6曲目『Borderland』(テレビアニメ『ヨルムンガンド』オープニングテーマ)をミュージック・ビデオにしたんですけど、同じような仮面をかぶった人たちがたくさんいるなかで、俺たちが追っかけまわされるっていうドラマ仕立ての映像で(笑)。
栗川:で、最終的にはオーディションで「ホンモノを見つけよう」ということになって、そのオーディションに明らかに本人じゃない子供やセクシーなお姉さんが出てきちゃうっていう……。
流田:むちゃくちゃな映像です(笑)。で、実はこのビデオを撮っているときに原曲を歌っている川田まみさんが近くでイベントをやっていて、「ぜひ遊びにきてくださいー」って言ったら「いいよ」って。それでオーディションの場面で、この仮面をかぶって登場してくれたんです(笑)。名演技をしてくれて、このビデオの価値が一気に上がりました(笑)。
──楽しみですね。ところで『Borderland』のカヴァー、エッジィですごくかっこいいですよね。よりこの曲が好きになりました。
流田:まみさんはロックをジャンルとして持ってる人だと思うんですけど、まみさん自身は自分の音楽のことを「陽気じゃないロックだ」って言ってて。どちらかというとシックで格好良いロックというか、そういう意味だと僕らは思うんですけど。で、対する僕らはドッカ~ン!っていう陽気なロックなんで(笑)、まみさんの曲とは違ったテイストにできたんじゃないかなって。
──まみさんの曲は毎回カヴァーされてますけど、毎回違ったアレンジになってて面白いですよね。
流田:そうですね。『JOINT 』(テレビアニメ『灼眼のシャナII』オープニングテーマ)、『No buts!』(テレビアニメ『とある魔術の禁書目録II』オープニングテーマ)と、毎回入れさせてもらってます。全部ロックな曲なんですけど、テイストがちょっとずつ違うので、全部聴いてもらえたら嬉しいです(笑)。
●「今はとにかくツアーが楽しみ」
──アルバムを全曲聴いたときの率直な感想は?
桃山:とにかく飽きないええアルバムになったなって。いっぱい詰まったアルバムなのでおなかいっぱいになるかなと思ったんですけど、そんなことなく何杯でもいける感じっていうか。
栗川:バラエティに富んだアルバムになりましたね。あと、とにかくロックだなって。
流田:うん、よりロックやな。1stアルバム『流田P』(2010年10月発売)はちょっと硬い感じだったんで、逆に前作『流田PP』(2011年9月発売)は一発録りを大事にして。結果ちょっと荒々しかったんですよ。ライヴ音源に近いというか。で、今回は2枚のレコーディングで学んだいいところだけを入れたというか(笑)。前よりも間違いなく良くなってきてると思います。
──気の早い話ですけどそういう話を聞くと次回作が楽しみになりますね。さらに次回も良いモノが上がってくるんだろうなっていうか。
流田:そうですね。まだまだやりたいことはたくさんあるし、まだまだスタートしたばっかの気持ちでもありますし……今はとにかくツアーが楽しみです。
──では最後にツアーについておうかがいできれば。
流田:今回初めて石川、京都、岡山に行くんですけど、初めてのハコも含めて楽しみですね。車で全国をまわります。ツアーはホントに楽しくて。本気の枕投げしてるくらい、みんなノリノリなんですよ(笑)。
栗川:アホなことばっかりしてるよね(笑)。お客さんがすごいパワーなんで負けないように僕らも頑張らないとなと。
流田:うん。ファイナルはせっかく大きい場所なんで、何か仕掛けもしたいなと思ってるんですけど……まだ何も考えてないです(笑)。たぶん、穴澤くんが何かやってくれるかなと。
穴澤:僕は何もやりません(笑)!
◆3rd ALBUM『流田PPP』/流田Project
発売日:2012年8月8日(水)
価格:2625円(税込)
【収録曲】
01.Light My Fire(『灼眼のシャナIII -Final-』オープニングテーマ)
02.oath sign(『Fate/Zero』オープニングテーマ)
03.空想メソロギヰ(『未来日記』オープニングテーマ)
04.もってけ!セーラーふく(『らき☆すた』オープニングテーマ)
05.純潔パラドックス(『BLOOD-C』エンディングテーマ)
06.Borderland(『ヨルムンガンド』オープニングテーマ)
07.Hacking to the Gate(『STEINS;GATE』オープニングテーマ)
08.departure ※オリジナル新曲
09.ハレ晴レユカイ(『涼宮ハルヒの憂鬱』エンディングテーマ)
10.cry out ※セルフカバー
11.Butter-Fly(『デジモンアドベンチャー』オープニングテーマ)
12.secret base ~君がくれたもの~(『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』エンディングテーマ)
【封入特典】
・メンバー手書きバンドスコア「oath sign」
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[インタビュー&文・逆井マリ]