やなぎなぎさんの2ndアルバム『ポリオミノ』を解く!【後編】

「繋げ方を変えたらまた新しい答えが見つかる」──やなぎなぎさんの2ndアルバム『ポリオミノ』を解く!【後編】

 繊細なタッチで、色とりどりの音を紡いできたやなぎなぎさんが、2ndアルバムを発売する。多角形/パズルゲームを意味する『ポリオミノ』は前作から1年5ヵ月ぶりとなるアルバムで、テレビアニメ『凪のあすから』EDテーマ『アクアテラリウム』『三つ葉の結びめ』、テレビアニメ『ブラック・ブレット』EDテーマ『トコハナ』、新海 誠監督のZ会アニメーションCMイメージソング『クロスロード』や日本テレビスペシャルドラマ『殺人偏差値70』挿入歌『Esse』など、全15曲を収録。やなぎなぎさんのクリエイティブな欲求と遊び心が結実した大傑作である。

 今回は前半・後半に分けてインタビューを公開。後編では楽曲の制作エピソードを中心に話を訊いた。

●「機材を見ているだけでもテンションが上がりました(笑)」

──3曲目『2つの月』は、作曲・編曲に富田恵一さんが参加されていますが、どういう経緯だったのでしょうか?

やなぎなぎ:初回特典のカヴァーにもキリンジの『冬のオルカ』(富田さんプロデュース)が入ってるんですけど、もともと富田さんの楽曲が好きで、いつか曲をお願いしてみたいなと思っていて。もともとキリンジのファンなので「こういう曲たくさん聴かせて頂いてます」ってお話をさせてもらって。キリンジみたいな──キリンジみたいなって言うと語弊があるかもしれないんですけど(笑)、そういう曲を富田さんに作って頂きたいんですって伝えたところ、快く書いていただいて。昔は聴いているだけで満足だったんですけど、欲が出てきてしまったんですね(笑)。

──それで独特のメロディと疾走感が絡み合う曲になっているんですね。なぎさんの歌声も、一筋縄ではいかない楽曲の展開も、雰囲気があってステキです。

やなぎなぎ:そうなんです。この曲を聴いたときに「これを歌ったら絶対楽しいな」って思いました。歌詞はすごくファンタジックにして。収録はプライベートスタジオの「Tomita Lab Studio」にお邪魔させてもらったんですけど、物凄くたくさん積まれた機材を見ているだけでもテンションが上がりました(笑)。

──なぎさんらしい(笑)。『テトラゴン』は、なぎさんが作詞作曲編曲を手がけられた遊び心満開のポップな楽曲で。

やなぎなぎ:これは遊びたかった曲です(笑)。タイトルは四角形という意味で、『ポリオミノ』と繋がっています。1曲目と最後の曲でやりたかったことは、もともとあるものが2つになっているということ。で、『テトラゴン』の場合は、繋ぎ方を変えれば同じ素材でも違う意味をもちはじめる、ということで。

──それで“閉鎖的なワンボックス”という言葉が出てくるんですね。でも最後は“全てが変わる”という力強い言葉で締め括られていて。

やなぎなぎ:そうですね。『ポリオミノ』の全体図を見下ろしたいという意図で作りました。客観的に捉えた曲です。

──次の『ファラウェイ・ハイウェイ』は物凄くエッジィな曲で。『三つ葉の結びめ』のカップリング『インテンション・プロペラント』などを手掛けたARCHTECTさんが作曲編曲を担当されていますが、ARCHTECTさんはどんな方なんですか?

やなぎなぎ:若手の作曲家さんです。カップリングを書いてもらったときに、実は一緒にこの曲のデモをもらっていたんです。その時はもう1曲のほうを選ばせてもらったんです。何かの形で作品にしたいですねって話をしていたんですが、パンチのある音なので、アルバムにも合うかなと。


●「末光さんの持っている泣きメロをフルで盛り込んでくださいって」

──『Sweet Track』は日本テレビ系「スッキリ!!」12月テーマソングに起用されています。日々の気持ちを浄化してくれるような、爽やかな風の吹く壮大な楽曲で。サビの<誰かが歩き続ければ やがてそこは道になってゆく/知らないうちに僕たちは こうして歩いてゆける/どんなにちっぽけな愛も かならずそこに存在するよ>という歌詞が響きます。何気ない毎日でも、正に見方を変えることで明日への活力に変えることができるというか。これを毎朝聴けるというのが嬉しいです。

やなぎなぎ:ありがとうございます。曲は壮大ですね。歌っていることは「自分が今歩いている道は、誰かが昔作ってくれた道で、自分も歩き続けていったらそこが道になって、また誰かが歩いて行って──」ってことを歌った曲です。

──続く『landscape』は、『トコハナ』も手がけられている斉藤真也さんの楽曲で、爽やかに突き抜ける楽曲で。アニソンのような王道感があります。

やなぎなぎ:そうですね。古き良きアニメのオープニングっぽい感じというか。で、『逆転スペクトル』は挿入歌のイメージ、『navis』はエンディングのイメージで、繋がっているブロックです。

──『navis』はSUEMITSU & THE SUEMITHの末光 篤さんが手がけられています。

やなぎなぎ:もともと末光さんの曲を拝聴していて、“この曲のイメージに合うのは末光さんしかいない!”と思って私からお願いしました。あんまり私の曲でベタに泣かせにかかるみたいなことってなかったんですけど、末光さんの持っている泣きメロをフルで盛り込んでくださいってお願いして。

──歌詞の“たおやか”という言葉が、すごく似合ってます。

やなぎなぎ:たおやか、いいですよね(笑)。柔らかくて、キレイなイメージの言葉です。

●「今改めて聴いてみると、引っ張っていく力も強い曲」

──で、次のブロックは『凪のあすから』で、『アクアテラリウム』『三つ葉の結びめ』と続きます。個人的に『凪あす』が大好きだったので、曲を聴くだけで泣きそうになるんですが(笑)、アルバムに入るとまた違った印象になります。

やなぎなぎ:この曲たちを作っているときは物語の終わりに聴いたときに、いろいろなことを思い起こさせる曲にしたいなと思っていたんですけど、今改めて聴いてみると、引っ張っていく力も強い曲だったなと思いますね。『アクアテラリウム』は閉じた世界の物語でしたけど、『三つ葉の結びめ』は周りの力を借りようという曲なので、そういう意味では対照的ですね。

──ところで結びめを並べた『三つ葉の結びめ』のジャケット、とっても可愛かったです。

やなぎなぎ:ありがとうございます(笑)。(スタッフに)いろいろな素材で結び目を作って並べたら可愛いんじゃないですかね?って伝えたら実現してくれて。わたしもいちばん好きなジャケットになりました。


●「『グリザイアの果実』の最終3話のエンディングに」

──12曲目の『Rainy veil』はピアノが美しい、切なくて儚い曲ですよね。桑島由一さん、藤間仁さんのタッグの曲ですが、これは……。

やなぎなぎ:実は今放送中の『グリザイアの果実』の最終3話のエンディングになっていて、放送直前に発表される予定です(※取材は11月下旬)。原作でも藤間さんと桑島さんがタッグを組まれて曲を作られているので、エンディングのお話をいただいたときに、原作と同じ組み合わせでということになって作っていただいたんです。

──放送を楽しみにしてます。次の『Esse』(日本テレビ スペシャルドラマ「殺人偏差値70」挿入歌)は、夢のなかにいるような心地いいミディアムナンバーです。

やなぎなぎ:私が『凪のあすから』の最終回を観たときの、「ふわわああ!」って胸に湧き上がってきた気持ちを書いた曲なんですよ。誰かのキャラクターの目線というよりかは、眠っているときに子供に思考が戻ってて、その子供の目線、みたいな感じで書いた曲です。

 ただ、書いたけどどこにも行き場がないなぁなんて思っていたら、ちょうどドラマの主題歌のお話があって。他の曲もお出ししたんですけど「これにしましょう」って決まったので、勢いがよかったのかなぁと思っています。

●「2ブロックをどっちも合わせて引っ張っていってくれるのがこの曲」

──『クロスロード』(Z会アニメーションCM『クロスロード』イメージソング)は新海誠監督からのラブコールで実現した楽曲なんですよね。アイルランド民謡のカヴァーはいかがでした?

やなぎなぎ:「民謡をアレンジして曲を作りたいんです」ってお話はうかがっていて、作詞を監督自ら手掛けてくれて、多田さんが現代風にアレンジしてくださったので、私は現場に行って「ここはどういう風にしましょうか?」って直接固めていく感じでした。

──明るく終っていく曲をラストのブロックに収録されたことに意味を感じます。

やなぎなぎ:全体的に希望に満ちている楽曲ですよね。前半に尖ったゾーンがあって、後半にいつもの自分ゾーンみたいなものがあって、その2ブロックをどっちも合わせて引っ張っていってくれるのがこの曲かなぁと思って、この位置になりました。

──「繋げ方を変えたらまた新しい答えが見つかる」というテーマは、アルバムの曲順に関しても言えることですか?

やなぎなぎ:そうですね。私はこのアルバムをこういう順番で並べていますけど、自由に曲を並び替えて頂いても良いのかなって思っているんです。前後の曲によって聴こえ方も変わってくると思うので、いろいろな聴き方をしていただけるのが一番うれしいです。

──では、アルバムを作り終えた率直な感想は?

やなぎなぎ:前作は「ひとつの作品を作ろう」っていう気持ちで動いていったんですけど、今回は歩いていたら、いつの間にかパーツが揃っていた感じなんですよね。自分としては理想の作品作りだったなぁと思います。


●「パッケージ含めて“作品”なので、盛り込めるだけ盛り込みたい」

──カヴァー曲を収録した特典CDにも教えていただきたいんですが、今回も豪華ですね……! kz(livetune)さんや、Yokemura (YMCK)さんなどが編曲に参加されています。

やなぎなぎ:ありがとうございます(笑)。今回は編曲の方ありきで考えました。この曲をこの方にアレンジしてもらったらどうなるかなって試みで、アルバムもこちらも、全部私からお願いしました。超名曲揃いなので、特典とはいえ気合いを入れています。ぜひ聴いていただきたいですね。



──タイトルにちなんだアルバムのジャケットも印象的です。

やなぎなぎ:実はジャケットに小窓がついているんです。1stアルバムと同じようなスリーブジャケットになっているんですけど、小窓が透明になっていて、小窓から1曲目の歌詞が透けて見える仕様になっています。ブックレットも凝っているので、目で見て遊んでいただきたいですね。

──へぇ! 早く手に取りたいです。

やなぎなぎ:頑張ると、2個くらい形態が変わるんですよ。いわゆる本のブックレットみたいな形ではないので……。ムリを承知でお願いしたら全部やってくれて(笑)。パッケージ含めて“作品”なので、盛り込めるだけ盛り込みたいって思っちゃうんですよね。

──うんうん。謎解きを楽しめる要素がいっぱいですね。なぎさん自身「解読して欲しい」みたいな気持ちはあります?

やなぎなぎ:いろいろ想像して欲しい気持ちはあります。曲にしても歌詞にしてもパッケージにしても、手にとった人が1回で納得して終わるんじゃなくて、もう1回改めて手にしたときに「こんなところもあったんだ!」って発見をしてくれたら、すごく嬉しいです。

──では最後に来年のツアーについての意気込みを教えて下さい。ラストは2015年2月21日(土)、渋谷公会堂です。

やなぎなぎ:渋谷公会堂にはいろいろなアーティストさんを見に行っていて、まさか自分がこんな場所で歌えるようになるとは思ってなくて……。最初は趣味で始まった音楽だったのが、自分がだれかを見に行っていた舞台に立つということは、凄いことだなと改めて思います。去年のツアーでもいろいろと仕掛けをしたんですけど、今回も音だけじゃなく、目で見ても楽しめるようにできたらいいなと、いろいろと考えています。『ポリオミノ』で予習していただいて、遊びにきていただけたら。


[インタビュー&文・逆井マリ]


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■やなぎなぎ 2ndアルバム『ポリオミノ』
発売日:2014年12月10日

[初回限定盤] CD+特典(CD/Blu-ray) 3枚組 4,200円+税

[初回限定盤] CD+特典(CD/DVD) 3枚組 4,000円+税

[通常盤] CD 3,000円+税

【収録曲】
1.polyomino-intro-
2.トコハナ(TVアニメ『ブラック・ブレット』EDテーマ
3.2つの月
4.テトラゴン
5.ファラウェイ・ハイウェイ
6.Sweet Track(日本テレビ系「スッキリ!!」12月テーマソング)
7.landscape
8.逆転スペクトル
9.navis
10.アクアテラリウム(TVアニメ『凪のあすから』EDテーマ)
11.三つ葉の結びめ(TVアニメ『凪のあすから』新EDテーマ)
12.Rainy veil
13.Esse(日本テレビ スペシャルドラマ「殺人偏差値70」挿入歌)
14.クロスロード(Z会アニメーションCM『クロスロード』イメージソング)
15.polyomino-outro-

<特典CD収録曲> (※ 初回限定盤のみ)
01. プリズム
作詞・作曲:池田綾子 編曲:保刈久明
02. センチメンタル
作詞作曲:rino 編曲:sasakure.UK
03. 流星ビバップ
作詞・作曲:小沢健二 編曲:Yokemura (YMCK)
04. 月灯りふんわり落ちてくる夜
作詞・作曲:RYUZI  編曲:真部脩一
05. セルの恋
作詞・作曲:めけて 編曲:やなぎなぎ
06. 冬のオルカ
作詞・作曲:堀込泰行 編曲: kz(livetune)


<仙台を皮切りに、名古屋、大阪、札幌、福岡、東京の6都市にてライブ開催!>

★2015年1月31日(土)    宮城・仙台Rensa
☆2015年2月7日(土)    愛知・名古屋ElectricLadyLand
★2015年2月8日(日) 大阪・BIGCAT
☆2015年2月11日(水・祝) 福岡・イムズホール
★2015年2月15日(日) 北海道・札幌PENNY LANE24
☆2015年2月21日(土) 東京・渋谷公会堂


>>やなぎなぎ Official Website

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