声優
新曲リリースの森久保祥太郎さんにインタビュー【後編】

「ポジティブになるための曲」──森久保祥太郎さんが新曲に込めた想いとは【後編】

 不動の人気を誇る声優/アーティストの森久保祥太郎さんが、10月7日、8か月振りにニューシングルをリリース。また、リリースに先駆けて9月から全国ツアー「心・裸・晩・唱〜PHASE5〜」を行っています。

 シングルのタイトルを飾る『PHANTOM PAIN』は、お馴染みの井上日徳氏と制作。ソウルフルな歌声と熱く激しいロックサウンドで、「勢いをレックできた」「第二章が始まったイメージ」とご本人も相当な手ごたえを感じられている様子。

 「自分が歌いたいことは何か」「自分にしかでいない表現は何か」を追及することはアーティストにとっての常だろうが、今作で、それをはっきりと掴んだと語る森久保さん。いい形でインタビュー後編では、新曲についてたっぷりと語ってもらいました。




■ 「僕は転んだら、タダじゃ起きないんで(笑)」


――いろいろな気持ちがあるなかで、『PHANTOM PAIN』に向かっていったと思うんですが、いざ机に向かったときに、すぐ書けましたか?

森久保祥太郎さん(以下、森久保):そうですね。というのも、「さあ今年どうするんだ」ってなってるときに、久々に日徳さんと飲んで。お互いの話をしているなかで、急に “そろそろ二人でガツンとやりたいね”って話しになったんだけど、それが10何年前日徳さんに初めて会ったときのワクワクに似てたんですよ。で、書きますわ!って。とにかく勢いのあるものにしたくて、家でデモを作ってたんだけど……今までは「ギターのリフをこうしたい、ああしたい」みたいなところで時間が掛かっていたんですけど、そこはアレンジにしっかり任せることにしたんです。で、僕はテンポ、雰囲気、空気感を意識しながら、コードとメロディに軸を置いたシンプルなデモを作って。そしたらあっという間に作れた。

で“どう?”って投げたら、“この部分のメロディの後半の二小節をこっちに持っていったら面白いよ”みたいな感じで、パズルのように組み替えて返ってきて。昨年、今年と一緒にやってきたなかで、そういうセッションすることが俺のなかで楽しくなってきた。前までは100%純粋に“これが自分”というのを見せないと、違うって思ってたのが、一緒に作ったものも自分だと思えるようになった。そしたら、アレンジも凄い速さで、とてつもないことになって返ってきて。歌詞も……『PHANTOM PAIN』というキーワードは前からあったので、早かったですね。


――以前からあったというのは?

森久保:僕、41歳の誕生日に、“今日から本厄です!”って日の朝に、初めて入院したんですよ。……持ってるでしょ?(笑) 入院しててヒマだったから、自分の病気のことを含めて、調べてたんですよ。で、そのなかでこの言葉と出会って。僕的には“幻の痛み”みたいな解釈。凄く深いなって。

要するに、“これがうまくいかない”“これがダメだ”ってものがあったときに、きっとあれのせいだ、これのせいだって思っちゃうけど、必ずしもそれが原因じゃないときもあるよねっていうか、そういうものに負けちゃいけないよねっていうテーマ。入院生活から得たテーマだったので、入院もムダじゃないなって。僕は転んだら、タダじゃ起きないんで(笑)。


――確かにネガティブな気持ちになってるときって、何かのせいにしたくなりますよね。でもそれが結果として、マイナスな方向に導かれてしまうというか。

森久保:そう。でもそうすると、大事なことがボヤけてしまう。


――森久保さんも生活の中でそういう葛藤はありますか。

森久保:あります。僕なんて小さいことも含めてたくさんある。例えば昨年と今年で、仕事の環境を含めて大きく変わったところがあって、毎週土曜日にラジオの生放送がはじまったんです。ということは、ライブツアーや声優としてのイベントにもスケジュール的に影響が出る。環境が変わったことによって、そこから派生する目論見も、ズレてきたりするワケですよ。ただ、それがラジオが始まったせいかと言ったら、絶対そうじゃなくて。

でも昨年の年末くらいかな……不安になった時期があったんです。今までイメージしてたものと全然ちがう一年になりそうだなって。2014年は良い音楽活動をしてたから、そんな感じで2015年もイメージしてたんですけど……どこ向かってるんだろう、俺の人生って。それは『FOCUS』にも書いてるんですけど。そこに痛みはないのに、変な痛みを感じてた。でも違うじゃん、俺が何をやりたいかじゃんって。

そもそも、声優になったこと自体、俺のなかではまったく予定していなかったことですからね(笑)。舞台をやってて、一本だけ受かったアニメ作品に出合って、、それで終わると思ってた。でも、そこから声優のお仕事の方が増えてきて……最初は戸惑いもあって。劇団が大きくなって、舞台をたくさんやって、テレビや映画に出られる俳優になりたかったんじゃないのかなって想いもあったわけですよ。でも蓋を開けてみたら、最良の道だった。それが20歳くらいのときの話なんですけど、2回目の20歳を迎えてまた何かが起きてるんだろうなって。

幻の痛みに飲まれちゃうと、ただの不安で終わるけど……そこに痛みや悲しみがあるわけじゃないって気づけば、その先が見えるんじゃないかっていう。『PHANTOM PAIN』は、ポジティブになるための曲です。


■ 「表現することに対しても、迷いがない」

――書き上げたとき、今までと違う感覚はありましたか。

森久保:早かったんですよ。いつもはすんごい歌詞に時間が掛かるんです。締切ギリギリで、もう間に合わないって瞬間に何かパンッと降りてきて、そっから一気に書けるんですけど……でも結局、それを待たなきゃいけないから、すごく時間が掛かってた。

最近は時間の使い方が分かって、この時期はある程度制作期間で時間をくれって最初に伝えて、レギュラー以外の仕事を調整してもらって、スケジュールを制作にあてて、テレビや本を読んだりして。

まったく関係ない風景の雑誌を見たりすると、浮かんだりするんですよね。全然違うことをやってたり、関係ない本を読んだりしてると、スイッチが切り替わったりする。前は制作日があったら、その間ずっとパソコンを持って、ファミレスに行って、どうしようかなぁ違うなぁ、みたいな感じで一日目終わり。今は「今日は一日目だから映画を観よう」みたいな感じで割り切って。大丈夫、俺出てくるって自信が持てたというか、自分が信用できるようになった。普段からネタ帳をつけてはいますけどね。


――じゃあレコーディングも早かったのでは?

森久保:あっという間に終わりましたね。タフになったのかな。土台があるから、制作することに対しても、表現することに対しても、迷いがない。だから“どういう風に歌おうかな”って迷いがないままレコーディングスタジオにいたので。大体ファーストテイクが一番良いですしね。


――歌声に衝動があって、まったく違うものではあるんですけど、ファーストシングル感があるというか。

森久保:そのつもりはありますよ。ランティスからリリースしてきたなかで、新章が始まる様なイメージ。改めて「わたしはこういうサウンドをやっていきます」みたいな、そういう気分。僕の中では、ランティスの活動での第二章が始まったと思ってます。


――でもただ激しいだけじゃなくて、聴きやすさがある。そこは意識されているところですか?

森久保:うん。個人的には言葉をギュッと詰め込むより、一音一音、明確に気持ちが乗せられるほうが好きだから。あまり変なことはせずに、ストレートに。多少ズレたりしても、このままでいいんじゃねぇかって思うくらい、勢いをレックできたなって。


――じゃあ手ごたえは……。

森久保:かなり感じてます。


■ 「早く音を出したくて仕方がない」

――その勢いが詰まったシングルを引っさげたツアーが控えています。ツアーへの意気込みを最後に教えて下さい。

森久保: “心・裸・晩・唱”というシリーズで、やるごとにPHASEを一段上げてて、今回で5になります。3から4は、ツアーで僕が足を延ばせる場所が増えて、バンドとしてのサウンドがギュッと固まったという意味で一段上がったんですけど、4から5は何を持って一段上げようかってところで……

昨年より足を延ばせる場所が半分以下くらいにはなっちゃうんですけど、その変わり、一ヶ所一ヶ所の規模は大きくなりました。昨年はできるだけ多くの場所に僕から足を運んだので、今回は4ヶ所ですけど……みんなのPHASEをどっこいしょしてもらって、最寄りの会場に来てもらえると嬉しいです。バンドとしてのノリも、より固まったような気がしてるので、早く音を出したくて仕方がないくらい。楽しみですね。

今回は、まだライブでやったことがない曲が何曲かあるので、その辺を中心にお届けできればなと。ファイナルが10月11日Zepp Tokyoなので……大阪・名古屋の皆さんには気が早いかもしれないんですけど、なんとなくハロウィンパーティー的な空気を持ったツアーになればなと。ステージの空間としても、音としても、そういう演出ができればなと思ってます。

なかでも福島の会場は大きいです(福島・いわき芸術文化交流館アリオス 中劇)。僕は半分福島県民なので、福島はホームでもある。SEA WAVE FMいわきの皆さんと、多くの皆さんのお力添えがあって、この会場でできることになりました。音響も良くて、すごくいい劇場なんですよ。今までよりもたくさん入りますんで、県外からももちろん、なにより地元の人に来てもらいたいですね。


――県外から来られるかたには、街も楽しんでもらいたいですね。

森久保:そうそうそう! 駅前にゆっくりできるならしたいってくらい良い飲み屋街ができたんですよ。県外から来た人たちが空いたお店を全部改装してて。うまいものもたくさんあるし。


――でも、森久保さんのつまみはやっぱり……!

森久保: (笑)いや、塩だけじゃなくて、食べますよ! 福島のドンコ、メヒカリ、最高っす。


[インタビュー・逆井マリ]


<リリース情報>
■森久保祥太郎「PHANTOM PAIN」

発売日:2015年10月7日(水)
価格:1,200円(税抜)

[INDEX]
1. PHANTOM PAIN
 作詞:森久保祥太郎 作曲:森久保祥太郎・井上日徳 編曲:井上日徳
2. SHAKE!!
 作詞:森久保祥太郎 作曲:森久保祥太郎・井上日徳 編曲:井上日徳
3. It's me
 作詞・作曲:森久保祥太郎・井上日徳 編曲:井上日徳


<ライブ情報>
■森久保祥太郎 LIVE TOUR 2015「心・裸・晩・唱〜PHASE5〜」

10/11(日)Zepp Tokyo
OPEN 16:00 / START 17:00
(お問い合わせ先)ホットスタッフ・プロモーション:03-5720-9999(平日12:00~18:00)

チケット料金:[大阪・名古屋・東京]オールスタンディング 6,800円(税込)
       ※3歳以上有料※整理番号付 ※名古屋・東京公演ドリンク代別途必要
       [福島]全席指定 ¥6,800(税込)
       ※3歳以上有料


>>森久保祥太郎 official home page
>> Lantis web site

おすすめタグ
あわせて読みたい

森久保祥太郎の関連画像集

関連商品

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2024年春アニメ一覧 4月放送開始
2024年冬アニメ一覧 1月放送開始
2024年夏アニメ一覧 7月放送開始
2024年秋アニメ一覧 10月放送開始
2024春アニメ何観る
2024年春アニメ最速放送日
2024春アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
声優さんお誕生日記念みんなの考える代表作を紹介!
平成アニメランキング