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シャナはなぜ大太刀・贄殿遮那を振り回しているのか?

『灼眼のシャナ』シャナはなぜ大太刀・贄殿遮那を振り回しているのか? 担当編集者が明かす!

 あの超人気ライトノベルシリーズ『とある魔術の禁書目録』や『ソードアート・オンライン』、『灼眼のシャナ』などの編集を務めた業界No.1レーベルとも言われる「電撃文庫」の編集長・三木一馬さん。同氏が担当編集を務めた作品は500冊近いとも言われていて、その累計部数は6000万部をゆうに超えています。

 そんな三木さんが自身の考え方や仕事法、そして自らが手がけた大ヒット作に関するエピソードを明かす著書『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録(ライフワーク)』が、絶賛発売中! その発売を記念して、『面白ければなんでもあり』の一部を限定無料公開します。

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■『灼眼のシャナ』が生まれたきっかけ
 キャッチー。それは音楽用語で「人に覚えてもらいやすい」「親しみやすい」という意味です。次作をつくるにあたり、僕はキャッチーさをもっとも重視しました。『灼眼のシャナ』は、この世の隣に存在する異世界〝紅世〟からやってきた、化け物を討滅する存在である少女・シャナが、主人公の坂井悠二と出会うことで始まる物語です。骨太なストーリー、深みのあるキャラクター、アッと言わせる物語展開など、『シャナ』にはおよそ小説の「面白さ」に必要な要素が揃っていました。もともと高橋さんは、重厚感のある良質な物語を独力でも生み出せる作家で、『A/B』も高橋さんの持ち味が存分に発揮されている作品でした。

 でも、『A/B』は売れなかった。十分な面白さを秘めていながら、その面白さを十全に読者に伝えることができなかった。その面白さを読者に気づいてもらえなかったのです。高橋さんの持ち味である「重厚感」をストレートに売りにしたことで、「軽い」小説を読みたかった読者の敬遠につながってしまったのではないか――。当時の僕はそんな風に分析していました。だからこそ、高橋さんの作品に『キャッチーさ』、つまり親しみやすさや覚えてもらいやすい要素を加えることがブレイクスルーになりうると考えたのです。高橋さんの持ち味を殺すことなく、作品の面白さに触れてもらう機会、気づいてもらう機会を一気に増やせるのではないか、と。

 では、『シャナ』をよりキャッチーにするために行ったこととはなにか。まずプロット段階で妙齢の女性という設定だったシャナを、見た目小学生くらいのちっちゃい少女に変えました。そのほうがよりギャップが出るからです(なぜギャップを出すべきなのか、『キャラクター』については次章で詳しく説明します)。シャナは贄殿遮那という全長一三〇センチメートルの大太刀をぶんぶん振り回す、という設定でした。ならば小さい女の子が身の丈ほどもある日本刀を振り回している方が、その姿を想像したときにインパクトが大きくなるはずです。それに、読者は若い人が多いですから、自分より一回りも二回りも年上の女性より、同級生か年下くらいの女の子が頑張っているほうが親しみやすいはず、ということも考えました。

 次に『いまの読者が漠然と考えている、日常での不安や気になること』を探しました。『安全地帯から冒険を楽しむ』ことをイメージするにあたり、主人公の抱える悩みや問題は、できるだけ読者に寄り添ったものであるほうがいいと思ったからです。主人公がそれらを乗り越えることで、読者の『スッキリ感』も高まるはずです。僕が目をつけたのは、『トーチ』という設定でした。これは『人の存在の力』を表す欠片のようなもので、人間は〝紅世〟からやってきた化け物に喰われると『トーチ』になってしまうのです。そして『トーチ』となった人間は、見た目はまったく変化しないものの、その『存在の力』を食べられているため、いずれはその存在の炎が消えてしまい、誰からも忘れ去られてしまいます。これはキャッチーさに使える! 即座に思いました。

 学校では、可視化されにくいいじめとして、『シカト』(無視)が問題となっています。暴力的な行為は人を物理的に傷つけますが、『無視』は人を精神的に傷つけます。参加しやすいことから拡大化しやすく、ときには殴る蹴るよりも深刻なダメージを当人に与えます。もちろんこれは絶対にやってはいけないことですが、もしも、その『シカト』がよりスケールアップしたとしたら、それは『誰からも存在を認知してもらえない』ということです。いじめられた経験のある僕でなくても、それがどれだけ恐ろしい事態なのかは想像に難くないでしょう。そして、その事態に直面し抗う主人公は、『自分の身近なところで起こる危機に立ち向かう姿』として読者も共感してくれるのではないか……。

 ややわかりづらかった設定が、読者に親しみやすいキャッチーな設定に転換された瞬間でした。『トーチ』……クラスのみんなから忘れ去られていく主人公(無視されている主人公)が、せめて自分と同じ『トーチ』をこれ以上増やさないため、化け物たち(いじめっ子たち)からこの町を守ろうとする。その主人公の考え方を、理解出来ない目で見つめる異能の少女シャナ……。うん、いけるぞ! パズルのピースがぴったりハマッた気がしました。累計八六〇万部を売り上げるヒット作は、そのような思索によって生まれたのです。
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 そんな『灼眼のシャナ』の創作秘話から、『ソードアート・オンライン』の桐ヶ谷直葉のおっぱいはなぜFカップなのか? 朝田詩乃はなぜメガネをかけているのか? 『とある魔術の禁書目録』の御坂美琴のスカートの中身はなぜ短パンなのか? などなど、三木さんが担当した作品のヒロイン、主人公たちの誕生秘話や、作品秘話があますことなく描かれた『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録(ライフワーク)』は、間違いなくファン必携の一冊!


■「面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録ライフワーク」概要
【書名】面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録(ライフワーク)
【著者】三木一馬
【カバーイラスト】abec
【仕様】四六判・ソフトカバー
【ページ数】296ページ
【定価】本体1,200円+税
【発売日】2015年12月10日(木)
【発行】株式会社KADOKAWA
【内容】第一線で活躍する編集者は何を考え、どう動いているのか? 今すぐ使える仕事のルールと思考法がわかる一冊。

■本書はこんな方にオススメです
・エンタメ業界に興味がある/働きたい
・編集者が何を考えているかが知りたい
・今ひとつ自分の仕事に自信が持てない
・やる気はあるのに、何をしたらいいか分からない
・面白い作品が作りたいが、煮詰まっている
・作家やクリエイターになりたい
・ラノベやアニメが好きで、その裏話が知りたい

■著者 三木一馬(みき・かずま)プロフィール
 株式会社KADOKAWA アスキー・メディアワークス事業局 電撃文庫編集部編集長、 電撃文庫MAGAZINE編集部編集長。 ≪電撃小説大賞≫最終選考委員。 2000年に上智大学理工学部を卒業後、 メディアワークス入社。 2001年、 電撃文庫編集部に配属される。 そこで、 『とある魔術の禁書目録(インデックス)』(累計1580万部)、 『とある科学の超電磁砲(レールガン)』(電撃コミックス。 累計680万部)、 『ソードアート・オンライン』(全世界累計1670万部)、 『灼眼のシャナ』(累計860万部)、 『魔法科高校の劣等生』(累計675万部)、 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(累計500万部)、 『アクセル・ワールド』(累計435万部)、 『電波女と青春男』(累計150万部)、 『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(累計135万部)、 『しにがみのバラッド。 』(累計130万部)、 『撲殺天使ドクロちゃん』(累計110万部)など、 ベストセラー小説シリーズの企画・編集を多数担当する。 今まで担当編集を務めた作品は約500冊におよび、 累計部数は6000万部を突破している。

《主な担当作品》
 『とある魔術の禁書目録』シリーズ(著/鎌池和馬、 イラスト/はいむらきよたか)、 『ソードアート・オンライン』シリーズ(著/川原 礫、 イラスト/abec)、 『アクセル・ワールド』(著/川原 礫、 イラスト/HIMA)、 『灼眼のシャナ』(著/高橋弥一郎、 イラスト/いとうのいぢ)、 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(著/伏見つかさ、 イラスト/かんざきひろ)、 『魔法科高校の劣等生』(著/佐島 勤、 イラスト/石田可奈)、 『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(著/入間人間、 イラスト/左)、 『電波女と青春男』(著/入間人間、 イラスト/ブリキ)、 『撲殺天使ドクロちゃん』(著/おかゆまさき、 イラスト/とりしも)、 『しにがみのバラッド。 』(著/ハセガワケイスケ、 イラスト/七草) ほか多数。

>>電撃文庫公式サイト
>>「面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録ライフワーク」特設サイト

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