
藍井エイルさん ロングインタビュー「三年後にはさいたまスーパーアリーナに行きたい」
昨年初めての武道館ワンマンライブを成功させた藍井エイル。そのライブの内容を完全収録したBlu-ray/DVDが2月10日に発売となるが、「三年後武道館の真ん中に立つ」という宣言を有言実行した彼女に、3月19日から全国16箇所を回るツアーも控える中、SPICEでは単独インタビューを敢行。武道館で感じたこと、ファンへの思い、そして趣味のことなど多岐にわたってたっぷり話してもらった。撮りおろしフォトと共に藍井エイルの“素顔”に迫る。
■一曲目から泣きそうだったという武道館ワンマン
―― まず、2月10日に武道館のBlu-ray発売ですが、夢の武道館に立ってみて如何でしたか?
藍井エイル(以下、藍井):初めてワンマンで立つことが出来て、リハーサルでは緊張してたんですけど全然現実感がなくて。ポップアップで本番登場した瞬間、景色がガラッと変わったんです。青いサイリウムに染まった空間を目の当たりにして、「見たい!」から「見れた!」って感覚が変わって、そうしたら一曲目の前奏で泣きそうになっちゃって(笑)。“いや早い早い!”ってその感動をこらえながら歌ってましたね。
―― 僕は初めてエイルさんのワンマンを拝見したのが武道館なんですけど、めちゃめちゃロックなパフォーマンスだな!と思ったんです。
藍井:そうですね。曲を作ってくれてる作家さんたちにもエイルバンドに参加してもらってて、みんなロック志向を持っている人が多いんですよ。だからそういう感じになっていくのかな。
―― 武道館を物凄い楽しんでましたよね。
藍井:満面の笑みでしたね。色んな感情が溢れたライブになったなって思ってて、一生に一度の経験って言えるものだったと思うし。初めての武道館、ワンマンライブって自分にとって凄い大きいものでしたね。
―― 藍井エイルって何だろう、っていうのを凄く考えてて。ゲーム好き、ロック好きってわかってるのに、今ひとつ藍井エイルのパーソナリティが掴みきれない気がしてるんです。クールな印象だったり、ご自身も言っている引っ込み思案って所なのかな?と思うんですけど。
藍井:出たがりなのに言葉が下手とか、不器用な部分だったり、持ってないものを欲しくなるっていう性格もあって。私自身実はかなり明るいし、よく喋るし、笑うし、ポーカーフェイスになれないんですよ。楽しい時はあからさまに楽しい顔するし、機嫌悪いとすぐ顔に出る。でもジャケット写真とかだと多分歯を見せて笑ってる写真って無いんじゃないかな。
―― そう言われたらそうかもしれません、最初は顔を隠してましたしね。
藍井:ミステリアスな雰囲気っていう自分の中にないものに凄い憧れもあって。そこから生まれたクールな雰囲気とかかっこいい印象とか、それが藍井エイルらしさなんじゃ無いかと思うんですけど、ギャップがあるからこそ中身が見えにくい所もあるのかもしれないですね。
―― でも武道館で僕が印象深かったのはやっぱり最後に歌った「ツナガルオモイ」で、あれには藍井エイルが伝えたかった事が全部詰まっていた気がするんですよね、あれで藍井エイルの素顔が垣間見えたと言うか。
藍井:一曲目から泣きそうになってた感情が、あの曲で爆発した感じはありますね。あのステージは自分が楽しいからやってるわけじゃなくて、バンドメンバーも照明さんも音響さんもスタッフさんも皆で作り上げた世界で。いきなり号泣するのもだめじゃないですか(笑)。まずお客さんに楽しんでもらって、曲をおもいっきりやって、最後に言葉で思いを伝えようと、その時に泣いちゃったらそれはそれでもう仕方ないや!って(笑)。「ツナガルオモイ」は作詞作曲をした初めての表題曲というのもあるし、あの曲は歌を歌っていくことで繋がっていく思いを歌った曲なので、最後にあれを歌ってなにか届いたらよかったな、と。
―― あの瞬間、観客側からもエイルさんに何かを伝えようという思いを感じたんですね、凄い幸福な空間というか。
藍井:お客さんも思いが強いひとが多いんですよ。手紙や握手会やSNSで色々な気持ちを聞かせてくれるんです。生きることに一生懸命で、でも悩んでる人たちがいっぱい居て、そんな中でも地面に立って生きていこうとする人が沢山いるんです。歌う事で私も背中を推せればいいなって思いがありますね。
―― 先日はワールドツアーも無事終了しました。
藍井:多い時は一月で三ヶ所も行ったりして、今回は新しい国におじゃますることも多くて。実際に行ったことのない所に足を運んでみて、海外の人が日本のコンテンツを愛してくれてるのを肌で感じることが出来ました。日本の文化っていうのを伝えることを意識して回ってたんですけど、日本最高!とか、アニメ大好き!って言ってくれる人が多くて嬉しかったですね! 印象的だったのはロンドンで、控室で休憩してたらどこかから女の子の歌声が聞こえてきたんですけど、それが石川さゆりさんの曲だったんです。
―― イギリス人の方ですか?
藍井:そうです、イギリス人の女の子なんですけど日本語が凄い上手くて! 衝撃的でしたね。
―― 海外で歌っていて日本のファンと反応が違ったりします?
藍井:一緒に歌ってくれる人もいれば、じっくり聞いてくれる人も居ますね。アジアのお客さんは日本に近い感じですね、アメリカだと歓声とかの反応が凄く早い、ダイレクトに気持ちを伝えてくる感じがします。
―― ところで……せっかくなのでゲームの話も聞いていいですか?『ドラッグ・オン・ドラグーン』の話とかしましょう!
藍井:あははは!(爆笑) しましょう!『ドラッグ・オン・ドラグーン』一作目は本当に素晴らしいし、衝撃ですよね!
(編集部注・『ドラッグ・オン・ドラグーン』は2003年にスクエア・エニックスより発売されたPlayStation 2用アクションRPG、高い難易度とそのダークな世界観でゲームファンを震撼させた名作)
―― 『ドラッグ・オン・ドラグーン』は名作中の名作だと思うんですけど、5つあるマルチエンディングの中でどれが好きですか?
藍井:それはもう新宿エンドでしょう! 絶対的に! あんなに全部武器集めて何周もやってあれですか!という打ちのめされる感じはないですよ!
―― 最後のボスもまさかの音ゲーですからね。
藍井:カメラワークも難しいですしね。狂気と血と殺戮で出来てますもんあのゲーム(笑)。多感な思春期にやるもんじゃないですよ! 弟と二人エンディングで固まりましたもん。新宿エンドってエンドロールも音楽もなく雑踏の音だけじゃないですか、そのまま「え?終わり?」みたいな、東京タワーをしばらく直視出来なかったです(笑)。
―― 他に印象的なゲームとかってあります?
藍井:今回主題歌を歌わせてもらいますけど、初代『デジモンワールド』は相当やってましたね。キーホルダー型の『デジタルモンスター』もやってましたし、育成して育てるのが好きなんですよ。やることが多いというか、これをやるためにはこれとこれが必要です、っていうのがいいんですよ。
―― やりこみ系ゲームが好きなんですね。
藍井:CAPCOMさんの『モンスターハンターフロンティア』も、サービス開始1年立たない時に始めて。ハンターランク100を越えてたら廃人とか言われた時期に120越えてたんです(笑)。友達に誘われても“ゲームでイベントあるから遊べない!”とか断ったり(笑)。
―― そんなエイルさんがデジモンを歌うわけですね、歌を歌おうと思った元々のきっかけは何かあるんでしょうか?
藍井:まずそもそも歌手になりたいっていう気持ちが凄く強くて。アニメも小さい頃から凄い見てたんですけど、歌いたい!って思ってた時に頂いた話が『Fate/Zero』の主題歌だったんで、物凄い幸福ですね。
―― アニソン以外も歌ってみたいとかありますか?願望としてですが。
藍井:歌謡メロディとか歌いたいですね。歌うことが好きになったのは親の影響が強いので、門倉有希さんとか、ハウンド・ドッグさんとか、桑田佳祐さんや工藤静香さんとかを聴いていて。小さい時は文字も読めないまま歌っていたんですけど、メロディラインが強いから印象深かったんですね。
―― 「シューゲイザー」とかは聞いた印象が、ソリッドながらメロが少し懐かしい感じします。
藍井:曲を作ってもらったGLAYのHISASHIさんとお話して、「メロディラインが懐かしい感じで素敵です」って言ったら、「そういう歌謡曲のメロディラインが好きなんで」って言って頂いて。歌っている時に溢れるような哀愁を感じる所がすごい好きです。
―― そう考えると、エイルさんの好きなものがちゃんと今歌ってるものに表現されている気はするんですよね。
藍井:そうですね。挑戦したいことが色々と叶っているっていう感じがあります。作家さんがメロディラインの素晴らしいものばかり作ってくれているので。「どんな曲好きだったの?」って聞いてくれる事が多いんですよ、だからこういうのを聴いてて、こういうのが好きだったって話すと、それを意識して曲を作ってくれることもあるので、本当にありがたいなぁと思いますね。
―― 武道館終わって改めて過去曲を全部聴かせてもらったんですが、もう「ゆらり」とかってまさに後藤次利さんのメロディみたいだな、って思いました。
藍井:そうですね。サビもずっとこう、近いところで鳴っているメロディラインなのでかなり覚えやすいし。
■藍井さんの今後の目標はさいたまスーパーアリーナ2daysワンマン!?
―― さて、2016年になりました、もう藍井エイルとしてデビューして…
藍井:5年目…今年10月で5周年になりますね。
―― これから先も歌手生活ずっと続いていくと思うんですけど、3年後、5年後の藍井エイルはどうなっていたいんでしょう?
藍井:さいたまスーパーアリーナが自分が経験した中で一番大きいステージなんですよ。さいたまスーパーアリーナ2daysワンマンっていうのをいつかやってみたいなって!
―― 見出しにします!
藍井:あはははははは!(爆笑) 結構、他のアーティストさんとか見てると、「さいたまスーパーアリーナ2days」って見たりとかするんですけど、いいなぁってポカーンと口を開けながら見ていて、いつかやりたいなぁと思ったことが何度もあって。
―― でも3年前に絶対やるよって言ってた武道館の真ん中に、ああやって立ったわけですからね。有言実行だと思うんですよね、藍井エイルって。アーティストって大きく分けると2種類いると思うんですよ。ジャンヌダルクみたいに付いてきて!っていうタイプと、逆にみんなと二人三脚で一緒に前に進んでいくタイプと。で、エイルさんは後者だと思っていて。肩組んでみんなで同じところに行こうぜっていうのをすごく感じるんですよね。
藍井:そうかもしれない、結構ファンの方々もそういう感覚を持ってくれている人たちが多くて、一緒に一歩踏み出して、二歩目も一緒に、っていうのはみんなが持ってる感覚なのかなって感じはします。
―― 行けるんじゃないですかね、3年後のさいたまスーパーアリーナ。
藍井:いやぁもう、言葉にしたりとか、実際に誰かに伝えたりとか、こういう夢があるんだって言うことによって、本当に力が宿るような気がしてるんです。なので、恥ずかしいかもしれないけど、人に言っておこうっていう気持ちはあって。だから有言実行でいきたいなと思います。
―― じゃあスーパーアリーナ2days、共演したい人は?
藍井:Do As Infinityさん! 伴さんの歌声と表現がもう大好きで! 「翼の計画」で本当に心が救われたりとかしていて、本当に大好きです。長尾大さんの生み出すメロディラインとか本当に毎回感動していて、前向きでフランクな感じなライブというか、そういう空気がすごい好きなんです。伴さんの力強い歌声とか、ちょっとボーイッシュな表現だったりっていうのは本当に影響受けているので、ずっと聞いてた音楽です。
―― では、そんなところで。今年はSPICEで藍井エイルを推していこうじゃないかということで。フェスとかに行ってもらって体験レポートとか。
藍井:ありがとうございます! 行きたいですね!『KNOTFEST』とかいつも行きたいんですけど、自分のライブが被ってたりして…「え!?Slipknot来るの? 行こう!……あ!自分のライブの日だ!」みたいな(笑)。こないだまさにですね、Slipknotのライブの前の日にイベントがあって!「ごめん!エイルちゃんのライブじゃなくって、Slipknot行ってくる!」ってイベント会場で言われたことがあるんです。その時ついつい、「え!いいな!」って言っちゃいました(笑)
―― 歌謡曲も、J-ROCKも、メタルも全部好きなんですね。
藍井:そうですね、たぶん聴いてるジャンルが多くて。そもそもなんですけど、音楽だけじゃなくて、いろんなものにハマりやすくて。あれもこれも手をつけ易いタイプなので。
―― そこでなんか藍井エイルの本当のところ、本性というか、そういうのを見えにくくしてるんですかね。
藍井:そうですね、どれも本性なんですけど、目移りしやすいというか。興味が色々なところにいっちゃうので。
―― 今1番興味があるのは?
藍井:今1番興味あるのは、『デジモンワールド-next 0rder-』が待ちきれなくて、今『デジモンワールド リ:デジタイズ』をもう1回やってるんですけど。次何に進化させようかなとかを考えていて。あとはこのあいだまで、読書感想文を書くことにハマっていて。
―― それはどこかに連載するとかではなく?
藍井:ないです! ないんですけど、せっかく読んだ本をどんどんタイトル忘れていって、その時に感じた感動とか気持ちが何もなかったことになっちゃうのって、もったいないなと思って。あらすじと、感想と、最後に自分がこの本の誰々だったらどうするかみたいなことを書くみたいなことをメキシコでずっとやってたんですよね。
―― 読んだ本でよかった作品とかありますか?
藍井:『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』は良かったですね、私恋愛小説って今まで最後まで読み終えたことが一度もなかったんですけど、初めて読み終えてすごい泣いちゃって。結構感情豊かなので泣きやすい体質ではあるんですけど、「うそーーー!」とか一人で言っちゃいながら泣いてましたね(笑)。家の犬に見守られながら、恋愛小説ってこんな感じなんだって、こんな感覚になるんだって感じて。これを歌詞とかに活かせたらいいなって。
―― そうですよね、フィードバックするものが絶対ありますもんね。映画とか、アニメもそうだし。
藍井:なんかもう、全て自分が経験したことしか書けないとしたら、すごく幅が狭くなってしまうかなって思って。自分が想像して、なおかつ経験したことないことも潤滑に書けたらものすごくいいだろうなって、だから、本を読んだりすることっていうのは、割と進んでやっていこうとしています。
―― なかなかパーソナルな面を見させていただきました、改めて武道館のDVD・ブルーレイの話しに戻りますが、エイルさんから見て見どころはどこでしょう?
藍井:はい。日本武道館初めてのワンマンライブということで、ワンマンに来てくれた人たちも、見る視点が限られてくると思うんですよ。本人を見てるのか、画面を見ているのか、バンドメンバーを見ているのか。でもいっぺんに全部見るってことはできないじゃないですか。なので来てくれた人も、いろんな視点で、いろんなカメラワークで見ることができるので、楽しんでもらえると思いますし、私の後にもカメラがあったので、ぜひ武道館のステージからの景色も見てもらいたいたいですね。「こんなにきれいな景色をみんなが作ってくれたんだよ」ってことを共有したいです。
■伝えるのが苦手だからこそだからこそ歌っていたい
―― じゃあ最後お聞きします、藍井エイルにとって”歌う”とはなんでしょう?
藍井:うーん…この間すごく思ったのが、歌うだけじゃなく、もっと大きい枠で表現、ですね。私は何か思ったことを、形にして表現しないことがものすごく苦しいと感じるらしくて。なので伝えたいことがあって、それを形にせずにずーっと心の中にしまっておくことが、どうやら性格的にできないみたいなんです。だから、たぶん歌わないとものすごく心が苦しいんだろうなって思うんです。もう習慣のように、それこそ幼稚園くらいの時から何か作らないと気が済まない人間だったので、歌うことがなくなって、歌詞を書くことができなくて、表現することができなくて、と思ったらものすごく苦しいんだろうなぁと思います。
―― やっぱり伝えたいんでしょうね。
藍井:伝えたいんでしょうね!
―― さっきも言った通り、それは「ツナガルオモイ」を作詞作曲して、武道館の最後に持ってくるっていうのも伝えたい気持ちなんでしょうか。「不器用だけどそばに居たいんだよわかってくれよ」みたいな、結構祈りに近いような叫びに感じたんです。
藍井:そうですね。私、色々喋ってるわりには中身が全然ないなって自分で思うんですよ。で、思いをきちんと形にして伝えるって時間かかるような気がしてて。なんか、私は悲観的に考えたくないから、どれだけ人が私よりもできようとも、きっと私には私の得意なことがあるはずなんだって。私は私なりにやろうっていう気持ちを、まあ今は持てるようになったんですけど、昔は「あの人もできてる、この人もできてる、どうしよう」って感じることが多くて。悲観的になることがすごく多かったんです。でも今は違う。その不器用な形を前向きに書いたのが「ツナガルオモイ」でもあったので、伝えるのが苦手だからこそだからこそ歌っていたいんだろうし。
―― その言葉に決意を感じます。これからも藍井エイルとしてはミステリアス路線は引き続いていくんですかね?
藍井:突然、ジャケ写が爆笑してたりとかする表情だと「あれ、誰だろう?」ってなったりしないかなって不安感はちょっとあるので、私らしさもちゃんと残しつつ。私らしさって、そのミステリアスな部分から始まっていって、そういうところもやっぱり残していきたいなとは思ってますね。今年はすでにツアーで全国16箇所まわることが決まっているんですけど、去年海外のいろんな所をまわらせてもらったんで、国内のまわってないところをもっともっと行きたいですね。それこそ北から南までぐるっとまわってみたいし、ツアー以外にも色々な所に行けたらいいなって。
―― 新しい藍井エイルを見せていくっていうのはとても楽しみです。
藍井:藍井エイルの表情見せたいですね。まぁ『D'AZUR』っていうアルバムを抱えたツアーなので、『D'AZUR』は新しい部分っていうものも強調しているアルバムでもあるので、その部分を今回のライブハウスツアーでは強調できるように考えているので、楽しみにしててほしいなと思います!
インタビュー・文=加東岳史 撮影=菊池貴裕
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