声優
『プラネタリアン』すずきけいこさん、小野大輔さんインタビュー

なんだか嬉しかったですね。「ああ、縁ってこういうのをいうんだ」って──劇場版アニメ『planetarian~星の人~』すずきけいこさん、小野大輔さん独占インタビュー

 2016年7月7日(木)から全5話で配信されてきたアニメ『planetarian~ちいさなほしのゆめ~』。ついに最終5話を迎え、"プラネタリアン・プロジェクト"もいよいよ劇場版アニメ『planetarian~星の人~』の9月3日(土)公開を残すところとなりました。物語のクライマックスを前に、ほしのゆめみ役のすずきけいこさんと屑屋役の小野大輔さんに独占インタビュー! 配信版アニメ『planetarian~ちいさなほしのゆめ~』を振り返り、お話をうかがってきました。

>>『planetarian』製作発表会レポート
>>『planetarian~ちいさなほしのゆめ~』先行上映会レポート

■12年を経てのアニメ化。「このタイミングできたのはこのためだったんだ」

──原作ゲーム「planetarian~ちいさなほしのゆめ~」が最初に発売されてからなんと12年を経てのアニメ化ですが、アニメ化のお話を聞いていかがでしたか。

ほしのゆめみ役・すずきけいこさん(以下、すずき):「いつか(アニメに)なるかもね」というお話は昔からあったのですが、「かもね」の状態から12年経ってしまっていたので、今回も「かもね」で終わるのかと思っていましたが、本当になってびっくりしました。

屑屋役・小野大輔さん(以下、小野):12年って、干支ひと回りですよね。それって、人生としても役者としても長くて。僕の役者のキャリアが15年なんですよ。まだ駆け出しの頃に携わらせていただいたものが、いろんな仕事をして、いろいろと積み重ねてきて、「ああ、今だったらもっといろんな表現ができる。もっと考えられる部分もある」というタイミングでのアニメ化だったので、「なんだこのご褒美は!」と思いました。

すずき:それは私も感じました。「なんで今なんだろう」って考えたこともありましたが、収録が終わって後になってから「ああ、このタイミングできたのはこのためだったんだ」って思えることもあったりして。

小野:たとえば?

すずき:現場の空気とか。ゲームで『planetarian』の収録をした頃は、一人で収録することが多くて。全然なかったわけではないけれど、今ほどはみんなで録る現場ってなかったので、たくさんの人と掛け合いをする経験ができてからで良かったなって。

小野:キャリアを積んだ今演れるっていうのは、意味を感じますよね。

すずき:あとね、12年前のゆめみちゃんだけを見て、今のアニメ『planetarian』のゆめみちゃんを見るとだいぶ印象が変わるんじゃないかなと思います。

小野:違いますよね、やっぱりあの時とは。変わっちゃったとか、あの時のができなくなっちゃったっていうマイナスじゃなくて、なんかその……

すずき:プラスプラスのところが増えていって。

小野:そう、積み重ねてっていう。

──すずきさんは「原作よりも人間味のある感じのロボットに」というプランをもらって、ゆめみちゃんの表現が原作ゲームより角が取れて丸くなったとも伺っています。その辺りが、アニメ化でのゆめみちゃんが大きく変わった部分なのでしょうか。

すずき:そうですね……実は、ゆめみちゃんの絵がゲームのときよりも若干頭身が上がっているんですよ。

──屑屋と並んだ時に釣り合いが取れるようにしたんですよね。

すずき:ゲームでのゆめみのイメージっていうのは、見上げてしゃべってる感じだったんですね。ロボットで機械だから、どっちに向けて声を飛ばすっていうのはないんですけど、イメージとしては見上げながら「(高めに跳ね上がる感じで)お客さま」って言ってる感じだったんです。でも、アニメではまっすぐ前を向いて「(少し落ち着いた調子で)お客さま」っという声の飛ばし方になっているので、それだけでも声のトーンがかなり違うんです。

小野:なるほど……。屑屋としてもそうなんでしょうね、きっと。ゲームの時の屑屋よりは、もうちょっと会話をしやすくなったんじゃないかなと思うんですよね。屑屋って、最初の頃はすごく世捨て人感があって、人を寄せ付けないというか、人との会話すら久しぶりなんじゃないかって感じで、コミュニケーションがすごく下手くそで。でも、そこからアニメ版の方はより自然に、すごくスムーズに、ゆめみとのコミュニケーションがこなれてくる感じが表現されていて。演じていて、「ああ、アニメにする意味があるな」と思いました。(ゲームは一人で収録するので)アニメになってやっとね、こうして生で会話できるわけですから。なんていうんでしょうね……ファン目線ですよね。「いいなー、これ!」って思いながら、ずっと演っていました。

──4月の製作発表会では、ゆめみちゃんはとにかく「可愛い、可愛い」と大絶賛でした。屑屋のビジュアルもこの日初めて発表され、その場にいたみなさんが「小野さんに似てる」とおっしゃっていましたが、ゲームにはなかったビジュアルを見ていかがでしたか。

小野:似てますか? 僕あんな目つき悪くないですけど(笑)。(屑屋は)目つき悪いですよね、すごく。そうか、そういう評価なのか……

──満場一致だったのですが。

小野:そうですか。光栄です(笑)。

すずき:絵に(声を)あててたときも、めっちゃナチュラルでしたよね。

制作スタッフ:デザインも小野さんに引っ張られているんですよ。

小野:本当ですか? そう言っていただけるとすごく光栄です。
でもたしかに似ている部分もありますよね。僕もああいう素直になれない部分があります。あと、雨男なとことか。僕とは雨男の意味が違うんですけど、ずっと本編中で雨が降っているのが印象的で。雨の表現がすごくきれいなんですよ。一度プラネタリウムを去ろうとして踵を返すシーンがあって、踵を返した時にバシャーン!ってなるんですけど、その水たまりを踏んだ時の反射の表現がめちゃめちゃきれいで。

すずき:あれですよね、「それでは特別投影はもう……」って私(ゆめみ)が去ろうとして、「おい」って(屑屋が)呼び止めるっていう。

小野:それそれ!

すずき:私も同じことを思っていました。

小野:雨の表現がすごく素敵です。

──注目してもう一度見たいですね。

すずき:あと、小野さんファンには「悪いがまた相棒ができちまったんでな」っていう一言を是非!

小野:そのセリフですか。たしか、戦闘の途中で言うんですよね。

すずき:戦闘で振り切って突っ込んでいく時に、ゆめみのことを相棒だって再確認しながら行くっていうのが。

小野:すごくいいですよね。屑屋って、何気にちょっとクサイようなことを言うんですよね。星が好きな人は、ああいうつっけんどんな態度をとっていてもめちゃめちゃロマンチストだと思うんですよ。

すずき:でないと白鳥座のペンダントなんかしませんよね。

小野:しないですよね。それを最後にゆめみにかけてあげて、「行かなくちゃな」っていう一連のシーンはすごくいいです。

すずき:あの一連のシーンは、隣で聞いていてもぐっときましたし、先行上映でも泣きました。あれ、絶対女の子に聞いて欲しい!

──絶対泣きますよね。他に好きなセリフやシーンはありますか?

小野:僕は、ゆめみの「少し壊れています」がすごく好きで。

すずき:何度も言いますよね。

小野:そうなんですよね。「正気か?」て聞くと……

すずき:「はい、少しだけ壊れています」

──可愛い……!

すずき:(笑)。すみません、今ここのすずきけいこは型番が違うので!

小野:何? どういうことですか?

すずき:ゆめみはSCR5000のままなんですけど、12年前のすずきけいことは型番が違うので。

小野:型番が違うの? でもそれはもう、上位互換ですよね。

すずき:ありがとうございます! よかった(笑)。
(上記セリフの外に出るシーンでは)感情の入り方もだいぶ変わりましたよね、ゆめみは。

小野:そうなんですよね。それがすごくぐっときて。で、ゆめみの「少し壊れています」は、ゆめみ自身もわかっていると思うんですけど、本当は壊れていないんですよ。壊れてるって言い聞かせている、っていう。

すずき:でもにっこり言うんですよね。

小野:世界は変わっていないんだと思い込もうとして、あえて「少し壊れてる」って言うのが、本当に切なくて。健気な子だなぁ、いい子だなぁって。

すずき:ゆめみは、ずっとサポートセンターに情報を問い合わせているんですけど、返事が返ってこないから、情報が止まっちゃってるわけですよ。でも、屑屋と過ごしてきた中で「なにか違うぞ」って思うところがあったんでしょうね。

小野:素晴らしい構成だと思って。

すずき:あとは、冒頭部分。起動した瞬間の「ほしのゆめみ、ですか」って、まだ感情がなくただ言葉を出しているだけのところと、プラネタリウムのみんなが去っていくところの「ご旅行ですか。それは素晴らしいですね」っていうところの対比を見て欲しいです。あれって、人がいっぱいしゃべってるのを聞いて、ゆめみが自分の中に蓄積していった結果、人間のしゃべり方に近づいていったんだと思うんですよ。ゆめみは変わっていないけど、情報の蓄積がロボットの中にあった、という変化を冒頭5分の中でお楽しみいただけるかと。

小野:何回でも見れますよね。

■Key作品の思い出は……

──ところですずきさんは、現在放送中のアニメ『Rewrite』など、他のKey作品にも多数ご出演されていますよね。もちろん『planetarian』がいちばんだとは思いますが、他に何か思い出に残っている作品はありますか?

すずき:『リトルバスターズ!』を挙げたいと思います。葉留佳と佳奈多を演じたお話ですね。あと、同率2番目で『智代アフター』。ヒロインの弟(坂上鷹文)とその元カノ(河南子)を両方演らせていただいたのですが……

制作スタッフ:けいこ無双が(笑)。

小野:すごいですね。けいこ無双……もう完全にKeyとの癒着じゃないですか!(笑)

すずき:一人でしゃべっている時間が長くて(笑)。最初にお話をいただいたのは『planetarian』だったんですけど、その『planetarian』が決定する前に『智代アフター』のオーディションを受けた時に、「Keyは笑いと感動を大切にしているブランドです」って説明を受けて、笑いと感動を両立させるのかと思ったのを覚えています。オーディションの時は笑いの要素が多くて、決め手になったセリフが「いや、流れ的に」「流れ的にってなんだよ! うんこっぽい流れなのか!? なんだ、うんこっぽい流れって!? うんこになんか流れて行かないよ!」っていうので役が決まったらしくて……

小野:すごい、本物だ!

──かっこいいです。

すずき:でも、うんこですよ?(笑)

小野:それもKeyっぽいな、なんか。

すずき:そうなんです。その二人が泣けるエピソードを紡いでいくという。強烈な印象がありました。

──小野さんはノベルゲームが全盛期の頃に大学生だったと思うのですが、何か思い出に残っている作品はありますか。

小野:なかなかそういう作品をプレイする機会はなかったので、TVアニメ『AIR』で初めてKey作品に触れたのが最初です。国崎往人は、アニメーションで演る大きな役としては初めてだったので、今でも自分のベースにある作品ですね。そこから音響監督の鶴岡(陽太)さんと仕事をするようになって、Keyとは全然違うところで『涼宮ハルヒの憂鬱』だったりだとか、その他の作品でもご一緒して……あと、その後の『CLANNAD』ですね。『CLANNAD』に1話だけチラッと出ているんです、ゲストで。そこからさらに最近まで飛んで『Charlotte』につながっていくっていうのが、なんだか嬉しかったですね。「ああ、縁ってこういうのをいうんだ」って。あと、Key作品での僕の役柄が全部似ているんですよ。大事な人をなくすんです。大事な人をなくして、なくした時に初めて気付いて、前を向いて未来に歩いて行くっていう役柄なんです、毎回、出る度に。

すずき:だったら『planetarian』は唯一なくさなかった作品にしてもらえるかもしれません。ゆめみのメモリーカードを取って、持っていてくださるじゃないですか。

小野:そうかもしれないですね。でも、演る度にそういう役になるのってなんか、運命的なものを感じますよね。演る度に泣きますし。

すずき:台本のチェックVの時点でボロボロボロって泣いちゃって続けられなくなることってありませんか?

小野:そうですね。残される方なんで、いつも泣きます。でもこれ(泣いてしまうこと)はしょうがないなって。当たり前の現象だからしょうがないよなって思いながら、現場では泣かないようにしています。

すずき:すみません、現場で泣きました。むっちゃ泣きました!

小野:(笑)。いいんですよ、旅立つ方はいいんです。立たれる方は、泣いちゃうとその後セリフが言えなくなっちゃうんで。でも本当、自分の演ったものは全部印象に残っています。

■このアニメを見てずっと覚えていてくれたらな、そして、思い出してくれたらなと思います。
──最後に、『planetarian』ファンの読者へひとことお願いします。

すずき:録っている時に「物はいつか壊れるし、形も変わるし、人もいつか空に旅立っていかなきゃいけないんだ」って思いが湧いてきて、ずっとその気持ちを持ったまま収録に臨んでいました。一緒にいる短い間だったり、形を持って生きている間に、何が残せるのかということを常に考えて演っていた気がします。小野さんとも、この短い間でしたけれど、何が残せたのかなと今でも時々考えます。みなさんにも、それぞれにいろんな思いや生活やお仕事などがあると思いますが、『planetarian』を見てくれるみなさんの中にも、何かが残る作品になっていたらいいなと思います。

小野:僕も、記憶に残る作品だと思います。すずきさんも別のインタビューでお話されていましたが、特別投影のシーンで「本当の空を忘れてしまった時に思い出してください」って話をゆめみがするんですよね。

すずき:そこはきますよね。Vチェックでも泣きましたし、本番では泣かないようにがんばってしゃべりました。

小野:あのセリフが、僕もすごく印象に残っていて。ゆめみが「思い出してください」って言うんです。星は、忘れていてもずっと空にある。ずっと輝いている。もちろん、曇ったり、雨だったり、光が弱すぎたり、季節によっても見えなかったりするかもしれないけれど、必ずそこにあるものです。この作品も、色褪せずずっと残っていく作品になったと思いますので、ぜひ、初めての方も、12年前に作品をプレイされてずっと好きな方も、このアニメを見てずっと覚えていてくれたらな、そして、思い出してくれたらなと思います。

 すずきさん、小野さん、素敵なお話をありがとうございました!

 配信版アニメ『planetarian~ちいさなほしのゆめ~』全5話はニコニコ動画ほか動画配信サイトにて配信中。つづく劇場版アニメ『planetarian~星の人~』は9月3日(土)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国で順次公開です。星に導かれた2人の物語が迎えるクライマックスをどうぞお楽しみに。

[取材・文・写真/笈川 采女]

■アニメ『planetarian』作品情報

配信版アニメ『planetarian~ちいさなほしのゆめ~』
ニコニコ動画ほか動画配信サイトにて配信中

劇場版アニメ『planetarian~星の人~』
2016年9月3日(土)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国順次公開

原作:「planetarian~ちいさなほしのゆめ~」(Key)
監督:津田尚克
脚本:ヤスカワショウゴ・津田尚克
シリーズディレクター:中山勝一・町谷俊輔
原作協力:Key/ビジュアルアーツ
アニメーション制作:david production
製作:planetarian project

『planetarian~ちいさなほしのゆめ~』
エンディング・テーマ「Twinkle Starlight」佐咲紗花
イメージソング「Worlds Pain」Ceui
『planetarian~星の人~』
主題歌「星の舟」Lia

◆CAST
ほしのゆめみ:すずきけいこ
屑屋:小野大輔 ほか

◆STORY
 世界大戦後の降りやまない雨の世界。細菌兵器の影響で、人々に見捨てられた最も危険な街【封印都市】。その、デパートのプラネタリウムに、ロボットの少女がいた。彼女の名前は“ほしのゆめみ”。彼女はプラネタリウムの解説員で、1年間にたった7日間しか稼働することができない壊れかけのロボットだった。そこで彼女は、30年間いつか誰かが訪れることを信じて、1人誰もいないこの世界で待ち続けた。そして、30年目の目覚めたその日に、彼女の前に1人の男が現れた。
「おめでとうございますっ! あなたはちょうど、250万人目のお客様です!」
 突如現れたロボットに警戒する男・“屑屋”。貴重物資を回収することを生業とする彼は、【封印都市】に潜入中、都市を徘徊する戦闘機械(メンシェン・イェーガー)の襲撃にあい、このプラネタリウムに迷い込んだのだった。
「プラネタリウムはいかがでしょう。どんな時も決して消えることのない、美しい無窮のきらめき……。満天の星々がみなさまをお待ちしています」
 星すら見えなくなった滅びゆくこの世界で、彼はそこで何を見るのか。1年で7日間しか稼働できないロボットの少女が、目覚めたまさにその日に訪れた偶然。そこで起こった奇跡とは――。


>>アニメ『planetarian』公式サイト
>>アニメ『planetarian』公式Twitter(@planetarian_pj)

(C)VisualArt's/Key/planetarian project
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