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映画『デスノート』佐藤信介監督が大事にしている原作との関係は?

コミックの実写映画化で大ヒット連発! ヒットメーカー佐藤信介監督が大事にしている原作と映画の関係とは?

 コミックやアニメに関係する実写映画化は、原作ファンがいるだけにヒットが難しいものです! そんな中、『GANTZ』(2011年)、『図書館戦争』シリーズ(2013年・2015年)、『アイアムアヒーロー』(2016年)などは、いずれも大ヒットと記録。しかも、各映画すべてを監督しているのが、同一の監督という事実をしっているでしょうか? その人は、佐藤信介監督。佐藤監督は、Production I.Gが制作し、2009年に公開された『ホッタラケの島 ~遥と魔法の鏡~』にアニメ監督として参加しており、実写の監督としては変わった経歴の人でもあるんです。

 最新作は、キラ事件の10年後を描く『デスノート Light up the NEW world』(以下、デスノートLNW)(10月29日公開)。次回作も週刊少年ジャンプの人気漫画『BLEACH』(2018年公開予定)が既に決まっています。どの作品も人気作だけに、佐藤監督はまさに実写映画化のヒット請負人。

 そんな佐藤監督に、公開が間近に迫った『デスノート Light up the NEW world』の話題を中心に、監督が考える漫画・アニメと映画の関係、そしてヒットの法則をじっくりと伺いました。

完結した物語の世界観から新しい作品へ
――実写映画『デスノート』(2006年)から10年後が舞台の本作ですが、監督に決まったときの気持ちを聞かせてください。

佐藤信介監督(以下、佐藤):「えー! うそ!?」が素直な感想でした(笑) 今回の続編は企画・プロデュースの佐藤貴博さんと「オリジナルで何か作ろうか」と考えていたときに出てきたアイデアなんです。佐藤プロデューサーから連絡がきた時、まさか、デスノートの続編だとは思いもよらないお話で、その時点ですでに気持ちが高まっていました。

――実際に、監督されていかがでしたか?

佐藤:実は、スタッフのほとんどが前作の『デスノート』に携わっていた方々なんです。プロデューサーも『デスノート』のプロデューサーだったりします。実は、彼らとは、実写映画『GANTZ』の時にプロデューサーやスタッフとして、ご一緒しています。いつも接しているので気安い関係ではあるんですが、『デスノートLNW』が決まった後には「知った顔だけど、あの『デスノート』を制作していた方々なんだな……」と、僕にとっては感慨深いものがありました。

――何だか不思議なご縁を感じますね。改めて、前作の『デスノート』に触れて感じたことはありましたか?

佐藤:金子修介監督の代表作ともいえる前作の『デスノート』は、映像スタイルが極まっていて、力強さを維持しつつもまとまりがあり、僕にとってもすごく大好きな作品です。独創性にあふれている原作をさらに映画として際立たせている部分に惹かれました。当時にしては新しい「前編」「後編」にわかれているところも、新しいページを開いた作品だなと感じる部分です。

――監督も前作の『デスノート』に驚かれたんですね。

佐藤:そうですね。日本映画で"死神"が出てくることに違和感がありましたが、「これが意外と見られるものだよ」という感想を耳にして、実際に見てみたらCGはもちろん、死神としてキャラクターが確立している物語の進み方に驚きました。まさか、自分がその映画の続編を撮るとは、当時、思いもしませんでした。

――では、大きなプレッシャーがあったのでは?

佐藤:プレッシャーというよりも完結した物語の世界観を借りて、さらにその次の作品を映画として作るという企画に燃えていました。また、監督ではありますが、僕自身も「どうなるんだろう」「一体どうするんだろう」と観客視点から見る部分もあったので、ファンの方と同じ気持ちの部分もあったと思います。そんな気持ちを引きずったまま、「新しい『デスノート』を作るのなら期待に見合うものを見せたい」、「じゃあどうしようかな」という流れで制作に入ったため、あまりプレッシャーは感じませんでした。制作が始まると、映画を作ることに集中してしまうので、作業が終わった今はなんか奇妙な感じですね。

大きな軸となる「後継者の争い」は原作者・大場つぐみ先生の考案
――『デスノート』は原作の大場つぐみ先生と作画の小畑健先生による少年漫画作品ですが、映画制作の際、おふたりとのやり取りはありましたか?

佐藤:大場先生にはこちらから出てきたアイデアを読んでいただいたり、大場先生からいただいたアイデアをもとに映画スタッフで話し合い「こういう話もあったらどうなるのか」など、何度かやり取りさせていただきました。今回、映画の大きな軸となる「後継者の争い(*1)」は、大場先生の構想です。

(*1)本作には、「デスノート対策本部」、「Lの遺伝子を継ぐ者」、「キラ信奉者」の三者それぞれで後継者ともいえる人物が登場。デスノート対策本部特別チームであり、"デスノートヲタク"と呼ばれる捜査官・三島創(演:東出昌大さん)。『デスノート』でLが名乗った偽名と同じ「竜崎」を名乗り、「Lの遺伝子を継ぐ者」として登場するのが、世界的私立探偵・竜崎(演:池松壮亮さん)。そして、キラを神と崇めるキラ信奉者でありサイバーテロリスト・紫苑優輝(演:菅田将暉さん)の三人がデスノートを巡る駆け引きを繰り広げる。

▲三島創(演:東出昌大さん)

▲三島創(演:東出昌大さん)

▲竜崎(演:池松壮亮さん)

▲竜崎(演:池松壮亮さん)

▲紫苑優輝(演:菅田将暉さん)

▲紫苑優輝(演:菅田将暉さん)

――そうなんですか! そうやって、オリジナル新作『デスノート』が出来上がったわけですね。

佐藤:6冊存在するデスノート(*2)、混迷の方向に大きく広がっていく物語と、それを解決しようとする3人の後継者の登場……、普通思いつかないですよね。なかなか思いつかないアイデアを生み出している大場先生の構想には「何かあるのではないか」と深読みしながら作っていました。『デスノートLNW』はオリジナルですが、原作の中から紐解きつつ解釈しながら作るものなので、大場先生が考案した「後継者の争い」という新しいテーマ性には、何か奥深い内容があるのではないかとすごく感じます。実際、Lの後継者という存在は、僕らが読みといていくひとつのアイデアになり、『デスノートLNW』の中心軸になっています。

(*2)6冊存在するデスノートのルールは、コミックス『デスノート』9巻の88ページに、「人間界で同時に存在して良いデスノートは6冊まで。もちろん死神自身のノートはその数に入らない。よって、人間にノートを所有させる事で人間界にいていい死神も6匹まで」と書かれている。

沢城みゆきさんのキャスティングは監督の一目惚れ!?
――今作では、6冊のデスノートが登場するなかで、たくさんの死神が登場します。その中で、死神・アーマ役に沢城みゆきさんをキャスティングした理由を聞かせてください。

佐藤:最初は誰がいいかな……と悩んでいました。リューク役を中村獅童さんが演じられていたこともあり、役者からのキャスティングを考えていた時もあったのですが、徐々にアーマのイメージやCGが固まっていくなかで、違う質感がいいような気がしてきたんです。スタッフと誰をキャスティングしようか悩んでいたところ、「あ!そうだ!」と沢城みゆきさんがパッと浮かんだんです(笑)。

 沢城さんとは昔、CGアニメの『ホッタラケの島 ~遥と魔法の鏡~』(*3)でご一緒させていただいて、そのときは全く違う感じのキャラクターの声を担当していただきましたけど、非常に素晴らしく、その後のお仕事ぶりも、キャラクターの幅が広く、多彩で感服していました。アーマにと、思いついた時には、今まで悩んでいたのは何だったのかと思いましたね(笑)

(*3)2009年公開。沢城みゆきさんは、主人公・遥(CV:綾瀬はるかさん)と行動を共にするホッタラケ島の住人であり、物語の重要キャラ"テオ"を担当。

一同:(笑)

――沢城さんとの再会はどうでしたか?

佐藤:最初、お互いに「お久しぶりです」と、そこまでは、以前の沢城さんとお変わりなくという感じなのですが、収録が始まると、普段の声とは違う、どこから出てきているのかわからない沢城さんの声に驚いて「彼女こそ、アーマの声!」と確信しました。

映画ならではの"新しい感動"と"驚き"に注目!
――ここで、実写化作品について詳しく聞かせて貰いますが、あらゆる人気作品を映画化してきた佐藤監督にとって、原作のない映画と原作のある映画では、作り方に違いはありましたか?

佐藤:原作のない映画と全く違う作業をしているかと聞かれたなら、そんな感じはありません。また、映画と原作ではメディアが違うので、たとえ原作ありきの映画だとしても「原作に忠実に作りました」が答えではないと思ってます。映画は、約2時間というような時間の制限の中で観る芸術です。そういう意味では、それぞれの映画で苦心するところは違いますが、原作の有り無しで、映画の本質的な作り方は変わりませんね。

――監督は、『GANTZ』や『図書館戦争』、『アイアムアヒーロー』などヒットっせていますが、すべてのファンが納得できる実写化は本当に大変だと思います。そんなハードルの上がった状態でも、多くのファンからの指示を得ている佐藤監督ですが、原作の映画化に"秘訣"はあるのでしょうか?

佐藤:まず、僕自身が原作ものばかりを選んでいるわけではありません(笑)。ただ、日本には数に限りがないのではと思えるくらいの魅力的な原作があり、それを映像化して楽しむのは映画産業のひとつの道だと思っています。今ある様々な映画でも予算は必要で、企画も数年先を見据えて行動しなければなりません。映画という莫大な予算が掛かる産業の中で、「監督業」という僕の役割があり、オリジナルでも原作でも「これだったら何か光が当てられるのではないか」と思って取り組んでいます。

 「これを作ろう!」と決めて行動するときは、こんなことを見せられたら多くの人をワクワクさせられるのでは、このやり方であればさまざまな感動が伝えられる作品になるのでは、という思いがきっかけになります。そんなきっかけがあるからこそ、映画が作れるんです。多くの方が知っている原作のある物語でも、映画を見た時に出会う新たな感動を生み出して、映像へ自然に身を委ねられるようにしたいと思っています。

 そして、原作とその映画の間にある"差"の中には、多くの映画的要素が含まれているとも思います。映画の素晴らしさは、その何ともいえないその差の中に隠されているような気がするんです。その差で感動を生み出すのが自分の監督としてやりたいことです。
秘訣というわけではありませんが、その"差"の中に隠されている、なんとも言えない部分を見つけようといつも努力はしています。原作の映画化となれば、原作とは違う、映画ならではの新しい驚きや興奮を見つけ出すことにいつも集中しています。

――佐藤監督の映画に対する熱意が伝わります。

佐藤:『デスノートLNW』は、オリジナルストーリーと言いつつも、前作の映画もありドラマや舞台もあり、もう1度『デスノート』を制作するということなので、そこで作り出す映画は明らかに他のものと違うものであってほしいです。そして、「こんなものもあるんだ!」と楽しんでもらいたいなと思います。

次回作も"死神"がテーマに
――なんと、次回作も"死神"がテーマの作品ですね。

佐藤:『デスノートLNW』はCGを使ってリュークという死神の息づかいや気持ち、感情が伝わるように作りました。今度は激しく戦うアクションがあり、人間の姿をした死神です。ふたつは違う死神作品ですが、僕の中では地続きのようなつながりを感じています。次回作も同じスタッフなので、まずは『デスノートLNW』を観てもらえればと思います。

――最後に、『デスノートLNW』を楽しみにしているファンへ一言お願いします。

佐藤:終わっている物語から新たに始まる作品なので、この後どうなるんだろうという感覚を味わってほしいです。映画を観た人に感想を聞かず、ワクワクしながら見るのがこの映画の楽しみ方だと思います(笑)。

――ありがとうございました!

>>映画『DEATH NOTE』公式サイト
>>映画『DEATH NOTE』公式ツイッター(@Deathnote_2016)

作品情報

<STORY>
一冊のノートで、世界を変えようとしたあの衝撃から10年―
再び狂い始めた世界で、宿命を背負う者たちによるデスノート争奪戦が始まる!

このノートに名前を書かれた人間は死ぬ―

犯罪のない社会を目指し、デスノートで世界を変えようとしたキラこと夜神月。暴走する彼を阻止しようとした世界的名探偵L。天才VS天才の対決から10年経ったある日、世界中のネット回線がジャックされ、キラによるメッセージが発信された―。「デスノートを手に入れろ―」

死神により地上にもたらされた6冊のデスノート。同時多発的に発生する大量の殺人事件。そんななか、三島が率いるデスノート対策本部に、Lの後継者・竜崎が加わり、無差別殺人の現場で一冊のデスノートを手に入れる。一方、その現場には、キラ信奉者・紫苑の姿が――。今、それぞれの譲れない"正義"を賭けた、3人の壮絶な頭脳戦が始まる──!

デスノート"オタク"の捜査官・三島に東出昌大、Lの後継者で世界的名探偵・竜崎に池松壮亮、キラ信奉者のサイバーテロリスト・紫苑に菅田将暉──今もっとも、演技力、カリスマ性、美しさの全てを備えた最強の豪華競演が実現。さらに前作に続き登場する弥海砂を戸田恵梨香、死神リュークを中村獅童が演じる。監督は『GANTZ』『図書館戦争』『アイアムアヒーロー』の佐藤信介。"すべての終わり"に名前を書かれるのは、誰だ!?

~デスノートのルール~
デスノートに名前を書かれた人間は死ぬ。
その人物の顔が頭に入っていないと効果は得られない。
名前の後に40秒以内に死因を書くと、その通りになる。
死因を書かなければ全てが心臓麻痺となる。

人間界で同時に存在していいノートは6冊まで。

<公開情報>
『デスノート Light up the NEW world』
10月29日(土)より丸の内ピカデリー・新宿ピカデリー他全国拡大ロードショー!

原作:大場つぐみ・小畑健(集英社ジャンプコミックス刊)
監督:佐藤信介
脚本:真野勝成
出演:東出昌大、池松壮亮、菅田将暉、川栄李奈/戸田恵梨香/中村獅童、船越英一郎ほか 
配給:ワーナー・ブラザース映画

(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS
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