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TVアニメ『恋と嘘』原作・ムサヲ×監督・宅野誠起 対談

原作者・ムサヲ先生が登場!アニメの宅野誠起監督と共に『恋と嘘』を語る

 累計1000万ダウンロード超の大人気マンガアプリ「マンガボックス」で、不動の人気No.1 を誇るコミック『恋と嘘』のTVアニメが好評放送中! アニメイトタイムズでは、アニメ化を記念して声優・スタッフの方々を対象にした連続インタビューを行っています。

 その第3弾となる今回は、原作のムサヲさんと監督を務める宅野誠起さんが登場! キャラクターの魅力について掘り下げるお話をメインに伺いました。アニメスタッフと原作者が協力して、面白い作品を作ろうとしていることが伝わってきました。

 

独特の世界観へたどり着いたキッカケとは
――16歳で国から結婚相手の通知が届くという設定に、まず誰もが驚くと思うのですが、これはどこから着想を得て?

ムサヲさん(以下、ムサヲ):夕方のニュースの特集コーナーなどで、よく「婚活に悩む人々」といった特集を結構な頻度で見かけて、そんなに悩むなら誰かが決めてくれたらいいのにねと思っていて。犬の散歩をしていたらフッと「こういう設定はどうだろう」という作品のもとになるアイディアが浮かんだんです。

でも、どう転がしていいのかは分からなかったので、浮かんだところまでをネームに描いて、(編集担当に)こういうのを考えましたけど、続きが浮かばないので送ります、みたいところが最初ですね。そしたら、もう一人ヒロインを出すとかどう?と言われて、なるほど!みたいな(笑)。

――すごく絶妙なところを突いてくる法律だなと思いました。

ムサヲ:なさそうであり得そうなラインを絶妙に……(笑)。そのひとつだけ嘘をついて、あとはリアルにするという方針で描いていこうという話を最初にしていたんです。だから、この世界に政府通知はないんですけど、政府通知があるという一つだけの嘘をついて、あとは本当に現実のまんまにしようと考えました。

――監督は、原作を読んだ時にどう思いましたか?

宅野誠起さん(以下、宅野):主人公の名前がゆかり(由佳吏)なので、妹の名前と同じだな、みたいな(笑)。内容に関しては、新しいと思いました。少年マンガ……少年向けマンガなんですけど、非常に少女マンガ的というか。言い方が合っているのかは分からないんですが、細かい感情の機微が描かれていて、すごい展開があるというよりは、関係性が変化していくのを丹念に追っているような感じがしました。それを少年目線で描いているというのが新しく感じましたね。

――感情は、本当に細かく描かれていますよね。

宅野:でも胸がボーン!なんですよね(笑)。そういうところがアンバランスなんだけど、新しいなって思いました。

――そこは、同性ではあるけど、かわいい女の子が好きなのでしょうか?

ムサヲ:私、秋元康プロデュースのアイドルがすごく好きなんですよ。1巻のあたりでも、女の子ってかわいいなと思って描いていたんですけど、そのあとどんどん(アイドルの)深みにハマっていきまして(笑)、女の子のかわいさへのこだわりが増していったんですね。

普通は、女性が女の子のキャラを描く時って、同性として描いていると思うんですよ。
でも、アイドルにハマっている時に、女性と男性と、もう一個の性別としてアイドルがいるなと思って、そういう認識ができるようになったんです。自分の性別と切り離して、“かわいい存在”として女の子たちを認識できるようになったら、すごくかわいい女の子を描けるようになったんです(笑)。

みんなにかわいいと思ってもらうために、こういうふうにしたらかわいいでしょ?っていうニュアンスがあると思うんですけど、それを女性として見ると、ちょっと冷めた気持ちになるんです。でも、違う性別=アイドルとして見ると「むっちゃかわいい!」になるんです(笑)。

――ちなみに、おっぱいマウスパッドが出てるじゃないですか?

ムサヲ:あれはずっとやりたかったんです(笑)! ラブコメを描くなら、おっぱいマウスパッドが売れるくらいになりたい!って思ったんですよ。受注が50個からなのですが、個人で売っても50個さばけるくらいのマンガにしたいなと思っていたら、ちゃんと発売までこぎつけられたので、その目標は達成できました(笑)。

――それがアニメ化、さらに実写化です! それは、想像していましたか?

ムサヲ:マンガで連載が始まった人で、アニメになるといいなと思わない人のほうが少ないと思うんですけど、そこまでこぎつけることができるとは、まったく思っていなくて。でも、(コミックス)1巻の最後で仁坂がキスをして終わるというのを当時の担当さんに言ったときは、「何それ!めっちゃ面白いじゃん!」みたいなことを言われて、「せやろ!」と言ったんです(笑)。

1巻が出た瞬間に、男性からも女性からも関係なく「びっくりしました!続きが楽しみです」って言ってもらえた時に、アニメができるかわからないけど、なしではないのかなとは思いました。でも本当に手探りで描いていたので、自信は全然なかったです。


マンガ、アニメ、それぞれで大切にした表現

――ちなみに読者の反応の女性と男性の割合って、どのくらいなんですか?

ムサヲ:う~ん、男性の方がちょっとだけ多いのかな……。男性の方からは「今日もかわいかったです!」みたいなストレートな感想をいただくんですけど、女性の読者は「仁坂くんのあのカットがこうでこうで、すごく良かったです!」みたいな感じで細かく伝えてくれるので、容量としては同じくらいかなと(笑)。でも実際も6:4くらいな気がします。

――でも無事にアニメになりました。監督は、この作品をどう表現したいとか、どんなところを大事にしたいと思いましたか?

宅野:やはり恋愛のキラキラ感が画面に出ればいいなと思いました。(視聴者は)女性が多くなるのか男性が多くなるのかはまだ分からないですけど、女性も多いのであれば、きれいなほうがいいのではないかと考えまして。そうすると色みと光を大事に、それをとにかく画面に入れてきれいにしていこうと思いました。

――実際にキャラクターの絵が声と合わさって、動いたのを見てどうでしたか? 

ムサヲ:PVにあった美咲の振り返るシーンとか、間とかが、すごく彼女らしくていいなって思いました。声は最初の段階から、花澤(香菜)さんは合うと思うよ、みたいな意見が身近な方々から聞こえてきたので、そうなんだと思っていたんですけど、いざ聞いてみると抑え具合がとにかくお上手で、いいなぁって思いました。

――マンガを描いているときは、声のイメージはないんですか?

ムサヲ:あまりないですね。キャラの立ち位置が自分の中であるらしくて。描き始めた時から変化していく人たちとして描いているので、声は聞こえてないですね。いざこうやって実際の演技を聞いてみると、みんなキャラに合っていて素敵なんですが、描いている時は基本的には無音なんです。

――放送が始まって、ずっと見ていたら、声で再生されるかもしれないですね。監督はキャスト選びについては?

宅野:花澤さんの声は、いつまでも聞いていたいなって思う透明感がありますよね。あと技術力はみなさん確かな方ばかりなので、非常に複雑な心情表現をしていただいています。もちろん苦労はされていると思いますけど、気持ちを作ってアフレコに臨んでくださっているので、わりとスムーズに現場が動いていて助かります。

――莉々奈についてはいかがですか?

ムサヲ:最初のアフレコの時に、牧野由依さんが「この子はどんな子なんですか?」と聞いてくださって。ツンデレキャラと思われがちですが、別に彼女はツンツンしているわけではなく、ただ真面目で頭が固いだけなんですよね、みたいなことを伝えたら、ものすごくしっくりくる演技をしてくださったので、声優さんってすごいなぁと思いました。

――確かに、ツンデレっぽいけど、そうではないですよね。

ムサヲ:ツンデレキャラって、パンツが見えたら「何よ!」って殴るじゃないですか。まぁ、莉々奈も殴っていましたけど(笑)。でもあれは言わなかったことに対して殴ったんですね。パンツを見られて殴るなんて、自己評価高っ!って私は思っちゃうんですよ。自分のパンツに殴って対価を得るほどの価値があると思ってるんだ、すごいなこの子!って思っちゃうんです。

でも莉々奈はそうではなくて、お見合いにやる気がないから怒ったし、パンツが見えてることを指摘せずに黙っていたから怒ったんです。怒るにはちゃんと理由があって、自己評価は低い子なんですね。そういうことを話したら、「なるほど」みたいに言ってくださいました。

――それは確かに「なるほど」ですね。逆に美咲は、実際にいる女の子っぽいじゃないですか。

ムサヲ:私が二人を最初に描き始めたくらいの時に思っていたことなんですけど、高崎(美咲)さんは私の考える最強の美少女で、莉々奈は私が考える最強のマンガのヒロインなんです。で、ヒロインっていうのはやっぱり主人公にとって都合のいい存在でもあって、一緒に頑張ってくれるし、何かがあったら慰めて奮い立たせてくれる。で、主人公のことを好きになってくれる存在なんですけど、美少女って都合が良くないんですよ。

アイドルを見ていても、何でこんなことをするの?みたいなことが結構あって、でもそれって彼女たちの中で考えて、彼女たちなりに欲しいものがあって、その結果、男性にとって都合が良くないことをしてしまったり、理解ができないことをしてしまったりするんですけど、彼女たちの中には道理が通ってるんです。そういう女の子って、すごく尊くてかわいいなって。少女から女性になるまでの間の迷走期の尊さって、絶対にあると思うんです。その感じを出せる子にしたいなって。

――ものすごく納得というか。美咲は男性からしたら本当に分からないですよ。

ムサヲ:そうですよね(笑)。でも実際にリアルな彼女って、あのくらい意味分からなくないですか?

――分からないです(笑)。そういうところはアニメでも描きたいところですか?

宅野:そうですね。でも、ほぼ原作通りに進んでいくので。莉々奈の様子がおかしいことに気づいた美咲が、莉々奈を呼び出すというシーンとかもありますが、そういうのはすごいなぁって思っちゃいます。そういう生っぽさというのをどこまで出せるのかは難しいですけど、彼女たちの魅力を削がない形で、その個性を足していきたいと思っていますね。

――逆に男性キャラはどうでした? いわゆる少女マンガに出てくる男性って理想像ですけど、実際の男って、そこまで考えてないですよね。その辺がネジくん(主人公・根島由佳吏)はリアルだなって思ったのですが。

ムサヲ:そこがすごく難しかったです。初期の頃は考えさせ過ぎちゃって、担当さんに「男はこんなに考えないから、もっと思考を削れ!」みたいなことを言われて、どうしようかなぁって。それでめちゃくちゃシンプルな思考にしました(笑)。とにかくネジは考えさせないようにする努力をしましたね。

――でも仁坂は、分かっているほう?

ムサヲ:仁坂の内心はまだ描いていないので、描く時があったとしたら気をつけなきゃと思っているんですけど、ネジよりは多分ずっといろいろ考えてるのかなあと思います。その度合いが難しいですね。

――監督は、この男性陣をどう見ていますか?

宅野:ネジはネジなりに一生懸命なんですけど、普通に考えると優柔不断な男ですよね。でも、気持ちに嘘はついてないので、そこがイヤな感じにならないという感じがします。あと、彼には勇気があるんですよね。告白の時もそうですし。それは彼を描く上でのひとつのキーワードとして、自分の中で持っていますね。

――オンエアがスタートしていますが、映像の出来はもちろんですが、音楽もすごく良いですよね。

宅野:横山 克さんの音楽が非常にいいんですよ! なので音楽(BGM)も注意して聴いていただけると、楽しめると思います。あとは先ほども話した、色みと光というのは、私もひとつの目標として掲げてやっているので、そこも見ていただければと思います。

――絵も気合いが入っていると逢坂さんが話していましたが。

宅野:先生の本当に繊細な、眉尻1ミリ上がるか上がらないかっていうところでかなり感情が変わってくる絵を、アニメという集団作業の中でどうやって再現するか。それはかなり難しいんですけど、スタッフ一同頑張ってやっていますので、どうアニメで再現されているのかも確かめていただければと思います。

ムサヲ:1話のラストがアニメと原作で違っていて。原作だと普通に家に帰って終わるんですけど、アニメだとネジが高崎さんを追いかけて「やっぱり君が好きだ」って言って終わるんです。それがすごくいいな!と。そっちのラストのほうがいい!って思いました(笑)。ドラマチックだし、疾走感じゃないですけど、青春走りがいいじゃないですか(笑)。なので、これからも楽しみです。

――マンガとアニメだと表現もやっぱり違いますからね。

ムサヲ:そうですね。提案をされた時に、目から鱗だったんですよ。マンガはマンガで落として次に繋げる感じになるんですけど、アニメだと動作で盛り上げることができるので、そういう見せ方があるんだなって新鮮でした。 

――原作者として、アニメにも結構関わられているんですか?

ムサヲ:すごく細かいことを言う作者で、大変申し訳ないなという気持ちでいつもいるんですけど(笑)、「ここはこうしてほしいんですけど」とか、いつもわがままを言ってしまっています……。

宅野:いや、すごく助かっています。マンガだとこんな服を着ているけど、何色なんですか?っていうのはあるので。莉々奈を見たら、すごく服にもこだわりがあるから、何ていうブランドなんだろうなとか。美咲はどういう服が好きなのかな? 読んでいる雑誌はどういうのなのかな?って、ちょっとマンガだけでは分からないところを先生に教えてもらっています。すごく美意識が高い方なので、そういうところは監修していただき、非常に助かっています。

――現段階では、ムサヲ先生もアニメはまだ見られてないんですよね?

ムサヲ:そうですね。でも、いただいた途中段階の映像は3日くらい見ていましたね(笑)。やっぱり音と声が入ると印象が全然違って。元から素敵だと思っていたんですけど、さらに。家族にも、見て見て見て!って。妹がお風呂に入っている時に届いたんですけど、早く出てきてよ!みたいな(笑)。

――そんなに(笑)。では最後に、ファンにメッセージをいただけますか?

ムサヲ:『恋と嘘』を好きなファンの方って、作品をすごく大事に思ってくださっているんですけど、安心できると思います。胸を張って見ていただくことができるアニメになっていると思いますので、よろしくお願いします。

宅野:高校時代の理想や憧れが全て詰まった原作なので、気持ちを込めてキャラクターをしっかりと描きたいと思います。恋することの嬉しさと切なさを感じとっていただければと思います。ぜひ最後までお楽しみください。

[インタビュー・文/塚越淳一]

 
TVアニメ作品情報
■TVアニメ『恋と嘘』

【放送情報】
TOKYO MX:毎週月曜24:00~24:30
tvk:毎週月曜25:00~25:30
サンテレビ:毎週月曜24:00~24:30
KBS京都:毎週月曜24:00~24:30
BS11:毎週月曜24:00~24:30
AT-X 毎週金曜22:00~22:30
※放送時間は変更になる可能性がございます

【スタッフ】
原作:ムサヲ(講談社週刊少年マガジン編集部・DeNA「マンガボックス」連載)
監督:宅野誠起
助監督:臼井文明
シリーズ構成:高橋ナツコ
キャラクターデザイン・総作画監督:伊藤依織子
美術設定:泉 寛 イノセユキエ
美術監督:齋藤幸洋
色彩設計:小野寺笑子
撮影監督:田村仁
編集:吉武将人
音響監督:鶴岡陽太
音響効果:森川永子
音楽:横山 克 信澤宣明
アニメーション制作:ライデンフィルム
オープニングテーマ:「かなしいうれしい」/フレデリック(A-Sketch)
エンディングテーマ:「Can’t you say」/Roys(ユニバーサルJ)

【キャスト】
高崎美咲:花澤香菜
真田莉々奈:牧野由依
根島由佳吏:逢坂良太
仁坂悠介:立花慎之介
矢嶋基:谷山紀章
一条花月:黒沢ともよ
ナレーション:喜多村英梨

竹田大樹:安達勇人
加藤絢乃:高槻かなこ
相生怜奈:前田玲奈
柴田渉:川原慶久
伊勢崎健太:浜添伸也
根島雄二:檜山修之
根島智里:木村亜希子
根島きずな:本渡楓
真田ユルゲン悦郎:黒田崇矢
真田楓:皆口裕子

【ストーリー】
ある日、僕達は「恋」を通知される。
「嘘」は許されない。「恋」はもっと許されない。
満16歳になると政府から結婚相手が通知される超・少子化対策基本法、通称ゆかり法。相手探しの面倒もなく、国家から相性の良さが保証された「幸せ」を皆が受け入れていた。そんな世界で、主人公・根島由佳吏15歳はクラスの高嶺の花・高崎美咲に想いを寄せていた。16歳の誕生日を迎える夜に決意を固め、ついに長年の想いを伝える根島由佳吏だったが、その直後、彼のもとに政府通知が届く──。科学の赤い糸で結ばれた相手とは・・・。「好きになるべき人」「好きになってはいけない人」を政府に一方的に決められてしまう世界。それは希望なのか、絶望なのかー
少年少女たちのひたむきで純粋な想いが交錯する、未熟で儚い禁断の恋物語。

>>TVアニメ公式サイト
>>TVアニメ公式Twitter(@anime_koiuso)

(C)2017「恋と嘘」製作委員会 (C)ムサヲ/講談社
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