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『リズと青い鳥』種﨑敦美さん×東山奈央さんインタビュー

『リズと青い鳥』種﨑敦美さん×東山奈央さんインタビュー|この作品に出会えて私の世界も広がった

『響け!ユーフォニアム』シリーズの流れを汲みつつも完全に独立した新作映画となる、『リズと青い鳥』が2018年4月21日に公開となります。

映画『聲の形』のスタッフが再集結し紡ぐ物語。中心人物となるのは北宇治高校でオーボエを担当する鎧塚みぞれとフルートの傘木希美の2人です。

今回、アニメイトタイムズでは鎧塚みぞれ役・種﨑敦美さんと傘木希美役・東山奈央さんにインタビューを行いました。

『リズと青い鳥』とはどんな作品になっているのか。2人の胸中に迫ります。

2人の物語だけじゃない本作の魅力

――TVシリーズを経て、今回みぞれと希美のお話が映画化されると聞いた時の率直な感想を聞かせて下さい。

種﨑敦美さん(以下、種﨑):2人の物語が映画化されるというのは、『響け!ユーフォニアム2』スペシャルトークイベント~1・2年生合同!宇治でお祭りフェスティバル~」で発表されました。

サプライズでスクリーンに映し出された瞬間に、「また、みぞれを演じられるんだという気持ち」と「みぞれと希美の続きが見られる」という気持ちで号泣してしまいましたね。その時はどのシーンが描かれるんだろうって不安な気持ちはなく、ただただ嬉しかったです。

東山奈央さん(以下、東山):私は(映画化を)Twitterで知ったんです(笑)。

種﨑:(笑)。

東山:同じ日に別のイベントに出演していたんです。イベントが終わった後、今日『ユーフォ』のイベントだったと思って、Twitterを検索したら『劇場版3作品制作決定! その1作はみぞれと希美の物語』って出てきてビックリしました! その場でも「え~~~!!!」って本当に驚いちゃって(笑)。

『響け!ユーフォニアム』の2期で2人の物語はしっかりと描かれていましたよね。雨降って地固まるみたいな。折角2人はまた仲良くなれたけど、劇場版ということは何か起こるんだろうなって、親心としては心配になったんですけど。また希美たちが動いている姿に会えるのは、本当に嬉しかったです。

――事前に聞いていなかったんですね。

種﨑:完全にサプライズでしたね。誰も知らなかったんですよ。腰を抜かしているキャストもいたので(笑)。

――では、台本を最初に読んだ時の感想を教えて下さい。

種﨑:台本をいただく前からタイトルが『響け!ユーフォニアム』ではないということは聞いていて、どんな話になるんだろう?って(台本を)開いたら、過去でもあり、今でもあり、アニメの先でもあって。2人の心を細かく描いていくんだなって思いました。また、作中に登場する物語『リズと青い鳥』も一緒に進んでいくんだなって。

東山:私、『リズと青い鳥』というタイトルになったことを知らなかったんです。自分がやっているラジオ番組で「奈央ちゃん こんにちは。『リズと青い鳥』のPVが公開されましたね」って、メールが届いていて。その時は身に覚えのないタイトルだったので、「これ宛先間違えちゃったのかな?」って思ったんです。でも、なんだか気になって調べてみたら、本作のことだって分かって。それから台本をいただいたんですよ(笑)。

台本を最初に受け取ったときは、どうして『リズと青い鳥』なんだろうって思ったんです。だって、TVシリーズでは「リ」の字も登場していないですよね。でも、台本を読み終わったらこのタイトル『リズと青い鳥』というワードを見るだけで、涙腺が緩むくらいになりました。

希美としてはTVシリーズとはちょっと印象が変わっていて。2人の気持ちを丁寧に拾い上げていくがゆえに、これまでには描かれなかった希美の一面が現れています。そこにはちょっとビックリしましたね。

――TVシリーズでは、中川夏紀(CV・藤村鼓乃美さん)が吉川優子(CV・山岡ゆりさん)に、「あんたの100倍いい子だよ」って、希美のことを讃えるセリフがありました。もしも希美が吹奏楽部を辞めていなかったら、部長になっていた可能性もあるじゃないか?と思えるくらい。

東山:みぞれに対しても、引っ張っていく感じですし、リーダーシップがありますよね。希美って。もしかしたらそういった未来もあったのかなあ。

種﨑:退部していなかったら、希美が部長という可能性もあるかな?と思ったんです。でも、『リズと青い鳥』を見ると、やっぱり部長は優子しかいないなって。ちゃんと自分のことを置いて周りのことを考えられる子なので。

みぞれと希美の物語ではあるのですが、その物語を通じて改めて2人の周りにいる人たちの大切さや優しさに気付いたというか。優子と夏紀は本当にいい子だなって改めて感じました。

――4人の絆にも注目ですね。

東山:そうですね。新しい一面を知ることができるし、この4人の成長も感じられました。これまで作品を愛してくださったファンの方たちは4人の過去を知ってらっしゃるじゃないですか。最高学年になった4人にも注目して欲しいです。

種﨑:監督には、物語としてつながってはいるんですけど、『響け!ユーフォニアム』とは違う作品をやるくらいの気持ちで挑んでほしいと言われたんです。優子は特に立ち位置が変わっていますよね。3年生になって部長に就任しただけじゃない成長があるというか。

東山:『リズと青い鳥』から見た方は、「優子部長はできた人」ってイメージを持つと思うんです。でも、そこから1期を見直すと……(笑)。

種﨑:違う人かなってなるよね(笑)。

東山:結構ギャンギャンしてるぞって(笑)。

――優子は『リズと青い鳥』で、髪も短くなっていましたしね。

東山:そうなんですよ。リボンも小さくなっていて。大人っぽくなってる! って(笑)。『リズと青い鳥』だけを見ても楽しめるし、これまでを知っている人は奥行きがある。そういった作りになっているのが素敵ですよね。

2人の想いがクロスする作品

――TVシリーズと『リズと青い鳥』でそれぞれのキャラクターが成長していると。では、収録にはどのように臨みましたか?

種﨑:希美は大きく違うよね。

東山:そうですね。希美は明るくていい子なんです。みんなからも「いい子だね」って言われるくらい。夏紀も希美に憧れて吹奏楽を始めているんですよ。なので、希美は「人から憧れられる人」という印象がありました。

TVシリーズは突っ走っちゃうだけじゃなくて、憧れられるということも大切に演じていたんです。でも、『リズと青い鳥』では、これまでになった彼女の内面を知ることができて。「意外と、ずるいところあるんだな」とか、「みぞれのことを大切に思っていても、こういった感情があるんだな」とか。そうした内面を知ることができて、より親近感が湧きました。

最初は、少し戸惑いもしましたね。いくら別のタイトルになっていたとしても、皆さんの大好きな『響け!ユーフォニアム』のイメージも損なわずに演じられたらという気持ちもあったので。これも本当の希美なんだよ? って知らない一面も届けたい。そんなイメージで希美を演じました。

――これまでとのギャップを埋めるのが少し大変だったんですね。

東山:私は最初みぞれに共感しちゃったんです。みぞれの気持ちがすごく分かるって思って。自分の役なのに希美のことがよく分からなかった。こういうふうに考えていたのか! って思うシーンも多いんです。でも、彼女の中で抱えきれないものがあると分かってからは理解できるようになったというか。

みぞれはね、変わらずという感じですよね?

種﨑:みぞれは変わらず、ぶれない。希美が大切というのは一切変わっていないので。だから、戸惑いはありませんでした。ただ、TVシリーズで希美と会話したのって、和解した部分以外だと後はちょっとしたシーンだけだったんですよね。

冗談を言い合ったり、何気ない遊びをする2人。TVシリーズでは出てこなかった表情や動きを演じる上では少し考えたりもしました。

みぞれを演じる上で一番最初に言われたのが、「希美と一緒にいる時、話している時は常にクライマックス。最終回。いつそれが終わるかもしれない、無くなるかもしれないという気持ちを持って、希美と喋って下さい」ということなんです。2人で話している時に希美が「何それ~?」って言ってくれる、そんな何気ないやり取りができることがすごく嬉しいんです。

私は『リズと青い鳥』だと希美に共感してしまって。TVシリーズの時は、自分と全く正反対でなんてキラキラした子なんだって思っていたんです。でも『リズと青い鳥』では、人間的な部分が見えて。自分もこの気持ち知ってるなって。そんな内面がたくさん見えてきて。私はもっと希美のことが好きになりました。

――TVシリーズと別の作品として演じる上で難しさはありましたか?

東山:難しかったですか?

種﨑:いえ。でも、TVの続きではなく『リズと青い鳥』という別の作品だったことが良かったと思います。逆にTVシリーズの続きだったら演じるのが難しかったかも。

――それはどうしてでしょう。

種﨑:TVシリーズで和解した2人のその後って、文化祭で仲良くやっているシーンが印象的ですよね。離れていた頃を取り戻すかのように仲が良くみえて。あのシーンの様な気持ちのままだと「リズと青い鳥」の2人を演じることは出来なかったと思うんです。

――『リズと青い鳥』だからこそ、上手く演じることができた?

種﨑:そう思いますね。

東山:私も同じ気持ちですね。それが新作だとしても、どうしても過去のお芝居の影を追ってしまうというか。でも、『リズと青い鳥』になったことで、新しいイメージを新しいスタンスでできる。今だからこそのベストな表現に集中することができた印象がありますね。

今回、みぞれと希美ってとことんすれ違うんです。そのすれ違いや成長痛を美しく描いたのが、『リズと青い鳥』。この2人はすれ違う関係性なんだなって。みぞれが思いを伝えたとしても、希美が一番欲しい言葉は出てこないというか。

――素朴な疑問なのですが、みぞれが希美のことを好きなのは理解できるんです。吹奏楽に誘ってくれたりとか、世界を変えてくれた人なので。ただ、希美がみぞれのことをここまで好きな理由が少し分からなくて。希美はたくさんの友だちがいるなかで、なぜみぞれと過ごす時間が多いのでしょう?

東山:それは、今回の映画を撮り始めるにあたって、私が一番最初に監督に聞いたことなんです。本当にその通りでみぞれが希美を好きなのって分かりますよね。でも、「希美がみぞれを好きなのって、彼女が向けてくれている気持ちと一緒ではないですよね?」って聞いたんです。

そしたら、「みぞれが希美に対する思いと、希美がみぞれに対する気持ちはイコールじゃない。それぞれが大切に思っているけど、それはすれ違っている」というお話をしていただいて。

種﨑:男子はどうなんだろう…女子はこういった関係、意外とよくあるんです。

東山:TVアニメの時って、希美にとってみぞれはワンオブゼムなんですよ。たくさんいるうちの1人がみぞれ。大切な友だちだけど、いろんな友だちの1人という気持ち。

みんなと同じ様に接しているんだけど、人一倍懐いてくれるから、可愛いなって気持ちはあって。自分のそばにいつもいるというか。共感できるけど、よくある関係ではない。特殊な関係なんですよね。

『リズと青い鳥』にお礼を伝えたい

――『リズと青い鳥』で種﨑さんは希美の東山さんはみぞれの好きなシーンをそれぞれ教えて下さい。

種﨑:私は希美の後ろ姿が大好きなんです。それを見ているだけで涙が出そうになりますし、ずっと見ていたいと思うというか。『リズと青い鳥』を全編見た後に、もう一度見ると全然印象が違ってくると思います。

東山:ノスタルジックな背中に見えますよね?

種﨑:そうなの。その瞬間でしか見ることができない美しさがあるというか。ここが私の一番好きなシーンですね。あれが、みぞれの見ている世界なんですよね。ここから先、大人になって青春を思い出す時に浮かぶのが、あのシーンなんだなって。

種﨑:エモさがある。

――東山さんはいかがですか?

東山:みぞれが希美のことを本当に好きなんだなって思うシーンがたくさんあって。希美を見る眼だったりとか。なんてうっとりした目で、希美のことを見るんだろうって。本当に希美として何気ない仕草なのに、みぞれは「ギフト」みたいな感じで見てくれるので。一つひとつがとても愛おしく感じました。

ここまで絵や息遣いだけで表現できるんだなって。監督もみぞれにとっては「全てがクライマックス」と仰っていましたが、その通りのフィルムになっていると思いました。

――『リズと青い鳥』は登場人物の心情を丁寧に描いた作品。その中でも、変化という点が色濃く出ていた印象です。種﨑さんが本作や声優として、変化を感じた瞬間、世界が広がった瞬間の話を最後にお聞きしたいです。

種﨑:私は一番最初にテレビアニメに出演した時に、誰かとの掛け合いを通じて自分も変われるということを知ったんです。今まで経験したことないことが、起こった時に必ず世界が開いた感覚があるんですね。

『リズと青い鳥』についても台本を読んだだけで、気持ちがシンクロできました。そういった作品に携われたことが幸せなんです。『リズと青い鳥』に心からお礼を言いたいですね。

[取材・文/川野優希]

作品情報


劇場アニメ『リズと青い鳥』
4月21日 ROADSHOW
配給:松竹

【INTRODUCTION】
少女の儚く、そして強く輝く、美しい一瞬を――。

高校生の青春を描いた武田綾乃の小説『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』がアニメーション映画化。みぞれと希美、2人の少女の儚く美しい一瞬を切り取ります。制作は、映画『聲の形』で第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション賞、東京アニメアワードフェスティバル2017アニメオブザイヤー作品賞劇場映画部門グランプリなどを受賞した京都アニメーション。そして、監督・山田尚子、脚本・吉田玲子、キャラクターデザイン・西屋太志、音楽・牛尾憲輔ら、映画『聲の形』のメインスタッフが集結。

繊細な人の心を映し出してきた制作陣による、
――誰しも感じたことがある羨望と絶望。そしてそれらを包み込む、愛。
この春、あなたの心に「響く」一作をお届けします。

【あらすじ】
あの子は青い鳥。広い空を自由に飛びまわることがあの子にとっての幸せ。だけど、私はひとり置いていかれるのが怖くて、あの子を鳥籠に閉じ込め、何も気づいていないふりをした。北宇治高等学校吹奏楽部でオーボエを担当する鎧塚みぞれと、フルートを担当する傘木希美。高校三年生、二人の最後のコンクール。

その自由曲に選ばれた「リズと青い鳥」にはオーボエとフルートが掛け合うソロがあった。

「なんだかこの曲、わたしたちみたい」

屈託もなくそう言ってソロを嬉しそうに吹く希美と、希美と過ごす日々に幸せを感じつつも終わりが近づくことを恐れるみぞれ。「親友」のはずの二人。しかし、オーボエとフルートのソロは上手くかみ合わず、距離を感じさせるものだった。

【スタッフ】
原作:武田綾乃(宝島社文庫『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』)
監督:山田尚子
脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン:西屋太志
美術監督:篠原睦雄
色彩設計:石田奈央美
楽器設定:髙橋博行
撮影監督:髙尾一也
3D監督:梅津哲郎
音響監督:鶴岡陽太
音楽:牛尾憲輔
音楽制作:ランティス
音楽制作協力:洗足学園音楽大学
吹奏楽監修:大和田雅洋
アニメーション制作:京都アニメーション
製作:『響け!』製作委員会
配給:松竹

【キャスト】
鎧塚みぞれ:種﨑敦美
傘木希美:東山奈央
中川夏紀:藤村鼓乃美
吉川優子:山岡ゆり
剣崎梨々花:杉浦しおり
黄前久美子:黒沢ともよ
加藤葉月:朝井彩加
川島緑輝:豊田萌絵
高坂麗奈:安済知佳
新山聡美:桑島法子
橋本真博:中村悠一
滝 昇:櫻井孝宏

【前売券情報】
数量限定 特製クリアファイル付き 前売券発売中!
各劇場にて販売開始価格:一般:1500円(税込) 小人:900円(税込)

『リズと青い鳥』公式サイト
『リズと青い鳥』公式ツイッター(@liz_bluebird)

(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
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