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『シュガー・ラッシュ:オンライン』プリンセス生みの親のアミ・トンプソンさんインタビュー

『シュガー・ラッシュ:オンライン』に登場するプリンセスたちの注目ポイントは?|アート・ディレクターを担当したアミ・トンプソンさんにインタビュー

2018年12月21日(金)に全国ロードショーとなる映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』。本作は、インターネットの世界を舞台に、ヴァネロペとラルフの2人がレースゲーム“シュガー・ラッシュ”の最大の危機を救うため行動する物語です。

『ズートピア』のスタッフが贈る、夢の「ネットの世界」には、白雪姫やラプンツェルなど歴代のディズニープリンセスが大集合していることでも話題になっています。

そんな本作のアート・ディレクター/キャラクターを務め、映画に登場する何百ものキャラクターデザインを担当したアミ・トンプソンさんにインタビューを実施! アミさんは大阪生まれのカナダ育ちで、大の『セーラームーン』好きという一面も持っています。

インタビューでは、アミさんが大好きなアニメ作品やアニメーションへ進んだきっかけ、スタジオジブリでの経験、そして本作のプリンセスたちを描いた際のこだわりポイントなど、たっぷりとお聞きしました。

『シュガー・ラッシュ:オンライン』を楽しみにしている方はもちろん、アニメーション業界へ進みたい方にとっても貴重な内容となっているので、ぜひご覧ください。

『セーラームーン』は人生のバイブル!たくさんのアニメに影響されてきた子供時代

――まず、アミさんがどのようなアニメに影響されてきたのかお伺いしていきたいと思います。自身のTwitterでイラストをアップするほどセーラームーンが大好きだとお聞きしました。

アミ・トンプソンさん(以下、アミ):セーラームーンは何度も見返すくらい大好きです。ミュージカルも観に行っていました。(過去、ワークショップに参加した)スタジオジブリの作品はもちろん、大友克洋さんの『AKIRA』(1988年)も大好きです。いろいろな作品に影響を受けました。

 

――大阪生まれということですが、日本に住んでいた時に見ていたアニメはありますか?

アミ:小学5、6年頃まで大阪にいましたが、『にこにこぷん』(※1)が大好きで見ていました。でも、アニメじゃないですよね(笑)

※1:1982年〜1992年までNHKにて「おかあさんといっしょ」内で放送されていた幼児向け番組。

▲アミさんが、東京滞在時に買われた戦利品。『セーラームーン』のゲームボーイソフトがちらり。

――さまざまな作品に影響を受けたとお話されていましたが、本格的に絵を描き始めようと思ったきっかけは?

アミ:押井守監督の映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年公開)です。ものすごく影響を受けた作品で、“アニメーターみたいにうまくなろう!”と、中学〜高校の頃は何枚も描いて練習していました。『攻殻機動隊』は今でも見直したりして、インスピレーションを受けています。

▲劇中に登場するシャンクからは、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の草薙素子のような自立した女性を感じます。

▲劇中に登場するシャンクからは、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の草薙素子のような自立した女性を感じます。

 

――そうなんですね!ちなみに、『セーラームーン』が大好きになったきっかけはありますか?

アミ:全部です(笑)私の人生のバイブルみたいなもので、本当に大好きなんです。キャラクターもストーリーも全部大好きで。グッズもたくさん持っていて集めています。

――そんな運命の作品ともいえる『セーラームーン』と出会った瞬間を覚えていますか?

アミ:本当に放送当時の幼い頃から見ていたので、その瞬間を覚えていないんです。

――自我が芽生えたときには当たり前のように作品と共にあった、という感じなんですね。

アミ:はい。親が全部録画をして残してくれていたので、好きなときに毎日見ていました。

――お母さまもアニメがお好きなんですか?

アミ:そうですね。私と同じで、『セーラームーン』が大好きで(笑) あとは、『アタックNo.1』や『ベルサイユのばら』など、私も大好きな作品です。80年代のアニメは、キャラクターデザインも好きなんです。

――お母さまの趣味をしっかりと受け継いでいられるのですね。

アミ:そうですね(笑) 最近だと『ベルサイユのばら』のBlu-rayを買いました(笑)


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宮崎駿監督との出会いが印象的!? 今でもインスピレーションを受けるスタジオジブリでの経験

――子供の頃からアニメーションへの道を進もうと決めていたのですか?

アミ:もともとアニメーションを見たり、絵を描いたりすることが大好きだったので、子供の頃からアニメーターや漫画家になりたいという夢を持っていました。

――実際に、アニメーターを目指して動き始めたきっかけはあったのでしょうか?

アミ:本格的にアニメーションのほうへ進もうと思ったのは、母親の一言でした。高校の頃に、「あなたは絵を描いたりアニメも好きだから、アニメーターを目指してみたら?」と言われて、「じゃあ、やってみよう!」と。

そこから、ポートフォリオ(自分が制作した作品をまとめたもの)を送ってみよう!と決めて、スタジオジブリに送りました。

そして、宮崎駿監督と『ハウルの動く城』の作画監督をされていた稲村武志さんと、ものすごく才能のある方たちから動画の描き方などアニメーションを初めて学ばせていただいたんです。

それがきっかけで「アニメーションってすごく面白い!」「もっと学びたい!」と思いました。

 

――スタジオジブリでの経験がアミさんを突き動かしたんですね。

アミ:はい。それから実家のカナダに帰ってきて、カナダのシェリダン大学(※2)で4年間学びました。

※2:アニメーション業界の中で屈指の学校。卒業生には、第87回のアカデミー賞アニメーション映画賞に輝いた『ベイマックス』共同監督のクリス・ウィリアムズ氏など。

――カナダに住んでいて、日本のスタジオジブリにポートフォリオを送ったのには何か理由があったのでしょうか?

アミ:アメリカのカートゥーン系(※3)などのスタイルも好きですが、アニメ大国である日本のアニメのことも知りたかったんです。

どちらも勉強したい気持ちがありましたし、特に、ジブリ映画が大好きでしたので、ポートフォリオを送らせていただきました。

※3:子供向けのアニメーションのこと。アメリカには、カートゥーンを専門に扱うチャンネルもある。日本でも人気の『トムとジェリー』や『ルーニー・テューンズ』、『パワーパフガールズ』など。

――スタジオジブリでの印象的な出来事があれば、ひとつだけで構いませんのでお聞かせください。

アミ:1つですか?(笑) 私にとってすごくインパクトがあったのは、初めて宮崎駿監督を見たときです。自分の席について、監督がコーナーからパッと出て来られたときには「うわぁぁ〜!」と。

「鉛筆、紙はここにあるからこれで絵が描けるよ。楽しんで描いてね」というひと言がものすごく印象的でした。

――宮崎駿監督との出会いが特に印象的だったんですね。

アミ:そうですね。すごく思い出に残っています。あとは、アニメーションを教えてくださった稲村武志さん。線の描き方をひとつひとつ丁寧に教えてくださったので、自分の中で「もっと学びたい」という気持ちが出てきました。

今でも絵を描いているときは、稲村さんに言われたことを考えたりします。それだけインパクトがありました。

【編集部訳】 10年前の今日、私の素晴らしき恩師、稲村健さんはいまだに私を刺激を与えてくれる。私を今日の私にしてくれた! すべてに感謝!
 

アート・ディレクターという大抜擢は、自分でもびっくり!

――大学卒業後、ディズニーへ入られますが、今回の『シュガー・ラッシュ:オンライン』アート・ディレクターという大抜擢にどのような気持ちを抱きましたか?

アミ:今思っても、「何でこんなことになったんだろう?」と(笑) 本当にびっくりしました。

最初は、『ズートピア』のアート・ディレクター / キャラクターデザインを担当されていたコリー・ロフティスさんからオファーをいただいたんです。

でも、そのときは、みんなが冗談を言い合っている“エイプリルフール”の日だったので、“100%冗談だ”と思っていて(笑)

 

――エイプリルフールの日にオファーを受けたんですね(笑)

アミ:「アート・ディレクターやってみない?」に、「嘘でしょ? ねぇ、嘘なんでしょ?」と返して、コリーさんから怪訝な顔をされたことを覚えています(笑) 初日で大恥をかきました(笑) でも、本当に「なんで抜擢されたのかな?」と、今でも不思議に思っています。

――抜擢された理由はどこにあると思いますか?

アミ:多分、絵を描くのが大好きな気持ちが伝わったのかな。

あと、リアル系やカートゥーン系のキャラクターなど、いろいろな絵を描くのが好きだということもあるんじゃないかな、と思います。

『シュガー・ラッシュ:オンライン』は、いろんなバラエティのキャラクターが登場するので、私も楽しんで描かせていただきました。

本作のこだわりは、何といってもプリンセスたちのディテール!

――『シュガー・ラッシュ:オンライン』の1番の注目は、ディズニープリンセスが大集合するシーンだと思います。ディズニープリンセスをデザインすると分かったときは、どのような気持ちでしたか?

アミ:今回のシーンのアイデアを出したひとりであるパメラ・リボンさん(脚本担当)がいらっしゃるんですけど、脚本を読んだとき「えぇっ!?」とびっくりしました。

でも、同時に、「これは実現させたい!」という気持ちが込み上げてきて。私だけでなく、スタッフ全員が同じ気持ちになって、ディズニーからOKが出てから少しずつ形にしていきました。

――本作のメインキャラクターであるヴァネロペもプリンセスなんですよね。

アミ:はい。今回のメインキャラクターであるヴァネロぺはプリンセスなのにドレスを着ていない、ひとり私服を着ている部分が彼女らしく面白いな、と。

あと、プリンセスたちも、「居るのが楽屋なら、もうちょっと楽な格好をさせてもいいんじゃない?」という弾みでどんどん話が広がっていきました。それで、映画のシーンにある女子会みたいな雰囲気になったんです(笑)

――なるほど。具体的にどのような流れでプリンセスたちのシーンが出来上がったのでしょうか?

アミ:先に脚本があって、そこからどんどん構成を広げて「こういうシーンにしよう」と具体的に決めて行きました。そして、デザイン、CG、色をつけてレイアウトを作ってという流れです。

――プリンセスたちのシーンにおける1番のこだわりは?

アミ:1番のこだわりは、プリンセスたちのドレスや髪などのディテールです。たとえば、白雪姫の2Dのデザインはすごくシンプルで綺麗なんですけど、そのままCGにすると“のっぺり”してしまう。

もとからCGデザインのアナとエルサはディテールがしっかりしていたで、ほかのプリンセスたちも、ふたりのディテールに合わせる必要があったんです。

ドレス、生地、模様から、ふわっとした髪の毛がどのように生えているのかなど、本当にいろんなディテールをひとつひとつ考えてプリンセスたちを作っていきました。

――こだわったディテールだからこそ、キャラクターの個性が出ていたんですね。

アミ:特に、ポカホンタスの髪は個性を足したかったので、1人だけ風が吹いているようなディテールを入れたり(笑) そんなディテールもみんなで楽しみながら作りました。

――個性が強調されているキャラクターも何人かいて面白かったです。

アミ:そうですね(笑) 今回の映画は、インターネットの世界が舞台のキャラクターなので、キャラクターひとりひとりに個性があったり、パワフルな女性キャラクターにしたり。「少しアレンジしても良いよね」とストーリー担当の方もおっしゃっていました。

――個人的に、白雪姫が着ていた私服のシャツに毒リンゴの柄がデザインされていたのが、印象的です。あの服にはどんな意味が?

アミ:実は、スタッフ全員でシャツのデザインを何にしようか話し合いました。デザインが完成するまで、何通りもの案があり、その中からやっとひとつだけ選ばれるんです。

シャツにもこだわりが入っていて、お話された毒リンゴの柄も、そこに至るまでにみんなで話し合いました。その結果としての毒リンゴなんです。「彼女(白雪姫)は毒リンゴを食べて死ななかった女性だから、彼女はその心の強さに誇りを持つべきだ」と、あえて毒リンゴの柄を入れてメンタルの強さを出しました(笑)

映画『ポカホンタス』でも狼が月に向かって吠えているシーンがありますが、そのシーンですが実は、ポカホンタスの曲の歌詞の一部を表しているんです。ポカホンタスの私服にもそんな要素が含まれているんです。

『シュガー・ラッシュ:オンライン』のテーマはヴァネロペとラルフの友情

――エンディングもかわいいアイコンやディズニーらしかぬナンセンスなアイコンもたくさん出てきます。そちらのアート・ディレクションも担当されていますよね。

アミ:はい。“存在しそうだな”と思える絵を描いて、それをアイコンにしたりしました。私だけでなく、プロダクションデザイナーの方などたくさんの人たちの手が加わっています。

――“こんな感じがいい”など、アイコンの選定基準はあったのでしょうか? あのアイコンの選定にどんな意味があるのか知りたくて。

アミ:基準はありませんね。インターネットは何でもありの世界だと思っているので、何を基準にして描くというよりも、“こういうアプリがあってもおかしくないよね”、“こういうのもあってもいいよね”という意味で、いろんなものを取り入れて描きました。

――アイコンやインターネットなど、『シュガー・ラッシュ:オンライン』は“自由”というメッセージも含まれているんですね。

アミ:そうですね。その中でも、本当に実在するウェブサイトのアプリもあったり、インターネットのリアルな感じを取り入れたかったという気持ちもあります。

――最後になりますが、アミさんから見て『シュガー・ラッシュ:オンライン』のテーマとは?

アミ:ヴァネロペとラルフの友情がメインだと思っています。ヴァネロペは新しいものが大好きで好奇心が強く、ラルフは新しいものに馴染めないような正反対のキャラ。でも2人は親友です。

ゲームの世界から終わりのない世界“インターネット”へ行ったときに、2人がインターネットの世界でどのような影響を受けるのか、友情とは何か。そこがメインだと思うので、映画をご覧になるみなさんにも2人の友情から何かを感じ取っていただけたらと思います。

――ありがとうございました。

作品情報


■作品名:『シュガー・ラッシュ:オンライン』
■公開日:12月21日(金)全国公開
■全米公開日:11月21日(水)
■原題:Ralph Breaks the Internet
■監督:リッチ・ムーア&フィル・ジョンストン
■製作:クラーク・スペンサー
■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

公式サイト

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