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春アニメ『フェアリーゴーン』十文字青×齋藤プロデューサー対談

春アニメ『Fairy gone フェアリーゴーン』十文字青さん×齋藤プロデューサー対談インタビュー

4月7日(日)よりスタートするTVアニメ『Fairy gone フェアリーゴーン』。その壮大な世界観はいかにして生み出されたのか。その秘密をシリーズ構成・脚本を手がける十文字青さんとプロデューサーの齋藤氏に聞いた。

“意気投合”がベースのオリジナル作品

ーー企画の成り立ちは、どのようなものだったのでしょうか?

齋藤:P.A.WORKSさんと新規の企画の打ち合わせをしていた際に、アクションものがやりたいというお話がありまして、そして僕のほうはファンタジー作品がやりたいという話をしていて、「じゃあアクションでファンタジーものをやりましょうか」となりました。

ちょうどそのとき、2016年に放送していたTVアニメ『灰と幻想のグリムガル』(十文字さんの小説が原作)のイベントなんかも終わった頃で、十文字さんとご飯を食べたときに、その話をしたんです。

(小説家なので)その時はプロットやシリーズ構成をお願いできないか?という話をしていたんですけど、結局、今は脚本含め全部書いてもらっているわけなんですけど……。

ーーなぜ十文字さんにお願いしたいと思ったのですか?

齋藤:ファンタジーでしかもアニメオリジナルとなると相当難易度が高いなと持っていたのですが、『灰と幻想のグリムガル』をアニメ化させていただいたご縁もあり、十文字さんとならリアリティのあるファンタジーを制作できると思い、相談したんです。

十文字:『灰と幻想のグリムガル』のアニメの時から意気投合してたんですよ。一緒にお酒を飲んで熱く語ったり、結構長い時間2人きりで函館を歩いたり(笑)。

そこで「いつかまた何かやれたらいいよね」って話をしてたんです。齋藤さんのことだから、言ってたけれど、そのあと話がないってことはないだろうと思って、僕は信じてたんですね。そしたら本当にあったという(笑)。

だから二つ返事ですよ。齋藤さんがやると言うならもちろんやりますと。どんな作品をやるかは、僕の中では問題ではなかったんです。

齋藤:ありがとうございます(涙)

ーーオリジナル作品というのは、どういうところから作り始めるのですか?

齋藤:まず僕とP.A.WORKSさんで企画書を作ったんです。暗黒騎士6人のパーティが冒険をするみたいな。暗黒騎士しかいないデコボコなパーティで、悪霊なり邪神なりが憑依して戦う……最初は邪神とかファントムとか言ってたんですけど、体に取り憑いたものを分身として出現させ戦うような事を考えていたんです。

でも、ブレストを重ねてく中で邪神ってどんな存在なんだろう?と行き詰った時に、十文字さんから「妖精というのはどうですかね?」という話が出たんです。

妖精だとかわいいイメージがあったので、カッコよくなるのかな?……と、最初は消極的だったのですが、十文字さんが、その世界における妖精がどのように誕生して、宗教になって学問になって文化になってみたいな設定をバーンと出してくれたんですね。

それを見て、これだけ芯の太いものであるなら、これまで持っている妖精の価値観を覆すような世界観になるんじゃないかとストンと落ちて。そこから時間が経って形も変わりましたけど、今に至る感じなんです。

十文字:小説の場合なら自分ひとりで考えていくんですけど、今回はみんなで作ろうというところからスタートしているので、基本はその企画書の案を自分の中で咀嚼して、こういうお話にしたほうがいいかな、だとしたらこの土台がないといけないかなって、どんどん作っていった感じです。

なのでいつもの小説みたいにゼロから作ったものとは違いますね。最初からはだいぶ違うものにはなったかもしれないけど、元はいただいた企画案からスタートしたんです。

ーー今の話を聞いて、妖精のデザインに邪神感はあるなと思いました。

十文字:そう。元はそこなんで!

齋藤:クリーチャーを分身のように扱って戦う話という根本は変わってないんですよね。で、そうやって制作を進める中で監督を決めようという話になり、僕がもともと『ジョジョの奇妙な冒険』や『DRIFTERS』、『Hellsing』も大好きなので、ハードなものも含む作品にしたいという思いから、鈴木健一監督の名前を挙げさせていただき、お会いしたらすぐに意気投合し、参加いただくことになりました。

ーー意気投合が多いですね(笑)。

齋藤:すぐにやりたいです!って話になったんですよ(笑)。

十文字:ベースが意気投合(笑)。

ーーそれだけ皆さんのやりたいことが合致しているんでしょうね。絵柄もハードですけど、海外マーケットも意識しているのですか?

齋藤:時代性や日本とか海外とか、マーケットを絞りきらない企画をやりたいという意識はありました。ファンタジーということで僕らの暮らす地球と完全に一緒ではない世界観と言いますか、どちらかと言うとヨーロッパに近い世界観で描いていくという感じにはなりました。

ーークライムサスペンス要素やバディ的な要素は、どこから入ってきたのですか?

齋藤:それは鈴木監督から。戦争中だとすごくカロリーが高いから、戦後で内政が混沌としている状況のほうが、ドラマとしてフォーカスが絞れて描きやすいんじゃないかという提案があったんです。

それを日本で置き換えると幕末みたいな感じなんですけど、そこでRPGのように冒険をしていくというものではなくなったんです。あと、これは十文字さんが言ってたんですけど、『鬼平犯科帳』。

十文字:あぁ。「火付盗賊改方の捕物帳みたいなのよくない?」って話はしましたね(笑)。

齋藤:で、僕は当時『PSYCHO-PASS サイコパス』の担当もしていたというのもあり、クライムサスペンスは好きなんです。あと、わかりやすいところで『鋼の錬金術師』も戦争が終わってからの内政の話だし、そういった設定でも面白い作品ができるかもしれないなって話はしていましたね。

ーーそうやって、いろんな人のアイディアが加わって、最終的にこの形に落ち着いたんですね。そういう作り方はどうでした?

十文字:楽しいですね! 初めての経験だったので、最初はうまくやれるのか、人と上手く付き合えるのか?とかいう不安はあったんですけど(笑)、やってみたら全然楽しいんですよ! 本読みの場でケンカするのが、こんなに楽しいんだっていう。

齋藤:ケンカじゃないですけど(笑)結構バチバチやりますね。このキャラクターがこういうことをするのは納得できない、とか。

十文字:こうしたいんだって言われると、今度は僕がそれは納得できない!って言うという。

ーーバチバチですね(笑)。

齋藤:そこで鈴木監督が登場し、折衷案を出してくれるんです。

十文字:だいたい取り持ってくれますね。

齋藤:僕らをうまくリードしてくれます。僕と鈴木監督で意見が割れると、今度は十文字さんが間を取り持ってくれたり。だいたいバチバチやるのはその3人なので、うまく一人がどちら側かに寄り添うんですよね。

十文字:3人っていうのが良かったですよね。最初は1対1が多いんだけど、そこから誰かが間に入るという。

ーーちょうどいいバランスだったんですね。そうやって意見を戦わせてできた本は、いいところに落とし込めてますか?

齋藤:妥協はせず、良い形に着地していると思います。

十文字:Aの意見とBの意見があったら、両方のいいところを取りながらCにするということが多いですね。

齋藤:あと、面白いことを思いついたとき、「こんなに大きく変えます?」ってことにはならず、面白いからこっちにしましょうって、みんながそうなる現場なんですよ。だから基本面白いものを出し惜しみせずにすべて採用していく。各話ごとに全力で面白い話を作っていこうというのは共通してあるので、意見も言いやすいし、アイディアも出しやすい現場になっていると思います。

十文字:そう考えると、こういう言い方するのもなんですが、途中でダレたり落ちちゃう話がないですよね(笑)。結構ずっと全力!

齋藤:話数ごとの見せ場はどこかを考えて、アクション推しなのかサスペンス推しなのかというところは常に意識してるので、各話見どころがあると思います。

妖精をこれまでにない価値観で描く

ーー十文字さんは、脚本を書いてみて、新たな発見などはありましたか?

十文字:僕、もしかしたら脚本に向いているんじゃないかと思いましたね。あははは(笑)。小説と比べてどちらが難しいとかではないんですが、適性で言ったら脚本のほうがあるかもと思いました。……と思わせてくれる現場だってことなんでしょうけど(笑)。

当然、初めてだから監督やプロデューサーに教わることがすごく多いんです。僕にとって脚本の一番の難しさって、画になったときに、場所があって、どういうふうにカメラを動かして撮るのかというところで、そのあたりの感覚がまだそこまでないんです。

画ってどういう風に作るのか。カットはどういうふうに割っていくのかというのを、本読みの場でもすごく明快に教えてもらえるんですよね。

だから、僕にとってはほぼ授業なんです。書けば書くほど教えてもらえるから上達できて、しかも逐一チェックしてもらってるから、ダメなときはダメと言ってもらえるじゃないですか。

小説を書く上ではまったく持っていなかった価値観だったり視点だったりを、脚本を書くことでものすごくたくさん得たので、身になっている実感があるんです。それを小説に生かすのはなかなか簡単じゃなくて、そのままでは使えないんだけど、これから書く小説は変わっていくだろうなって気はしていますね。

ーーいろいろな脚本を見させていただくと、映像が見えてないと書けないなって感じるんです。

十文字:監督がここではこういうふうに画を作りたいから、そういう場合はこうやって脚本を書いたらそれが分かるんだよっていうことまで教えてくれるんですよ。なるほどな!と。

単純にお話がこういう運びで、という部分じゃないところまで教えてくれるので、そこはすごく大きいですね。小説って、基本カメラが定点なので、アニメとか実写とかの画の作り方とは全然違うんです。だからすごく視界が広がったような感覚なんですよ。

ーープロデューサーから見て、十文字さんの新しい魅力を引き出しているなという実感はありますか?

齋藤:新しい魅力を引き出しているかなんて、創造神・十文字青に対しておこがましいですけど(笑)、どうなんですかねぇ。

十文字:単純に、僕の脚本は大丈夫ですか?

齋藤:めちゃめちゃ面白いんですよ! 正直、小説家さんなので脚本的な文法が体に馴染むのかという不安はあったんです。でも、とにかく勉強熱心で吸収するし、とにかく手が早いんですよ。毎話毎話改稿が恐ろしいスピードで上がってくるんです。で、改稿をやりながら(別の話数の)初稿を上げてくるんですよ(笑)。

原作モノでも初稿を上げるのに一週間以上かかるとかはあるんですけど、オリジナルでファンタジーなのに、改稿をやりつつ初稿を上げ、何ならその先のプロットまで書いていただけるので、「生み出す能力」がさすがだなって思いました。

最初はプロットを書いてもらって、アニメのライターさん何人かで回していく通常のやり方を想像していたのですが、十文字さんがほぼ一人で脚本を書いているんですよね。

1~2話は鈴木監督と共作なんですが、その勉強期間のあとは全部一人で書いていて、それは僕が想像していた以上のパフォーマンスなので、助かっているというより、むしろ頼り切っているんですよね……。そんな中、ここはこうじゃないとイヤだ!とかわがままを言うという僕のドSさ(笑)!

十文字:スピードとかって他の人のことはわからないんですけど、同時に小説も書いたりもしていて、あのくらいですね。

齋藤:それもすごいなぁ。

ーー現状、どんな手応えを感じてますか?

齋藤:最初に思い描いていた、地に足がついたファンタジーという骨太な世界観のなかで、キャラクターがどういう性格で、どういう行動原理で動いていくのかというのが明確に描かれていて、妖精をこれまでにない価値観で描くという説得力のある画面ができてるんじゃないかなという手応えは感じています。きっと新しいものを皆さんにお見せできるんじゃないかなと思います。

十文字:声の入ったのを聞いて、単純にカッコいい!と思いました。これ、すごく脚本がよく書けてるんじゃないか?って錯覚するくらいなんですよ(笑)!

齋藤:いやいやいや、ちゃんと書けてると思いますよ。

十文字:途中でかなり直してくれたんじゃないの?って思うくらいカッコいいんです。僕はたくさんアニメを見るわけではないから比較するのは難しいんですけど、いわゆるアニメの感じとも違うのかなと。

ただ、僕は海外ドラマなんかは結構見るんですね。その影響はもしかしたらあるのかもしれないなぁと思いました。

監督や齋藤さんも、そういう感じのテイストを出したいという思いがあったので。僕の語彙力が乏しいせいで、カッコいいとしか言えないんですけど、本当にカッコいいんですよ!

ーー前野さんのお芝居も、洋画の吹き替えみたいな感じは出ているなと思いました。

齋藤:外画みたいにやってください!という野暮なディレクションはしていませんが、雰囲気から感じ取ってくれていますね。

世界観がなんとなく出来上がっていたので、皆さんマイク前に立つとそういうモードに入られているんじゃないかなって、アフレコブースで役者さんを見ながら思っています。

ーーあと、脚本を読ませていただくと、設定とか国の名前とか、キャラクターの年齢も行ったり来たりするので、少し難しさはあるのかなと思ったんですけど、マーリヤとフリーのバディものと思うと、すごくわかりやすく思えたんです。

齋藤:カタカナが多いから最初は覚えられないよ!って思うかもしれないんですけど、覚えなくても話の構造自体はシンプルなので、言っていただいたように、マーリヤとフリーのバディものということで最初は見ていただいたほうが楽しめるんじゃないかなと思いますよ。

十文字:基本は何か事件が起こって、それを解決して、そしたらまた事件が起こって、それを解決してというのが連続していく形式なので。もちろん最後には大きなドラマになっていくんですけど、まずはひとつひとつの事件を追っていくだけでも十分楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています!

取材・文:塚越淳一

TVアニメ『Fairy gone フェアリーゴーン』作品情報

 


 

放送情報

4月7日(日)より、TOKYO MXほかにて放送開始
TOKYO MX:4月7日(日)より毎週日曜24:00~
MBS:4月9日(火)より毎週火曜26:30~
BS11:4月7日(日)より毎週日曜24:00~
AT-X:4月7日(日)より毎週日曜24:00~
※リピート放送:毎週(火)21:30/毎週(木)13:30/毎週(土)29:30
 

 

スタッフ

原作:Five fairy scholars
監督:鈴木健一
シリーズ構成・脚本:十文字青
キャラクター原案・妖精原案:中田春彌
キャラクターデザイン:清水貴子
美術監督:東潤一
色彩設計:中野尚美
撮影監督:江間常高
3D監督:宍戸光太郎・市川元成
編集:廣瀬清志
音響監督:明田川仁
音響効果:上野励
音楽プロデュース:(K)NoW_NAME
アニメーション制作:P.A.WORKS
 

キャスト

マーリヤ・ノエル:市ノ瀬加那
フリー・アンダーバー:前野智昭
ヴェロニカ・ソーン:福原綾香
ウルフラン・ロウ:細谷佳正
クラーラ・キセナリア:諏訪彩花
セルジュ・トーヴァ:中島ヨシキ
ネイン・アウラー:園崎未恵
ダミアン・カルメ:子安武人
マルコ・ベルウッド:大塚芳忠
レイ・ドーン:津田英三
リリー・ハイネマン:種﨑敦美
ロバート・チェイス:沖野晃司
エレノア・ニード:小松未可子
オズ・メア:間宮康弘
グリフ・マーサー:津田健次郎
カイン・ディスタロル:麦人
アクセル・ラブ―:川田紳司
“スウィーティー”ビター・スウィート:寿美菜子
パトリシア・パール:井口裕香
ジョナサン・パスピエール:興津和幸
ビーヴィー・リスカ―:江川央生
ソフィー:伊藤静
シュヴァルツ・ディーゼ:土師孝也
ジェット・グレイブ:東地宏樹
ユアン・ブリーズ:乃村健次
 

主題歌情報

オープニングテーマ:
(K)NoW_NAME「KNOCK on the CORE」(TOHO animation RECORDS)

エンディングテーマ:
(K)NoW_NAME「Ash-like Snow」(TOHO animation RECORDS)
 
公式サイト
公式ツイッター(@fairygone)

(C)2019 Five fairy scholars / フェアリーゴーン製作委員会
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