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冬アニメ『斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編』神谷浩史インタビュー

冬アニメ『斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編』神谷浩史さんインタビュー|神谷さんが分析する作品の魅力とヒットの要因とは?

原作者・麻生先生の才能によって、最後うっかり感動してしまう

――今作ではいつものギャグエピソードだけでなく、楠雄自身がネガティブにとらえていた自分の能力と向き合い、容認していくという成長が見られました。演じられていて神谷さんご自身の中で、心境の変化みたいなものは何かありましたか?

神谷:心境の変化というものは特にないですね。もともと楠雄のパーソナルな部分として、持ち合わせていた部分がちゃんと表現できるようになったというぐらいにしか思っていません。

麻生先生の原作の作り方に、言及していくことになるとは思うんですけど、『斉木楠雄のΨ難』はギャグ作品なので、ある意味ナンセンスなものが積み重なってできている部分というのはあると思うんです。

でもそこに無理に意味を持たせようとすると、そこに齟齬が生まれてくる。ではこの齟齬をどう解消するかとなった時に、過去のエピソードを見る限り、ちょっと良いエピソードにする。それは作品内でかなりエッジの尖ったギャグをやっているけれども、そのエッジを丸くするために、ちょっと良い感じの雰囲気を出していくところがあったと思います。

僕は『斉木楠雄のΨ難』という作品で、初めて『週刊少年ジャンプ』作品の主役をやらせてもらったんですが、これだけ大勢の人、なおかつ普段アニメーションというものに対して、そこまでアンテナを向けてない人から「『斉木楠雄のΨ難』が好きです! 面白いです!」とおっしゃっていただけることが多いんです。

それは『週刊少年ジャンプ』という媒体の懐の広さ、ユーザー数の広さというところが一番の要因だとは思うんですけど、僕から見れば「ナンセンスなギャグアニメを全力でやって、アフレコ現場は大変だけど、面白いし、できあがってみたら、めちゃくちゃ面白いというものができている」という実感はありました。

とはいえ、早朝に『おはスタ』で放送しているもの(『おはスタ』内で短編アニメとして1話放送)だし、深夜に放送している作品(まとめた5話分を30分枠で深夜に放送)だから、小学生や疲れて帰ってきたサラリーマンは見るかもしれないけれど、普段アニメを見ていなさそうな層の人がこれだけこの作品に刺さっている理由というのが失礼な言い方ですけど、ちょっとわからなかったんですよね。

でも、今お話ししたようなエッジの尖ったところをちょっと丸くするテイスト、なおかつそういったものが積み重なっていった時、それを忘れずにいる麻生先生のストーリーテリングと、それをまとめるバランス感覚あってこそのヒットだと思っています。

僕も最初はキャラクターをむやみやたらに出しているように見えたんですよ。「すぐに転校生、すぐに新キャラがまた出てきた」とは思うんですけど、新キャラが出てきたら、このキャラクターはある展開を望んでいただけのキャラクターだというところで終わらせずに、次のステップに持っていく。

目良さん(目良千里CV:内田真礼)が良い例ですけど、目良さんはメガネをかけている貧乏キャラ、食いしん坊キャラだったのに、そこからもうひと跳ねしました。

才虎(才虎芽斗吏CV: 松風雅―也)はその最たる例かもしれない。単なる金持ちキャラでみんなのことを貧乏人として見下している嫌な奴で終わらせると、エッジの立ったキャラクターですけど、キャラクターを嫌わないように、みんなに受け入れてもらえるようにするためには、ちょっとずつ彼を変えていく必要があったと思うんです。

そうなると、「もともとそういうものを持っていたんだろうな」と見ている側は錯覚するわけです。過去のエピソードも「ああ、才虎はこんなことを言っているけど、実は変わっていくんだよな」という目で見るようになります。

楠雄もそうです。みんなに対してわりと距離を置いていて、普通というものに重きを置いている。それに対して全力でアプローチしているだけですが、結果、みんなを救うことになっていて「やれやれ」という感じの人です。

でも、「楠雄はみんなを救うことに対して、そこまでハードルを設けてないんじゃないの? 実はもともと良い子なんじゃない?」というところがみなさんの中で、ちょっとずつ見えていたと思うんです。

そういう少しずつの積み重ねで、キャラクターが麻生先生の中でも、みなさんの中でも育っていった部分というのがあったと思うんですよね。もちろん、僕の中でもそういう気持ちが育っていきました。

第2期最後のクリスマスのエピソードで、みんなが来て、「本当は静かなクリスマスを送りたかったけど、結局みんな家に集まっちゃった。やれやれ」というところで終わって、楠雄本人も「悪くない」と言っていて、そこで「これで完結じゃないだと! またお会いしましょう」というところで終わる。

そして完結編で、楠雄がちゃんとしゃべるという最後のエピソードまでやりました。アニメーションならではの表現方法として、口を動かさずにテレパシ-でしゃべっている感じも含めて、それを丁寧にやっておいたことによって、最後口が動いて、音としてしゃべるというところに、ちょっと感動が生まれたりするじゃないですか。

これは想像ですけど、麻生先生が少しずつしかけているその都度、その都度エッジを丸めるためだけのその場しのぎの何かが結果育っていって、それをちゃんと忘れずに全て回収したことによって、ずっとアニメを見てきた人、ずっと原作を読んでくれた方の中で、いろんな思いが育っていって、最後うっかり感動してしまうというところに落ち着いたなという気がするんですよね。

それはたぶん麻生先生が何となく作っていったものかもしれない。そうではなくて、最初からしかけていたというんだったら、それはそれで納得できますけど、ある意味、天才的な才能ですよね。その賜物じゃないかと思っています。

――ありがとうございました。

神谷:僕がひとつの質問に対して、たくさん話しすぎてしまって、質問の時間が足りなくなりましたね。すみません!

――いえいえ! とても楽しいインタビューになりました。ありがとうございました!

[取材・文/宋 莉淑(ソン・リスク)]

作品情報

Netflixオリジナルアニメシリーズ『斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編』

やれやれ、ついにΨ始動だ。爆笑! 超能力(*サイキック)コメディ!!
高校生・斉木楠雄は超能力者である。テレパシー、サイコキネシス、透視、予知、瞬間移動、千里眼など、何でもかんでも自由自在。誰もがうらやむ最強の能力は、実は本人にとっては災難を呼ぶ不幸の元凶。それ故、人前では超能力を封印し、目立たず人と関わらずをモットーにひっそり暮らしていた。しかし何故だか彼の周りには、いつも個性的な人間(生き物)が集まって、次から次へと嵐のように災難が降りかかるのであった!

【配信】Netflixにて全世界独占配信中
https://www.netflix.com/jp/title/81054849

【キャスト】
斉木 楠雄:神谷 浩史
燃堂 力:小野 大輔
海藤 瞬:島﨑 信長
灰呂 杵志:日野 聡
鳥束 零太:花江 夏樹
照橋 心美:茅野 愛衣
夢原知予:田村ゆかり
目良千里:内田真礼
窪谷須亜蓮:細谷佳正
照橋 信・六神 通:前野智昭
斉木國春:岩田光央
斉木久留美:愛河里花子
斉木空助:野島健児
才虎芽斗吏:松風雅也
明智透真:梶裕貴
相卜命:喜多村英梨
梨歩田依舞:M・A・O
佐藤広:小野賢章
井口工:鳥海 浩輔
鈴宮陽衣:東山 奈央

【原作】
麻生 周一「斉木楠雄のΨ難」(集英社ジャンプ コミックス刊)

【スタッフ】
監督:桜井弘明
キャラクターデザイン:音地正行
音楽:斉木ックラバー
アニメーション制作:EGG FIRM×J.C.STAFF
制作:小学館集英社プロダクション

作品公式Ψ(サイ)ト
公式ツイッター(@saikikusuo_PR)

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