アニメ
Yostar Pictures 李衡達&稲垣亮祐&斉藤健吾インタビュー

今、アニメ製作会社を立ち上げる意味とは――李衡達さん、稲垣亮祐さん、斉藤健吾さん、Yostar Picturesの舵を握る3人にインタビュー

李社長のロボットアニメへのこだわり

――李社長は以前にインタビューで日本のロボットアニメへ思い入れを語られていたことがあったと思うのですが、Yostar Picturesとしてロボットアニメを作りたいという想いも……?

李:いや、ないです(即答)。そもそも私は、ロボットアニメは12話では描ききれないものだと思っていて。私が好きなロボットアニメは、昔の富野(由悠季)監督とか、高橋(良輔)監督の作品で、『ダグラム』(※3)なんて75話ありますからね。

――確かに、最近のロボットアニメは4クール放送できるものは少ないですからね……。

李:ロボットアニメは登場キャラクターも多いですし、何より暗黙のルールとして機体を一回乗り換えなければいけない。全12話じゃ足りないですよ(笑)。

一同:(爆笑)。

稲垣:僕も好きなんですけどね、ロボットアニメ。

李:現実的な話になると、最近ロボットアニメはなかなか成功させるのが難しい部分があるので、そこをあえてチャレンジする必要はないかなと。好みは好み、ビジネスはビジネスと割り切っています。


※3:ダグラム
『太陽の牙ダグラム』。1981~1983年にかけて放送されたTVアニメ。植民惑星デロイアの地球に対する独立戦争が描かれ、政治色の強いハードでリアルなストーリーが展開される。高橋良輔監督はその翌年に代表作となる『装甲騎兵ボトムズ』を製作している。


――中国におけるロボットアニメの現状ってどんな感じなのでしょうか?

李:やっぱり、『ガンダム』シリーズの影響が一番強いですね。あと、最近は少し弱まっているんですが、ゲームの『スーパーロボット大戦』(※4)の存在も大きいです。その2つが、中国の日本のロボットアニメの基盤になっていると思います。


※4:スーパーロボット大戦
バンプレスト(現バンダイナムコゲームス)から発売されている人気シミュレーションRPGシリーズ。歴代のロボットアニメが共演を果たす濃密なクロスオーバーと、アニメさながらの戦闘アニメがウリで、ロボットアニメを語る上で欠かせない人気シリーズとなっている。


――稲垣さんや斉藤さんは、Yostar Pictures でやってみたいことはありますか?

斉藤:自分は作品どうこうというよりも、常に円滑なチーム運営をやりたいという想いの方が強いですね。さっきの『アークナイツ』の話ではないですが、人を配置してうまくいくかどうかが好きっていう。

稲垣:実は、僕が個人的に会社を作ったのもそれが目的なんです。昨今のアニメ業界って、作品ありきの考えが行き過ぎていて、それがいろいろ問題に繋がっていると思っていて。

さっきのロボットアニメの話にも繋がるのですが、いきなり無謀なものを目指すよりは、まずは自分たちで作れるチームっていうのを作って、目標のものに近づいていくことが大事かなと。昔、アニメ業界を作った人たちはそれが出来ていたのかもしれないですけど、実情として全然継承できてないので。昔からアニメ業界で働いてきた身からすると、昔はできたはずのものが、今できる見込みがなかったりもするんです。(ロボットアニメは)お金ばっかりかかるみたいな風潮もあって(笑)。

そうした面をなんとか改善したいという想いもあるのですが、李さんや、Yostarさんはそのあたりの事情も理解していただけているのがありがたいですね。実現したい夢はいっぱいあるのですが、まずは自分たちがどこまでできるのかというところになるのかなと。

――出来なくなってしまった理由というのは、具体的にはどう見えていますか?

稲垣:昔のアニメって勢いで作っていたところが結構あると思うのですが、その勢いのジェネレーションギャップなのかなと。(若い人は)それにどんどんついていけなくなっているし、アニメーターって伝統工芸士みたいなもので、 「背中を見て学べ!」みたいな風潮があって。教育っていう概念があまりないんですよね。

やっぱりある程度上手いアニメーターってライバル同士でもあるので、その自分の技術をライバルに全部教えるわけがないじゃないですか。そういう生存競争の中を勝ち残ってきたベテランの人たちに新兵が立ち向かってもまず敵わない。

でも、そうしたベテランの方々も年を取られているので、昔のようなパフォーマンスは出せなくなってきている。かといって、次の世代に継承もされていない。そこに頼って、昔僕たちが憧れたものを作ろうとしても作れないので、昔とは違う新しい技術、例えばデジタルだったり 3D だったりとかを使って、新しい感覚で作っていかなければといけないんだと思います。ただ、そういうすごいアニメーターの方々は今も業界に君臨されていますから、その人たちを差し置いて……というのもなかなか難しくて。これはたぶん日本の製造業全体に通じる話で、課題になっているのかなと思いますね。

――現状のYostar Picturesとしては、例えば10年後とかに向けて、若いアニメーターの育成であったりの、下準備や組織としての基盤を作っているようなイメージでしょうか。

稲垣:現状はもちろんそんな感じですね。今さえ良ければいいという感じではなくて、若い日本のアニメーターを中心に、ちゃんと新しい体制を作らないといけないなと。

李:10年後くらいにそういう態勢が整っていたら、ロボットアニメを作ってもいいと思います(笑)。

一同:(爆笑)。

稲垣:リアルロボット系と、スーパーロボット系で結構変わりますが、スーパーロボット系の方がいいんですか?

李:そうですね! 『ガオガイガー』(※5)みたいな。頭を働かせず、ただただ感動できるような作品が良いですね!

稲垣:『Vガンダム』(※6)的な、ああいう重いのはダメなんですか?

李:そうですね。まぁ、『Zガンダム』(※7)は大好きなんですけど(笑)。

――あれもなかなか救いがない作品ではありますが(笑)。

李:もしくは高橋さんに相談して『レイズナー』(※8)の、残した分の10話分を……。

一同:(爆笑)。


※5:ガオガイガー
『勇者王ガオガイガー』。1997年に放送されたTVアニメで、1990年から放送されていた、乗り物をモチーフとしたロボットアニメ「勇者シリーズ」における最後のTVシリーズとなる作品。他のシリーズ作よりも高めの年齢層を対象とし、リアルな世界観とスーパーロボットアニメのケレン味を融合させた独特の作風は、今もなお高く評価されている。

※6:Vガンダム
『機動戦士Vガンダム』。1993年に放送されていたTVアニメで、ガンダムシリーズの1作。ザンスカール帝国の地球侵攻に立ち向かうゲリラ組織、リガ・ミリティアの戦いを描いた作品。序盤の牧歌的な雰囲気とは対照的に、ストーリーが進むにつれ主要人物が次々と死んでいく、富野由悠季監督作品の中でもとくにハードな作風として知られている。

※7:Zガンダム
『機動戦士Zガンダム』。1984年に放送されていたTVアニメで、ガンダムシリーズの一作。地球連邦内の地球至上主義者によるエリート集団・ティターンズと、連邦軍内の反ティターンズ組織であるエゥーゴの戦いを描いた作品。TVシリーズの最終回では、主人公カミーユ・ビダンが精神崩壊を起こすという衝撃の結末を迎える。

※8:レイズナー
『蒼き流星SPTレイズナー』。1985年に放送されていたTVアニメ。地球から遠く離れた異星・グラドスの地球進行を知らせるため地球へと訪れたグラドスの少年・アルバトロ・ナル・エイジ・アスカの戦いを描いた作品。エイジ達が火星から地球を目指す第一部と、地球を制圧したグラドスとの戦いが描かれる第2部で大幅に作風が異なることで知られる。第2部の途中(38話)で打ち切りとなるも、未消化の伏線を回収するOVA『蒼き流星SPTレイズナー ACT-III 刻印2000』も製作された。


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