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冬アニメ『地縛少年花子くん』緒方恵美×安藤正臣 監督インタビュー

冬アニメ『地縛少年花子くん』緒方恵美さん&安藤正臣監督インタビュー|第1話と最終回のラストシーンから伝わってくる花子くんと寧々ちゃんの変化

花子くんの弱さを含んだリアルなカッコよさ

——お話を聞いていると、制作側も役者側もお互いに良い影響を与え合っていたのですね。

緒方:『花子くん』の現場に限らず、アニメーションの音声収録は時間が限られているので、心の中で「えっ?」と疑問を抱いてもそのまま演じたり、監督から要求されたことを本番でやったのに、そのときの音声ではなくテストのほうを使っていたりということが結構あって。

でも自分の経験上、すごい作品になる現場は監督が言いたいことをきちんと伝えることをあきらめないでいてくださることが多い気がします。

安藤:僕は、緒方さんとディスカッションする中で、最終回で印象に残っているシーンがあります。

花子くんが寧々ちゃんに「女の子に好きって言われたの、初めてだった」と言うセリフから約束するまでのシーンを1回録り終わってOKを出した後、緒方さんが“もう1回やらせてください”と言われたことがありました。

緒方さんのほうでもう1回やってみたいと言っていただいたので、頭を撫でるくだりから約束の指切りをする長いシーンをもう1回演じていただいたんです。

最初にOKを出したものも良かったのですが、もう1回やりたいと言われた意味が非常によく分かるほど、格段に良いシーンにしていただいて、それが本放送にも使われています。

本当に緒方さんの演技はすごいなぁ、と実感しました。

——そこは、花子くんの本当の気持ちが伝わってくる素敵なシーンでした。

安藤:そのシーンの演技はとても難しいところだと思っていたんです。原作を読んでもどこか花子くんが寂しそうな表情をしながら寧々ちゃんに小指を差し出していて。

すでに終わりを見越している関係であっても、終わるまでは一緒にいてほしい。結構カッコつけるのが難しいシーンなのに、どこか弱い感情が含まれていて。その弱い感情を含んだ上でのカッコつけをリアルに演じてくださって、すごく感動しました。

緒方:ありがとうございます。嬉しい!(笑) 監督の話を聞いていて、最終回の後半は……特に寧々ちゃんと花子くんが出会う最初のシーンと最終回のラストシーンのリンクがすごかったなぁと改めて実感しました。

ラストといえばCパートを収録したのに、尺の関係でCパートが翌週の頭に変更したシーンがありましたよね。

安藤:夏彦くんのくだりですね。

緒方:そうです! 本来の脚本では夏彦が出てくるギャグシーンで終わりだったのに、それが次の週に持ち越しになったために、その直前の光の気持ちでフェードアウトした第8話のラストシーン。

千葉翔也くんの演技と音楽の入り方が素晴らしくて、その前の第7話でミツバの「エロビデオみたいに」で終わったシーンとは雲泥の差でした(笑)。

一同:(笑)。

安藤:ミツバを演じた小林大紀くんと光を演じた千葉くんの演技は本当に良かったです。千葉くんのオーディションで1番重要視したのは、光の元気な男の子という部分でした。

実はミツバと光が階段で喋っているシーンもオーディションの中に入っていて、千葉くんの元気な男の子の部分と同時に、シリアスな演技にすごく惹かれたんです。

緒方:そうだったんですね!

安藤:小林くんのほうは音響監督の飯田さんからの提案で、僕自身は初めてだったんですけど、素晴らしい演技をいただいて、2人にやっていただいて良かったな、と。

ミツバと光のように、千葉くんと小林くんも実生活で仲良しなんですよね。本当に良いキャスティングに恵まれたなと思います。

監督と緒方さんが話し合った“つかさ”像

——先ほど、監督と緒方さんは何度もディスカッションを重ねたとお話されていましたが、“つかさ”に関してもディスカッションはあったのでしょうか?

緒方:つかさに関しては、1番最初、役に入る前に声帯を同じにしてほしいと言われました。つかさと花子くんは双子なので、同じ声帯の中で感情の違いを表現してほしいと。

初登場シーンが花子と間違えられるということと少し怖いところから始まったので、花子と近い感じで役に入りました。

ただ、その後の登場回で“つかさはもっと無邪気に”というディレクションをもらいましたが、前回の作為的な要素が残っている部分との擦り合わせをどうすればいいですか? とお伺いしたんです。毎回これで大丈夫なのか、これで良いのかと監督に伺いながら演じていました。

安藤:その部分は難しくて、演じられる緒方さんには本当に申し訳なかったです。原作者のあいだいろ先生とお話をしていて、すごく無邪気なのがつかさのデフォルトなんですけど、出だしだけは作為的にやりたいというのは先生の要望でした。

緒方:花子に近い感じですよね。

安藤:そうです。つかさの初登場シーンは役者の役に対する気持ちよりも、作為的な部分を優先した部分だったので、緒方さんが演じられて混乱されていたのはすごく分かります。何とも説明がうまくできなくて申し訳なかったな、と……。

緒方:いえいえ! 私もうまくつかさという役を落とし込めなかったので、どうしようかな、と試行錯誤していた部分ではありました。

つかさはピュアな無邪気さだけではなくて、サイコパスなところもゼロではないですよね、という話を監督としていて、その匙加減が本当に微妙に決まっていきました。

安藤:本当に難しいキャラクターですよね。

緒方:はい。でも、最後のほうは同じ声帯と言われたのは忘れようと思って、どんどん同じ声帯ではない感じになっていってしまいました。

安藤:第10話と第11話の「カガミジゴク」のあたりは、花子くんとつかさで1人芝居のような時間が長かったですからね。放送当時もすごく評判が良くて、流石の演じ分けで素晴らしかったです。最終的につかさは途中から出てきたわりには、ほかのキャラクターが霞むぐらい人気キャラクターになりました。

緒方:花子は基本的に本音で喋らない人なので、本音が垣間見えるのはちょっとしかありません。でも、つかさはほぼ本音で喋っているので……。

第8話で、つかさが花子くんに「あの時も良かったよ、あまねが俺を殺した時」と言うシーンがありますが、そこはつかさという人物が分かりやすいシーンなんじゃないかな、と。

安藤:つかさが花子くんの素の表情が見たいというシーンでしたよね。つかさはそういう生き方をしている、人間の上っ面を全部引っ張り出すには相当ひどいことを躊躇なくやるキャラクターです。

(C)あいだいろ/SQUARE ENIX・「地縛少年花子くん」製作委員会
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