すべての友希那を思い出して挑んだ収録――劇場版『BanG Dream! Episode of Roselia Ⅰ : 約束』相羽あいなさんインタビュー
ファンの存在を疑うほど辛かった自粛期間。そんな中、開催された「夏の野外3DAYS」
――2020年の『バンドリ!』は、アニメ『3rd Season』をはじめ、様々なプロジェクトを展開しました。改めて昨年を振り返って思い出深いことはありますか?
相羽:アニメ『3rd Season』の最後は武道館でライブをしましたが、あの光景を見て「私、この景色を知ってる」とグッときたことが印象深いです。最後に3バンド(Poppin'Party・Roselia・RAISE A SUILEN)で「夢を撃ち抜く瞬間に!」をセッションしましたが、それを見て「バンドリ!はこういうことができるんだ……!」と感じて。わかってはいたんですが、実際に実現したと思うと熱くこみ上げてくるものがあり、キャストとして、いちファンとして『バンドリ!』の可能性を感じました。
ほかにもライブをやらせてもらったりしましたが、やはり昨年はご時世的にファンの皆さんとお会いすることが難しくて。メンバーとも話したんですが、辛かったですね。実際にファンの皆さんの顔を見ないと、忘れられてしまうんじゃないかと心配になったくらいで。
――ファンも辛かったと思いますが、やはりキャストの皆さんも寂しかったんですね。
相羽:ファンの皆さんがいるという実感がない、という寂しさをすごく感じましたね。ライブはよほどのことがない限り中止にはならないはずですが、去年はそのよほどのことが起き続けて。目の前の目標(ライブやイベント)に向かって走っていたのに、その目標がなくなって。
でも、そんな中で開催されたのが8月の富士急ハイランド・コニファーフォレストでのライブ(「BanG Dream! 8th☆LIVE」夏の野外3DAYS)でした。皆と団結したいという思いを込めて「Einheit」というタイトルを付けましたが、ステージに立ってファンの皆さんが目の前にいる事実にとても感動して。より感謝しましたし、その思いを伝えたいなと感じた瞬間でした。
――「BanG Dream! 8th☆LIVE」夏の野外3DAYSの開催は、『バンドリ!』に関わるスタッフ・キャストの皆さんがファンにいち早くライブを届けたいんだという思いを感じました。
相羽:開催まで色々な困難があったはずです。それでも、なんとしても成功させるというスタッフさんたちの強い意思があったからこそ何事もなく成功したんだと思います。夏ということもあり天候や暑さ対策、それに加えて感染症対策というハードルがありましたが、ファンの皆さん、スタッフさん、キャスト、それぞれ全員が一致団結できただからこその成功だと思っています。
――そんなこのご時世の中で、ご自身になにか変化はありましたか?
相羽:当たり前が当たり前でなくなることを今回で知ってしまったということもあり、「いつでも会える」「いつでも行ける」という気持ちがなくなりましたね。例えば、どこかに行く予定を立てていても、「今日は忙しいから」「疲れているから」という理由で後回しにすることがありましたが、今回を機に辞めようと思っていて。もしかしたらそのイベントがなくなってしまう可能性もあるので、「行けるときには行こう」と。
――それはぜひ、今作を観に行こうか悩んでいる人に伝えたいですね(笑)。
相羽:本当にその通りだと思います! 「明日でいいか」と思っていても、急に中止になってしまう可能性が0%ではないので、行けるときに行ってほしいです。それで本当に明日も行けるなら、もう一度行きましょう(笑)。
過去の友希那を演じる難しさ。今では考えられないくらいドライだった彼女の変化に注目
――Roseliaが主役となる今作ですが、改めて相羽さんから見てどのような内容に?
相羽:Roseliaは『ガルパ』のメインストーリーやアニメでは既に有名なバンドとして登場していましたが、今作ではその地位に上り詰めるまでの物語、Roseliaの結成秘話が描かれています。
――結成秘話ですから、アニメや『ガルパ』の最近のストーリーの友希那と比べて、まだ刺々しい頃の彼女を再び演じることになりますよね。
相羽:そうですね。最近の友希那は色々な出会いを果たして丸くなったというか、柔らかくなっていますが、今作で描かれる彼女は考え方が今と異なっていて。すごく不器用で、自分のことしか考えていないと誤解されてしまうような部分もあり、今の友希那を知っているからこそ、当時の彼女に戻って演じるのはいろいろと思い出し、少し苦戦しました。
――演じるにあたってはどのように当時の友希那を持っていったのでしょうか?
相羽:私自身、プロレスラーから声優に転身したばかりのころに友希那を演じ始めましたが、当時は「そんなに感情を出さなくても大丈夫です」とディレクションをいただいていて。何を考えているかわからないということをベースに演じていたので、今回はその点をもう一度見直しました。当時と現在では感情の出し方が異なるので、どうしてこんな感情だったのかと感じたシーンは、「それはまだ信頼関係がなかったからだ」とか「自分に後ろめたいことがあったからだ」というように、すべての友希那を思い出して収録に挑みました。
――なるほど。ほかのメンバーとの関係値も今と比べると大きく変化していますよね。
相羽:全然違いますよね(笑)。(氷川)紗夜はやっぱり厳しかったですし、(今井)リサは友希那のために裏ですごく動いてくれていたんだと改めて思って。(宇田川)あこがメンバーに入れたのも.リサが友希那を説得してくれたおかげですからね。
そんなあこは、友希那が好きな気持ちがよく出ているけど、やっぱりお姉ちゃんが大好きな気持ちも変わらず伝わってきます。(白金)燐子は今や生徒会長になっていますが、最初はライブもできないくらいで、改めて友希那以外の皆も変わっているんだと思いました。
友希那も最初は自分が駆け上がるための……言い方は悪いですけど、Roseliaはフェスに出るための手段と思っていたと思うんです。しかし、共に歩んでいくうえで仲間という存在の大切さに気が付くんです。それが彼女の人生のターニングポイントにもなっていて、以降は人との付き合い方や繋がり方を考え直して生きているんだと思います。
――その変化も踏まえて、Roseliaはお互いの関係性やバランスの良さが絶妙だと思います。
相羽:友希那自身が危うくなったときには、あこと燐子がビシッと厳しいことを言ってくれたりもして。私自身、心から「Roseliaのメンバーと出会えてよかったね」と思っています。
個人的に、昔の友希那は人と関わることにおいて「好き」とか「仲間」とかそこまで意識してきたんじゃないかなと思います。音楽は大切だけど、バンド仲間となにかするということにはあまり興味がなさそうだったので。でも、今作でRoseliaのメンバーと出会い、そのメンバーを「好き」「大切」と思えるようになったのは、人として大きな変化だと思います。その新しい気持ちが芽生えたからこそ、アニメや今の『ガルパ』で描かれている友希那になっているはずなんです。