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『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』ネタバレ考察感想座談会

【ネタバレあり】あなたの『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』はどうだった? 編集者&ライターが赤裸々に性癖と感想を語るだけの座談会で再燃した『エヴァ』への感謝と愛

主題歌の宇多田ヒカルさんというチョイス

石橋:次は「主題歌の宇多田ヒカルさんというチョイス」についていこうか。俺は音楽が好きだからここが一番気になった。ラストシーンで主題歌が流れるのがめっちゃ綺麗だったんだよね。

これまでの主題歌はどれもよかったけど、今回の「one last kiss」はYouTubeの再生数の伸びも異常だし、宇多田さんという存在が超然としたところがあるから俺らの世代からすると別格の存在なんだよね。

ゲーム『KINGDOM HEARTS』の主題歌を歌っていたりもするし、一般層だけでなくオタク層にも親和性があるよね。

米澤:元々宇多田さん自身が、『エヴァ』が好きだったことから声が掛かったみたいな話がなかったっけ。

石橋:そうなんだ! 今回はシナリオを全部読んでから歌詞を書いたらしいよ。だから作品にあわせて書いているみたいなんだけど、『エヴァ』と全然違うようにも聞こえるし。やっぱり宇多田さんは凄い。俺はこれが言いたかっただけ(笑)。

「one last kiss」はめっちゃ好きな曲なんだけど、どこかずっとモヤモヤする部分があって無限リピートしてしまうんだよね。

米澤:俺が印象に残っているのは一番最初の「Beautiful World」かな。個人的には元々一般層にも知られてる超メジャーアーティストのイメージだから、そんな人が『エヴァ』の主題歌を担当すると知った時はやっぱりビックリした。

『エヴァ』はその頃から人気はあったけど、やっぱり基本はアニメファンの間での人気だったし、この起用そのものが一般層へ訴えかける分岐点だったのかもしれない。

太田:僕は珍しい歌詞だなって思えました。アニソンって基本、作品のことを歌う楽曲が多いと思うんですが、「Beautiful World」も「桜流し」も「one last kiss」も、『エヴァ』を見ている人のことを歌っているんじゃないかと思えて。

ちょっと作品と距離を感じるんですよね。今回は『エヴァ』には合致しないように思えるフレーズもあるじゃないですか。

石橋:確かに。「初めてのルーブルはなんてことはなかったわ」とかも、どういうこと!? って思ったし。

太田:作品ベースというよりも観客目線に思えるんです。

石橋:『エヴァ』を見た後の俺たち視聴者のなんとも言えない感情を表現しているのかもしれないね。胃の上君の霊圧が消えたけど大丈夫?

胃の上:僕は『KINGDOM HEARTS』の人が歌うんだ、くらいの印象しかなくて……。

石橋:なにぃ!? 宇多田さんの曲は全部いいからとにかく聴いて!

胃の上:あ、はい! わかりました!

碇ゲンドウの人間臭さが描かれたところ

石橋:次は太田くんチョイスの「碇ゲンドウの人間臭さが描かれたところ」について。

太田:みなさんがどう考えているのか聞いてみたいです。自分はシンジとゲンドウのように親子関係が冷え切っている訳ではないですが、やっぱり父親と重ねてゲンドウにカッコよくあって欲しかったんです。

TVシリーズから旧劇では「ただユイにもう一度会いたい」が行動原理でしたが、今回は逃げの姿勢が見えたと言えばいいのでしょうか。シンジと向き合うのが怖かったり、ユイのいない世界に絶望したり、心情を吐露したことから人間味が見えたような気がしていて。

米澤:俺はシンジよりもゲンドウに年齢が近いこともあって、ゲンドウの方に感情移入しちゃったんだよなぁ。もちろん最初は「なんてひどい奴なんだ……!」と思ったんだけど、ゲンドウ自身が苦しんでいる回想を見たら、憎むに憎めなくなってきて……。

子供の頃に見ていた大人たちの姿って、すごく大きな存在に思えていんだけど、実際に自分が歳を取ってみると、人間そんな多少歳を食ったくらいじゃ本質は変わらないってことが実感として分かってくるんだよね(笑)。

ゲンドウも俺と一緒で、心が大人になりきれないまま歳を重ねてしまったのかもしれないなぁと思うと、他人事じゃないぞと。

石橋:このくらいの年齢のキャラクターって、歳を重ねないと気持ちがわからないよね。

米澤:子供のころはミサトさんがもっとシンジやアスカをうまくフォローしてあげればいいのにとか思っていたけど、改めて見るとミサトさんってめちゃくちゃ頑張っていると思えるし。

ネルフで地球の存亡をかけた戦闘を指揮をしながら、自宅では思春期真っ只中の中学生の男女ふたりの面倒を見るなんて、もはやブラックなんてレベルじゃない(笑)。もし自分が同じ立場に置かれたら速攻で辞表を出すと思う。

一同:(笑)。

胃の上:自分も米澤さんと同じで、ゲンドウに感情移入してしまったクチですね。孤独を好むとか、知識やピアノに関すること、ヘッドフォンとかイヤホンで自分の世界へ入れるみたいな考え方は、もう共感しっぱなしでした。

ただ今回でゲンドウの人間臭さが描かれたみたいな見方は少し否定的な部分があって。というよりこれまでもゲンドウ以上に人間臭い描かれ方をした存在はいないんじゃないかと思える部分があって。

関係が冷え切っているようにも見えるけど、完全に捨てる訳ではなく、シンジを先生の下に預けているし。確か元々ゲンドウの物だったS-DATをシンジに渡してもいる。

そのあたりから向き合うのは怖いけど、完全に捨て去ることができないみたいな気持ちが見え隠れしているじゃないですか。このあたりが本当に親子というか、シンジとゲンドウの似ている部分にも思えて。

もしかしたら『破』で実現しなかった綾波主催の食事会が、あそこできっちり行われていたらまた違った結末もあったのかもしれないとか、今だと思えるんですよね。

個人的にですが、この親子が腹を割って話し合えば丸く収まるんじゃないかと考えていたところがあるので。

石橋:収まるところに収まった印象だったね。俺の家庭環境もゲンドウとシンジくんに似たような感じだから、ずっとシンジくんの目線で見ていて。男が孤独を拗らせるとこうなるみたいな典型がゲンドウだっていうのもよく知っていたから、俺が大人になって許してあげないとダメなんだなって超ドライになってた。

でも良かったのは、シンジとゲンドウが対峙した時にゲンドウにATフィールドが出たところかな。

一同:(笑)。

胃の上:それあれですね、貞本エヴァでも「生まれた時からユイの愛情を一身に受けるお前が妬ましかった」みたいな拗らせたことをシンジに言っていて、『シン・エヴァ』でも息子に対してATフィールドが出る程に拗らせていたので、なんか安心したというか。ちょっと笑っちゃったんですよね。

石橋:でもやっぱそうなるよなぁ。男たるもの息子ができるとああいう感じになりかねないから、もし俺みたいなのでも子供ができたとしたら気を付けようと思ったよ(笑)。

太田:少し思い出してみると、ゲンドウはあの精神世界の電車に今回が初乗車だったと思うんです。初めて同じ場所にいることを許せたというか、それが安心でしたね。

石橋:わかる。もうひとつ言いたいのが、最後の初号機と13号機の戦うシーン。あれがめちゃくちゃ茶番に見えたんだよね。結局親父と息子の戦いなんてしょうもないと言ってしまえばそれまでだけど、世界の命運とかがかかっているとはいえ、何か身近な出来事にも感じられたんだよね。

米澤:実は俺はあそこが1番残念だったところで。やっぱり、最後に初号機のカッコいいシーンが見たかったんだよ!

一同:(笑)。

米澤:とくに、初号機に乗る前の流れがめちゃ熱かっただけに、ロボットアニメファンとしてはあそこでカッコいい戦闘シーンが見たかった。新劇場版って、純粋にシンジを応援できる戦闘が『破』以降はとくに少ない。もちろん、あの親子の戦いをメタ的な演出で描いたことの意味も理解できるんだけど、それはそれとして、一つのエンタメとして真剣な戦いも見たかったな。

石橋:せっかくだから『エヴァ』はロボットアニメなのかどうかについてもみんなに聞いてみたい! まぁ、これは庵野監督が明言しちゃったけど(笑)。

胃の上:そうですよね。庵野監督が明言した以上ここでそれを否定することはできないはずです。

米澤:なんでこの議論が起きるかというと、庵野監督って大の特撮ファンで、『エヴァ』はその技法を演出として取り入れていて制作している経緯があって。だから、作中の『エヴァ』ってロボットというよりも『ウルトラマン』とかの巨大特撮ヒーローに近い動きをしていて、ロボットアニメっぽさみたいなのが薄いんだよね。

石橋:俺はてっきり、「これ人造人間だし」って、安易にロボットと言ってはいけない風潮なのかと思ってたよ。

胃の上:ぶっちゃけたことをいうと、この作品は「ロボット要らなくないか?」と思えるところもありますよね。結局、碇親子の話ですし。登場人物たちの身近な出来事が世界の命運を握っていて、その装置としての役割でしかないと思います。

米澤:そうだなぁ。もし巨大ロボットがなかったとしても成立する話かもしれない。

胃の上:最後のシンジとゲンドウのバトルにしても、茶番のように思えたのはこのふたりだけに焦点を当てるためかなと。これまで描いてきた物語とか舞台を引き剝がしていって、残ったものだけを見せたかったのかなという印象もあります。

石橋:確かに……。でもさ、ロボットの良さって小難しい理屈とか抜きにして、勢いで突き抜けられるところだと思うんだよね。

胃の上:確かに。

石橋:勢いとパワー、ビジュアルで展開を持っていけるし、これだけ小難しい話をしているけど、エヴァというロボットが無ければこの作品はもしかしたら終わらなかったんじゃないかとも思えるよね。

太田:おそらく、『エヴァ』に詳しくない人も含めたら一般的にはロボットアニメなんですよ。人造人間でロボット三原則にも当てはまっていないのでエヴァという兵器はロボットじゃないと思いつつ、『エヴァ』という作品はロボットアニメだと思っています。

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