映画
『竜とそばかすの姫』齋藤優一郎インタビュー|【アニメスタジオの今と未来・連載第3回】

【アニメスタジオの今と未来】スタジオ地図10周年企画・齋藤優一郎さんに聞く『竜とそばかすの姫』|現代を描き続けることで「変わらないもの」と「変わるもの」【連載第3回】

スタジオ地図の作品中心主義

ーー『竜とそばかすの姫』についてもお聞きしていきましょう。『美女と野獣』という部分についてもお聞きできればと。細田監督から「今回は『美女と野獣』をモチーフにする」と提案があったんでしょうか?

齋藤:『美女と野獣』って1700年代にフランスで原作が書かれ以来、その後、時代時代で多くの作家達が映画に限らず作品にしてきたもので、細田さんも大好きな作品。対比の物語の構図とか、ディズニー版では野獣が一番魅力なんだとか、ずっと言っていましたね。そう言ったモチーフというか、構造みたいなものは『おおかみこどもの雨と雪』もそうだし、『バケモノの子』などにも影響があって、言いようによっては、そういう事をずっとやってきていたんです。

そして今回、「どういう映画を作ろうか」っていう話になって、僕は細田さんに3つのことを話したんじゃないかなと思います。

ひとつは、何か好きな物語をベースに企画を考えてみてはどうか。もうひとつは、これまで何作かずっと細田さんの身の回りの家族の出来事を物語にして作品を作ってきたけれど、作家の物作りの核や発芽としてはそれはありつつも、物語そのものとして描くのは少しお休みしても良いんじゃないか、あとは久しぶりに『時をかける少女』のような10代の女性を主人公にしてみたらどうだろうとか、そんなことを車の中で話した記憶があります。

例えば、不遜な言い方かもしれないけれど、黒澤明監督が、1945年に『七人の侍』を撮って、1961年に『用心棒』を撮ったように、作家というものはぐるっと一周回ってまた同じモチーフとかテーマにチャレンジすることってあると思うんです。

多分、黒澤監督も『七人の侍』を作った後に、「また侍的なアクション作ってよ」と周囲から言われたと思うんです。だけど、それをあえてやらなかった。

歳を重ねたことも含めて、また違うフェーズで同じモチーフやテーマに、新しいチャレンジをするという事があってもいいのかなと思いました。

その後、細田さんが、『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』、『サマーウォーズ』と10年ごとにインターネットをテーマに作品を作ってきたという文脈の中で、インターネットの世界の二重性と、野獣というモチーフの二重性を結びつけていった、これは発明だと思ったし、全く新しい作品が描けると思いましたね。

ーーそういったチャレンジが生まれる理由はなにかあるのでしょうか?

齋藤:やっぱり作品が中心なんですよ。作品を作っている人たちがそうさせているのかもしれませんし、作品そのものが人をそうさせるのもかもしれない。全ての指針は作品だし、「こういう事はやっちゃダメだよね」「こういう事をやるべきなんじゃないか」ということは、これまで積み上げてきた作品の連なりがそうさせるというのもあると思います。

だからこそ同じものはやれないという思いがあります。「続編を作ろう」とはならないし、なりにくい。またそれは社会や僕たちが常に変化し続けているからであり、作品も新しいチャレンジや変化が必要となってくるからだと思っています。アニメーションに限らず、映画は現代を描くもの、変わっていく価値観の中で映画の作り方も、映画自身も変わっていくのが必然だと思うんです。でも、変わらない部分もある。その変わらない部分を大事にしながら、でも「能動的に変化していこうぜ」というモチベーションは、細田さんが作る作品そのものであり、主人公そのものですよね。

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