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『竜とそばかすの姫』齋藤優一郎インタビュー|【アニメスタジオの今と未来・連載第3回】

【アニメスタジオの今と未来】スタジオ地図10周年企画・齋藤優一郎さんに聞く『竜とそばかすの姫』|現代を描き続けることで「変わらないもの」と「変わるもの」【連載第3回】

日本を代表するアニメ制作会社のみなさんにインタビューを行っていく新企画「アニメスタジオの今と未来」。今回は先日掲載した特別編・細田守監督インタビューに引き続き、スタジオ地図10周年企画として齋藤優一郎プロデューサーに2021年7月16日(金)より大ヒット上映中の映画『竜とそばかすの姫』についてたっぷりとお聞きしていきます。

細田守監督との出会いからスタジオ地図のポリシー、さらにはこれからのアニメーションの未来まで、話題は多岐にわたりました。

『時をかける少女』の「変わらないもの」からはじまったストーリーは、『竜とそばかすの姫』を経て「変わるもの」へと繋がっていきます。

齋藤プロデューサーが目指す映画とは何なのでしょうか?

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一緒にやる人間とは一度仕事をしたほうが良い

ーー今回はスタジオ地図10周年企画ということで、そもそものスタジオのはじまりからお聞きできればと思っています。スタジオ地図と言えば細田守監督ですが、出会いはどのようなものでしたか?

齋藤優一郎さん(以下、齋藤):最初に会ったのは2004年の2月だったかな? スタジオ地図としては10年なんですけど、僕と細田さんの付き合いとしては18年目なんですよね。18年で6本の映画を作ったということになります。

ーーそれはすごい。

齋藤:ねぇ。たいぶ大変なもんでしたけど(笑)。

2004年というのは『ONE PIECE』の『ワンピース THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』の映画の制作が始まっていて、それと並行する形で『時をかける少女』の企画も始まっていたんです。そのときはまだ細田さんは東映動画(現・東映アニメーション)の所属だったんですよ。そして、2005年に細田さんが『ONE PIECE』を終えてから東映動画を辞めることになります。

でも実は、細田さんと最初にした仕事は、渡辺信一郎さんが監督をした『サムライチャンプルー』のOP(2004年)なんです。

ーーなるほど。それ以前の細田監督の経歴もお聞かせいただけますか?

齋藤:細田さんは、アニメーターから出発して、監督を務めた『デジモンアドベンチャー』(1999年)、『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(2000年)で話題になって、スタジオジブリに映画「ハウルの動く城」の監督として招聘されることになります。しかし、結局残念ながら細田監督版としての『ハウルの動く城』は作られませんでした。

それでもその後細田監督はずっと映画が作りたいと思っていて、東映動画さんにいっぱい企画を出してはいたんだけどそれが実現しなくて。どうしようと思っているときにテレビアニメ『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』40話の「どれみと魔女をやめた魔女」の演出を担当するんです(2002年放送)。

それを観た、僕の東京のお父さんというか、仕事の師匠のひとりであるマッドハウスの創業者の丸山正雄さんが細田監督に「君は映画を作るべきだ」とメールして。細田さんがそれに励まされて、「『時をかける少女』を映画で作りたいんです」と言ったのが始まりなんです。

ーーいろんな作品を股にかけて出会うんですね。

齋藤:そうなんです。細田さんは、丸山さんを頼ってマッドハウスにやってきて、丸山さんにキャスティングされたのが僕なんです。

ここでなぜ僕がキャスティングされたのかについては、実はふたつの説があって(笑)。

ひとつは、僕が丸山さんに「是非やりたいです」と言った説です。当時の僕は、お付き合いさせていただいていた監督が、杉井ギサブロー監督、りんたろう監督、川尻善昭監督、平田敏夫監督……といったものすごいキャリアのある、大御所の監督達だったんです。

細田さんと僕は9歳離れているんですけど、それでもお付き合いしてきた監督の中では最も若かったのが細田さんだったんです。

もともと僕は、宮崎駿監督と高畑勲監督作品が好きで、また鈴木敏夫プロデューサーに憧れて、この業界に入ったというのがあった。ある種の日常の中に起こる喜びとか驚きとか、その奇跡を描くような作品を作りたかったんです。僕も『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』は観ていて、細田守という監督が作る奇跡の物語にはすごく興味があったんです。

それで「是非やりたいです」と言って、それを丸山さんがかなえてくれた説。

もうひとつは、今はKADOKAWAの上級顧問でいらっしゃる井上伸一郎さんがきっかけという説、ご本人談ですが(笑)。

CLAMPさん原作のTVアニメ『X -エックス-』で僕が制作デスクをやっていて、そのときの角川書店(現・KADOKAWA)のアニメコミック事業部部長をやっていらしたのが井上さんだったんです。

『時をかける少女』の原作が角川文庫から出ていたので、丸山さんが井上さんに会いに行ったんです。「『時をかける少女』を細田くんでやりたいんだけど」と言ったら「あぁ良いですね。やりましょうよ」となったらしく。

そのときに、「でも丸山さん、条件があります。齋藤くんにプロデューサーをさせてください」と指名があったという、実は井上さんのキャスティングだった。

という説がふたつあってですね。今となっては、「どっちだった?」「でもまあ、どちらにせよ、ありがたかったな」って思ってます。

ーーどちらもすごい流れではあります(笑)。両方あって決まったんでしょうね。

齋藤:井上さんとしては、『X -エックス-』のときの僕の仕事や色々なことを見ていてくれて、「彼だったらクオリティコントロールだけではなく、予算管理を含めて、ちゃんとやるだろう」と思ってくれていたみたいですね。

どちらにせよ、「一緒に仕事をする人間とは(事前に)一度仕事をしたほうが良い」という丸山さんの哲学で、その時、ご縁のあった『サムライチャンプルー』のOPをやらせて頂くことになったのが、僕と細田さんの出会いになったということです。

丸山さんとしては、そこで僕らの相性を見たんでしょうね。

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