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『スター・ウォーズ:ビジョンズ』『九人目のジェダイ』神山健治監督インタビュー

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』『九人目のジェダイ』神山健治監督インタビュー|「スター・ウォーズ」に憧れていた青年が「スター・ウォーズ」を作るという奇跡

神山監督が思い描く「スター・ウォーズ」らしさ

ーーそもそもルーカスフィルムからはどういったオーダーがあったのですか? その中に神山監督らしさを入れるのも大変だったかと思うのですが。

神山:オーダーとしては、「スター・ウォーズ」の設定を使えば何やってもいいですよっていうくらいに自由でしたね。特に縛りはなくて「スター・ウォーズ」ギャラクシーの中で、どこにフォーカスしてもいい。

あえて言うなら短編であるという縛りがあるくらいでした。実は短編って、日本のクリエイターが一番苦手なところなんです。僕もそうですけど。ハリウッド作品なんかを見ていると、短編こそ監督の力が発揮されてるのがわかるんです。オチがきっちり用意されていて、5分なり10分なりでちゃんとパッケージになっている面白さがあるんです。そこをどうするかな? くらいの縛りで。

あとは「スター・ウォーズ」らしさをどうやって出すか。世界中に自分なりの「スター・ウォーズ」を想像している人たちがたくさんいるので悩みました。僕は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』から見始めた世代ですから、自分が感じる「スター・ウォーズ」らしさって、銀河の辺境に暮らす名もなき若者が旅立って冒険をするジュブナイル(小説などのジャンルで少年・少女期のものを指すことが多い)でした。

その中にSFらしいライトセーバーや宇宙船が登場したり、いろんなタイプの宇宙人が登場するところをどうやって盛り込むか。「スター・ウォーズ」らしいSFとファンタジーが融合したような部分ですよね。

今、いろんなSF作品や面白い作品がたくさん作られているので、この作品が「スター・ウォーズ」であるということを規定する最小単位はライトセーバーとジェダイだなって思ったんです。そういう逆からの発想ですね。

そういうところを入れていきながら、自分が見たい、自分が本当に「スター・ウォーズ」を見てこれを作る人になりたいと思った初期衝動に忠実に従いました。スピーダーバイクのシーンとか、「スター・ウォーズ」らしさが香るシーンを二次創作的に入れていくことで、出来上がっていきました。

ーー確かに「スター・ウォーズ」らしいシーンがかなりありました。森の中でスピーダーで走るシーンはまさに「スター・ウォーズ」だし、お話の転換のときのワイプも“らしさ”を感じました。

神山:あのワイプは恐らく黒澤映画からの影響なんだと思います。昔の映画は、舞台に幕がついていて場面転換をしていたんです。黒澤映画でもそういう発想があったのかもしれませんが、シーンの切り替えをワイプで行っていたんですよね。だからそれをおそらく「スター・ウォーズ」も踏襲していて、大きなシーンの転調はワイプが入る。あれは入れるべきだろうなって思っていました(笑)。

あのころの熱い気持ちが蘇る

ーー先程のお話にもあったように、神山監督にとっても「スター・ウォーズ」はルーツとなるような作品だと思います。今回『スター・ウォーズ:ビジョンズ』のプロジェクトに関わって感じた、神山監督が受けた「スター・ウォーズ」の影響はどんなところですか?

神山:やってみて驚くくらい馴染みがいいというか、そう言ったらおかしいかな(笑)。「スター・ウォーズ」の世界って、架空のものじゃないですか。宇宙船にしても、細かいガジェットにしても。それをゼロから作っていくのは今のアニメの現場では凄く難しくなっているんですよ。それもあって今はファンタジブームが来てますが、一時アニメでファンタジーもなくなったしSFもあんまり作られない時期がありました。

たくさんの設定を多くのスタッフで合議制で作っていくことがどんどん難しくなったから、基本的には日常をベースにした作品が増えてきたんじゃないかと。なので『九人目のジェダイ』を作り始める時も「これは結構大変だな」と思ったんです。短編とはいえ、数カットしか出てこないシーンでも設定を成立させなきゃいけない。そういうのを組み上げていくので、大変な作業になるかなと思ったんです。

そう思ったんだけど、僕は監督として「スター・ウォーズ」を作りたいっていう初期衝動があったから、本当に最初に感じたあの気持ちのまま、ピュアな気分のままで作品を作れたんです。

本当は設定がないと絵コンテがなかなか作りにくいんだけど、「もういいや!」と(笑)。絵コンテを描きながら「こういうガジェットにしちゃえ!」とか、そういう発想がすごくしやすくて、「スター・ウォーズ」の懐の深さも感じました。「あ、この『スター・ウォーズ』っていう世界は、いろんなクリエイター全員じゃないかもしれないけど、僕にとってなんと遊びやすいフィールドなんだ!」って僕は特にそう感じましたね。

最初は大変だと思っていたのに、やってみると本当にその行為自体がすごく楽しいんですよ。これが『スター・ウォーズ』の世界なんだ、クリエイターを刺激する世界なんだ、それが『スター・ウォーズ』にはあるんだっていうのを改めて感じましたね。

ーー自分がやりたいと思ってたあの若い時の熱い気持ちを何年越しに体験できているってことですからね。

神山:そうですね。だから作品によっては、そう思っていてもなかなかうまくいかない時もあったりするんですよ。ノリノリでやってるはずなのに、何か噛み合わない。それは、自分の精神状態とかもあるのかもしれませんが、こと「スター・ウォーズ」に関しては自由に遊べたなって感じがすごくしましたよ。

[インタビュー/石橋悠]

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』とは

ディズニープラスにて独占配信

ジョージ・ルーカスが黒澤明作品や日本文化から多大な影響を受け制作した「スター・ウォーズ」の創造のルーツとも言える日本へルーカスフィルムが強いリスペクトを込めた「スター・ウォーズ」史上初の一大アニメプロジェクト。「スター・ウォーズ」の創造のルーツとなった“日本”、そしてその日本から新たに誕生する、「スター・ウォーズ」への期待が、世界的に高まっていく中で、エグゼクティブ・プロデューサーであるジェームズ・ウォーは「これは私たちが愛する“アニメ”という文化を生んだ日本へ贈るルーカスフィルムからのラブレターです。」と日本アニメに対する熱い想いを語る。参加したクリエイターたちが、<スター・ウォーズ>そして<日本のアニメ>への熱い情熱を持って創り上げる、独自のビジョンで描いた9つの「スター・ウォーズ」は9月22日(水)16時よりディズニープラスにて全9話一斉に日米同時配信される。

◆ディズニープラス公式サイト

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